2023/08/17 19:00
Bunkamura による展覧会〈平間至展 写真のうた -PHOTO SONGS-〉が、渋谷ヒカリエ9F・ヒカリエホール ホールBにて2023年7月8日(土)から8月23日(水)まで開催されている。
この展覧会は「写真と音楽」をテーマに、2020年に写真家生活30周年を迎えた写真家・平間至の初期作品から、「NO MUSIC, NO LIFE.」のポスター、CDジャケット、雑誌など、これまで手掛けてきた膨大な数の作品が展示されている。音楽好きなら、どこかに必ず自分が目にした作品、手に取った作品があるはずで、SNS上でも多くの人が会場を訪れた際の感想を綴っている。会期も残り1週間を切ったが、是非この機会を逃さずに足を運んでほしい。
今回、OTOTOYニュースでは会場に平間至氏を訪ね、インタビューにお応えいただいた。また、当日行われたThe Wisely Brothers出演による「公認!ゲリラライブ #3」の模様も併せてお届けする。
僕の名前でネット検索してみて、想像以上にみなさんに響いた展示になったなと思っています。それはどういうことかと言うと、僕の写真をきっかけに、音楽がとても世の中に対して賑やかだった時代をみなさんが思い出しているような印象があるんです。その当時からすると今はちょっと音楽と離れているけど、音楽と共に歩んだ時期を懐かしく感じていただいている気がします。
――自分も実際に、サンボマスター『サンボマスターは君に語りかける』等、ずっと聴いていたCDのジャケット写真を観て興奮しました。
やっぱりみなさんそういう感じで、「あれもこれも、平間さんの写真だったんだね」みたいな感じの感想が多いです。
――今回の展覧会で、平間さんご自身が改めて気が付いたことなどありましたか。
入ってすぐの左側の赤い壁のあたりは、『MOTOR DRIVE』という1995年に出た僕の写真集の写真が中心になっているんですが、カラーとモノクロの違いはあるにせよ、今の「平間写真館TOKYO」と非常に似ているな、ということには気づきました。初期のまったく知名度がない中で自分の写真を模索していた頃の写真と、30数年散々色んなことをやってきて、ある意味完成した自分の写真のスタイルとが、ほぼほぼ一緒だなというのは思いましたね。
――それは、意識的にそうしようとしてきたわけではなく?
いや、まったくそんなことはないですね。
――平間さんが動きながらジャムセッションのように撮影している様子を動画で拝見したのですが、あまり被写体に言葉を掛けたりしないですか。
そうですね。僕は音楽のセッションと一緒だと思っていて、例えばセッションをしていてAからEのキーに行くとき、「次、E行くぞ」って言わないじゃないですか?もし言ったとしても本当の最終手段だと思うんです。それと同じで、「じゃあちょっと座ってみましょうか」とか、言葉は指示というより、あくまでもきっかけですね。
――ダウンタウンに「手を繋いでみましょうか」と言ったという写真も展示されていますよね。
それもきっかけの1つで、絶対に手を繋がなさそうな2人が手を繋ぐことで何が起こるかっていうためのきっかけを作って、ああいう2人の表情になったんです。浜ちゃんはすごく嬉しそうで、松ちゃんは複雑そうだけど嬉しそうみたいな。
――お2人の関係らしい写真ですよね。
そうですね。僕もすごくそう思いました。
――ご自身でも実験的な音楽のバンドをやっているそうですが、それは撮影と同じものがありますか。
撮影自体、即興性をすごく大事にしているので。もともと楽器は小さい頃からやっていたんですけど、写真撮影において即興力がすごく磨かれて、それが楽器に落とし込まれている状態ですね。即興の実験音楽というのはある意味自由なフィールドだと思っているので、その自由の中で自分に何ができるのかっていうのは、音楽を通して探っているところです。ただ、撮影の場合は依頼された目的をとても大事にしているんですよ。撮影の目的をより自分らしく果たすための即興性だったり実験性だと思っています。
――目的を外れた自由では、意味がないわけですね。
「今何のために撮っているのか」ということはとても大事にしているつもりです。「目的がある中での自由さ」、言い換えると「制約」ということになるかもしれないんですけど、自分は制約とは捉えていないですね。家族のみなさんを撮ったら、やっぱり家族が喜んでくれるための写真を撮りたい。そのためにどんな即興性を持って撮影を展開させていくということです。写真が持つ「偶然性」みたいな言葉って昔からよく言われるんですけど、僕は偶然性じゃなくて「即興性」ということをよく言ってるんですよ。自分が積極的に関与することで何かが起こって、それを記録していくということです。
――これだけたくさんのアーティストの写真を撮影している平間さんに、特定のアーティストのことをお聞きするのはいけないかもしれませんが、忌野清志郎さんのことを色んな方に訊かせてもらうことをライフワークにしていまして。良かったら聞かせてもらっていいですか?
まあ、ライフワークなら、わかりました(笑)。
――ありがとうございます。清志郎さんって、それこそ存在そのものを音楽として強烈に発信していたと思うんです。その清志郎さんと撮影で向き合ったときに、平間さんはどう感じたのでしょうか。
清志郎さんって、すごく発信しつつも、すごくシャイな方でもありましたよね。外見はメイクやヘアスタイルや衣装でものすごいインパクトで発信しているけど、本人ってめちゃくちゃシャイじゃないですか?ものすごくピュアでシャイすぎて、こういう感じになっているんじゃないですかね。甲本ヒロトさんがどうしてステージ上で脱ぐのかっていう話を、たまたま友だち伝手に聞いたことがあるんですけど、「人前で歌うのが恥ずかしすぎるから」らしいんですよ。ちょっとそういうことに近いんじゃないですかね。清志郎さんがメイクしたり派手な衣装を着ることは、ある意味自分のピュアすぎる部分や恥ずかしさを隠すためでもあるんじゃないかなって思います。僕は清志郎さんとはたしか90年代後半に、コーヒーか何かの広告の撮影で初めてお仕事をさせていただいたんです。そのときに、清志郎さんが決まった立ち位置からズレて立っていたんですけど、もし僕が「もうちょっと右に立ってください」って言ったら、清志郎さんが壊れちゃうんじゃないかなっていうぐらい、ピュアで儚い感じがしました。それで結局僕は、「右に立ってください」と言えなかったんですよ。そういうピュアで正直な感じと、外見の派手な感じは相反するものでもあるし、本当のポップスターというのはそういう方たちなんじゃないかなって思います。
――ありがとうございます!ところで、今日はこの後The Wisely Brothersのライブがありますが、何故「公認!ゲリラライブ」と名付けているんですか?
僕の中で、渋谷のストリート感を出したいと思ったんです。スクランブル交差点やビルの感じだったり、そこで色んな人たちが勝手に何かをやっているかのような感じが、渋谷の文化なんじゃないかなと思ってこういうタイトルにしました。
――展覧会は8月23日で閉幕となりますが、平間さんがこれからやりたいと思っていることがあれば教えてください。
後はずっと写真館を続けていけばいいなって、良い意味で思いますね。何か新しいことをやらなきゃとかじゃなくて、写真館を続けることが僕の役割だなって思ってます。
ライブが終了すると、平間が加わって、アンコールとしてセッションが始まった。平間がギターを弾きながら足元に裏側にして置いたスネアを鳴らし、tatsuがベースを弾き、真舘がクラリネットを吹き、和久利がパーカッション、渡辺がドラムを叩くカオスな空間が展開されていく。tatsuのベースを軸としてしばらく続いた演奏は、合図があるともなく「ピタッ」と突然終わり、メンバー一同は顔を見合わせてドッと爆笑。お客さんからは拍手が沸き起こるシュール且つハッピーなエンディングとなった。「今日は本当にありがとうございました!The Wisely Brothersでした!」と平間が改めてバンドを紹介して、余韻の残しつつゲリラライブは終了となった。
その後も終了時間ギリギリに急いで駆け込んでくるお客さんもいて、展覧会は大盛況の様子だった。〈平間至展 写真のうた -PHOTO SONGS-〉は渋谷ヒカリエ9F・ヒカリエホール ホールBにて8月23日(水)まで開催されているので、是非お見逃しなく。プレゼント企画も行われているので下記情報を参照してほしい。
取材・文:岡本貴之
会期 : 2023年7月8日(土)〜8月23日(水)
会場 : ヒカリエホール ホールB (渋谷ヒカリエ9F)
開場時間 : 11:00–20:00 (最終入場は19:30まで)
休館日 : なし
料金(税込) : 一般 ¥1,300 / 大学・高校生 ¥600 / 中学・小学生 ¥400
※本展は会期中すべての日程で【オンラインによる事前予約】が可能です。ご予約なしでもご入場いただけますが、混雑時にはお待ちいただく場合がございます。予約方法等詳細は展覧会HPをご確認ください。
展覧会HP : https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_hirama/
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_hirama/topics/tower.html
◎「音楽」なTシャツでご来場の方に先着でオリジナルステッカーをプレゼント。合言葉は「イタルトコロ音楽」
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_hirama/topics/ongakut.html
(〈平間至展 写真のうた -PHOTO SONGS-〉オフィシャル・ウェブサイトより)
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