News

2022/07/17 20:00

 

【コラム】ミッシェルの曲に揺さぶられる、儚くて残酷な青春映画『青い春』

 

漫画家・松本大洋の短編集「青い春」をもとに豊田利晃監督が実写化した2022年公開の映画『青い春』。「しあわせならてをたたこう」をベースに、「青い春」が収録された漫画のエピソードやキャラクターの要素に合わせて作られた長編映画となっています。

劇中にはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの曲が多く使われていて、主な出演者は松田龍平、新井貴浩、高岡奏輔、大柴裕介、永山瑛太。

【あらすじ】とある高校の不良グループが、屋上で柵の外に立って手を叩く回数を競う”ベランダゲーム”をしていた。失敗すれば校庭に真っ逆さま。このゲームで優勝した九条(松田龍平)は、優勝者は学校を仕切るという習わしに興味がなかった。その冷めた態度に腹を立てて九条を敵視するようになる青木。厳しい現実を突きつけられる中で、不良たちは自分の行き場を探すことを余儀なくされていく。

調子に乗っている態度が気に障り、その勢いで不良仲間を殺してしまう雪男。甲子園予選敗退で希望を失い、ヤクザの先輩の元へ行ってしまう木村。閉鎖的な高校生活のなかで暴力や非行に走る不良たちが、若さゆえに抑えられない怒りを行動に移してしまう残酷さに胸が締め付けられます。

劇中ではTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの曲が多く使用されていて、「赤毛のケリー」、「モナリザ」、「ブギー」など荒々しい場面をミッシェルの曲がさらに盛り立てています。とくに、主題歌としてラストに流れる「ドロップ」はそれぞれ違う道を歩き始める不良たちの未来と、破滅的な終わりを迎えてしまう九条の幼馴染・青木のことを思わせる、どこか儚い曲となっています。

救いのない不良たちが送る刹那的な毎日。平穏な高校生活を送ってきた人たちにとっては、異世界の話のように思えるかも知れません。ですが、“行き場のない怒り”や“苦しみ”はこの時期に誰もが抱いていたものではないでしょうか。だからこそ、劇中の不良たちの闇雲な葛藤に共感を覚えます。

高校を卒業してから時間の経った今はあの頃何に悩んでいたか、何を望んでいたのかを鮮明に思い出すことは難しいかも知れません。ですが、この映画を見るとあのモヤモヤと葛藤があったからこそ今があるということが思い出されます。とても儚く、切ない青春時代。この映画を鑑賞して、思い出してみてはいかがでしょう。

現在、映画『青い春』は動画配信サイトにてレンタル視聴可能です。ぜひ、チェックを。

映画情報
『青い春』(2002年公開)
監督/脚本:豊田利晃
原作:松本大洋
出演:松田龍平、新井貴浩、高岡奏輔、大柴裕介、永山瑛太

文・田代 芽生

[ニュース] THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

あわせて読みたい


TOP