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2013/11/24 00:08

 

吉澤嘉代子、夢への決意を見せた初ワンマンーーOTOTOY最速レポ

 

埼玉県川口出身のシンガー・ソングライター吉澤嘉代子が、11月23日(土祝)、渋谷duo Music Exchangeにて、はじめてのワンマンショウ〈吉澤嘉代子 ファーストワンマンショウ ~夢で逢えたってしょうがないで SHOW~〉を行なった。

今年6月5日にインディーズ・ファースト・ミニ・アルバム『魔女図鑑』をリリースした吉澤嘉代子。同タイミングでリリース・パーティを行なったものの、ワンマン・ライヴをするのはこの日が初めて。100日前からTwitter上でカウントダウンを始めたり、魔女修行委員会という名前で活動をタンブラーで記録したり、じっくり準備を整えてきただけあって、普通のライヴとはひと味違った、彼女の世界観が詰まった“ワンマンショウ”となった。

まずは、入場時に受付で「魔女修行新聞 創刊号」という新聞が手渡された。そこに書かれていたのは「吉澤嘉代子夢から覚めず」という見出し。昨晩22日に眠りについたまま、吉澤が目を覚まさないらしい。会場に流れているBGMは、さまざまなバージョンで歌われた「夢で逢えたら」。どうやら、夢のなかでライヴを行なうという設定のようである。

SLEEPERS FILMによるMV「未成年の主張」、22日の寝る前に撮ったという吉澤のビデオ・コメントに続き、深いリヴァーブがかったSEが流れる。そして、ギター・石崎光、ベース・酒井由里絵、キーボード・鈴林凛、ドラム・張替智広が登場。影アナとして、吉澤の魔女修行のお供をしてきたという“ほうき”さんが話しはじめる。「ここは23日未明の嘉代子さんの夢の中。嘉代子さんったら夢を観ているようですわ」と、このライヴが吉澤の夢のなかであることが明らかにされた。間髪開けず、ドラムの張替のカウントとともに、はじめてのワンマンショウが始まった。

オープニング・ナンバーは、完全未発表曲「ラブラブ」。〈ラブラブラブラブ〉というコーラスが印象的な、ドリーミーなラブ・ソングだ。滑稽さをテーマにすることの多い吉澤が、1曲目から未発表曲、そしてストレートな歌詞の楽曲を持ってくるというのは、このライヴに想いを込めていることの証に違いない。続いて、吉澤おなじみの白いギターを持って、「ひゅー」を爽快に歌い抜ける。

ステージ上であっかんべーなどをし、「夢って自由だな。まじでちょうちょうチョベリグ」というセリフのあとにはじまったのは、80'sアイドル歌謡テイストの楽曲「チョベリグ」。親指をグッと前に押し出す振り付けが印象的な最近のライヴ定番曲だ。続くは、『魔女図鑑』収録の「恥ずかしい」。そして、吉澤が一年のうちで一番好きという七夕の曲「涙のイヤリング(夢ver.)」が披露された。

『魔女図鑑』収録曲の「化粧落とし」、未発表「ひゅるリメンバー」では、石崎のリッケンバッカーがむせび泣くかのようなサウンドを鳴らし、会場に響き渡る。そして「今夜電話するって、あなたはそう言ったけど、電話のベルは鳴らない。うんともすんとも言わないわ。鳴らないかなー」というセリフとともに「らりるれりん」がはじまる。演奏が終了した瞬間に、ステージ脇に置いてあった黒電話のベルが鳴る。それに出た吉澤。「もしもし、運命の人ですか?」というセリフとともに、会場が暗転して、第一部が終了した。

第二部は、ゲストのおおはた雄一が登場。吉澤が朗読した、いしいしんじの小説「ぶらんこ乗り」の一節のセリフとともに、打楽器などでコミカルな音を出し、ギターで伴奏を弾きはじめるおおはた。そこに登場した吉澤。おおはたのギターに乗せて「ぶらんこ乗り」を歌い上げる。ギターと歌というシンプルな構成ながら、幼くも艶っぽい吉澤の声が、一際際立ち会場内に緊張感と歌声が伝わっていく。

同曲の終了とともに、おおはたがステージから下がり、再びバンドメンバーが登場。「シーラカンス通り」「がらんどう」という文学的な匂いのする楽曲を立て続けに演奏。「シーラカンス通り」は本日一番のバンド・アンサンブルで、迫力のある演奏となった。楽曲終了時には、それまでで一番大きな拍手が起こった。そして、キーボードの音色から始まるミドル・テンポの未発表曲「氷砂糖」を演奏し、少ししっとりしたところで、吉澤の声で以下のセリフが流れた。

「生まれたときは、みんな産声をあげて泣きながら生まれてきたはずなのに、大人になっていくうちに「泣かないの」って言われだす。泣いても、なにも変わらないんだよって。だから、泣いてしまう自分は弱いって、自分を嫌いになることもあった。でもね、泣き虫ジュゴン、海の中で泣くんだよ。そしたら誰もわかんない。誰もわかんない」

キーボードの音色とともに、吉澤が17歳の頃に作ったという「泣き虫ジュゴン」が披露された。耳をすませて聴くお客さん、そして、想いを込めてじっくりと歌い上げる吉澤。石崎のギターが、ジュゴンの鳴き声のようにうねりをあげてわんわんと響く。細かくリズムを刻むドラム、海の底を思わせるかのようなベースも混じって、楽曲の世界を見事に伝えていた。

そして、子どもから大人への成長期に起こる複雑な想いを描いたであろう楽曲「ストッキング」。徐々に盛り上がっていくアレンジと、疾走感のある楽曲に、会場は手拍子が止まらない。そして、現在の吉澤嘉代子にとっての代表曲「未成年の主張」がはじまる。

「夢の中では誰にも傷つけられないし、失敗もしない。だけど、いつまで夢のなかにいるんだろう。このまま夢が覚めないままだったら、ワンマンショウでみんなに逢えない。夢で逢えたってしょうがないでしょう!!」

じゃーん。ギターの音とともに始まった同楽曲。途中まで歌い上げたところで、「わたしやっぱり夢のなかだけじゃイヤだ。本当のワンマンショウでみんなに会いたい!! 夢で逢えたってしょうがないでしょう!!」と叫ぶ吉澤。お客さんが一緒に叫んでくれたら夢から覚めるかもしれないと言い、お客さんととも「夢で逢えたってしょうがないで SHOW」と叫ぶ。まだまだいけますよね、もう一歩ですよね、と同じセリフを繰り返し、3回目の「夢で逢えたってしょうがないでしょう!!」という叫びとともに、吉澤嘉代子の夢が覚めた。大きくなった拍手をしーっと吉澤が抑え、キーボードの伴奏に乗せて吉澤が再び歌いはじめる。そして、ギターを置き、吉澤独自の舞いでステージを動き回り、この日最大の拍手のなか本編は幕を閉じた。

吉澤とバンドがステージから降りても鳴り止まない拍手。アンコールが、拍手から嘉代子コールに変わる。すると、黒い魔女の格好に着替えた吉澤が、アンコールに応えステージに再登場。おおはた雄一も登場し、一緒に「東京絶景」を披露した。

その後再びメンバー呼び、「生らりるれ理論」を行なった。「らりるれりろん」とは、毎週月曜日にTwitter上で吉澤が行なっているコーナーで、「好きな人からの電話を待ちながら(個人差あり)恋についてダベるという」というもの。「人にはあまり理解されないことはなんですか」「僕たち吉澤嘉代子ファンにも愛称をつけてほしいです」など、ファンから寄せられた質問に丁寧に答えていき、笑いで会場が包まれた。そして、お客さんとともに手拍子の練習をしてから「美少女」を演奏。会場が一体となり、アンコールは終了した。

再び誰もいなくなったステージ。それでも鳴り止まない拍手に応え、ダブル・アンコールに一人で登場した吉澤。チーム嘉代子への感謝の言葉、お客さんへの感謝の言葉を述べたあと、今年大学を卒業して、自分の中の不安なども増えたことを語った。

「人と関係ないって顔してやっているんですけど、落ち込んだりすることもあって。私は23歳なんですけど、同級生とか友達ががんばっているってことが支えになっています。まだまだ、がんばれるなと思っています。つい一昨日か3日前に作った曲をやって終わりにします」と言い、新しい世界へ飛び出す決意を話した。

「わたしの曲は、主人公を設定したり、物語風になっている曲が多いんですけど、今回は本当に自分自身の曲を作ってみました。普段と違うので、不安と恥ずかしい気持ちがあるんですけど、暖かい目で見守ってください。「23歳」という曲です」

自分のことを歌うのではなく、空想だったり、物語の世界を作って歌ってきた吉澤にとって、この曲は新境地となる楽曲といっていいだろう。シンプルな弾き語りで歌われた「23歳」は、こんな歌詞からはじまった。

〈ここからはもう 大人の世界 言い訳きかない 大人の世界〉
〈見上げてみれば 化物だらけ 本当の敵はわたしの中に〉

少女期から大人への移ろいを感じさせる歌詞が印象的だった吉澤が、音楽を伝えていくという夢を叶えるために、大人になることを歌った楽曲。その曲を聴いて、涙を浮かべているお客さんを見受けられることもできた。初めてのワンマンショウの最後の最後にこの曲を持ってきたところに、吉澤嘉代子の意思と強い想いを感じることができた。きっとこの日に間に合わせるために、全身全霊で作ったであろう同楽曲は、どこまでも純粋に、とてもストレートに伝わってきた。

こうして完全に幕を閉じた、初めてのワンマンショウ。これからの吉澤嘉代子がますます楽しみになるファーストワンマンショウだったことを強く言いたい。それは僕の言葉なんかよりも、会場を包む大きな拍手が物語っていた。吉澤嘉代子の歩みは、まだはじまったばかりだ。(西澤裕郎)

写真 : あさみあやこ(LIVERALLY)

吉澤嘉代子 ファーストワンマンショウ
〜夢で逢えたってしょうがないで SHOW〜
2013年11月23日(土祝) 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE

〈セットリスト〉
1. ラブラブ
2. ひゅー
3. チョベリグ
4. 恥ずかしい
5. 涙のイヤリング(夢ver.)
6. 化粧落とし
7. ひゅるリメンバー
8. らりるれりん
9. ぶらんこ乗り
10. シーラカンス通り
11. がらんどう
12. 氷砂糖
13. 泣き虫ジュゴン
14. ストッキング
15. 未成年の主張

EC1. 東京絶景
EC2. 美少女

EC3. 23歳

・吉澤嘉代子『泣き虫ジュゴン』高音質配信&インタビュー (OTOTOY特集ページ)
http://ototoy.jp/feature/20130603

[ニュース] 吉澤嘉代子

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