2023/06/14 00:15
シンガーソングライターのArche(アーキ)が8thシングル「distorted mirror」を2023年6月14日(水)にデジタルリリースした。
音楽をサブスクで聴くようになってから、ふいに流れてきた曲にハッと耳を奪われる瞬間がある。そういう出会い方ができる音楽は、年代も性別も国も関係なくボーダーレスに、音楽ファンの世界を広げてくれる。Archeは、まさにそんなリスニング環境で存在感を発揮している、サブスク時代にフィットしたアーティストだ。
Archeとはいったいどんなアーティストなのか?アーティスト名の由来、バックボーンや活動歴が気になるところだが、これまでライブは行っておらず、ビジュアルも一切メディアに露出していない。「ローリン・ヒルから影響を受けたR&Bシンガー」というプロフィール以外、ほとんど謎に包まれている。にも関わらず、各サブスクでR&B・シティーポップ・チルポップのプレイリストに⼊り続け、前作の7thシングル「THE HERMIT」でも、Spotifyプレイリスト、Apple MuiscでR&Bの注目トラックでピックアップされるなどコアファンを獲得しはじめている。つまり、完全に作品の魅力のみでリスナーの評価を得ているのだ。
新曲「distorted mirror」を聴いてみてほしい。最大の魅力は、その圧倒的な歌声だ。ハスキーで物憂げで、ちょっと哀愁も漂わせながら、芯の強さも感じさせる。一聴すると日本語にも英語にも聴こえる独特な歌い回しが、より一層注意深く聴き手を惹き寄せている。歌い出しの〈where's love? そんなものはとっくに諦めてた 本棚の奥に仕舞い込んでた 作られたstory あの人はもうここにいないのに〉にはじまり、どんどん自分自身に向かって問いかけていく内省的な歌詞が印象的だ。
サウンドはとても洒落ていて、淡々としたドラム、ブレスするようなベース、クールなキーボードの音色と、艶やかなギターのリフで構成された演奏を、豊富な語彙力と言葉のリズムで紡がれたメロディで乗りこなしていくさまは最高に心地良い。メロディを歌うパートと、たたみかけるように韻を踏みつつダークな心情を露わにするラップのコントラストも爽快で思わずリピートしたくなる。影響を受けたと公言しているシンガーはローリン・ヒルだが、他にも歌声や曲の印象からサブスク的に近似値を感じさせるアーティストを考えてみると、アデルやシーアあたりが好きなリスナーはハマるのではないだろうか。
“謎に包まれたアーティスト”とはいうものの、本人はSNSで楽曲について積極的に発信している。新曲「distorted mirror」についてはTwitterで以下のように綴っている。
「"本当の美しさ"をテーマに作った曲です。他の誰かになろうとしたり、完璧を求めたりするのではなく、ありのままの自分を認め、自分の個性を愛することの大切さを歌いました。」
こうしたコメントからは、葛藤と自問自答を繰り返しながら自分を表現することが、シンガーとしてのアイデンティティとなっていることが伺える。そうした世界観に共感する人も世代を問わず多いのかもしれない。
圧倒的な歌声と言葉のリズムでボーダーレスな活躍を予感させるArche。今後どのように活動を展開していくのか?ますます注目していこう。
Text:岡本貴之
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