今も現役でジャンルやカテゴリーを越え、力強く凛とした“うた”を歌い続ける酒井俊。77年にトリオ・レコードから発表したデビュー・アルバム。このファースト・アルバムは77年5月30日から31日にかけて吹き込まれた。この約1ヶ月前、トリオ・レコードは渋谷毅のアルバム『クック・ノート』を制作している。メンバーは渋谷のピアノのほか、川端民生のベース(後年、エレクトリック・ベースの名手となる彼だが、77年時点はウッド・ベースに専念していた)、宮沢昭一のドラムス。『シュン』の主要リズム・セクションが既に揃っていた、というよりも、この3人が底辺をまとめているところに管楽器やギター奏者が加わり、彼らが一体となって気鋭のリード・ヴォーカリストを盛り立てているのが『シュン』というアルバムなのだ。
ソリストでは飛ぶ鳥を落とす勢いだった時期の向井滋春のトロンボーン、大ベテラン宮沢昭のテナー・サックスがとにかく光る。とくに「ジャスト・ユー・ジャスト・ミー」、「バイ・バイ・ブラックバード」における宮沢は、こたえられないほど魅力的だ。またこの『シュン』は、ドラマー、宮沢昭一との数少ない親子共演を収めたアイテムとしても貴重だ。
パーソネル:
酒井俊/vocal
渋谷毅/piano,arrange
川端民生/bass
宮沢昭一/drums
宮沢昭/tenor sax,flute
中牟礼貞則/guitar
向井滋春/trombone
吉田憲司/trumpet
大口純一郎/piano
石山実/conga
録音:1977年5月30、31日 アオイ・スタジオ/東京
オリジナル・リリース:1977年10月25日