2017/10/28 22:00
2017年10月26日(木)、THE 夏の魔物が渋谷クアトロにてワンマン・ライヴ〈クアトロの魔物〉 を開催、アンコールまで全14曲を披露して初めての渋谷クアトロ・ライヴを成功させた。
このライヴは、THE 夏の魔物が10月25日にVAPよりメジャーリリースされた1stアルバム『THE 夏の魔物』発売記念として行われたもの。
初めての渋谷クアトロでのライヴ開催であることも話題となっていたが、この日はアルバム『THE 夏の魔物』を事前に購入(CDのみ。DL不可)、持参した19歳以下の方は入場料が無料ということもあり、若いファンの姿も見受けられた。ティーンエイジャーの頃に出会ったロックの初期衝動を知っているメンバーだからこその企画といえる。
数々のロック・アーティストの曲がBGMに流れ、ブルーハーツの「夕暮れ」(ライヴバージョン)が止まると同時に暗転。SEとして流れたのは、映画『T2:トレインスポッティング2』でお馴染みのイギーポップ「Lust For Life」(The Prodigy Remix)。心躍るリズムに観客から手拍子が起こり、ステージには、越川和磨(Gt.)えらめぐみ(Ba)中畑大樹(Dr. / syrup16g)ハジメタル(Key)によるシン・マモノBANDがスタンバイ。SEのリズムを引き継ぐように、豪快な越川のギターをフィーチャーしたインスト・ナンバーを放つと成田大致、泉茉里、鏡るびい、大内雷電、アントーニオ本多がステージに登場して、オープニング曲「魔物 BOM-BA-YE~魂ノに覚醒編~」が始まった。
“魔物 BOM-BA-YE!”の連呼に合わせて突き上げられる色とりどりのペンライト。渋谷クアトロに充満した期待感が爆発してフロアは一気にカオスな興奮に包まれた。初っぱなから激しいアクションとシャウトを聴かせるTHE 夏の魔物とシン・マモノBAND。中畑の派手なフィルインから、“夏の魔物!”とキメるシーンでは魔物チルドレンとの息もピッタリだ。バンド・サウンドにより生まれ変わりライヴでのクオリティがどんどん上がっている「リングの魔物」では越川がセンターに出てソロをキメる。森雪之丞作詞・玉屋2060%作曲の「涙。」のAメロで両サイドからるびい、大内がダンスでシンクロする。こみ上げるメロディ、ソリッドなロックサウンドとポップなダンスによるパフォーマンスはTHE 夏の魔物ならではのもの。
団結力やコンビネーションの強さを感じさせる場面も度々見られた。「どきめきライブ・ラリ」での茉里と越川がアイコンタクトを取って歌い出したり、ライヴ後半でるびいがフロアに降り立ってパフォーマンスを行った際のバンドの盛り上げ方等、これまで以上に伝わってきたバンド感は、今年初めの結成以来数々のライヴで場数を踏んできた賜物だろう。そんなバンドサウンドの中、成田はたまらないといった感じで「愛してるよー!!」とシャウトした。
ハジメタルの流麗なピアノから、魔物ガールズが主役の「RNR ッッッ!!!」へ。バンドの凶暴な演奏に乗って「もっと行けるんじゃないですかー!?」と煽る茉里。間奏ではホワイトに染まったフロアに向けてキレキレのダンスで魅了してみせると、続いて越川の泣きのギターに導かれてアルバムに新録されたソロ曲「わたし」で身振り手振りを交え、圧倒的な歌唱力を発揮。ボーカルに寄り添ったバンドのエモーショナルな演奏もあり、名演となった。
成田の「この曲は、山内マリコ先生に捧げます!」との言葉をきっかけに歌われた山内マリコ作詞・曽我部恵一作曲の「東京妄想フォーエバーヤング」で、ライヴ前半は早くもクライマックスを迎えたかのような盛り上がりに。アントンも思わず「みんな素敵な笑顔をしてるぜ! でも笑顔なら負けない!」とアントン・スマイルを振りまく。この曲が持つ多幸感はいつ聴いても格別なものだが、まだまだライヴは始まったばかり。シンプルな8ビートながら躍動感溢れる「バイバイトレイン」では、えらのベースが一本の太い軸になっている印象で、ビシッとしまったサウンドに。さらにステージが紅く染まる中で始まった「SUNSET HEART ATTACK」はゴリゴリにハードなサウンドで、男性陣が中心となり熱唱した。
成田が初のMC「ちょっとだけ喋ります! 1stアルバムをようやく作れました。みなさんのおかげです、ありがとうございます!」とファンやスタッフ、身の回りの関係者に感謝を述べて、メンバー全員で深々と頭を下げた。メンバー紹介から、バラード「over the hill」では声をあわせて歌う魔物チルドレンの姿もあった。そして、早くも本編ラスト曲へ。ぶっ続けにハイスパートでロックチューンを披露してきたせいか、時間が経つのが早く感じられる。アルバム収録の新曲「THE 夏の魔物のテーマ」が披露された。“いとしくってたまらない 自分がなくなるこの瞬間に好きな自分に会えなくて好きなみんなに会えたんだ”歌詞のフレーズは、メンバーの出会いやこの日集まった魔物チルドレンとの関係を思わせた。既にアルバムを愛聴しているであろう魔物チルドレンもペンライトを振りながら口ずさんでいる。全員がラップを担当するパートから、茉里とるびいが笑顔で手を繋ぎ歌うシーンも印象的だった。
「ロックンロールが好きなんです!」余韻を残す成田の絶叫で締めくくりステージを降りると、観客とバンドが一体となった“魔物 BOM-BA-YE!”コールからアンコール一発目はガールズ2人が登場して「マモノ・アラウンド・ザ・ワールド」へ。茉里がメインの旋律を歌いるびいがそれに応えるようにスクリーム。後半、るびいがフロアに降り、観客をかき分けてステージ上手方面へ。ハジメタルもステージ上から、もっともっとと煽り立てる。フロアを見下ろす形で立ち上がったるびいは「悔しいことがあっても、いつも“あの日にクアトロでライヴがあるから”って歯を食いしばって生きてた、大切なライヴハウス」だというクアトロでライヴができることを感謝してから、コール&レスポンスで煽り狂ったようにスクリームして熱狂的な空間を作り出してみせた。ヘヴィなギターリフが次なる展開へと繋ぐ、これまでのライヴでは見られなかったインターミッションから飛び出したのは「シン・魔 物 BOM-BA-YE ~魂ノ共鳴編~」。成田が「命、捨てます!」と叫んだのも頷ける、バンドが奏でるものすごいスピード感とヘヴィなオルタナティヴ・ロックの中に身を投じるTHE 夏の魔物の5人。立て続けに「僕と君のロックンロール」が始まると、イントロに合わせて観客も大ジャンプ。この日一番の大合唱となってライヴは終了した。「ツアーファイナルで会おう!」と言い残し、再び深々と頭を下げて観客に感謝を示し、メンバーはステージを降りた。
終わってみれば、あっという間の1時間半。ほぼMCなしでノンストップ。余計なものをそぎ落とした、というよりは、言葉を発するよりも時間が許す限り歌と演奏を届けたいという意思が感じられた。THE 夏の魔物はバンドとの一体感が増し、ロックバンドとしての存在感を確立させたといっていいだろう。終演後の会場には、大音量でOasis「Rock 'n' Roll Star」が流れていた。ギミックなしのロックバンド・THE 夏の魔物のツアーは、来年1月17日(水)渋谷WWWで行われるツアーファイナルまで続いて行く。
取材・文:岡本貴之
写真:タイコウクニヨシ
THE 夏の魔物ワンマン・ライヴ〈クアトロの魔物〉
2017年10月26日 (木)渋谷クアトロ
〈セットリスト〉
1. 魔物 BOM-BA-YE ~魂ノ覚醒編~
2. リングの魔物
3. 涙。
4. どきめきライブ・ラリ
5. RNR ッッッ!!!
6. わたし
7. 東京妄想フォーエバーヤング
8. バイバイトレイン
9. SUNSET HEART ATTACK
10. over the hill
11. THE 夏の魔物のテーマ
EN1. マモノ・アラウンド・ザ・ワールド
EN2. シン・魔物 BOM-BA-YE ~魂ノ共鳴編~
EN3. 僕と君のロックンロール
●ライヴ情報
〈THE 夏の魔物対バンツアー 全国の魔物〉
2017年11月9日 SENDAI CLUB JUNK BOX
THE 夏の魔物 / 椎名ぴかりん
2017年11月19日 札幌SOUND CRUE
THE 夏の魔物 / 二丁目の魁カミングアウト
and more...
2017年11月30日 名古屋CLUB UPSET
THE 夏の魔物 / ぜんぶ君のせいだ。
2017年12月1日 大阪CONPASS
THE 夏の魔物 / GANG PARADE
2017年12月8日 福岡The Voodoo Lounge
THE 夏の魔物 / DJ掟ポルシェ / クリトリック・リス
2018年1月17日 渋谷WWW ※バンド編成
THE 夏の魔物 / X(後日発表)
※THE 夏の魔物はバンド編成での出演
Gt.越川和磨
Ba.えらめぐみ
Dr.中畑大樹
Key.ハジメタル