2026/03/24 18:00
京都発、令和の“語りべ”フォーク・ロックバンド・The Slumbersが2026年3月17日(火)京都livehouse nanoにて〈スランバーズ単独演奏会〜ONEMAN THE SLUMBERS 2026春 京都nano編〜〉を開催した。
毎年京都nanoの周年を祝う、最早定番のバンド・公演となっており、ホームでの彼らを見るためチケットはSOLD OUT。ただ初見のお客さんも多かった。そんな昔から応援しているリスナーも、初見のリスナーも最高に包み込んだライブの様子をレポートする。
SEが鳴り始めると、まずは菅野哉太(Dr.Cho)、上西響(Ba.Cho)、中田京悟(Gt.Cho)の3人が順番に登場し、1曲目のイントロに繋がるセッション的な演奏を開始。そして各自ソロ演奏でも魅せているタイミングで、佐々木智則(Vo.Gt)も飛び跳ねるようにステージに登場。佐々木の「始めるぞー!」を合図に「若すぎた僕たち」がスタート。昭和の男臭い風情の感じる力強いメロディとボーカルに熱気がどんどん高まっていく。音響・照明も担当するnano店長・モグラも4人の演奏に負けない動きと熱量で卓のスイッチング捌きを見せる。「nano22周年おめでとう!心1つに溶け合おうぜ」と伝えて始まったのは「アフターロール」。哀愁もありながら爽やかな上西のベースのイントロで一気に引き込み、サビではモグラのミラーボールを回すタイミングも抜群。バンドとライブハウス、そして手を上げてバイブスを上げるフロアで、この日にしかない最高な作品が出来上がっていった。1つになった会場を「どこまでも行こうぜ!」と続く「レトロカー」は広大な道を全員で楽しくドライブする情景を見せさせた。
フロアの「お帰りー!」に「ただいまー!」と返して始まったMC。改めてnanoを祝い、コロナの頃には「他に出演するバンドが少なくて、週に3回出ていた」と、その深い関係性を話す。その後もホーム感満載のトークで普段クールな中田も今日は喋る。「お酒を頼みながら、のんびり最後まで楽しんで」と佐々木が伝え「ブランコ」へ。スローで気楽なサウンドにフロアも体を揺らして楽しむ。そしてここで新曲2連発のサプライズ。「ひとり」はどこか空虚さがありながらも縦ノリが楽しい曲。「夢の中」はその開けたパワーで悪い夢を晴らして「大丈夫!俺がいる!」と言ってくれるような心強いロックンロールナンバーだった。そこから夏のバラード「真夏のおとぎ話」。子供の頃に見て綺麗だと、感動した蛍や花火の光を思い起こすような楽曲が染み込む。さすがにこれは今年の夏に夜の畦道で聴くこと確定だ。
「聴いてもらって初めて俺らって価値が出る。わざわざこんな平日にありがとうございます」と感謝すると「こちらこそありがとう」と返ってくる。「愛が伝わりあってるなぁ。ええ景色やなぁ。いろんな曲を作るけど、世の中にリリースされた瞬間から曲は自分のものではないという感覚がずっとあるんよ。だから自分のテーマになってくれたら嬉しいし、そっと横にあったら嬉しい。それをライブでやって対面で盛り上がったら嬉しいからさ。2026年もそんな感じでやっていきます!」と伝える。続けて中田の寡黙エピソードで笑いをとった後、佐々木は実家に帰った時に感じた「不便だからこそ、そこに人との会話が生まれる。通販で弦も買えるけど、わざわざギターメンテナンスをしに店舗に行って、そこの人と缶コーヒー片手に話す。そこで愛が育まれる。だからライブにもこだわりたいし、生身の人間が演奏しているのを見てもらうことで愛が生まれるわけやねぇ!それをこれからも大事にしていきたい」と伝え「嗚呼、素晴らしきこの世界」へ。その歌詞のメッセージはMCも相まって、本当に分かり合えないことなんてあるのか、便利さゆえに増えている傷があるのではと考えさせたし、あぁそれでもこの体で上向いて行こうと思った。そこに続いた「すべて満ちるまで」は、そんな丸裸になった心身を抱きしめる母なるスケールがあり、最後は<すべて満ちるまで>の大合唱が起こった。
「やっぱりnanoって最高やな!」と22年続いたnanoを讃える。佐々木は「ライブハウスにお金払ってライブを見にいく人は最近減ったなぁと思ってたけど。そういう文化ってちゃうんかなぁと思ったけど。全然そんなことない!ライブハウスは永遠に続く!」と話す。「元気はあるか?今日イチでかい声出せるか?これはみんなの声がないと完成しない1曲やで!」と「LIFE」へ。早速拳を上げてのシンガロングが巻き起こり、曲が進むたびに大きくなっていく。それは恐らく見たところ初見の人も徐々に口を、喉を開いていったから。結果「今まで一番良いLIFEやったよ!」と佐々木も大満足。そのまま「ロマンス」へ。ダンディーで屈強なメロディが、またフロアの無敵感を上げた。老若男女が破顔で楽しむ姿に、ライブハウスって楽しいなと改めて思った。
その余韻のまま、ゆっくりギターをカッティングしながら佐々木は「よく聴いといて。この音、今日以外出えへんからな。バンドは生き物やからな」と話し、そのまま「ずっと側にいてほしいね。毎日聴いてくれとは言わへん。思い出す時にそっと聴いてくれたら、それだけで嬉しい。みんなのおかげで俺らもやれるわけやし、俺らもみんなの側から離れへんから。スランバーズは解散も休止もしません!それは、この海のように」と「それは、この海のように」へ。間をたっぷりを使った演奏は、刹那的な美しさも肯定しながら、続いているものへのリスペクトも感じる雄大さがあった。佐々木の紡ぐ言葉、菅野の厚みのある音、中田のより前に出てのギターソロに、アグレッシブな動きでベースを弾く上西を視覚聴覚で味わうと、この焦燥に溢れ、サイクルの早い世界への疲れが吹き飛んだ。ずっとこの曲が続いてほしいと思わせながらも、最後は「俺たちのエンドロール!」と日々戦う者へ捧げる「馬車馬のテーマ」。明日は通勤電車もオフィスも学校もいつもより良い景色に見えるであろう。革靴やパンプスで駆け出したくなる軽快なテーマで盛り上がった。「京都、スランバーズでした!どうもありがとう!」と佐々木はガッツポーズして、4人はステージを去った。
すぐアンコールが起こり、4人が登場。新商品が増えた物販紹介の後、「最近マジで多いのよ。自分のことをギリギリまで追い詰めてしまう人。今の自分の世界に居続けるために無理しすぎて悲しいことになった人もいた。人はいずれ死ぬ。問題は残された俺たちのような人なんやけど、できることは心に空いた穴の周りをとにかく埋め続けること。その穴を塞ぐことはできないけど、周りを広げていって、その穴を見えへんくらいにするのが、俺たちの役目だと思う。それを強く思って素直にできた曲。この曲も「あいつ大変そうやな」って人にポンっと送ってほしいねんな。曲が刺さるか刺さらへんかは、さほど重要ではない。“送ってあげる”というその行為が大切やねん。気にかけてくれてるんやな、心配してくれてるんやなと思うだけで、俺は生きてていいんだと思うから。そういう時にこの曲が10年先、20年先に残る曲だといいなと思います」と話し、1月にリリースした新曲「黄金色の逃亡」を届けた。この肯定感は天国のような安心感だけど、まだ天国には行けないという気持ちにもさせる。惨めさも持って生きていこうと思える曲だった。そして「生き延びてくれ!その先でまた会おう!俺たちも辞めへん。お前たちも辞めるな!さらばnano!」と伝え「さらば、憧れ」へ。サビは<さあ行け>と全員でハンズアップして大合唱。その時はThe Slumbersだけでなく、過去の自分からも背中を押されているようだった。これ以上にない大団円となり「23周年で会おう!愛してるぞ!必ずまた会おうな!じゃあねー!」と佐々木が叫び、ライブは終了した。
佐々木はライブ中の「あらよっと!」「おいしょ!」のような掛け声が似合い、きっぷの良さというか、古くからの日本男児の良さが詰まっている今時珍しいバンドマン。バンドサウンドにもそれが現れている。ただ「今この時代には、逆にこういう男が必要」とか、そういう紹介の仕方をしたいわけではない。何か満たされない人のための居場所に、それこそ京都で言うnanoのような場所になるバンドとしてこれからも存在してほしい。5月30日には渋谷 CLUB CRAWLにて企画ライブを開催。逃げるように来ればいい。そして東京の中心にて、ゆったりと満ち足りよう。
写真:Misaki Uchida
文:遊津場
〈スランバーズ単独演奏会〜ONEMAN THE SLUMBERS 2026春 京都nano編〜〉
2026年3月17日(火)京都livehouse nano
〈セットリスト〉
1.若すぎた僕たち
2.アフターロール
3.レトロカー
4.ブランコ
5.ひとり(新曲)
6.夢の中(新曲)
7.真夏のおとぎ話
8.嗚呼、素晴らしきこの世界
9.すべて満ちるまで
10.LIFE
11.ロマンス
12.それは、この海のように
13.馬車馬のテーマ
En1.黄金色の逃亡
En2.さらば、憧れ