2025/11/18 17:00
2025年11月14日。raku、tazuneru、isuiからなる3人組音楽ユニット・tayoriが全国を巡った「LIVE TOUR “magic”」が、東京・豊洲PITでついにファイナルを迎えた。静謐さと情熱、そして“寄り添う温度”を併せ持つ3人の音楽は、この夜、“magic”というタイトルの名にふさわしく、会場全体をひとつの物語へと包み込んでいった。
ステージが暗転し、セカンド・アルバム『magic』の幕開けを告げる「envision」が流れ出す。幻想的な音の波紋に照明が溶け、空気がゆっくりと満ちていく中でメンバーが登場。1曲目「魔法」のイントロが鳴り響いた瞬間、客席の空気が一変した。ファンタジックで奥行きのあるサウンドが、観客の心をそっと解き放っていく。
続く「ゴースト」「白日夢」では、会場全体を包む手拍子が軽やかなリズムを作り出す。ストリングスやブラスの生音的な要素とアップテンポなトラックが重なり、夢と現実の境界を曖昧にするような豊かな音像を描く。その緻密なレイヤーを感じていると、tayoriの音楽がいかに純度の高いポップスとして設計されているかに驚かされる。
序盤の緊張をそっとほどくように披露された「風のたより」は、春めいた景色を思わせる柔らかなメロディが心をゆっくりと撫でていった。
そこからライブは「ワンダー」「ビビッド」と加速。音と光が一体となり、観客一人ひとりの内側に眠る色彩を呼び覚ましていく。さらに「ポケットサイズロケット」ではコズミックで広がりのあるサウンドが炸裂し、オーディエンスをより遠く大きな世界へと連れ出していった。
波の音のSEを挟んで始まった「ユートピア」は、この夜のハイライトのひとつ。美しいサウンドスケープの中、isuiの歌声が静かに浮かび上がる。そして続く「琥珀の国」では、懐かしさと温もりを抱くメロディが会場に広がり、歌声は深く沁み込むように響いた。
嵐の音が鳴り響くと「遠雷」へ。熱を帯びたまま「方舟」へとつながる流れは、まるで嵐のあとに訪れる再生の物語を描くかのようだった。「Stargazer」ではダンサブルなビートとスタイリッシュなライティングがステージを鮮やかに染め上げる。その輝きは「月の唄」へと引き継がれ、ロマンティックなサックスの響きとともに観客の胸にそっと触れていった。
tayoriの音楽は、真っ直ぐで透明感のあるisuiの歌声に、raku、tazuneruが作り上げたトラックがドラマティックに溶け合う。その“透明感”と“ドラマティック”という一見相反する二つが共存するのが、tayoriの魅力のひとつだと言えるだろう。寄り添うようなボーカルの奥に、緻密で重層的なサウンドワークが広がり、聴く者を“どこか別の世界”へ連れ出していく。
ライブ後半は「花がら」「可惜夜」、そして「雪解け」へと続く。花が散り、夜が明け、雪が解ける——その季節の移ろいのように、人の心の再生を描くパートだ。「薔薇の下で」では、儚さと強さが同居するisuiの歌声に、会場から大きな息を呑む気配が伝わってきた。
本編ラストは「砂の城」。生演奏がつくり出す壮大なサウンドスケープに、観客は深く酔いしれていた。
アンコールは弦楽器をフィーチャーした書き下ろしのインスト楽曲で幕を開ける。淡い幻想の中から姿を現したisuiが歌い始めたのは「春を待つ」。温かなアンサンブルと透明感に満ちた歌声が、会場全体に柔らかな希望を届けていった。
ここでライブはMCへ。ステージではまずrakuがツアーを支えてきたサポートメンバーを紹介し、長年の仲間たちへの厚い信頼と感謝を語った。さらに、ツアー準備の段階では「現実味がなく、経験も少なく不安があった」と振り返りつつ、「一人ひとりの応援が手応えと自信につながり、今日を迎えられた」とファンとスタッフへ深い感謝を伝えた。
続いてtazuneruは、ツアーを通して感じた自身の成長に触れ、「神奈川公演は緊張していたけれど、今はリラックスして臨めている」と笑顔で語る。アルバム『magic』については「日常の中にある心の動きや景色を“魔法”として描いた作品」と改めて説明し、「今日見ている景色は、皆さんがアルバムを見つけ、聴いてくれたからこそ完成したもの。一緒に誇ってほしい」と観客に呼びかけた。
最後に言葉を紡いだのはisui。アルバムとツアーのテーマである“魔法”に触れながら、「何度公演を重ねても、私にとっての魔法は皆さんの存在」と丁寧に語る。「人生には苦しいこともあるけれど、私たちは最高を更新し続ける。またこの場所へ、受け取りに来てほしい」と力強く未来を見つめた。
そしてラスト2曲、「星になる」「深夜特急」。静かなイントロから始まる「星になる」で、isuiの声は夜空に溶けるように響き、ツアーの旅路を凝縮したような温かい余韻が胸の奥に灯された。終演後も、その光はしばらく会場に残り続けていた。
この夜、tayoriが示したのは“幻想”ではなく、“寄り添いの魔法”だった。痛みや迷い、過去や未来——そのすべてを抱きしめながら、それでも生きていくことの尊さ。それを音で、言葉で描いたステージ。
tayoriの音楽は、派手な演出とも、大きな言葉とも違う。もっと静かで、もっと深くて、“心にそっと置かれる便り”みたいな音楽だ。この夜、その便りは誰の心にも確かに届いていた。それは、間違いなく魔法だったのだと思う。
取材&文:ニシダケン
Photo by 新井裕加
2025年11月14日(金)【東京】豊洲PIT
SE envision
M1 魔法
M2 ゴースト
M3 白日夢
M4 風のたより
M5 ワンダー
M6 ビビッド
M7 ポケットサイズロケット
M8 ユートピア
M9 琥珀の国
M10 遠雷
M11 方舟
M12 Stargazer
M13 月の唄
M14 花がら
M15 可惜夜
M16 雪解け
M17 薔薇の下で
M18 砂の城
Encore
En1春を待つ
En2星になる
En3 深夜特急
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