2025/11/17 18:00
“Born to Change”。その言葉の意味を、彼女はこの夜、確かに歌で示していた。
2025年11月9日、安月名 莉子がワンマンライブ「Born to Change」を開催した。精力的に活動を重ねてきた彼女が、この夜に掲げたタイトルは「変わるために生まれた」。その意味を音楽でどう表すのか。会場は期待と静けさに包まれていた。
開演の時刻、ステージのスクリーンにはこの1年間の活動を振り返る映像が映し出され、観客の胸にさまざまな思い出が蘇る。そして最後に浮かんだのは、この夜のテーマでもある「Born to Change」の文字。
照明が落ちた瞬間、ステージに響いたのは「最高の1日にしようぜ!」という安月名の叫び。バンドメンバーと共にアコースティックギターをかき鳴らしながら、披露されたオープニングナンバーは「BLUE CYALUME」。青いサイリウムの光に包まれた客席とともに、ライブの幕が勢いよく開かれた。
続く「ないものねだらせたもん勝ち」では、コール&レスポンスで会場がひとつに。
その熱を引き継ぐように放たれたのは、ハードなギターリフが唸る「keep weaving your spider way」。突き抜けるようなハイトーンのヴォーカルに、フロアのヴォルテージは一気に頂点へと達した。
MCを挟み、キュートな振り付けが印象的な「Chance! & Revenge!」、そしてクラップが響く「Shouting My Soul」へ。アコースティックギターの鋭いカッティングとともに歌い上げられる「手を伸ばして あと1ミリ 僕が未来を変える」というリリックには、今回のライブタイトル「Born to Change」にも通じる決意が宿っていた。
「かたち」では一歩一歩踏みしめるように歌い、「Unheard Voice」ではブレイクビーツに乗せて軽やかにステップ。バンドメンバーの紹介を経て「Forever」へとつなぐと、伸びやかな歌声が会場全体を包み込んだ。
スポットライトに照らされながら歌われた「Whiteout」では、一音一音を丁寧に紡ぎ出す。続く「DAISY」では、「夢を追いかけた日々は無駄じゃない」という前向きなメッセージを放ち、さらに「Glow at the Velocity of Light」へ。夕暮れのような温もりを持つ歌声が、会場をやさしく染め上げた。
中盤にはアコースティックアレンジのコーナーが設けられた。美しいピアノとともに歌われた「Convallaria」は、静けさの中に強さが宿る一曲。さらに安月名は、自身の原点であるデビュー曲「君にふれて」へと続け、「Memories」「シルバーフラワールド」をしっとりと歌い上げた。
安月名の歌声は、まるで夜明け前の空気のように澄んでいて柔らかいのに、内側に確かな熱を持っている。高音は繊細で抜けるように美しく、低音には静かな憂いや決意が宿る。このアコースティックのコーナーは、彼女の素直でまっすぐな歌声が、改めて彼女の本質を映し出す時間だった。
ライブはここから新曲「GRASSHOPPER」で終盤を迎える。ダンサブルなビートに乗せて跳ねるように歌い、会場の熱気を再び高めていく。そして「今日イチの最高のジャンプを見せてください!」という呼びかけとともに「selfish」へ。フロア中がハッピーなオーラに包まれた。
アンコールに入る前、MCで安月名は、グッズの傘とキャップが完売したことを笑顔で報告。「今日雨でよかった」と語りながらも、ファンとのお約束のように「安月名のワンマンはなぜか雨」と語る。「雨なら雨で対策を、という声をたくさんいただいて作りました」と語る傘グッズは、ファンにとって“安月名ライブの風物詩”のような存在になるだろう。
安月名は続けて、「これまで“変わりたい”“変われない”という気持ちをずっと抱えてきたけど、最近になってようやく、“私は変わるために生まれてきたんだ”と思えるようになったんです」と語る。「自分の感情を受け入れられるようになったから、自信を持って前向きな言葉を届けられるようになった」と語る彼女の姿は、凛としながらも温かい光を放っていた。
「喜怒哀楽の“怒”や“哀”の感情を、これまでちゃんと受け止められていなかった。でも、怒りや悲しみって、一番大きなパワーを生み出すものなんです」。そう語った彼女は、「その想いを曲に込めました」と紹介し、「昨日書いたばかり」だという新曲「Born to Change」を初披露。
ステージにひとり立ち、ギターを携えて放たれた歌声は、“変わるために生まれた”という言葉を体現するようだった。続く「雨のち虹」では「みんなで虹を降らせましょう」と語りかけ、どんな暗い日も、未来はきっとカラフルに変わるという希望を届けた。ラストナンバー「Horizon」でライブは大団円を迎える。まっすぐに未来を見据えるような歌声が、夜空の果てへと伸びていった。
終演後には、近日中に新曲「GRASSHOPPER」のMVが公開されること、そして2026年3月中国・上海ワンマン公演が開催されること、そして来年春にはセカンド・アルバムのリリースが決定したことが発表された。
安月名莉子は、何を変えたいのか。それはきっと“未来”なのだろう。それは自分自身の未来でもあり、聞いてくれるリスナーの未来でもある。この日のステージを通して、安月名莉子は“変わる”ということを恐れず、音楽でそれを証明してみせた。変わるとは、過去を否定することではなく、自分自身を信じて未来へ進むこと。その歌声は、彼女自身の未来だけでなく、聴く者の心にも確かに“変化”の種を灯していた。
取材&文:ニシダケン
Photo by 小川遼
2025年11月9日 @ 浅草花劇場
セットリスト
1 BLUE CYALUME
2 ないものねだらせたもん勝ち
3 keep weaving your spider way
4 Chance! & Revenge!
5 Shouting My Soul (Live ver)
6 かたち
7 Unheard Voice
8 Forever
9 Whiteout
10 DAISY
11 Glow at the Velocity of Light
12 Convallaria
13 君にふれて
14 Memories
15 シルバーフラワールド
16 GRASSHOPPER
17 selfish
EN1 【新曲】Born to Change
EN2 雨のち虹
EN3 Horizon
■X:https://x.com/azuna_riko


