News

2024/06/10 21:00

 

【ライヴレポート】「いまがいちばんカッコいい」──mol-74、会心の最新作携え光を届けるツアー〈mol-74『Φ』release tour〉開幕

 

mol-74が6月7日、東京・渋谷Spotify O-nestにてワンマンツアー〈mol-74『Φ』release tour〉の初日公演を開催した。

2022年12月に自主レーベル〈11.7〉を設立し、今年5月22日には新たな環境で制作された初のフルレングス作品となるサードアルバム『Φ』をリリースしたmol-74。同作は、生演奏外の音色も果敢に取り入れ創作現場の風通しの良さを感じさせながら、その実験性と耳馴染みの良いメロディ&バンドサウンドを絶妙なバランス感覚で両立させる会心の一作となった。

そして迎えた本公演は、アルバムリリース後初のフルバンドセットでのライヴ。チケットは見事ソールドアウトとなり、最新モードの彼らを一目見ようと多くのファンが詰めかけた。会場となったSpotify O-nestはmol-74がはじめて東京でワンマンライヴを行ったメモリアルなべニューということもあり、バンドの進化を体現するにはうってつけの舞台だ。なお、今後もツアー各地の公演が控えているため、本記事ではネタバレに配慮しつつ、最新作『Φ』の楽曲を中心にレポートする。

開演時刻の19時を過ぎ場内が暗転すると、武市和希(Vo, Gt, Key)、髙橋涼馬(Ba, Cho)、井上雄斗(Gt, Cho)、坂東志洋(Dr)の4人がステージに登場。アルバムのオープニングトラックである「Φ12」からライブをスタートさせた。ビートレスな同楽曲の静謐なムードを次の曲にも引き継ぎ、抑制されたアンサンブルを一音一音の在り方を確かめるように奏でていく。ロックバンドのライヴとしては、決してわかりやすいインパクトのある幕開けではないだろう。しかし、リスナーそれぞれがライヴハウスに持ち寄った日常の中に、mol-74の音楽が優しい手触りで少しづつ融け入っていくような感覚が、何物にも代えがたく心地良い。

この日最初のMCでは、武市が「『Φ』は”光”をコンセプトにしてる作品なので、一曲でも多くみんなに光を届けられたらと思ってます。お互いにいい時間にしましょう」と語りかける。武市がそれまで演奏していたキーボードをエレキギターに持ち替えた「遥か」、三声コーラスが清涼感を演出する「オレンジとブルー」にはフロアもハンズアップで応えるなど、世に放たれたばかりの楽曲たちもすでにオーディエンスに受け入れられているようだ。躍動感あふれる演奏に、会場は確かな熱を帯びていった。

「ここからは光量が弱いダークな曲をお届けしようと思ってます」という言葉に導かれた中盤のブロックでは、クリーントーンのギターと歌声のみで紡がれる「通り雨」やエレクトロなビートと轟音ギターのコントラストが映える「Mooner」を披露し、バンドのエクスペリメンタルな一面にフォーカス。武市のシグネチャーなファルセットボイスは、時折それ自体がまるでバイオリンの音色のように、言葉の意味から解放されて響く。そこに髙橋の高低自在なコーラスが重なり、美しいメロディにさらなる奥行きをもたらせていく。

武市と髙橋はシンセと弦楽器をそれぞれ楽曲ごとに使い分ける。井上は単音フレーズやアルペジオを軸にしながら、弓を操るボウイング奏法も用いてサウンドウォールを作り上げる。坂東はサンプリングパッドを駆使したデジタルなビートからマレットも使用する繊細でオーガニックなドラミングまで、器用なプレイで土台を組み立てていく。こうして改めてじっくりと観てみると、メンバー全員がここまで多様な奏法や異なる楽器を繰り出し続けるバンドがどれだけいるだろうか? と感心させられてしまった。

そして何よりも驚くべきなのは、それでいて忙しなさや散漫な印象をまったく感じさせない点だ。自然な感情の流れを描きながら深層へと潜っていくアーティスティックな演奏に、誰もが固唾を飲んで没入していく。ライヴ序盤、観客に向き合った武市は思わず「近いね」と漏らしていたが、様々な理由で恋愛をすることが難しい人に向けたというバラード曲「虹彩」を演奏し終える頃には、フロアとステージの境界線がなくなる錯覚で距離感を失うほどに、会場全体をmol-74の世界に包み込んでしまっていた。

武市が前日に赴いたラーメン屋にて腕にびっしりと刺青を入れた“タトゥーニキ”に水をこぼしてしまい肝を冷やしたというエピソードで感傷的なムードをリラックスさせると、とうとうクライマックスへ。坂東がパワフルに楽曲をリードし、クラップとコール&レスポンスが場内の一体感をグングン高めていく。ファルセットをあえて抑えたインディーポップ×J-ROCKサウンドで新たな一面を見せる「BACKLIT」が盛り上がりのハイライトとなっていたのも印象的だった。

本編ラストには、「音楽っていうものでこの場所が一つになる、こういう瞬間が僕は大好きです」「これからも光を皆に届けたいし、一日でも長く続けていきたい。またどこかでお会いしましょう」とMC。5つ打ちのリズムワークとラップにも接近する細かな譜割りがモダンな「R」が儚い余韻を残し、4人はステージを後にする。

アンコールに応えメンバーが再び登場すると、武市はまずマイクを通さずに「アンコールありがとう!」とひとこと。髙橋の手を借りつつ親密な空気感の中ツアーグッズの紹介を終えると、ここO-nestにて東京で初のワンマンライヴを開催したことや、5年前の同じ日にメジャーデビュー後初のツアー〈Morning Is Coming〉のファイナル公演で赤坂BLITZのステージに立った思い出を回顧する。結びには「いまがいちばんカッコいいと思ってるので、このカッコよさをさらに更新していけたらと思ってます。これからも遊びに来てもらえたら嬉しいです」というまっすぐに未来を見据えた言葉に拍手が送られ、幻想的な「フローイング」でライヴを締めくくった。アンコールではゲリラ的に動画・写真撮影がOKとなり、既にSNS上では数多くの動画や写真が来場者の手によりアップされているため、ぜひ検索してその模様を感じていただきたい。

これまでのライヴでも定番の楽曲やインディーズ期の人気曲も交えながら、mol-74の現在地を示した本公演。セットリストは最新作『Φ』の収録曲を中心にしつつ、その前後にサウンドとリリックの両面で親和性の高い過去楽曲を巧みに配置することで『Φ』の世界観を拡張させていた。光にまつわる11の物語を束ねた同作は、今ツアーで各地を巡り新たな光を浴びることで、どのように成長していくのだろうか。満足感と期待に胸が満たされる一夜となった。

〈『Φ』release tour〉は、本公演を皮切りに全国11か所をサーキット。途中3ヶ月のインターバルを挟み、10月25日の名古屋・JAMMIN'公演、11月1日の大阪・Music Club JANUS公演、11月8日の東京・Zepp Shinjuku公演でファイナルを迎える。ツアー中にセットリストはアップデートされていくほか、この先も「面白い試み」を画策中とのことなので、本公演に足を運んだファンも要チェックだ。


Text:サイトウマサヒロ
Photo:上原俊

Photo Gallery
ツアー情報

mol-74「Φ」release tour 前半戦
【ワンマン】
6/13(木)京都:磔磔
OPEN 18:30 / START 19:00
6/21(金)仙台:enn 2nd
OPEN 18:30 / START 19:00
6/23(日)札幌:SOUND CRUE
OPEN 17:30 / START 18:00
6/30(日)静岡:UMBER
OPEN 17:30 / START 18:00
7/12(金)福岡:The Voodoo Lounge
OPEN 18:30 / START 19:00
7/14(日)神戸:PADOMA
OPEN 17:30 / START 18:00
7/15(月・祝)高松:TOONICE
OPEN 17:30 / START 18:00

一般 ¥4,500(税込/D別)
学割(枚数限定) ¥3,900(税込/D別)※当日学生証のご提示が必要です

■チケット情報
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/mol-74-rt/
イープラス:https://eplus.jp/mol-74/

mol-74「Φ」release tour 東名阪ファイナル
10/25(金)名古屋:JAMMIN’
OPEN 18:30 / START 19:00
11/1(金)大阪:Music Club JANUS
OPEN 18:30 / START 19:00
11/8(金)東京:Zepp Shinjuku
OPEN 18:00 / START 18:45

一般 ¥4,500(税込/D別)
学割(枚数限定) ¥3,900(税込/D別)※当日学生証のご提示が必要です

■チケット情報
イープラス:6/6(木)21:00〜7/16(火)23:59
受付URL:https://eplus.jp/mol-74/

イベント情報
6/28(金)愛知:NAGOYA CLUB QUATTRO 35th Anniversary "rendezvous"
出演:mol-74 /Analogfish

OP 18:00 / ST 19:00

前売 一般¥4,500 ※D代別¥600

7/28(日)shibuya www<GLASGOW pre.“NOW I SAAAAAAY TOUR”>
出演:mol-74 /GLASGOW 

OP 17:30 / ST 18:00

前売 一般¥4000 ※D代別¥600

8/1(木)大阪:ANIMA5th ANNIVERSARY「ANIMISM#20240801」
出演:The Songbards / mol-74(ツーマン)

OP 18:45 / ST 19:30

ADV ¥4,500 / DOOR 未定 ※D代別 ¥600

[チケット]
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/4112260001-P0030001

インフォメーション
HP:https://mol-74.jp/
X:https://x.com/mol_74

[ニュース] mol-74

あわせて読みたい


TOP