2011/12/14 00:00

unsuspected monogram インタビュー

10月某日、言わずと知れた有名プロデューサーでありミュージシャンの佐久間正英と、同じく著名エンジニアの山口州治による1日限りのレコーディング・セミナーが、『サウンド&レコーディング・マガジン』との共同企画として行われた。これはアナログからデジタルへとレコーディング環境が変わる中、これまでの技術を伝えるべく行われたもので、スタジオにお客さんを招待&Ustreamによって、実際のレコーディングを体験してもらいながら、佐久間と山口が「レコーディングとは? 」「いい音を録るには? 」ということを直接伝えるという、非常に貴重な機会となった。

そこでレコーディングを行ったのが、佐久間自身がバンマスとして2008年に結成したunsuspected monogram(以下、アンサス)である。海外でも通用する真のオルタナ・バンドを志向して、凄腕のメンバーが集められたアンサスは、全曲一発録り、しかもその模様をUstreamで生中継するという前代未聞の方法で作られたアルバム『the mass』を発表するなど、既存の枠にとらわれない自由奔放な活動を展開している。佐久間は昨年自身のレコード会社「CircularTone Records」も立ち上げるなど、様々な新しい活動にチャレンジしているが、長らく音楽業界の中心に居続けた佐久間だからこそ、その行動には非常に意味があるように思う。アンサスの歴史を振り返ることは、アンサスというバンドの特異性を検証することであると同時に、間違いなく変革期にある音楽業界の中で、佐久間が「今、思うこと」を知る機会にもなった。

インタビュー&文 : 金子厚武

公開スタジオ・レコーディング・セミナーで録音した「kotoba」を含む新曲2曲を高音質配信

unsuspected monogram / kotoba _ buzz
【Track List】
01. kotoba / 02. buzz / 03. buzz (instrumental)

【配信形態】
1) DSD+mp3 (320kbps)
価格 : 600円 (まとめ購入のみ)

2) HQD (24bit / 48kHz WAV)
価格 : 400円 (まとめ購入のみ)

アートワーク by 佐久間音哉
★DSD版、HQD版、いずれも購入特典として「buzz」のインストとデジタル・ブックレットをプレゼント
【ダウンロードに関して】
windowsをご利用のお客さまは、標準の解凍設定、もしくは解凍ソフトによっては正常にファイルを解凍できない可能性がございます。その場合、お手数ですが別の解凍ツールを使用し、再度解凍をお試しくださるようお願い致します。7-Zip(フリー・ソフト)での解凍を推奨しています。
※7-zip http://sevenzip.sourceforge.jp/
また、ファイル名が長く操作出来ない場合や、ダウンロードしたファイルに不備や不明点がありましたら、info(at)>ototoy.jpまでお問い合わせください。

INTERVIEW

——まずは先日行われたレコーディング・セミナーについてお伺いしたいのですが、どういった経緯で開催されることになったのでしょうか?

佐久間正英(以下、佐久間) : 元々エンジニアの山口(州治)さんと話してたのは、時代が劇的に変わっちゃって、今まで僕らがやってきたアナログなやり方っていうのが、段々必要なくなってくる、あるいは伝承されにくくなってきちゃってるっていうことで、だから今のうちに「プロの現場では今までこうやってたんだよ」っていうのを教えたいっていうのがあって。で、サンレコに話したらのってくれて、きちんと伝える材料として、アーカイヴとしても残せるならぜひやりましょうと。

——なるほど。

佐久間 : そういう趣旨なんで、実際のそこでの出し物はアンサスであろうが何だろうがよかったんですけど、Ustreamで流しながらだったので、バンドの演奏レベルがある程度高くないと、ドラムだけで何時間もかかっちゃうとね(笑)。

左から佐久間正英、山口州治 (c)photo by 八島崇

——見てる方もきついですもんね(笑)。

佐久間 : 演奏がバッとできるバンドっていうと、自分のバンドがいいかなって。

——もちろん、録音の場面でデジタルが主流になることにはいい面と悪い面どちらもあると思うんですけど、佐久間さんは現状をどのように捉えていますか?

佐久間 : 僕の場合は、録音技術としてアナログが忘れられていくことよりも、録音環境ですね。きちんと時間をかけて音を作っていく環境がどんどん失われていくことを一番危惧してます。大きいスタジオがドンドン潰れていってて、いい状態でやろうと思ってもできない、そっちの方が問題かなって。で、何で制作のスタイルが変わってきてるのかっていうと、単純にコストの問題なわけで、結構悲しい時代に突入しつつありますよね。

——デジタル化によって場所を選ばず制作ができる一方で…

佐久間 : 僕自身、自分がマルチ・プレイヤーっていうのもあって、一人で部屋で全部作っちゃうっていうのを始めた最初の世代かなって思うんです。だから、自分がやってきたことにはいい部分と弊害と、両方あったと思うんですよね。

——だからこそ、かつてのやり方に対する貢献もしたかったと。

佐久間 : そうですね。

——実際、ああいうお客さんを入れた形でのレコーディングっていうのはいかがでしたか?

佐久間音哉(エレクトロニクス / アートワークス 以下、音哉) : でも、レコーディング自体はあんまり変わんないかな。ブースに行けばお客さんいるから普段と違いますけど、録ってるときはまったく意識しないんで。
佐久間 : 最初のアルバム作ったときもUstreamしながらだったんで、監視されながらしかレコーディングやってなくて(笑)。「buzz」のレコーディングが、3年ぶりぐらいに人がいないところでやったんじゃないかな(笑)。

山口州治 (c)photo by 八島崇

バンドを結成したきっかけはRADIOHEAD(佐久間)

——アンサス自体は2008年に結成されてるんですよね? 改めて、結成の経緯を教えていただけますか?

佐久間 : RADIOHEADが日本に来たときにライヴを見に行って、あれだけのお客さんが熱狂的に、あの変な音楽を聴いてる状況を目の当たりにして、自分が今までいろんなことやってきた中で、どっかで迎合してたっていうか、受け入れられやすいものをやらなきゃっていう先入観がいつのまにかできちゃってたなって思って。それがあれを見て「違うじゃん、好きなことやっていいんだ」って改めて気づいたというか。

——RADIOHEADがきっかけだったんですね。

佐久間 : そう思ったらバンドのイメージがバッと出てきて、誰とやろうかなって思ったときに、真っ先に出てきたのが若菜拓馬(ギター、ボーカル)で。もう一人、結局辞めちゃったんですけど、フジファブリックの山内(総一郎)君にも声かけて、3人で会って「やろうか」って。それからメンバー募集して、オーディションやって、ドラムの星山(哲也 ドラム 以下、星山)と、砂山(淳一)は元々山内君と古い付き合いで、紹介してもらって。で、「キーボードどうしよう? 」っていうときに、ふと自分の息子のことを思い出して(笑)。
音哉 : メールが来ました。「バンドやるけど、やる? 」って(笑)。

——これまでに一緒に何かやられたことってあったんですか?

佐久間 : 考えたこともなかった(笑)。でも、たまたま彼が一人でやってるやつをMySpaceで聴いたら、「すごくいいな」って思って。

——音哉さんは連絡来てどう思いました?

音哉 : まずは、笑いました(笑)。で、2人で飲みに行って、「ame」っていう曲のデモを聴かせてもらったら、かっこよかったんで。自分のアイデアが入りそうな余地もあって。
佐久間 : で、全員揃ってリハスタ入って、演奏自体は手強い曲ばっかりだから、大変ではあったんだけど、フィーリングとしてすぐに「これはできる」と思って。

(c)八島崇

——拓馬さんに関しては、「ギタリストでの参加作品が多い中、バンマスである佐久間氏曰く『歌声が気に入った』との理由」でバンドに誘われたとプロフィールにありますが、実際ボーカリストとして誘われたことに関してどう思いました?

若菜拓馬(ギター / ボーカル 以下、若菜) : いろいろ考えましたね。例えば、ギターで飯を食ってる人間なのに、歌を歌ってもいいものかとか。でも、「好きでやるんだろうな」っていうのがあったんですよ。もし佐久間さんがいわゆる「シンガー」を誘ってたとしたら、傍から見て、「ヒットにつながるはず」とか思うだろうけど、自分はシンガーっていう意識が今でもないんで。だから最初は「歌えて、めちゃめちゃギター弾けるやつが欲しいのかな? 」って思ったかな。

——ギターっていうファクターがむしろ大きいのかな? と。

若菜 : そう、アンサスやってると、「これ歌いながら弾ける人なかなかいないだろうな」って、自分でも歌いながら思うし。あとは、敬語も使わんといくんで。
佐久間 : 長い付き合いだから(笑)。

——いつからのお知り合いなんですか?

佐久間 : Screaming Frogsを最初にプロデュースしたときにギターで参加してもらって、屋敷豪太と僕のリズム隊の中で、この若僧がギターを弾かされるハメになり(笑)。
若菜 : 緊張でピックを逆さに持ってたっていうね(笑)。

——(笑)。とはいえ、佐久間さんにとっては若菜さんの声自体にも魅力を感じたわけですよね?

佐久間 : そうですね。一時期やってたThe Seesawsっていうバンドでは彼がボーカルをやってて、その歌が好きだったんです。僕は言葉とかメロディとかじゃなくて、声自体にその人が如実に表れてるのが好きなんです。「なぜ歌ってるのか」っていうのが、理屈じゃなく、「その人だから歌ってる」ってわかる人っていうか。

——テクニカルなこと以上に、「その人が歌ってる」っていうことが重要だと。

佐久間 : そうですね。どんなに上手かろうが、他の人には取り替えようがないっていう。

(c)八島崇

——星山さんに関しては、元々はどういうつながりだったんですか?

若菜 : 学校の先生だったんですよ、僕生徒で。で、星山さんだったら佐久間さんも気に入ってくれるだろうと思って連れて行ったら、オーディション終わった後に佐久間さんが「僕と一緒にバンド組んでください」って言ってて、珍しいもの見たなって思った(笑)。

——砂山さんは、最初は山内さんの紹介だったと。

砂山淳一(ベース 以下、砂山) : そうですね。総一郎が呼んでくれて、「とりあえず何か弾きいや」って(笑)。佐久間さんが作った音楽をバンド始めたころからやってて、それこそ総一郎と一緒にGLAYのコピーとかもやってたんで、「その人とやるのか」っていう… 意識があるのかないのかもようわからんまま入ったっていう感じで(笑)。で、やっていくうちにすごさがわかってきて、逆に最初からめっちゃ知ってなくてよかったなって。
音哉 : ベースの募集要項が「自分(佐久間正英)より上手くて、指弾き」だったからね(笑)。
砂山 : ホンマにリスペクトあったら受けないですよね(笑)。

——バンドの音楽性自体も最初からイメージがあったんですか?

佐久間 : 初めからありましたね。やろうと思った日に3曲ぐらい作って、その週のうちに10曲近くできてたんで。今までありえない種類の、ロックの進化形みたいのをやりたくて。

——だからこそ、演奏力も必要だったと。

佐久間 : 当たり前に外国のバンドと同じレベルで演奏できる面子じゃないとあかんっていうのはあって、とにかく上手くないと話にならんっていうのはありましたね。

ふたを開けてみたら7時間とか…(笑)

——そして、2010年に佐久間さんご自身のレコード会社である「CircularTone Records」を始められたわけですよね?

佐久間 : アンサスが関西にライヴをやりに行ったときに、音楽性が全く違う4アーティストで一緒にやったんですけど、それぞれよくて、でも「これが全員アマチュア・バンドって何か変だな」って思って、だったら、自分でレコード会社やっちゃえばいいのかって(笑)。すごい気楽な気持ちで、突然思いついて始めちゃったんですけど、今までのレコード会社みたいな概念では僕の中ではないんですよね。

——アンサスと同様に、今までの日本の慣習からは外れて、自由にやれることをやろうとしたわけですか?

佐久間 : ええ、僕はメジャーの真っただ中に何十年もいたんで、やっぱり気づかないうちに足枷を作ってたところがあって、バンドもそうだし、それに縛られることはないなって。

——だからこそ、アンサスのアルバム・レコーディングもこれまでにない形で行われたわけですね。

佐久間 : 無謀なことを… みなさんにご迷惑おかけしまして(笑)。

——みなさん「無謀」という言葉にウンウンと頷いてますが(笑)。

若菜 : あれは大変でしたね… 二度とやりたくない(笑)。

——(笑)。そもそもあのやり方はどこから出てきたものだったんですか?

佐久間 : あれも僕が思いついて、ライヴやってても何の問題もなく演奏できてるわけで、レコーディングだって簡単にできると思ったんですよ。それで、みんなに「できるよね? 」って聞いたら、「できる」っていうから、アルバム1枚分だったらせいぜい2~3時間で楽にできるだろうと思ったら…。
若菜 : ふたを開けてみたら7時間とか(笑)。ホント、ケンカしなかったのが不思議だよね? 映像的に何人か殴っときゃよかった(笑)。
佐久間 : でも、もし本当にダメな演奏をしてたら、朝まで、翌日までってなってたと思うんですよ。「Ustreamやめっ!」って(笑)。だから、演奏自体のクオリティは高いと思うんですけど、あれだけ時間かかると思ってなかったから、喉の状態だけは予測してなくて。アルバムの曲順通りに録ってるんで、通しで聴いてると、どんどん疲れていくんですよ(笑)。逆に、疲れて妙にハイテンションになってるのもわかるし。

——でも、7時間とはいえ、11曲っていうのはやっぱりすごいですよね。シンプルな曲ならまだしも、アンサスの曲はめちゃめちゃ複雑なわけで。

佐久間 : ダビングで作っていくような音楽ですからね。

——でも、どうやら二度目はないと(笑)。

佐久間 : 次はもうちょっと、普通に(笑)。

——そして、レコーディング・セミナーで録音された「kotoba」と、もう一曲新曲の「buzz」が配信されるわけですが、アルバム以降、バンドとしてのモードはどのように変わってきているのでしょうか?

佐久間 : 『the mass』までは、最初に僕がバンドを始めようと思ったときの路線そのまんまなんですよね。そこまでできて、「次何やろう? 」って思ったときに、自分でも「kotoba」みたいな曲が出てくるとは思ってなかったんです。あの曲のデモを作ったときに「作ってみたけど、これはないんじゃないかな」って思ってたんだけど、意外と受けがよくて。だから、わりと自分のよく知らない方面に向かってるっていうか、変わり目なのかなって。

——なるほど。

佐久間 : 僕が最初に思ったアンサスのイメージを貫くこともできると思うけど、そうすると自分で自分をコピーするみたいになっちゃいそうで、それだけはやりたくないなって。変化し続けて、でも昔の曲をやっても変じゃない、そういう変化ができればいいなって。

(c)八島崇

——佐久間さん自身、今は未知のところへ向かってるわけですね。

佐久間 : それがものすごくポップだったりするのかもしれないけど、どうなるのかはわからない。「buzz」にしても、普通あんな曲出てこないですから(笑)。
若菜 : あれに言葉乗せてメロディを書く人の気持ちにもなってもらいたいですよ(笑)。

——拓馬さんはバンド結成当初との意識の変化はありますか?

若菜 : 「kotoba」っていう曲までは、元々「こうだよ」っていうのがある程度あって、それに乗っかってたんですよね。でも実際出来上がって、レコーディングの前にライヴで披露したときに、「これじゃダメなんだろうな」っていうのも正直あったんですよ。結局みんな迎合してきてるっていう。

——ああ、なるほど。

若菜 : で、「buzz」はすごいシンプルなのに、全員手を挙げちゃうぐらい難しくて、だったら「レコーディングでもっと好きにやっちゃえばいいんじゃないですか? 」ってやったら、あんなことになったんです。結局歌詞もメロもその日に作ったもんね?
砂山 : 普通は大体歌があって、コードがある程度決まってて、「じゃあ、こうしよう」って乗っけていくと思うんですけど、このバンドの場合、佐久間さんが作った音源がバッと提示されて、それをまずインストの状態でひたすらやるんですよ。で、「じゃあ録ろう」っていうレコーディングの日に初めて歌を聴かされる、下手したら、自分が録り終ってから、「あ、歌こんなんなんや」ってわかるっていう。

——「歌メロがこうだから、ベース・ラインはこう」とかじゃないんですね。

若菜 : プレイヤーとして現場で仕事してるミュージシャンが逃げれる言葉って、「詞の世界観が」とか「歌メロが」とかって言葉で、それ自体はごもっともなんだけど、その人自身がベストだと思うやつをやるってなったら、歌メロ考えてたらダメだと思うんですよ。まずは「やってみなよ」っていう。歌メロがなくても、演奏してて「これはいい曲だ」って思うし、そこが普通のバンドさんとは違うところだと思う。普通のバンドさんは、いいステージに立てば立つほど、さっき言った「歌メロが」っていう風になっていくけど、俺はそれを劣化してるとすら思う。言い方は悪いけど。昔はもっと素朴に、交換日記みたいにやってたはずで、それがこのレベルの人間とやれるっていうのは、すごい光栄なことやと思いますね。

——音哉さんはそういうアンサスならではの独自性ってどういうところに感じられてますか?

音哉 : みんなすごい上手い人の集まりなんですけど、僕は元々ピアノも弾けない鍵盤の人なんですよ。それが、ポコッと入ってるっていう(笑)。キーボード周りだとテクノだったし、ロック・バンドだとギターやってたんで、ピアノは全然やってなかったんですよ。「kotoba」のレコーディングでグランド・ピアノ弾いたんですけど、触ったの小学校以来で(笑)。

——(笑)。ホントにいろんな意味で、アンサスって既成の枠からはみ出したバンドなんですね。

佐久間 : でも、このバンドの最大の問題点は、みんなの時間が合わないこと。普通のバンドが3か月ぐらいで済むことが、1年かかっちゃうっていう(笑)。

具体的な展望ではないけれど、ちゃんとできればいいと思ってる(佐久間)

——みなさん、それぞれの活動もあるから、なかなか大変ですよね。とはいえ、途中で話に出たように、海外でどんな反応があるかも見てみたいし、国内のいわゆるJ-POP、J-ROCKに対してアンサスの音楽がどう響くかっていうのも気になります。最後に、今後の展望を話していただけますか?

佐久間 : (若菜に)どうですか?
若菜 : 僕ですか? そうですね… 面白い記録を残したいかな。レコーディングする=記録するっていう意味で。CircularToneをやってる経営者としての目で見ると、ホントはこういう音楽ってやっちゃいけないことだったりするわけですよ(笑)。経営者として、リクープしなくちゃいけないし。

——平たく言っちゃうと、売れるものを作るっていう?

若菜 : まあ、何が売れるかって正直わからない時代ですけど、こういうご時世で、こういうメンバーが集まってるんだから、とにかく自分たちが面白いと思えて、「君らやってみなよ」って言ってもすぐにはできない、そういうものを残せば、仮に僕らが死んじゃっても、歪なものとして残ってるかなって(笑)。あんまり自分でアーティストっていう言い方はしたくなくて、他のバンドだとミュージシャンなんですけど、このバンドをやってると「アーティスト」っていう意識もあるんですよね。

——そういう意味では、特別な場所ですよね。

若菜 : 日本で「アンサスいい」って言ってくれる人が100人いるとして、他の国に行っても100人いたらすごく心強い。日本人に受け入れられるっていうよりも、人間やったらとりあえず耳を傾けるようなもの、僕はそういうものが作りたくて。

——佐久間さんはいかがですか?

佐久間 : 具体的な展望は別に持ってないんですけど、ちゃんとできればいいと思ってるんです。お金になってもならなくても、ちゃんと音楽を作る。相当特殊なことをやってると思うけど、特殊だからいいんじゃなくて、特殊なことを当たり前としてやってるわけで、仮にいいと思える曲ができなくなったら、いいと思えるまでやる、いいと思わないのはやらないっていう。

——ホントにベーシックなところですよね。でも、逆に言えば、そのベーシックがやりづらい時代になってるっていうことでもある。

佐久間 : 変な言い方しちゃえば、アンサスって完璧な趣味なんですよ。ただ、趣味っていうのは妥協しちゃいけないんです。仕事じゃないんだから。

佐久間正英+山口州治「スタジオ・レコーディング・セミナー」のアーカイヴ映像公開中

多くの名盤を手掛けてきたプロデューサーの佐久間正英とロック系バンドから多大な信頼を集めるエンジニアの山口州治。彼らが培ってきたレコーディング技術を若い世代に伝えるという目的の下に、『Sound & Recording Magazine』と協力して企画されたのがスタジオ・レコーディング・セミナー"本気の録音講座"。スタジオに佐久間正英の自らのバンドunsuspected monogramを迎え、今回配信されることになった新曲「kotoba」のレコーディングを行いつつ、その過程を追いながら録音のノウハウを紹介するという内容で行われました。USTREAMで中継されたセミナー当日の模様から、その映像を編集したアーカイブ版が『Sound & Recording Magazine』のウェブ・サイトで公開されています。part1からpart3まで各動画30分にも及ぶ貴重なアーカイヴ集でプロならではのレコーディング技術の数々をぜひご覧ください。

INFORMATION

2011/12/21(水) @大阪 JackLion
2011/12/22(木) @祇園 Silver Wings
2012/02/24(金) @西川口 LIVE HOUSE HEARTS

CircularTone Records DSD ARCHIVES

unsuspected monogram 『the mass (DSD+mp3 ver.)』

2010年8月26日20:30~25:40に、kampsiteを通じてUstream至上、最も良い音で届けられたと評され全11曲を録音したunsuspected monogram。 あの瞬間、全世界 14,500人が見届けた「一発録音」による音源を収録したのが彼らの1stアルバムとなる本作。unsuspected monogramの音楽のありかた、ミュージシャンシップ、演奏力、楽曲のクオリティが世界中のオーディエンスから認められた夜でもあり、そのオーディエンスからのコメントにリアルタイムに反応しながらの録音、作品を創る過程は、まさに来るべき時代(未来?)を予感させた。

The d.e.p 『Rainbow/Moon Smile (DSD+mp3 ver.)』

ビビアン・スー、土屋昌巳、佐久間正英、屋敷豪太、ミック・カーンと、ロック界の大御所が結成したスーパー・ユニットThe d.e.p。メンバーのミック・カーン(元JAPAN〜現 the d.e.p.)の癌闘病支援のために、9年ぶりの新曲を制作すべく集結し、ベーシストには根岸孝旨を迎え、「RAINBOW」と「Moon Smile」の2曲を発表。OTOTOYでは、DSD+mp3とHQD(24bit/48kHzのwav)の2つの形式で販売中です。思いの詰まったメロディーと歌詞を、その耳で確認してみてください。

Cojok 『Fall/Mo'mentina(DSD+mp3 Ver.)』

退廃的で喪失感に満ちたテーマを、電子音とストリングスのオーケストレーションで紡いだ壮大なスローバラード「Fall」と、きらびやかで瑞々しいアコースティック・ギターの音色を、力強いリズムが包み込む生命感に溢れたミディアム・ナンバー「Mo'mentina」の二作品。プロデュース、ミックスを佐久間正英氏が担当し「Fall」ではピアノ、「Mo'mentina」ではベースで参加。マスタリングは、B-52's、JUDY AND MARY、Coccoなどを手掛ける、NYCのTom Durackの手によるもの。

PROFILE

unsuspected monogram
2008年10月。プロデューサー・アーティストである佐久間正英が長年抱いて来た、理想のバンド構想を実現すべく、The SeesawsやThe Screaming Frogsとして活動中のギター・ボーカル、若菜拓馬に声を掛ける。一夜にしてバンドの構想・具体性が固まり、数度のオーディションを通して、ドラムに星山哲也、ベースに砂山淳一を加え、エレクトロニクス及びアートワークス担当として佐久間音哉、構想より1ヶ月後の11月末より unsuspected monogramとして活動を開始する。縦横無尽に広がっていくメロディー、演奏で、紛れも無く「オリジナル」で、紛れも無い「いい音楽」を演奏するバンドらしいバンド。シューゲイザーの色濃く、シニカルでトリッピーなサイケデリック路線、独自のポップイズムで昇華した音楽性を確立し、オルタナティヴ・ロック、さらにゴスペルやアフリカ民族音楽といったブラック・ミュージックやルーツ・ミュージックへも目配せしつつ、エレクトロニカの導入やポスト・ロック的なアプローチまで貪欲に音楽性を追求している。クオリティの高さ、オリジナリティ溢れる楽曲、詞が魅せる世界。そこには、プレイヤー、そして表現者である自身に妥協しない、ミュージシャンとしてのストイックさを垣間見る事からくる生き生きとしたパワーが詰まっている。彼らから絶えず発せられる、底なしの意欲や欲求があり、それを実行してしまえるそれぞれのプレイヤー・スキル、バイタリティが、作品やライヴには色濃くでている希有なバンドである。

この記事の筆者
金子 厚武

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入江良介(Veni Vidi Vicious)×武井優心(Czecho No Republic) 対談

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小林祐介(THE NOVEMBERS)×下津光史(踊ってばかりの国)対談!

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Curly Giraffeの全アルバムを高音質で配信開始 & インタビュー

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ショピン『春のソノタ』を高音質DSD音源で配信!

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トレモロループ トレモロイド・小林陽介×空中ループ・松井省悟の対談

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石毛輝『from my bedroom』フリー・ダウンロード第2弾&インタビュー後編

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石毛輝『from my bedroom』先行販売開始&フリー・ダウンロード! インタビュー前編

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蔡忠浩インタビュー! 初ソロ作&オトトイ限定高音質シングル配信

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世武裕子「恋するリリー」高音質で先行配信&インタビュー

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アナログフィッシュ『Life Goes On』インタビュー

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ツジコノリコ『penguin2009』remixes

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bonobos「夕景スケープ」高音質で先行配信 インタビュー

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小島麻由美『アラベスク』

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[インタヴュー] unsuspected monogram

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