テン年代に現れたひとりスーパーカー? 気鋭のサウンド・クリエイター、Oii(オー・アイ・アイ)始動! リード曲をフリーDL配信
「一人スーパーカー、10年代のCornelius」、レーベルの自信と期待が伺えるキャッチコピー。事実、届いた音源はアンビエント、エレクトロを基調としながらもポップでキャッチーな歌モノとしても開けた、ファースト・アルバムらしい瑞々しさと、それに反したクオリティの高さを併せ持っていました。Oii––2011年より活動する横浜在住のCota Nacaoによる一人シンセポップ・ユニットが、今年始動します。「聴いてもらえればわかる」という確固なる思いのもと、ファースト・アルバム発売に先駆けてリード曲「Puddle Talking with You」をフリー・ダウンロードで、そしてハイレゾでお届け!! 3月にはアルバム全曲のハイレゾ配信と共に、今回レビューを書いてくれたライター・金子厚武によるインタヴューを公開予定。しばしのあいだ、この曲をお楽しみください。
「Puddle Talking with You」のフリー・ダウンロードはこちらから
期間 : 2015年2月16日(月)〜2015年3月3日(火)
Oiiとは、ナカコーのソロ名義iLLの影響が一番大きいのではないかというのが、現時点での結論だ
Oii(オー・アイ・アイ)がデビュー作となる初のフル・アルバム『sukima sunlight』を発表する。Oiiとは、中生航太が2011年にスタートさせたソロ名義。僕は本作で彼のことを初めて知ったのだが、Oiiというネーミングと、資料にあった「一人シンセポップ・ユニット」という言葉から、おそらくミニマルな傾向のアーティストなのだろうと考えた。OOIOOはもちろん、nhhmbaseやハイスイノナサなど、名は体を表すというもので、これらのアーティスト同様に、Oiiという響きや文字のフォルムからは、ミニマルな質感が感じられる。ただ、Oiiとは「Original image innovation」というコンセプトが基になっているそうなので、もしかしたら「Contemporary Exotica Rock Orchestra」ことceroに通じる感覚を持っていたりもするかもしれない。何にしろ、ちょっと気になるアーティスト名である。
そして、この予想は大きくは外れていなかった。アルバムからのリード・トラック「Puddle Talking with You」は、アンビエント〜エレクトロニカ風の浮遊感あるうわものと、ギター、ベース、ドラムの打ち込みによるバンド・サウンドが組み合わさった、BPM120前後の軽快なポップ・ナンバー。この曲を聴いて僕がパッと連想したのは、昨年Koji Nakamura名義で大傑作『Masterpeace』を発表した、元スーパーカーのナカコーこと中村弘二だった。ナカコーと言えば、やはりミニマルなテイストが持ち味で、バンドとエレクトロニック・ミュージックを横断し、近年は劇伴など様々な分野でも活躍。一方、Oiiはといえば、昨年「RO69JACK」で優勝アーティストを獲得したロック・バンド、deronderonderonのデビュー作に、サウンド・ディレクション兼エンジニアとして関わっていたり、学生の作品ながら映画音楽を作ったりと、こちらも活動の幅は広い。そう考えれば、『sukima sunlight』というタイトルもどこかスーパーカーっぽいように思えてくる。つまり、Oiiとは、ナカコーのソロ名義iLLの影響が一番大きいのではないかというのが、現時点での結論だ。中生航太と中村弘二、名前も何だか似てるしね。
しかし、アルバム全体を通して聴いてみると、Oiiには一言で「誰かっぽい」とは言い難い、実に多面的な魅力があることもよくわかる。アルバム中盤ではオートチューンを駆使していて、R&B風の曲があったりもするし、その一方では、アコギやピアノをフィーチャーしたフォーキーな曲があり、「Puddle Talking with You」のラストにホーンが出てくるように、チェンバー・ポップに近いものもある。メロディーはどこか物悲しく、ドラマチックでもあって、このあたりの感じはむしろアメリカや北欧の大所帯バンドに通じるもの。なかでも、僕が最も心を揺さぶられたのは「Empty Love」で、オートチューンを使い、「空虚な愛」をエモーショナルに歌い上げる中、フィールド・レコーディングなども交え、多彩なサウンド・スケープが過去の記憶のように浮かんでは消えていく様は、非常に痛切であると同時に、とても甘美なものだ。
歌詞も含め、アルバム全体から感じられるのは「ここから始まっていく」というムード。「Empty Love」を経て、「Puddle Talikng with You」のラストで鳴らされるホーンは、旅立ちを告げるファンファーレのようであり、雲間から差し込んだ一筋の光のよう。なぜ彼がソロの道を選び、約4年間をかけ、いかにして本作へとたどり着いたのかは、インタヴューでじっくりと解き明かしていきたい。(text by 金子厚武)
LIVE INFO
日本酒原価キワキワBAR
2015年2月24日(火)@渋谷7thFloor
START : 19:30
入場料金 : 1,000円
※別途、日本酒チャージ1,000円で日本酒が一杯200円
出演 : the flying uncle / Oii / Taro Miura(HOLIDAYS OF SEVENTEEN) and more
DJ : musiqconcierge(dB UKi/KIWA KIWA) and more
FOOD : べきめし(薬味で頂くマトンキーマカレー / タコライス / メキシカンタコス / 自家製瓶詰めピクルス)
PROFILE
Oii
横浜在住のCota Nacaoによる一人シンセポップ・ユニット。映画音楽提供や楽曲アレンジメントなどのサウンド・クリエイティングを経て、2011年よりOii名義でアーティスト活動を開始。"Original image innovation"をコンセプトに掲げ、エレクトロでオーガニックな音とコトバで「生活」を映し出し、五臓六腑に染み入る音とコトバがあなたをあなたと出会わせる。Melanche[n]tryニコニコインディーズ「普遍の窓」コンピレーション参加などその活動の幅を広げる中で2013年、RO69JACK2014の優勝アーティストderonderonderonのファースト・アルバム『deronderonderon』のサウンド・ディレクション、レコーディング・ミキシングエンジニアを務め、2014年には都内で最大の規模をほこるイベント「earth garden」や、"ピュアなエレクトロニック・ミュージック好き"が集うイベント「en」において、DE DE MOUSE、フルカワミキと共演を果たす等、そのキャリアを着実にステップアップさせていく。2015年、自身のファースト・アルバム『sukima sunlight』において既存のエレクトロ・シーンに新たなサウンド・スタイルを投じることは目前に迫っている。