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2014/11/14 19:00

 

特別レポート:1日潜入! RED BULL MUSIC ACADEMY TOKYO 2014

 

ついに本日、最終日を迎えるRED BULL MUSIC ACADEMY TOKYO 2014。10月中旬から渋谷駅前のスクランブル交差点周辺など、青山・渋谷近辺の街頭のアドスペース、そして巨大ヴィジョン、またはウェブ・メディアなどでもさまざまな告知がなされていますね。

音楽アーティスト中心の広告、さらには、その名前を冠したクラブ・イヴェントや音楽インスタレーションの開催などなどで、”RED BULL MUSIC ACADEMY”がどうやら音楽関係の”イベント”であることはなんとなくわかってますよね。でも、実際どうなんでしょうか? ”レッドブルってあのエナジー・ドリンク”の? ”イベントっぽいけどアカデミーって、なに? 学校?”、”それともやっぱり音楽フェスかなんか?”と、その全貌を捉えるのちょっとはなかなか難しいのではないかと。ということで、ここでそんな疑問答えるべく、OTOTOYではそんな”RED BULL MUSIC ACADEMY TOKYO 2014”に迫るべく、その本丸に1日、潜入リポート! そこは本当に、その名の通り「音楽の学校」だったのです!

■RED BULL MUSIC ACADEMYとは?

「翼を授ける」でおなじみのエナジー・ドリンクのレッドブルによる音楽学校。学校とは言っても、どこかにある常設の学校ではなく、1年に1度、さまざまな都市に現れる”旅する”音楽学校なのです。これまでも1998 年のスタート以来、ベルリン、ケープタウン、メルボルン、バルセロナ、ローマ、サン・パウロ、ロンドン、ニューヨークなどで開催。毎年、開催都市の本拠地となる建物=RBMA スタジオ・コンプレックスが出現。パーティシパントと呼ばれる生徒=約60名近い音楽アーティストやプロデューサーたちが、20数人づつの2つのタームに分かれて、約2週間づつ、合計約1ヶ月間の間”音楽”を学び、過ごすわけです。このパーティシパントたちは、90ヵ国、のべ約6000人のなかから選ばれ、招聘されてきます。

それぞれ2週間の間に、楽曲制作を中心にレクチャー、スタジオ作業のワークショップなども含めて、さまざまな方法で学ぶのです(卒業生にはフライング・ロータス、アロー・ブラック、ハドソン・モホークなどなど)。さらには期間中はクラブやライヴハウスなどなどで、有名アーティストたちを世界中から招き、さまざまな音楽イヴェントやトークショー、インスタレーションなどがフェス的に連日開催されます(パーティシパントたちも出演)。それが今年は、2014 年10 月12 日(日)から本日11月14日(金)まで、東京で行われていたのです!

と言っても、なかなかわかりずらいとは思いますので、この記事ではRED BULL MUSIC ACADEMY TOKYO 2014(以下、RBMA)のとある1日を、パーティシパントの目を通して、ご紹介いたしましょう。今回のパーティシパントは計59名。そのなかで2人ほど選出された日本人アーティストのひとり、後半ターム参加の、アルビノ・サウンドこと梅谷裕貴の1日(11月4日)に密着して、RBMA内部ではどんなことが行われているか? そんな1日をご紹介いたしましょう!

■10:00 登校!

パーティシパントは、みな同じアカデミー近くのホテルに宿泊(東京在住の彼も例外ではありません!)、そこから登校してきます。RBMAスタジオ・コンプレックスの場所は、渋谷は青山通り沿いの子供の城の裏手にあるこのビル。日本を代表する建築家の隈研吾がデザイン設計によるレッドブルの本社もかねたスタイリッシュなビルにスタジオやレクチャー用の講堂などを備えております!

大抵のパーティシパントは10時前後に来るようですが、前日のスタジオでの作業が朝まで力が入って…とか、前の日のクラブ・イベントでやんちゃをして…と、重役出勤のパーティシパントもいれば、早朝からきている勤勉なパーティシパントもいるとか。パーティシパントの自主性に委ねられているようですぞ。昨日はパキスタンからのパーティシパントたちとセッションをしていたという、梅谷はしっかりと朝登校です!

こちらは広々としたラウンジ・スペース。ここで朝昼夜の3食がパーティシパントに、さらには期間中世界中から集まるRED BULL MUSIC ACADEMYのスタッフや講師、メディア関係者などにも振る舞われます! パーティシパント同士が息抜きがてらにコミニケーションをとったり、スタッフがミーティングをしてたり、ジャーナリストが取材をしたり、そんなスペースでもあります。またラウンジ併設の放送スタジオからはRBMAラジオなどの放送や収録が行われており、世界に向けて発信中!

■10:15 スタジオ作業へ

さて、腹ごしらえをしたらスタジオへと向かう、梅谷。パーティシパントの1日は、基本、スタジオでの音作り。ここで2週間みっちり音楽漬けの生活を送るわけです! 最後の日には制作した楽曲のお披露目会があるとか、これは気が抜けませんな。

彼らパーティシパントの日常の作業場所となるこの階にあるスタジオで合計8個。外円が回廊になっており、建物の中心に円形に配置されております。10畳ほどの隣接しあう小スタジオが並んでいて、それぞれのスタジオは日本の現代アートのアーティストたちがその装飾を担当しております(アカデミー内にはさまざまなオブジェやインスタレーションも)。ちなみにこの日は、梅谷は青山悟が手がけたスタジオをチョイス。

それぞれの部屋にPCやミキサーなど最低限の備品+αがあるものの、自分の相棒とも言える機材をセッティングし、さらに加えて「あれが使いたい!」という場合は隣接するエクイップメント・ルームへ。往年の名機、TB-303のようなアナログ・シンセから最新版のコントローラー、さらには細かなケーブルまでが揃います! 事前にパーティシパントらにアンケートを取り、必要な機材はさまざまなところから入手したそうです。意外な人気機材といえば、変圧器や電源の変換プラグとか、そりゃ各国から集まってくるわけですからな。

ということで、スタジオ作業を開始、12時からはじまるレクチャーまでひとまず昨日のセッション・データを聞いたり、機材を試してみたり。

8つあるスタジオは基本的には早いもの勝ち! それ故に早朝に来るパーシパントも結構いるみたいですね。スタッフいわく「日数が経ってくると各スタジオの”ぬし”的な人間が出てくる」とか、むむ、このときは後半タームがはじまったまだ3日目、ちょっとずつパーティシパント同士が距離を縮めている模様でした。こうしたスタジオ作業では、昨晩のように他のパーティシパントとのセッションをしたり、ときにレクチャー参加の大物アーティストたちのアドヴァイスやらセッションもさらりとあったりとか。こりゃ、若きアーティストとしては貴重な体験だらけでしょうが!

■12:00 スタジオ・サイエンス;講師、マシュー・ジョンソン

スタジオはさきほど紹介した小スタジオの他に、建物1階には、いまどき日本じゃ、なかなかお目にかかれない、まさにプロフェッショナルな規模の録音ブース&コントロール・ルームのある本格的なスタジオが。このスタジオでは、スタジオ・サイエンスと呼ばれるプロフェッショナルなスタジオでのテクニカルなレクチャーやワークショップを中心に、各地で行われている夜のライヴ・プログラムなどのリハも行われているとか。このスタジオは、アカデミーが終了しても残され今後もさまざまな機会に使われるとか。ちなみに各レクチャーの参加は必須ではないようで、スタジオ作業などに没頭しているときは参加しない場合もあるとか。アーティストの自主性に委ねている模様ですね。

この日はお昼の12時より、コブルストーン・ジャズ名義などでも知られる、テクノ・アーティストのマシュー・ジョンソンがレクチャー。レクチャー自体は残念ながら、パーティシパントとスタッフ以外入室禁止。

梅谷によれば、マシューのスタジオを模した円形状の配置のシンセやエフェクターなどの機材を使い、皆でさまざまな音を作ったり出したりしながらのワークショップ。なんと途中でデトロイト・テクノの大物、カール・クレイグも乱入してきたとか! 90分の予定を、なんと延長3時間のみっちりレクチャー。

■裏方もすごいぞ!

レクチャーの参加ができなかったため、ちょいと他の部分も見学を! こちらは『RED BULL MUSIC ACADEMY』を運営するスタッフたちのオフィス。期間中行われるイベント製作や広報、またはウェブマガジンや動画などを編集しております。日々更新されていた日本の音楽シーンに関する記事もここで翻訳、配信されていました。それにしてもなんかすごく活気があったなぁ。

■15:00 昼食

本当ならば、14時ごろまでには終わっていたはずのレクチャー。この日は前述のように延長につき、ちょっと遅めのお昼ご飯。まさにいたれりつくせり、パーティシパントはまさに「音楽のことだけ考えてろ!」てな感じでしょうか? すばらしい。 今回はお昼ご飯を一緒に食べながら、アルビノ・サウンド・インタヴュー。いろいろ語ってもらいました。が、この模様は彼の配信作品を紹介するページに近日アップ予定!「とにかくこの環境で、レコーディングに関してさまざまなことを学びたい」と意気込みも。

梅ちゃんは、30分ほどのインタヴューの後、ラウンジにいた数人のパーシパントたちと談笑の、そのままスタジオ作業に戻っていきました。さすが、隙あらばスタジオへ、というのが彼らの生活みたいですな。

■17:00 レクチャー:講師、大友良英

17時からは夕方のラウンジの隣にある、レクチャー・ルームにて講演形式のレクチャー。毎日、お昼のレクチャー&夕方のレクチャー、そしてスタジオ作業というのが基本ルーティンのようです。前述のスタジオ・サイエンスと、この講義形式のレクチャーの2つがあるようです。この日は、日本の前衛・即興音楽/ノイズ・シーンのベテラン、大友良英。日本での開催ということもあり、世界中のトップ・アーティストに加えて、日本のアーティストたちもフィーチャー。冨田勲、細野晴臣、灰野敬二などなど、世界でも名前の知られたアーティストたちのレクチャーもひらかれた模様です。

今回の司会はOTOTOYでもおなじみの『サウンド&レコーディング・マガジン』元編集長の國崎晋。Project Fukushimaにはじまり、ノイズ・ターンテーブリストとしての側面やギタリスト、劇伴作家としてのキャリアなど、自身の経歴(もちろん、『あまちゃん』のことも)などを紹介。また、ここ最近、彼の表現活動の大きな部分を占めているサウンド・インスタレーションに関して語るなど、自身の活動、その音楽に対する信念などを講演、後半はパーシパントとの質疑応答を展開しておりました。

■18:30 夕食、と思いきや

と、レクチャーに聞き入っていたら……「梅谷くん、見失った!」 と思ったら、今日は彼も出演する夜のイベント「Red Bull Music Academy presents 6852: Stratovolcanic Vinyl」の会場となる青山のクラブ蜂へとすでに機材を持ち込み、移動済みでした。ということで、夕方のレクチャーの後に出される夕食の匂いに後ろ髪ひかれまくりつつも、密着取材としてはまずは蜂に移動!

梅谷によれば、通常イベントなどがないときは、こうしたレクチャー後は夕食を食べて、またまたスタジオ作業に、というのが普通のようです。気づけばその作業は雄っ食後から深夜までというのも珍しくないのだとか。各タームの最後には、特にみなスタジオ作業にのめり込むのだとか。

ちなみに気になる食事ですが、なんとすき焼きが出たり、寿司が出たりと豪華な、それでいてバランスの良い食事で、さらにはさまざまな国の人々が来ることも考慮してベジタリアン向けのメニューも。さすがです。

■20:30 イベント・リハーサル

イベントでのライヴのリハーサルを開始。この日のイベントは青学横の東京でもかなりユニークなクラブ〜バー密集ビルの全てを使って、蜂(2F-4F)、OATH(1F)、TUNNEL(地下1F的な)に、さまざまなアーティストが入り乱れてのイベント。特に蜂には多くのパーティシパントがライヴを行う予定。梅垣曰く「まだ探り合いなので、自分の音を知ってもらうという意味でも、地元で友人たちがくるという意味でも外せない」と、かなりの気合の入りよう。たしかにリハーサルから、みな値踏みするように他のパーティシパントの機材セッティングなどみてますな。途中、ミキサーの入力故障などトラブルはあったものの、無事リーハーサル終了!

■21:30 RYOJI IKEDAのインスタレーションへ

この日、一般開放日の前日、招待客やメディアへと開放されていた池田亮司のサウンド・インスタレーション”RBMA PRESENTS TEST PATTERN [Nº6] : RYOJI IKEDA”にちらりと。蜂からは目と鼻の先のSpiral Hall の3階へ。期間中に開催の世界的アーティストが参加の他のイベントに行き、音楽的な了見を広めるのもパーティシパントの重要なミッションであります。

■22:00 イベント開始!

イベント開始!! 1FではUKのハウス・ミュージック〜ベース・ミュージックの若手筆頭DJ、BEN UFOと、彼のリクエストでこの日出演が決まったDJ NOBUとのバック2バックですでにパンパン! まるで満員電車のような盛り上がり! 各所フロアでも日本人アーティストに加えて、パーティシパントたちがプレイ。

■ライヴ開始

他のパーティシパントのライヴなどを見つつ、ついにアルビノ・サウンド、ライヴの時間に! 30分ほど押してライヴ・スタート。ギターを片手に、さまざまな電子楽器を操作、アンビエントな音響から、ジュークやベース・ミュージック的なドラム・パタンが緩急をつけて迫ってくる。そんなライヴを1時間敢行。満員のスペースをさらに暑くしておりました。ライヴァル(?)なんでしょうか、そのライヴに向けられる他のパーティシパントたちからの鋭い目も私は忘れられませんね。こうした、世界中から集まるパーティシパント同士のセッションや切磋琢磨はもしかしたら、同じ様に音楽の未来を見据えているものたち同士だけに、有名アーティストたちとの邂逅以上に”RED BULL MUSIC ACADEMY”らしい学びがあるのではないかと、はたからみてても思うわけです。

■おつかれさまでした!

ライヴ終了、安堵の顔の梅ちゃん、同じく日本人パーティシパントのハイオカとともに談笑中。この後は他の出演者のライヴやBen UFOとDJ NOBUのプレイなどを見つつ、宿舎となるホテルへ、また明日午前からの作業に備えてしばしのお休み。お疲れ様でした!

■1日潜入を終えて

さて、ひとりのパーティシパントを例に紹介しました”RED BULL MUSIC ACADEMY”。この日はイベントへのライヴ出演があったり、2週間の間の、彼らの平均的な日常全てには迫れているとは思いませんが、まさに1日、パーティパントは、音楽まみれな送っている模様です。もちろん、文中にあるように、わりと各人の自主性に任せているようなので全く違うライフスタイルのパーティシパントもいるのかもしれませんが。

とにかく、彼らの生活には”RED BULL MUSIC ACADEMY”から、まさに音楽を学ぶ上で重要な、さまざまな濃厚なる要素が用意されているのはお分かりいただけだろうか? また、食事も含めて、そこに集中するための様々なケアも用意されていました。

”RED BULL MUSIC ACADEMY”――外から見ればフェスというか、音楽イベントを中心に見られがちではありますが、”ACADEMY”という名の通り、やはりその中心はやはりこのパーティシパントたちへ提供される学びの場なのでしょう。レジェンダリーなアーティストを呼ぶイベントの、カルチャーとしての価値観の高さはもちろんのこと、パーティシパントという若いアーティストたちへのレッドブル側からのケアには、やはり音楽文化に対するリスペクトが垣間見れます。それこそ、この姿勢がわかると各イベントの見え方もまた変わってくるでのはないでしょうかね。

■最後のイベント

さて、このRED BULL MUSIC ACADEMY TOKYO 2014、本日最後のイベントがリキッドルームで開催!「Red Bull Music Academy presents Senshyu-Raku、 デトロイト・テクノのレジェンド、カール・クレイグ、フランスのハウスの鬼才、Pépé Bradock、そしてジャーマン・ハウス・シーンのすばらしいレーベル、Running Backの首領Gerd Jansonという顔ぶれだ!
(河村)
(写真:河村撮影の記載があるもの以外はすべてオフィシャルのプロモ・プールより)

Red Bull Music Academy presents Senshyu-Raku
日時: 2014年11月14日 24:00
会場: Liquidroom (東京都渋谷区東3-16-6)
料金: 2,000円 (前売) / 3,000円 (当日) ※20歳未満入場不可/要 写真付身分証
出演: Carl Craig, Pépé Bradock, Gerd Janson Toshio Matsuura, Shacho(SOIL&"PIMP”SESSIONS), Makoto (Human Elements)

詳しいイベント・インフォはこちら
http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/events/red-bull-music-academy-presents-senshyu-raku

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