2017年に活動休止した、VJをメンバーに有するポストロック・シューゲイザーバンド、「シキサイパズル」。
そのギタリスト/コンポーザーとして、バンドの中枢を担っていたShuntaro Tsukuiによる、新たな音楽表現アウトプットが「moA」である。
シキサイパズルの活動休止から4年の沈黙を破り、今作「fragile」の発表を以って、ソロプロジェクトとして始動する。
今作「fragile」は、疾走感溢れるテンポで5拍子を基調とし、Tsukui自身の織りなす重厚なギターのレイヤープレイが冴え渡る楽曲である。
各楽器共にポストロック的なトリッキーなアプローチをしながらも、メロディラインは非常にキャッチーであり、ゲストVocalとして起用した渚(aoie us fear)による力強くも繊細な歌唱表現も相まって、自然と耳に残る仕様になっているのもポイント。
この計算されたアンサンブルによって、5拍子であっても違和感無く「Jポップ」と称することのできる楽曲として、心地好い音像へと昇華させている。
また、作詞は西塚ちえ(ex.Egw Eimi)が担当。
様々な情報が溢れ、善悪の基準すら揺らぎ、失われつつある「自分による内側の世界」と、「他人による外側の世界」との狭間を彷徨う様が描かれている。
情報社会における自己を見つめ直し、その上で「どう生きていくのか」という問いが歌詞の中には込められており、力強い演奏と共に、リスナーの心を揺さぶる。
シリアスな歌詞表現ながらも、「どこで間違ったの?」「されど街は変わりゆく」といった、聴いた時にはじめて気付く言葉の音遊びも仕掛けられており、Tsukuiによる幾何学的な音像のレイヤー表現と相まって、非常に音楽的な作品として成立している。
ポストロック/エレクトロニカ/シューゲイザーという、シキサイパズルで表現していた根幹を引き継ぎ、ソロになったことにより、さらに純度の高いTsukui自身のギタープレイを散りばめ、新機軸のポップス、オルタナティブ・Jポップを「moA」の名のもとに、鳴らしていく。