『ugly beauty』
「Minorityでも通す美学 俺はラッパー」
内省と自己肯定を超越したヘッズたちの心を揺さぶる充実の一枚
哀愁を帯びたブルージーな雰囲気漂う『still dreaming』で「身に染みてる 真っ直ぐ進む事の難しさ」と歌われているように、本作『ugly beauty』では理想と現実の狭間で葛藤しているKilling Mobの心情に内在された光と影が実直に現れている。
ジャジーなビートの上でその決意がソリッドに表明されている『place to be』も決して単なるセルフボースティングではなく、むしろ自戒の念と自律心が垣間見えるため、聴いていると自然に背筋が伸びる。また客演に泰斗a.k.a裂固が迎えられ、軽快でサイエンティフィックなビートが特徴的でもある『it's magic』では、泣く子も黙る二人のラップの地力の高さを土台とした実験的かつ挑戦的な姿勢に、思わずニンマリしてしまう。まさに「時代はHighSpeed でも焦らずSlowly 楽しむ事忘れたら 息が詰まる」だ。
さらには、冷静と情熱の間を行き交うソウルフルな『change』を経て、Killing Mob自身の哲学であり美学、それから今もなお自身の普遍性の結晶でもあると言える『the purpose of life remix』へと本作は原点回帰する。加えて『death dance』『it's magic』『still dreaming』のremixが収録されていることも今作の特筆すべき点であり、原曲とは異なるビートの世界観を味わいながらリリックを反芻することで、より各曲に秘められた真意に触れることになるだろう。
「Make your Classic お前のSoulに溶け込んで言葉以上の価値が生まれると良いな」
最後には『it's magic』『death dance remix』『still dreaming remix』の3曲がインストゥルメンタルとしても収録されている。ビートメイキングとプロデュースで本作を支えた旅人と法斎Beatsの両ビートメーカーが生み出したその3曲のビートをインストゥルメンタルとして聴くことで、今回Killing Mobがその二人の職人のビートからどのようなインスピレーションを受け、そしてラッパーとしてどのように言葉を紡いでいったのかに思いを馳せてみると、胸が熱くなる。
text by TAKURO SHINOHARA