AE sounds

専門家が絶賛する完璧な絵画。だが「私」はそこに隠された作者の悲鳴を聴く。調査を進めると、それは単なる模倣（贋作）ではなく、師を深く愛する弟子が描いたものだと判明する。赤外線で暴かれた弟子自身のサインは、師への祈りと許しを乞う慟哭の証だった。これは贋作師が師の魂に捧げた「鎮魂歌（レクイエム）」であり、二人の魂の対話の記録なのだ

他人の目を気にする少女は、教室で息を潜めていた。うまくやっている同級生に嫉妬し、嫌味を言っては自己嫌悪に陥る。変わりたいが怖くて動けない葛藤の中、「大人になればこの苦しみは消えるのか」と悩む。しかし、同級生とのささいな和解をきっかけに、痛みを抱えたまま前に進むことを決意する。

一流ホテルの研修生・七瀬は、伝説の上司に「心がない」と叱責され、自分は何もできないと思い込んでいた。だが、心が折れて辞め、一般企業で働くと、人の心を先読みする神業的な能力で絶賛される。 地獄のようだった研修は、実は他者の深層心理に完璧に同調（シンクロ）するための、超高度な精神修養だったのだ。七瀬は知らぬ間に、規格外の共感力を身につけていた。

溜め込んだストレスを発散するため、漫画を全巻大人買いし、みたらし団子を頬張る。アラームも締め切りも無視して没頭する、わがままでリッチな時間。これは「堕落」か？ いや、これこそが「大人」の特権であり、「自由」なのだと高らかに叫ぶ。背徳感さえも甘美な快感として受け入れ、「明日のことは知らねえ」と堕落の限界を超える、ハイテンションな解放の歌。

これは、乱視と老眼を抱える「僕」の視点で描かれる物語。ガウスがかかり、ピントの合わない歪んだ世界は、彼だけの「ワンダーランド」だ。しかし、クリアな視界を持つ「君」とは、見えているものが違うのではないかと葛藤する。「歪んだ景色こそ真実かもしれない」と自問しながら、シャープネスが足りないノイズ混じりの世界で、確かに存在する「君」の輪郭を探し、手を伸ばす。認識の違いを抱えながらも、そばにいたいと願う心の叫びを描く。

深海に生きる青年「凪」と地上に暮らす女性「海月」。決して交わることのない異世界に住む二人が、月の満ち欠けによって記憶だけを共有し、顔も知らぬまま魂で惹かれ合っていく。しかし、その魂は元は一つだった人魚の末裔であり、出会えば世界が崩壊する宿命にあった。会えない運命を受け入れ、最後の記憶として愛の結晶であるガラス細工を海に捧げる。これは、世界に分かたれた二人が奏でる、永遠の悲恋歌である。