ニュー・シングル先行リリース&フリー・ダウンロード&インタビュー!
斉藤和義、suzumoku、アナログフィッシュなどなど、ポップな歌の中に揺るぎない本音を落とし込めるアーティストはそれだけで好きになれる。京都出身の2人組、カケラバンクも愚直なまでにまっすぐな歌をうたい、時には辛辣なメッセージを届けることすら辞さないが、どちらに傾こうともそのメロディやアレンジは抜群に親しみやすい。ポップ感という意味では上記のアーティストに通ずるものがあるが、カケラバンクの歌はヒップ・ホップのテイストが強い。という点で考えると、MOROHAを思い出す。世の中や社会に対する疑問符の投げ方、日常的な目線のリリック、何かについて考えた末に自分なりのひとつの答えを見出す思考。そんなところが似ていること、まだまだ本気が感じられるミュージシャンがいることに嬉しくなったりもした。
そんな彼らがリリースするニュー・シングル『バトンタッチ』では、先に挙げたような魅力はもちろんのこと、これまでにない柔軟なアプローチが多数見られる。アレンジにしろ、歌詞にしろ、とてもシンプルにまとめられ、いい感じに抜きの効いた仕上がりとなった。そこに至るまでにどういったプロセスがあったのだろうか。カケラバンクの櫻井幹也(G&Vo)と伊藤弘(Cho&Per)に話を聞いた。
インタビュー&文 : 田山雄士
>>>「バトンタッチ」のフリー・ダウンロードはこちらから!(ダウンロード期間 : 10月27日~11月3日)
カケラバンク / バトンタッチ
Caravan meets →Pia-no-jaC←!? ギターとパーカッションの2人組、カケラバンク。彼らの音楽を一言で説明するのは難しい。その詩世界には答えもなければ真実もない。流れる時代の中で生まれる問いや衝動を、音楽を通して投げかけているだけだ。しかしそのシンプルでソリッドな音楽は、聴く者の意識に確実に入り込んでくる。時代を伝えるメッセージ・ソングであり、最先端をゆくフォーク・ロック。次のアルバムを予期させるカケラバンクのニュー・シングル『バトンタッチ』を先行配信開始!
【トラック・リスト】
01. 本音 / 02. ワンコイン / 03. バトンタッチ / 04. クローン
何かを批評する音楽に惹かれるんです
――このギターとパーカッションという形態になったきっかけは何だったんですか?
櫻井幹也(以下、櫻井) : 僕が19歳くらいから路上やライヴ・ハウスでアコースティックの弾き語りをしてて、一人でシンガー・ソングライターをやってたんですよ。それからしばらく経ったあと、26の頃に京都でライヴ・ハウスの店長をしていて、他のユニットとして伊藤(弘)が出てたのが出会いのきっかけですね。それから彼のユニットが活動休止になったタイミングで僕のサポートをしてもらうようになって、半年後には正式に組んで活動を始めました。
伊藤弘(以下、伊藤) : 僕も昔はギターを弾いてたんですよ。彼と同じ年齢くらいのときから、ギターを持ってストリートでも演奏してて。
――じゃあ、2人ともストリートが原点なんですね。
櫻井 : ゆず世代なんです。そのブームがあったので、京都でもものすごい数のストリート・ミュージシャンがいましたね。大阪や滋賀もそんな感じだった。バンドはやってなかったんですよ。
――そうだったんですね。バンドをやってて、誰かが抜けちゃって、こういった珍しい形態なのかなとも思ったのですが。
伊藤 : むしろ、足していったという感覚ですかね。アコギだけではもの足りないから、楽器がどんどん増えていったんです。「カホンっていうのがあるらしいよ」とか、「インドネシア料理屋にジャンベがあるらしい」とか、「あの中古楽器屋にボンゴがある」とか、そういうのを聞きつけては取り入れて、自分たちのサウンドができていったんですよ。
――面白いですね。パーカッションは、今は何種類くらい使ってるんですか?
伊藤 : 太鼓だと4、5くらいで、あとは小物的なものも含めたら10とかかな。ジャンベとカホンが基本で、曲によって使い分けてます。カホンはいい中低音が出るところが好きです。
――カホンって、いつから日本の音楽シーンでもメジャーになったんですかね?
伊藤 : いつなんでしょうね。それこそ→Pia-no-jaC←で一気に来ましたけど、その前からあったんですよ。さっき言ったアコギのゆずブームがだいぶ続いたあとに、だんだんとアコギだけでは面白くないというムードになったんです。それで打楽器が入るのがスタンダードになってきてたんですよね。「ソロ・ライヴ with パーカッション」みたいなのが多かった。
――ライヴ・ハウスで同じタイプの方とやることもあったり?
櫻井 : 多かったですね。京都でもすぐ近くに5、6組はいましたから、僕らの中ではカホンはポピュラーなものでした。僕たちの知り合いに木工職人がいて、あるとき「カホンを作りましょうか? 」って言ってくれたんですよ。その作ってもらったカホンを今も使ってるんですけど、それを見た→Pia-no-jaC←が気に入ったみたいで、同じ方にカホンを作ってもらったりして。
――カケラバンクの方が先にカホンに馴染んでたんですね。
櫻井 : そうなんです(笑)。彼らには何度か会ったこともあります。
――似てるって言われます?
櫻井 : いや、言われないですよ。ピアノでもインストでもないですからね。
伊藤 : 「初めて聴く感じ」とは言われますね。どこにも属せてないから。ジャンルとか逆に決めてもらいたいくらいなんですけど(笑)。
――ですよね。カホンを使ってる2人組というだけで、僕も特に似てるとは思ってないので。むしろ、歌の世界観に限って言えば、MOROHAに共通する孤高さを感じました。彼らはヒップ・ホップなんですけど。
伊藤 : そうなんですか! 僕らのアコギのアルペジオや醸し出すグルーヴって、たぶんヒップ・ホップ寄りなところがあるんですよね。
櫻井 : 僕がヒップ・ホップとR&B大好きなんです。ゆずから徐々にそっちに傾倒していって。
――カケラバンクの歌はリリックも言葉数が多くて、歌うのが難しそうな印象です。昔は違いましたか? それこそ、ゆずに近い感じだったとか。
櫻井 : うん、バラード中心でしたね。パーカッションのリズムが入ることで、言葉がリズムに乗るようなメロディになっていったというか、2人ならではの音楽になったと思います。お互いの好みもまったく違うんですが、ブレンドしたらこうなりました。
伊藤 : 僕もゆずから出発したんですけど、パーカッションを始めたことでだいぶ路線が変わりました。やり始めた頃にFried Prideを知って、それが基本にありますね。ジャンベからワールド・ミュージックに興味を持ったりもしました。
――櫻井さんはいかがですか?
櫻井 : 大学のときからずっと聴いてるのはDragon Ash、Mr.Childrenですね。ここ4、5年がRADWIMPS。ちょうど流行ってた時期があったので、日本のヒップ・ホップはほとんど聴きました。海外はLinkin Parkとか。ヒップ・ホップはもちろん好きなんですけど、元をたどれば真新しいものが好きなんでしょうね。社会に対してのアンチテーゼというか、何かを批評する音楽に惹かれるんです。だから、恋愛をメインで歌うヒップ・ホップはあまり好きじゃない。
――カケラバンクの歌は批評性が強いですもんね。そんな中、自分たちがどう捉えられてるかは気にならないですか?
伊藤 : ならないですね。バンドばかりのブッキング・ライヴでも特に違和感ないですよ。アコギだけのイベントにも出ますしね。
櫻井 : 勢いや音圧だけで押すバンドってたまにいるじゃないですか。それよりも僕らの方が言葉は届きやすいと思います。アコースティックの集まりのときだって、インストやファンキーなグルーヴでも勝負できるし、強みはたくさんありますよ。対応力はあるんじゃないかなって。
――メッセージ性が強い楽曲ですよね。でも、「共感してほしい! 」みたいに無理強いな感じじゃなくて、疑問符を投げかけてる言い方だなって。コテコテのポリティカル・ソングというわけでもなくて、とても身近な視点を活かしてるのも印象的です。
櫻井 : そうですね。極論に行くんじゃなくて、中道って言うんですかね。その時々で方向はもちろん変わるんですけど、基本はバランスの取れた真ん中を行きたいです。社会の流れに対して問題提起をするのが役目なのかなって思ってます。
――確かに、何でも100%で言い切るのって違う気がします。
櫻井 : うんうん。それって教祖じゃないけど、「従え! 」って言ってるだけだから。そこまで言うのは僕は嫌なんですよね。1人1人がしっかりと踏みとどまって考えてもらえるような投げかけがしたいです。
徐々に言葉数が少なくなるような予感がしてる
――今回のシングルの4曲は、曲のタイプがわりと半分に分かれてる気がしました。前半2曲は厳しい目線を感じるもので、後半2曲はもっと穏やかな側面が出てるなと。
櫻井 : 意図的ではないですが、言われてみるとそうですね。
――1曲目の「本音」が50秒で完結してるところとか、いろいろ考えて作ってる印象はありますね。
櫻井 : ありがとうございます。最初は「バトンタッチ」だけがあったんですよ。そこから残りの3曲を考えた形で、現状の自分たちを詰め込めてる曲という基準で選びましたね。自然体でバランスを取ってみた結果です。
――以前の作品から見ると、変わってきた部分はありますか?
櫻井 : 今回のサウンドはギターとパーカッションのみなんですよ。これは初めての試み。
――そうそう、だいぶ抜いてますよね。
櫻井 : 前まではベースとピアノ/キーボードを入れてたんです。打ち込みを入れてたときもありましたが、それらをだんだん消していきました。音的にはそういう変化。メッセージに関しては、前作のミニ・アルバム『目を閉じて見えるモノ』で打ち出したのが「そこが幸せの原点じゃないか」っていうものだったんですけど、どこか行き着いた感もあったんですよ。
――ある種ゴールしてしまったような?
櫻井 : はい。「これからの10年は同じ思いを言葉だけ変えて、入れかわり立ちかわり歌うんじゃないのか」ってくらいの結論に行き着きかけたんです。でも、今年僕に子供ができまして、そこで新たに「バトンタッチ」という曲ができたので、人生観がまた一気に変わったんですよね。
――変わるんでしょうね、やっぱり。
櫻井 : 親になったことで、自分の親の気持ちを考える時間が増えました。「僕が生まれたときに親はどう思ったのかな」とかね。そういう視点の違いが生まれて、家族が脈々と続いてきた縦の軸を意識するようになったんです。今までは自分発信のものばかりだったんですけど。
――そのことが歌詞やアレンジに影響してるのかもしれないですね。抜きどころのよさとか。
伊藤 : うん。抜いても全然行けるんじゃないかなと思えてきました。昔は何か言われるたびに、「あれもこれも楽しそう! 」って感じでどんどん飛び込んでいってたんですけど、最近はもういろいろやらなくても大丈夫な気がしてます。
櫻井 : ライヴでシンプルなアプローチをすることってわりとよくあるじゃないですか。だったら、音源でも時にはやってみてもいいのかなと。自分たちに自信が付いてきたのかもしれないですね。
――特にカツカツ詰め込まなくても不安じゃないというか。
伊藤 : カホンやジャンベもそうなんですけど、「トン」って叩くだけで胸がいっぱいになるんですよね。最近では何かを増やすと、そのぶんだけ消えちゃうものがある気がして、もったいないなとも思ったりして。
櫻井 : 普通にレコーディングするならベースとピアノを入れるのが当たり前とか、J-POPでストリングスが定番のように入るのとかって、だんだんと違う気がしてきました。ましてや、僕らはライヴでも2人なわけだし、抜いたものでもかっこよければOKですよね。もちろん、さまざまなアプローチがあって然るべきなんですけど、タブーにするのはおかしい。
――そういうのをやってみるのって、すごく意義のあることだと思います。
櫻井 : そうそう、やれることはやってみたいんですよね。
――歌詞は大きく変わりましたか?
櫻井 : 今の方が1曲の中でのつじつまが合ってる気がしますね。整合性が取れてる。前はもっと混沌としてました。
伊藤 : 昔は歌詞の意味を聞くと、「よくわからん」って言ってたもんね(笑)。衝動が先だったんです。それで「こういうことが言いたいんだったら、こうした方がいいんじゃないの? 」っていうのを客観的な目線で伝えたりしてて。
――2人の間で詞についての意見交換があるんですね。
櫻井 : たとえば、今回の「本音」も話し合ったことで歌詞が変わりましたね。僕は最初「分からない」という結論で終わりたかったんですけど、それじゃ希望がないっていう話になって、「分かりたい」になりました。
伊藤 : (櫻井)幹也くんは普段の会話でも何を言ってるかよくわからないことが多いんです(笑)。やっぱり、育った環境って人それぞれ違いますからね。そう考えると、どれだけ話し合ってもわからない部分って誰しもあるわけなんですよ。「相手の気持ちになって考えよう」みたいな標語があるじゃないですか。僕、あれがあまり理解できないんですよね。相手の立場で考えるって、本当はとてつもなく難しいことなんじゃないかな。
櫻井 : 「話せばわかる」も実際はわからないですよね。小学校くらいの頃に教えられたことって、たぶん30歳くらいから「あれ? これって実は違うんじゃないかな? 」って吟味する時期に入る気がするんですよ。
――なるほど。でも、今そういった吟味ができてるのは、たぶんお2人が普段から意識的に物事を捉えてるおかげかも。30歳過ぎてても、そうならない人はいる気がしてます。
櫻井 : あー、そうかも。二極化するのかなぁ。
伊藤 : 僕も昔は考えないタイプの方でしたもん。そんなときにこういうヘンな人と出会った(笑)。逆の発想も面白いなって思えるようになりましたね。
――今のいい精神状態だと、歌詞ももっと抜いたりできるかもしれないですね。ライヴもどんどん柔軟になって、いろんなアレンジで見せられる気がします。
櫻井 : 本当にそうですね。まだ、どんどん変わっていくはずです。徐々に言葉数が少なくなるような予感はしてますよ。そうすることで伝えられるものがある気がするんです。昔は言葉が多ければ多いほど伝わるという考え方でしたね。
伊藤 : ますますジャンルが決めにくくなるかもしれないですが、もっとやれることの幅を広げたいですね。僕、演劇がすごく好きなんですけど、台詞と台詞の間のピリッとした緊張感ってあるじゃないですか。ああいう雰囲気を歌やライヴの中で作り出したいんです。無音なのにメッセージのある空間が作れたら、また1つ上に行けそうな気がします。
真っすぐな言葉が胸を打つロック
suzumoku / Ni
前作から6ヶ月、suzumokuの新作が完成。事前に何も決めずに沖縄のスタジオに泊まり込み、その場で思いつくままに作曲/レコーディングを敢行。これまでのアコースティック・ギターでの演奏スタイルから一転、初のエレキ・ギターでの弾き語り作品を収録。一日の始まりから終わりまでの物語に沿った楽曲が揃いました。
アナログフィッシュ / 確立の夜、可能性の朝
2011年7月9日、原宿VACANTにて行われたアナログフィッシュ企画イベント「TOWN MEETING」。この日ゲストとして出演していた前野健太を交え、来場していた観客150人、アナログフィッシュのメンバー、その場にいた全員で新曲「確率の夜、可能性の朝」の合唱が行われた。その模様を録音した音源をOTOTOY限定で配信開始! まるで小学校の合唱の時間のように朗らかで優しい空間をそのままパッケージしました。
マーガレットズロース / マーガレットズロースのロックンロール
『クラッシュってきっとこんなバンドだったんじゃないかな』「マーガレットズロースのロックンロール」をライヴで聴いた峯田和伸(銀杏BOYZ)は、興奮まじりにそういった。
LIVE SCHEDULE
2012年 京都・東京2大ワンマン・ライヴ「先の見えないこの時代で」
2012年1月21日(土) @京都 都雅都雅
前売 : 3,000円 / 当日 : 3,500円(共に1drink別)
2012年1月27日(金) @東京 ASTRO HALL
前売 : 3,000円 / 当日 : 3,500円(共に1drink別)
カケラバンク PROFILE
櫻井幹也(ボーカル・ギター)
伊藤弘(コーラス・パーカッション)
京都での2年間の活動を経て2008年4月に東京に上京した、アコースティック・ギターとパーカッションという生楽器の温もりで「懐かしさと新しさ」を繊細に生み出す二人組「カケラバンク」。自分の事、家族の事、生きる事、愛する事に対して、心の中に誰もが抱える見たくない痛みや悩み達。でも、その小さなカケラと日々向き合う作業こそが「本当のポジティブ」なんだと。櫻井幹也のダイレクトな歌詞と声、伊藤弘の感情的な打楽器が奏で届ける。2008年のYAMAHA主催の「Tokyo Band Summit2008」で1000組弱の中から優勝する等、過去三度のグランプリ獲得経験を持つ。また、2009年2月には香港で行われた「Asian Beat」にゲスト出演し、初の海外ライヴを成功させアジアへも活動の幅を広げている。