
今なお進化するオリジネイター
音楽を聴く時にジャンル分けは便利であるが、壁となってリスナーを分断してしまうこともある。
13年ぶりの再結成を果たし、ニュー・アルバム『PRIMITIVE』を発売したDer Zibetはヴィジュアル系の元祖とも言われている。そんな言葉すらない85年当時から、異端児と言われるも我が道を突き通してきた。
色とりどりの音楽性が散りばめられた楽曲に文学的な歌詞。インタビュー時の穏やかで懐の広いISSAYの魅力。あっという間に彼らの虜になった。
海外で、日本のヴィジュアル系ロック・バンドの評価はうなぎのぼりだ。何故なら、スピード感、叙情的なメロディー、ロマンチックなアレンジ等、欧米バンドにはない様々な魅力を備えているから。そんな多くのバンド達にリスペクトされ続けるDer Zibet。カテゴライズしながら聴くのは、非常に不毛な事である。
(インタビュー & 文 : 池田義文)

INTERVIEW
—再結成をすることになったいきさつを教えて下さい。
ISSAY(以下 : I ) : 数年前にベースのHALが事故で大けがをして、少し良くなってきた時に音楽をやりたいと言い出したんです。有志が集まって彼の家に行って曲を作ったり、リハーサル・スタジオで作品作りを始めたりしました。その時に集まっていたメンバーがDer Zibetに近いメンバーでした。その後ドラマーの MAYUMIが入って、気がついたらDer Zibetに。
—実際13年ぶりに再結成してみてどう思われましたか?
I : スタジオに入って音を出した瞬間に、目の前に懐かしくてよく知っている風景が広がったという印象です。
—活動休止中、メンバーの皆さんが個々で活動していたことは、新作に影響を与えていますか?
I : このバンドは元々バラバラのバックグラウンドをもったミュージシャンの集まりなんです。音楽を作る時には常に化学反応が起きていました。それがより強いものになったという感じです。
—再結成後ライブをした時のファンの反応はどうでしたか?
I : すごく喜んでくれたので、幸せだなと思いました。ただ、懐かしいバンドになりたくないというのはすごく強いですね。常に新しい音楽を提示していきたい。今回の新作もそういう部分が強く出ていると思います。Der Zibetというバンドが本来もっていた匂いを出しながら、2009年の僕らもすごく出てますね。
—スタジオに入った時にすでに新しいDer Zibetの雰囲気は出ていましたか?
I : スタジオに入った時は、これから何があるのか楽しみだなっていうのが一番強かったです。デビュー前までずっと一緒にいたオリジナル・メンバーのキーボード、MAHITOが戻ってきてくれて、バンドを結成した頃の感じにすごく近いワクワク感がありましたね。

—『PRIMITIVE』というタイトルにはどのような意味が込められているのですか?
I : 昔からレコーディングに入る前にキーワードを出すんです。それに対して全員がイニシアチブをとれた時に進んで行くんです。今回はギターのHIKARUが、食品の消費期限の偽装問題が起きた時に「そんなものは鼻と舌でわかるものだろう !」と思ったらしく、この時代に生きる人間にとって大事なのはそういうPRIMITIVEなパワーであり感覚であるという所からフッと思い浮かんだらしいです。それで、「今回はPRIMITIVEというキーワードはどうだろう」とメールが来たのです。僕自身は言葉型の人なので、21世紀の今この言葉はすごく面白いと思い、「これはすごく面白い単語だから、アルバム・タイトルにしたらどうだろう」と返信したのが始まりですね。
—ISSAYさんが個人的に影響を受けたアーティストは?
I : グラム・ロックの人達や、Doors、Velvet Undergroundですね。僕が音楽を始めるちょっと前くらいがニュー・ウェイブ全盛で、特にイギリスのニュー・ウェイブが好きでした。ゲイリー・ニューマンやP.I.L .、もちろんセックス・ピストルズも大好きでしたね。
—1985年当時、Der Zibetをうまく形容する言葉がなかったと思います。その頃は周りからはどのように言われていましたか?
I : 色々と言われましたけど、思い出すと腹が立つ事が多いですね(笑) ちらっと聴いただけで“歌謡ロック”と言われたり、あと一番主流だったのは“ヨーロピアン・デカダンス”でしたね。あとは、ステージングを見た人達がシアトリカルと言ったりしていましたね。
—デビューから約25年がたち、日本のいわゆるヴィジュアル系と言われるバンドの海外での評価が上がってきていますが、そういった状況に関してはどうお考えですか?
I : うまく言えませんが、あれは一つの日本の音楽シーンの曲がった文化であることは確かだと思います。それが海外で受けているのは面白いかなと思います。
—再結成に寄せられたコメントを見ると、若いミュージシャンに大きな影響を与えてきた事が解ります。HEATH(Lynx)さんともバンドをやられているように今後も更に若いミュージシャンとの交流を考えていますか?
I : 僕個人はよくありますね。この前も、とある若手のバンドと行きつけのロック飲み屋で知り合って、ライブを見てきました。

—音楽以外にも俳優業やパントマイムなどもこなされていますが、音楽とどのようなにつながっていますか?
I : 実はパントマイムはDer Zibetの結成前からやっているんです。肉体を使ったステージング・パフォーマンスという意味では同列に考えています。「ステージでパントマイムは使うのですか?」と聞かれるのですが、僕の動き方は基本的なパントマイムの動きを全て踏襲しているんです。具体的に壁をやるとか、綱引きをやるとかではなくてもそういう動きになるんです。きっと他のボーカリストと比べると解りやすいと思いますね。
—ISSAYさんは音楽配信についてはどう思われますか?
I : すごくいいし、面白い手段だと思います。音楽が近くなるという意味でのスピード感があって、とてもいいツールだと思います。
—最後にファンの皆様にメッセージをお願いします。
I : 13年ぶりにアルバムを作ったのですが、面白いものができました。あの頃では絶対に作れない21世紀のDer Zibetがここにあるので是非聴いて下さい。また、聴いた事がない人達にとってもRockが好きな人には絶対に心に引っかかるようになっています。よろしくお願いします。

LIVE SCHEDULE
- 03.06 (fri) 原始力〜プリミティブ・ツアー〜@Shinjuku Live Space MARZ
- 03.29 (sun) 原始力〜プリミティブ・ツアー〜@LIVE SQUARE 2nd LINE
- 05.09 (sat) SIDEWALK ARTIST ROOM 8th ANNIVERSARY FESTIVAL@新宿LOFT
BAND:BUG/De+LAX/DER ZIBET
LINK
- Der Zibet website : http://derzibet.com/
- Der Zibet myspace : http://www.myspace.com/derzibet
- 天国へOVER-DRIVE : http://www.youtube.com/watch?v=W8nU6Wo1Pxs&feature=related
- 「灯りを消して」 スタジオライブ: http://www.youtube.com/watch?v=vOOOSvXSgws&feature=related
- Yoshiki & Issay : http://www.youtube.com/watch?v=FPGD_I9sAmg&feature=related

Der Zibet

1984年結成、翌85年デビュー。ジャパニーズ・ロック黎明期に誕生し、90年代邦楽ロックのバブル期に活動したDer Zibet(デルジベット)は、他のどんなバンドとも違う圧倒的なオリジナリティでもってその独自の地位を築いた。グラム・ロック、プログレ、パンク、ニュー・ウェイブからハード・ロック、ファンク、ジャズといった多様な音楽性、それを自由奔放に取り込む高度な演奏力、なのに歌メロはあくまでポップ。そんなユニークなサウンドが、ヴォーカル・ISSAYの端正なルックスと独自な美意識、そして文学的な詞の世界観とあいまって、エキゾチックで、この世のどこにもない孤高の存在感を生み出していた。
ゴシック風の黒づくめの衣装や、デカダン趣味が漂うムードが「ヴィジュアル系の元祖」としてリスペクトを受けたが、作品はそうした枠にとらわれない普遍性を持っている事が今聴くとわかるだろう。ここ数年、国内外でも再結成ブームが著しいが、それが成り立つのはやはり圧倒的なオリジネイタ—だけだ。そうしみじみ思わせる、まさにDer Zibetにしか鳴らしえない作品が完成した。
(ROCKIN' ON JAPAN 井上貴子)
