
Friends INTERVIEW
結成から間もない時期に制作したデモ音源が、海外のインディー音楽サイトなどで取り上げられ、そこから火が付くというパターンは近頃よくあるが、それを“よくある出来事”にしたのはHOTEL MEXICOをはじめとする多くの原石を発掘したSECOND ROYAL RECORDSの功績と言っていい。その次なる注目株はFriendsという3ピース・バンドだ。
海外から逆輸入的に盛り上がったという事実こそ、インディー・マニアの間ではメジャーなことかもしれない。だが、彼らのこれまでの歩みを細かく聞いてみると、ソーシャル・ネットワークをうまく活用していたことなど、そこにはとても興味深い経歴があった。さらに今回リリースされるファースト・アルバム『Let's Get Together Again』はサウンド、ミックスがかなり斬新であり、ドリーミーでローファイな質感を出すために、相当なこだわりを持っていることは音源を聴けば明らかだろう。そのあたりも含めて、金子尚太(vo、g)と三澤慶一(ds)の2人に話を聞いた。
インタビュー&文 : 田山雄士
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Friends / Let's Get Together Again
1. I Think I Love You / 2. Since I Made A Mistake / 3. Make It Better / 4. When I'm Asleep / 5. Someone New / 6. You Are So Dirty / 7. Our Love Is True / 8. Hope You Were Mine / 9. Good For Us / 10. Cruel Sea
Twitterで知り合ったんです
――今日はベースの土屋さんがベトナム旅行中とのことで、なんだかすごく自由な感じなんですけど(笑)。まだ大学を卒業したばかりとかですか?
金子尚太(以下、金子) : そうです。僕は在学中、シドニーに10ヵ月間語学留学をして、そのあと関西の大学を卒業したので、1年多く学校にいました。
三澤慶一(以下、三澤) : 僕が今22歳で大学4年です。土屋は大学2年だっけ?
金子 : うん、今年ハタチになったばかり。かなり自由ですね(笑)。
――皆さん若いんですね。金子さんは神戸出身だそうですが、三澤さんと土屋さんは東京ですか?
金子 : はい、そうです。僕も今は東京に住んでます。就職をするタイミングで上京したんですよ。でも、最近辞めたんですけどね。
――あ、そういうことだったんですね。
金子 : はい、仕事は全然音楽とは関係ないことだったんですけど。

――じゃあ、最初はミュージシャン志望ではなかったんですか?
金子 : そうなんですよね。えっと、就職活動中にも個人的に作曲とかはしてはいました。バンドとして音楽をやろうと思ったのが2010年の5月ですね。6月末に企業から内定をもらって、そこからちゃんとライヴもやろうと。
――その前はバンド活動はやっていなかった?
金子 : 一応サークルではやってて、オリジナル曲も留学中にやってたんですけど、なんとなくでしたね。でも、バンドをやりたい気持ちはずっとありました。
――なるほど。いざ東京に出てきて、今のメンバーとはどういうところからバンドを組むことになったんですか?
金子 : Twitterで知り合ったんですよ。まず、東京に出てきたときには僕はもうSecond Royalに所属してたんです。それで上京後にライヴをやることになって、そのタイミングで募集をかけました。
――え? Twitterでですか?
金子 : そう。そこから知り合いの知り合いみたいな感じでつながって(笑)。
三澤 : もともと、彼の直接のフォロワーではなかったんです。僕の知り合いがリツイートしてたのを見たのがきっかけですね。
――「メンバー募集します! よろしくお願いします! 」みたいな?
金子 : もっと軽いですね。「やりたい人いませんか~? とりあえず、音源を聞いてもらってやってみたい人いればぜひ」くらいの。
――Twitterで結成っていうのは初めて聞いたかも。今っぽいですね。ということは、わりと1人で録っていた音源があったと。
金子 : はい。今までに録音をしてるものはほぼ僕1人で作ってますしね。
――ちょっと時系列が前後しますが、セカロイに所属するきっかけは?
金子 : それもほぼTwitterなんです(笑)。もともと、その前に録音はしてたんですよ。ちゃんとした録音ではなくてスタジオからの流れみたいなものですけど、それをファイルにしていろんなところにメールで送ってました。
――デモテープを送るようなことですよね?
金子 : そうです。そしたら「ちゃんとした音源が欲しい」っていう人が多くなってきて、なんとかしないといかんなと思って、オークションで安いMTRを買って録音をしたんです。それで初めて録音した曲をサイトにアップしたら、なぜかすぐに海外のブログで取り上げられて。最初にリリースしたカセット・テープに入ってる「We'll Never Stay Together」がその曲です。
――そのへんもめちゃくちゃ今の時代ならではですね。
金子 : そうかもですね。そういうのを3曲くらいアップしたときに、スウェーデンのNO MODEST BEARっていうけっこう有名なサイトに僕らのことが載って、それを見た誰かが僕らが日本人だということに反応してTwitterでつぶやいて、そのつぶやきを見た元Friendsのベースをやってくれてたzico(ジーコ)さんっていうDJの方がまた同じ内容をツイートして、さらにzicoさんのフォロワーにセカロイの小山内(信介)さんがいたんですよ。
――ん…?? その日本人は海外に住んでいる方ですか?
三澤 : いや、日本にいる方でしたね。
金子 : 最終的にそれを見た小山内さんが僕のフォロワーになって、いきなり声をかけてきたっていう(笑)。2010年の10月かな。そのあとにライヴを観に来てくれて、終演後に「すごくよかったから、これから応援していきたい」って言ってくださったんです。
――面白いですねぇ。TwitterはFriendsにとって相当大きなものだったんですね。
金子 : すごいものですね。
三澤 : 確かにね(笑)。
――その頃はまだお2人も知り合いじゃなかったんですもんね。
三澤 : そう。ただ、僕は友達がFriendsの存在を知ってて、何度か関西で観たことがあるとかそういう情報を聞いてたので、メンバー募集のときにわりとすぐ反応できたのはありますね。
金子 : ベースの土屋も同じタイミングで加入しました。僕はけっこうワンマンなので、とにかく音源と楽譜を15曲ぶんくらい送り付けて(笑)。
――こんな言い方も変ですけど、NO MODEST BEARに載ることができた理由というか、どうして気付いてもらえたと思いますか?
金子 : たぶん、Bandcampですね。その2010年の夏頃って、日本のバンドでBandcampをやってる人があまりいなかったと思うんですよ。だから、それが最初のきっかけかもしれないです。Bandcampを勧めてくれたのって、実はアメリカのCrocodilesのBrandon Welchezなんです。彼がやってるZoo Musicっていうレーベルに「音楽活動のアドバイスをください」みたいな連絡をしたら、いろいろ教えてくれて。

――それはすごいですね! そこは語学力を生かして、英語でやり取りをして。
金子 : ま、一応そうですね(笑)。
――そんな流れがあって、どのあたりからアーティスト/ミュージシャンとしての意識が芽生えてきましたか?
金子 : 少なくともその「アドバイスをください」って言ってた時点で、もうリリースができるんじゃないかなって思ってたところはありますね。それでも、まだちょうど1年前の話ですけど。
――面白いバンドですね。取材でこんなにTwitterの話をしたのも初めてだし。
金子 : しかも、発見したりされたりするのもけっこう早かったので。
日本のバンドがやってないような音にしたかった
――バンドの結成は正式にはいつになるんですか? メンバーの変遷はけっこうあったんですよね?
金子 : かなり変わってます。2010年の6月くらいに関西で結成したのがいちばん最初ですね。メンバーが変わりながらも続けてたんですが、それをひとまず終了させて、東京でバンドを固めていこうと思ったんです。今のメンバーになったのは、上京してすぐの2011年4月ですね。
――じゃあ、まだ間もないですね。あとはバンド名なんですけど、Friendsってイギリスにも同名のバンドがいるじゃないですか。そういうのって関係あったりしますか?
金子 : いや、僕… 知らなかったんですよ(笑)。
――知ってたら付けないですよね。バンド名が探しにくいというか、検索しにくい気がするんですけど、なぜこの名前にしたんですか?
金子 : インディーっぽいのにしたくて、あるときBeach Boysの曲名から取ろうと思ったんですよ。でも、曲名を見たらピンとくるのがなくて、結局はアルバムのタイトルから取りました。
――でも、バンド名はかぶっているっていう(笑)。
三澤 : あははは。
金子 : しかも、けっこういる(笑)。アメリカにも2、3バンドくらい。
――Brother → Viva Brotherの例とかありますからね。大丈夫だとは思いますけど。今のメンバーになってからはライヴはまだあまりやっていないんですか?
金子 : けっこうやりましたよ。何回くらいかな?
三澤 : 10回やってないくらい?
金子 : 関西から数えると、トータルで20回とかですかね。
――最近の若いバンドって、ライヴ数本のうちにデビューするのがよくある話だなと思っていて。もちろん、芸能的な人は別ですけど。
金子 : 海外はライヴをやる前にデビューって多いですよね。僕ら、集客は全然まだまだですよ。
三澤 : 今はまだインディー・マニアみたいな人だけが反応してくれてる状況ですね。でも、最近は徐々に広がっていってるとは思います。最初は僕や金子さん周りの知り合いが観に来てくれてただけだったんですけど、知り合いを通してどんどん広がっていってる気はします。ライヴも違う畑の人たちとやらせてもらえるようになってるし。
金子 : 『ジャパンタイムズ』のアメリカ人の記者の方がほぼ毎回来てくれてて、海外の人にも聴いてもらえる音楽なんだなって。
――今回のファースト・アルバム『Let's Get Together Again』は個人的にも好きなタイプのサウンドなんですけど、NO MODEST BEARに取り上げられた時期と今とでは、音の変化はありますか?
金子 : 方向性はほぼ変わってないですね。シドニーに留学中してるときに、アメリカのExplorers Clubっていうバンドの音源をよく聴いてたんです。めっちゃBeach Boysみたいな音なんですよ。海も好きでよく行ってたし、そういう雰囲気をやってみたいのはまずありましたね。で、就活のときにBest Coastの「When I'm With You」に出会うんですが、そのときに思ったのがなかなか簡単に作ってるなというか、難しそうなジャンルをうまくやったなって感じて、自分もやってみたくなったんですよね。でも、あまりにもかぶったら嫌なので、違いを出すようにして。
――違いはどこで出そうとしましたか?
金子 : やっぱり、ディレイかけたシューゲっぽいギターですかね。漂ってる、流れてるように聞こえる感じというか。Best Coastってわりとギターがジャキジャキしてるじゃないですか。その逆を行こうと思いました。ベースはそこそこ動いて、ハモリっぽいフレーズも入れたり。
――初めてのアルバムの制作作業はいかがでしたか?
金子 : いやー、苦労しましたね。最初に「3日間で作って」って言われたんですよ。
――小山内さんに?
金子 : そうです。「1人やったらできるやろ? 」みたいな(笑)。ドラムは全部打ち込みなんですよ。カセットのときとかのデモの状態に合わせた感じで。
――あ、じゃあ今回のアルバムは金子さんがほとんど1人で作ったんですね。
金子 : 1人ですね。メンバーが入ったのはそのあとです。挑戦してみたんですけど、3日目の時点で声が出なくなっちゃって。コーラスも歌も全部やってたから。結局、レコーディングは4日間に延ばしてもらいました。

――ミックスがかなり独特だと思いました。前にリリースされたコンピレーション盤『SECOND ROYAL VOL.6』のときの音と全然違いますよね?
金子 : 違いますね。今回は自分好みの音にできました。日本のバンドがやってないような音にしたかったんですよね。
――最初「これって本ちゃんの音源ですか? 」ってSECOND ROYALに確認しちゃいましたもん。大胆なミックスですよね。
三澤 : ギターがコーラスと間違うくらいの色合いで入ってて、大好きですね。
金子 : 完全に狙って作りました。もし音がクリアだったら、何がしたいんかわからないんじゃないかと思ったんですよね。イメージは初期Best Coastです。
――Hotel Mexicoとかと比べると、Friendsってもっとロックっぽいですよね。「Since I Made A Mistake」のリズムもそんな感じがして。クラシカル・ロック的な懐かしさも随所にあるし。
金子 : そうですね。Friendsを組む前はクラブとかもほとんど行ったことがなかったですし、踊れる曲は難しいんですよね。僕らは曲も短いし。
――曲は短くしたかったんですか?
金子 : パンクみたいにすぐに曲が終わる方が好きなんですよね。展開が無駄にあって長いバンドが最近多くないですか? 1曲をめちゃくちゃ大切にする人たちが多い気がするんですよ。だから、逆の方が新しいかなって。パンクだと聴いてたのはNOFXとか、No Use For A Nameとか。
――三澤さんはどんな音楽が好きなんですか?
三澤 : 僕は基本フォーク、カントリー、オルタナが好きです。サポートでもう1つバンドをやってるんですけど、そっちはエレクトロだし、Friendsのサウンドはあまり自分の中にはなかったものだから新鮮ですよ。好きなアーティストはAntlers、Neon Indian、Digitalismとかかな。
――やっぱり洋楽の影響が強いんですね。逆輸入的に人気のセカロイですけど、逆じゃない方でもっと浸透してほしい気持ちもあります。
金子 : そうなんですよ。なんとか聴いてもらえたらなと思います。口コミでどんどん広まってほしいですね。
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