2009/07/03 00:00

歌謡フォークを伝えるシンガー


残像カフェが『君』と『ラストワルツ』をリリースした。ヴォーカルの大森元気が作る楽曲は、70年代の歌謡曲やフォーク・ソングを彷彿とさせる。彼の素朴なメロディが親しみや懐かしさを与えるのは、日本人特有の郷愁感や季節感を含んでいるから。


3ピース・バンドだった残像カフェは、今年1月にメンバーの橋本大輔と梅田順一が脱退し、大森のみとなった。かつて残像カフェは、大森のソロ・ユニットとして活動していた時期があり、もう一度ソロ・ユニットで、残像カフェ名義で活動していくのかと思っていたら、本名の大森元気名義で『rain rain rain』という作品もリリースした。一体彼は"残像カフェ"と"大森元気"、それぞれをどのように捉えているのだろうか? 話を伺った。

インタビュー&文 : 井上沙織

INTERVIEW

フォークをただの懐メロで片付けて欲しくない


—音楽をはじめたいきさつを教えてください。


大森元気(以下O) : 小さい頃から、常に家では音楽が流れていたんです。アリスや南こうせつ、洋楽だとビートルズやサイモン&ガーファンクルとか。自分で曲作りをはじめたのは、小学校6年生のとき。ある日親が使っていたフォーク・ギターが見つかったんです。ちょうど南こうせつさんを聴いていた頃だったから、「おお! 」と思った。人生が変わる位、夢中になれる気がしたんですよね。それからコードをひとつひとつ探りながら、自分で曲を作ったり歌ったりするようになりました。


—大森さんの作る曲には、70年代のフォークの影響を感じます。


O : かぐや姫とか吉田卓郎さんとか、70年代のフォークは今でも好きですね。でも20代前半の頃はそれを隠そうとしていたんです。否定はしないけど、もっととんがった音楽を求めていた。でも残像カフェを結成して2〜3年経った頃に、自分にとってフォークがいかに大事なのか気付いたんです。もうこれは僕の根っこの部分だな、と。それからは曲作りにも影響が出てきたと思います。「真夏のあの子」は、確信犯的に70年代の歌謡曲をイメージして作りました。


—『君』と『ラストワルツ』はCDと異なるミックスですね。


O : 僕らの世代って、配信に抵抗のある人がまだまだいると思うんで す。そういう人たちに配信でも聴いてほしいと思ったので、違いを楽しんでもらえるようにしました。『ラストワルツ』は、CDを出すときは1週間で9曲作ってミックスしたんですけど、今回は時間があったので、勉強しながらじっくり楽しくやらせてもらいました。


—70年代の歌謡曲やフォークを通過していない若い世代からは、どのような反響がありますか?


O : よく、僕の音楽を通じて70年代の音楽を知ることができたとか、興味を持つようになったとか言われます。元ネタを知らずに聴いて いて、ある日元ネタに出会ったときに「ああ! 大森さんの! 」って思ってくれるみたいで嬉しいですね。僕はフォークをただの懐メロで片付けて欲しくないので、いいところを受け継いで、新たな解釈でどんどん伝えていきたいと思っています。


残像カフェ=大森元気ではない


—自主レーベル"OURLIFE MUSIC"を立ち上げたきっかけはあったのでしょうか?


O : 僕らが今までリリースしてきたcoa recordsは、「バンドが好きなようにやればいいし、また一緒にやりたくなったらやろうよ」と いう、すごく自由でタフなレーベルだったんです。だから、とりあえず自分達でやってみようと思った。曲はたくさん出来ていたし、全国展開じゃなくてもいいから、とにかくフットワークを軽くして発表していきたかったんです。レーベルとしてはまだ準備段階ではあるんですけど、ネットの通販を始めたりしています。


—ソロ名義での音源『rain rain rain』もリリースされましたね。


O : ずっとソロでも活動しているけれど、ソロ名義で音源を出すのは今回が初めてなんです。残像カフェは今年の頭にメンバーが抜けて、新体制でやり始めようとしているところなので、しばらくはソロも本格的に頑張ろうと思っています。ちなみにリード曲の「rain rain rain」のPVは、僕を含め、*Inryoku*という自主デザイン・チームで撮影しました。 "傘"って言葉が出てきたら傘が映って、"雨"が出てきたら雨が映るような、近年稀にみるベタベタな作品です(笑)


—ソロと残像カフェの違いは何ですか?


O : 残像カフェは一時期ソロ・ユニットだった時期もあったけれど、"バンド"なんです。僕のアイデアは芯の部分だけでよくて、メンバーによってどんどん肉付けされて変わっていく。バンド・マジックが起こるバンドでありたいので、例え僕がソロのときにサポート・メンバーをつけてバンド編成でやっても、それは残像カフェではないんです。残像カフェというロック・バンドではあるけれど、イコール大森元気ではない。ソロは自分の世界観を100パーセント出すもの。レコーディングでは全ての楽器を自分でやることが多いんですけど、コーラスを10人分重ねたり、アコギだけで6本重ねたり、ライヴで再現できないものを作っています。


—ソロ名義のときは、ライヴでの再現性を気にしないのですか?


O : はい、全く。解釈を変えてライヴでやるという感じですね。まあ、 お金があったらバック・バンドをつけたいんですけど(笑) ずっとアコースティック・ギターでやってきて、何か面白いことをしたいなあと思って、今年の頭くらいからエレキ・ギターで弾き語りをしています。最初のうちはすごい爆音でやっていたけど、最近は指弾き。いろんなエフェクターを使ったりして、エレキならではの弾き語りが出来たらと思っています。


—次作はソロ名義でリリースされるのでしょうか?


O : 秋にまた3曲入り位の音源を出そうと思っています。それから、年内にフル・アルバムを出せたら。一年以上前から毎月新曲を作ってはレコーディングをしていて、曲はいっぱいあるんです。でも曲が多すぎても、どれを入れるかで迷うんですよね(笑)


—制作の際にコンセプトは決められているのでしょうか?


O : コンセプトを決めるのは好きですね。アルバムごとにカラーを作りたい。このアルバムがなかったら作らなかっただろうな、という曲もあります。配信の場合、シャッフル機能とかあるからアルバムの聴き方は様々ですけど、やっぱりこの曲順がいいとか、このアルバムは同じ歌詞が何回も出てきている! とか、そういう流れのある感じが好きなので、配信の際は是非全部揃えていただきたいな(笑)


—秋のシングルのコンセプトは出来ているのでしょうか?


O : 夏の終わりのイメージですね。毎月作っている新曲も季節感が詰め込まれている感じ。季節が変わるごとに曲を作っていたいと思っています。



rain rain rain / 大森元気 も同時配信開始!


「季節が変わるごとに曲を作っていたい」と話してくれただけあって、リード曲の「rain rain rain」をはじめ、「窓」「梅雨入りのニュース」「さみだれ」と、梅雨を連想させる曲を収録。ボーナス・トラックとして「君のブルー」と「雨の中、女の子」のデモ・バージョンをプレゼント。梅雨が明ける前に是非聴いてみて下さい。


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LIVE SCHEDULE

  • 7月4日(土) @荻窪ベルベットサン
  • 7月7日(火) @青山月見ル君想フ
  • 7月19日(土) @京都VOXホール
  • 7月20日(月・祝) @新宿JAM


LINK


PROFILE


残像カフェ

2001年結成。60〜70年代の邦楽・洋楽を独自の解釈でポップに仕上げた世界観とアグレッシヴなライヴで注目を集める。ルーツ・ミュージックに迫った『今宵&みゅーじっく』、残像カフェのイメージを決定づけた『3月のシーン』『4月のことば』、西鉄のCMソングに起用されたタイトル曲を含む『あたらしい日々』、初期メンバー脱退後に強力なサポート・メンバーを配し作られた『めくるめく僕らの毎日』など次々に作品を発表。音楽に目覚めるきっかけとなった南こうせつ氏のラジオ出演(02年)の後、南こうせつとかぐや姫の2ndアルバム「おんすてーじ」の 07年リマスター盤CDブックレット内にロング・ライナー・ノーツを執筆。また「楽しい中央線」「QUICK JAPAN」などでも熱くフォークを語る。2004年より、大森はバンドと並行して弾き語りライブをスタート。2009年残像カフェ・メンバー脱退によりソロ活動を本格化。


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この記事の筆者
井上 沙織 (さ)

ototoy編集部で日々山盛りの仕事に囲まれながら、素敵な音楽や人との出会いを探しています。

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