POWER DA PUSH第4弾! 現場で大注目のGAMEBOYS!
OTOTOYのヒップ・ホップ担当こと和田隆嗣が、毎月一押しのヒップ・ホップ・タイトルを追い続けるPOWER DA PUSHシリーズ! 第4弾は、今現場でホットな評判を得ているGAMEBOYS! 今作は、ABCのメンバーとしても精力的に活動しているVOLO aka JZAを迎えてのリ・プロデュース作品! キャッチーなキャラとは裏腹に、日常の中の悲喜交々を時にシニカルに、時に自虐的でユーモラスな視点で切り取っていくラップ・スタイルが炸裂! これを聞かずして何を聞く!?!?
これがイツモドオリのヒップ・ホップ・スタイル
GAMEBOYS × JZA / 1.5
【価格】
150円 / 1500円(MP3のみ)
ヒップ・ホップ・アーティストを輩出している千葉県柏市レペゼンのCHAPAHとKAICHOOの2MCからなるGAMEBOYS 。彼らが2011年に自主リリースしたEPをAIR BOURYOKU CLUB 、KOGAI UNITでの活動も記憶に新しいVOLOが、トラック・メイカー名義のJZAとして、オリジナルの7曲と新曲7曲(スキット、イントロも含む)を追加し“リ・プロデュース”。
GAMEBOYSの露出の多さにはかなり前から注目してました! リリース・タイミングで取り上げることは出来なかったですが、今改めて特集を組めて良かった! だって、これからは否応無しに目に入ってくるMCだからね。千葉県は本当にヒップ・ホップ・シーンが濃く根付いていると思う。今後も大注目のエリアっす! リリースおめでとうございます! (OTOTOY / 和田隆嗣)
シーンの最先端を追い過ぎて疲れちゃった人へ
活況を呈する2012年の日本ヒップホップ・シーン。その中でも今スポットライトを当てたいアーティストがいる。それは7月にアルバム『1.5』をリリースしたGAMEBOYSだ。彼らをプッシュする理由は、その懐かしくも新しいセンス。彼ら自身はまだ若いにも関わらず、スチャダラパーやEAST ENDなどのニュー・スクールのヒップ・ホップが持っていた雰囲気を、どこか感じさせるところがある。ニュー・スクールが全然「ニュー」ではなくなって久しいからこそ、ひと回りしてニュー・スクール的ヒップ・ホップは今のシーンには稀有だ。とはいえ、彼らはそれを狙ってやっている風には全く見えないし、筆者も「トレンドは繰り返す」的な紹介をするつもりは無い。それだけ『1.5』は、流行やシーンの流れから切り離しても十分に語れる程に、楽しい仕掛けが満載のアルバムなのだ。なので、ちょっと日本語ラップから離れてた人も、シーンの最先端を追い過ぎて疲れちゃった人も、彼らのアルバムを聴いてラップがどれだけ個性的かつ魅力的な音楽なのかを思い出して欲しい。これを聴いて皆、何を思う!?
GAMEBOYSは千葉県柏市出身のCHAPAHとKAICHOOの2人によるユニットだ。そして、今作のプロデューサーは現場から熱い支持を受ける同じく千葉県出身のラッパー、VOLOだ。別名義であるDJ/プロデューサーのJZAとして参加し、新曲7曲のプロデュースと、GAMEBOYSのオリジナルの7曲を"リ・プロデュース"している。このオリジナル曲には、昨年彼らが自主制作したEPに収録された「チューイングガム」も収録されており、彼らを知るにはうってつけの一枚だ。全体的にシンプルでドライな空気感を持ったJZAのビートに、コーラとかポケットの事とかびっくりするくらい普通の事をネタして、GAMEBOYSがラップを乗せて行く。それが何故か相性がとても良くて頭から離れない。
まず、GAMEBOYSの2人のキャラは言うまでもなく良い。ゲームに関するラップをするわけでもないのにその名前がしっくりくるのは、KAICHOOとCHAPAHの親しみの持てるキャラと、GAMEBOYという言葉に含まれる懐かさに通じるものがあるからだ。アンニュイな顔と脱力した声でも、キッチリと韻を踏んで地盤を固めていくラップをするKAICHOO。人懐こそうな笑顔にコミカルな声だが、急降下して皮肉っぽいジョークを効かせるCHAPA。この2人は、対象的なフロウでも似たもの同士の友達といった風貌だ。なんだか同級生にこんな2人組がいたような気がするぐらい親近感たっぷりである。それを踏まえて、JZAのチープかつドライなトラックが冴えを見せている。無意味な会話のようにも聞こえるGAMEBOYSのラップとの相性の良さは、例えるならば、扇風機が届ける安っぽい涼風と、それを受けながらする友達との下らない会話、といったところか。本人達によれば、今作は夏にリリースしたかったとの事だが、日常の1ページのようなジャケット含めて、全てが意図的に夏休みに向けて仕上げられたものなのじゃないかと勘ぐってしまうぐらいだ。
だが、こんな具合に『1.5』の細かい点に気がつく頃には、リスナーにはもう毒が回りはじめているのだ。彼等の聞き取りやすいラップを吟味してみると、馬鹿馬鹿しいほどシンプルに見えたトピックが、段々と深いテーマの比喩のように聴こえてくる。ROCKASENのTONANを迎えた「ONE LOOP」はループ・サウンドの中毒性と繰り返す日常を掛けてるようだが「暗い話ならまた後で。ネガティブ・シンキングは既に過去形。(CHAPAH)」や「昨日と同じ? それでもハッピー。やっぱり? また、いやまだ途中?(KAICHOO)」といったリリックから、こう着してしまっている何かを揶揄しているようにも聴こえる。そして、フリー・スタイラーとしての定評も高いCOBA5000を迎えた「BLACK COKE」は、彼らの侮れない部分が最もよく出た曲だ。まず、イントロが聞こえると、コーラを思わせるタイトルに見合わないダークなサウンドに、つい違和感を持ってしまうだろう。そして、最初に耳に飛び込んでくるCHAPAHのラップが秀逸だ。徐々にトピックをコカインと勘繰らせる16小節にどんどん引き込まれる。曲にはっきりと答えを出さずに終わるものだから、リスナーは怖いもの見たさにリリックの内容を確かめたくなる。そして何度も聴き直しては、考えを巡らせてしまうだろう。この「BLACK COKE」は彼らの食えない側面がよく表れている。コミカルな部分に釣られてホイホイと買ってしまうと、蟻地獄ならぬ勘ぐり地獄を味わうことになるのだ。
ヒップ・ホップはリアルであることがクールとされ、自分や自分の身の回りのことを直接的にリリックにすることも多い。しかし、GAMEBOYSは具体的な描写ではなく、ワード・プレイから彼らのリアルな生活感を伝わってくる 。しかも、何度か聴くことで、トピックに対して言葉のチョイスに少しのズレを持たせてあることに気が付く。そうした解釈の余地を残した知性のあり方が、ニュー・スクール的だ。また、オリジナリティあるスタイルや、高いスキルのフロウで勝負するアーティストが群雄割拠する今だからこそ、ニュー・スクールという居そうで居なかったラップ・スタイルがヒップ・ホップ・ジャンキーのツボも押さえている。しかも、GAMEBOYSの所属するVOLOによるVLUTENT RECORDSはこんな一癖も二癖もある連中の集まりだ。
VOLOがレーベル設立と共にpiz? と組んだユニットであるABC(Air Boryoku Club)は、時と共にライヴ・パフォーマンスを通じて着実に現場での評価を上げ続けている。そしてライヴ活動だけでなく、GAMEBOYS以降のVLUTENT RECORDSはクオリティが高いビデオをYouTubeに連投している。今日において第二の現場と言っても過言ではないインターネット上でも人目を集めるのは、もはや時間の問題だ。まだ旗揚げ1年と間も無いが、既にVLUTENT RECORDSは紛れもない存在感を発揮し始めているので、次の作品に期待だ!(text by 斎井直史)
POWER DA RECOMMEND
ABC(VOLO+piz?) / ABC
2010年、好事家達を唸らせた"VEAZY"が記憶に新しいVOLO A.K.A JZAと、トラウマ軍団VANADIAN EFFECTの酩酊担当Piz? による30日間という超短期間に制作された科学実験の研究レポート!! OMSB'EATS(SIMI LAB)、KMC(POPGROUP RECORDINGS)、WO2X7(VANADIAN EFFECT)、JJJJ(FIVE STAR RECORDS)参加。
RHYDA / FREEWHEELIN' THE HIGHFIELD
RHYDAが仲間と遊びながら吐き出すリアリティーは、まだ誰も言葉にしたことがないものばかりだ。世間のカラカラとした狂騒に隠れて、思い出し笑いのようにふと湧き上がり、脳裏にこびりつく言葉たち。描き出された夜の光景。夢と現実には境などなく、延々に続く今をどう生き、どう戦い、どう遊ぶか。一見無益なその衝動に純粋に向きあう者にとっては、RHYDAの言葉に共感にも似た感情が生まれるはずだ。
KMC / 東京WALKING
今まで発表された楽曲は、フィーチャリングや客演での音源のみの、言ってしまえば「無名の新人」であるKMCが、POPGROUPのHIPHOPのアルバムリリースとして、RUMI、環ROYに続くのには、勿論理由がある。キャリアが無くとも、誰にも負けない熱い気持ちと、強烈な個性と若さがある。色々な人々の心に響いていく。KMCの HIPHOPを一度聴けば、きっと伝わるはず!!
PROFILE
GAMEBOYS
CHAPAHとKAICHOOのともに千葉県柏市出身、在住の2MC。ゴリゴリのハードコアなスタイルやコンシャスなアンダーグラウンドなスタイルが主流の柏において、IT'S MODORIなスタイル! 生活感丸出しかつ自由な楽曲は異端ではあるが、親しみやすい。柏を代表するCLUB LUZROOTSでは、最も多く出演したグループでもある。CHAPAHの高めのよく通る声とフローで語られるリリックは、とてもキャッチーでユーモラスだがシニカルで自虐性が高くGAMEBOYSのスタイルの根幹となっている。おりそれにまとわりつくKAICHOOのモタっとしたフローに全く何にも言ってないようで深そうなリリックはよりGAMEBOYSをオリジナルな存在にしている。
JZA
千葉県松戸市出身在住VLUTENT RECORDS、AIR BOURYOKU CLUB、KOGAI UNIT所属のRAPPER。VOLOのDJ、トラック・メイカー時の呼び名。WU-TANG CLANのRZAに対する憧れとJAZZからのサンプリングを主とするトラック・メイクをしてたことが名前の由来。結果的には飽き性且つ、天邪鬼な気質のそれは現在、由来の意に形を止まる事はなかったがあの晩、この晩、ギンギンにエレクチオン!! そんなサウンドを最近は目指しているらしい。