febbの季節が到来!! 重量級1stソロ・アルバムがカミナッチャ!!

昨年の日本語ラップ・シーンにおいて目覚ましい活躍をみせたFla$hBackSの中心人物、febbは16歳から活躍するラッパー / トラックメイカーである。ファースト・ソロ・アルバム『The Season』が遂にそのベールを脱ぐ日がやってきた… 満を持して放つ本命盤!! 新しい季節の到来を告げる2014年のマスター・ピース間違いなし(マイク5本決定)!!
Fla$hBackSインタヴュー記事はこちら
febb / THE SEASON
【価格】
WAV・mp3とも 単曲 250円 / まとめ購入 1,800円
【収録曲】
1. No.Musik
2. Time 2 Fuck Up
3. Walk On Fire ft. KNZZ
4. Time Is Money
5. Hustla / Rapper
6. On U
7. This Town
8. Deadly Primo
9. The Test
10. PeeP
11. Season A.K.A Super Villain
12. Another One
13. Skip
14. Navy Bars
INTERVIEW : febb
2012年暮れ、東京の地下から日本中にその名を一気に知らしめたFla$hbackS。そのフロント的存在である若干20歳のfebb a.k.a. Young Masonが初のソロ・アルバムをリリースする。たび重なる発売延期のアナウンスに焦らされたにしても、2013年はFla$hbackS以外の活動に関しても、コンスタントな客演もあり、ラッパーとしての彼の認知も板に付いたfebb。そんな知名度とは裏腹に、しかし、彼にとって今作『The Season』は初のソロ・アルバムなのだ。
febbのラップの特徴は、その言葉のぶつ切り感であり、そのリリックの断片が感じかたによっては、いかようにも鈍い光を放つような印象を与える。一聴しただけでは、彼のラップは不思議で、地味ではあれど、聴けば聴くほどに味わい深いという。その点にいおいては、ニューヨークのヒップホップ黄金時代を築き上げた往年のリリシスト達に通じるものがある。Fla$hbackSでは個性的なグルーヴを持ったjjjのラップがあるからこそ、対照的なfebbのスタイルが浮き彫りになる。ソロになった場合、作品としてそのスタイルをどのように仕上げたのか? そこが本作の聴きどころのひとつだろう。
今回のインタヴューでfebbは、問いかけに反射的に答えたかと思えば、(表情を変えながらも)黙って言葉を探る場面が非常に多かった。それはまるで、febb自身が自分の中で急成長する音楽観を、まだ自分自身でも把握しきれていない様子であった。しかし、それだけに彼がYoungest In Charge(最も若き責任者)と自らを語る所以が垣間みれる内容になった。それでは、『The Season』への込められた想いを語った3時間のインタビューをどうぞ!
インタビュー & 文 : 斎井 直史
アルバムのために一本勝負で録ったって感じっすね
ーー丁度去年の今ごろFla$hbackSのインタヴューをしたんだけど、リリース後の反響を聞きたいです。
febb : 良かったすね!
ーー本人たちとしてもFla$hbackSは予想より大きな反響だったんじゃないですか?
febb : そうっすね。予想よりデカい反響だったし、Fla$hbackSを出したことでソロを考えなきゃいけないってなった。それからは自分でやることを、自分で課題にして作っていったっすね。
ーーそれにしても、アルバム・リリースを知ったときはFla$hbackSのリリースから間もなくで急に浮上した計画のような印象でしたけど、どんな流れで決まったソロ・アルバムだったんですか?
febb : 5月ごろ、事務所で話しをして、ソロやりたいなら、そろそろスタートしようかって。
ーーFla$hbackS以前からあった構想なんですか?
febb : 考えはありました。まあ、あれからいろいろと変わりましたけど。
ーーそれはアルバムのコンセプトが?
febb : いや、これにコンセプトなんてないんで。ソロ・アルバムだから、febbが詰まったアルバムにしたかったんすよ。『3000』(注1)とかビートが主体のアルバムは出したけど、ラップのアルバムを出すなら、あまり流れを汲まない人でやりたくて。
ーーところで、『The Season』っていうタイトルの由来は?
febb : なんだろう… 由来かぁ~… 。四季の変わり目を言い表したかったし、一番バンっと出せる言葉だなって感じたんですよね。
ーーあぁ~「俺の『シーズン』だぜ」っていう。」っていう。Fla$hbackSとソロの違いって意識します?
febb : 前は意識したっすけど、そのころの曲は入ってないっす。ソロだけで、アルバムのために一本勝負で録ったって感じっすね。
ーー例えば、Fla$hbackSは東京な感じじゃないですか。
febb : まあ今回は、どこでもない感じっすよね。
ーーうん。それはなにから来たのかなって。いい意味で街もなにもレペゼンしてないですよね。
febb : まあ、えっと、うーん…。そもそも、好きなアーティストの情報を集めたり、CDをネットで落として聴いたりしてたような時期から、「なかでもこいつが好きだな」っていうのがあるんですよ。それらを、自分でやりたいようにできるのがP-Vineだった。それに好きな形でやらせてくれるのがWD Soundsのマーシー君。トラックとかを頼める人も居たけど、そこをあえて頼らずに、いちど本当に自分が好きな人たちを、1枚形にして落とし込もうと思った。そして、それをP-Vineから出すってことにも意味があるって思ったんですよね。簡単に言えば「ヒップホップっていう音楽だけで勝負したい」っていう気持ちで作りましたね。
ーーだから、どこっぽいとかがなかったんですかね。
febb : うーん、まぁそう… かなぁ~…。まあ、そういう”街感”ってあってないようなもんだし。
ーーいや、それを言えるのはいいアーティストだからだと思うんですよ。頭ひとつ出る所以であり、違いなのかなって思います。
febb : 違いは見せたかったっすね。Fla$hbackSで、「febbはこういうラップをする奴」っていうイメージが付いたかなって思うんですよ。イメージっつっても、Fla$hbackSはそんなにシーンに大きく残せたものじゃないかもしれないけど。でも、それを裏切るだけで終らせたくないっていうか…。「あの人はこの人の下だからミックスは誰々なのか」とか、系譜を辿られるものにしたくなかった。でも、このアルバムに変なこだわりはなかったっす(笑)。マーシー君と話しながら、好きにやりました。

変に考えないよう、あえてタイトルだけで決めた感じっすかね
ーージャケは、アルバムのイメージを象徴しているんでしょうか? そこに込めた意図は?
febb : あれはですねぇ、それは良い質問なんですけど(笑)。Guessっていうグラフィティ・ライターが居て、ニューヨークで、ドリップセットっていうスタイルのタグとか描いてる人でして、その動きに格好良いと思った。
ーーごめん、グラフィティ関係はあまり詳しくないんですが…。
febb : 元々「KIDS(注2)」っていう映画に出てた奴らの友だちっていうか。自分よりは上で、30代前半くらいのひとですね。
ーー東海岸のヒップホップ・シーンが、SupremeとかZOO YORKと繋がって、その中でグラフィティ・ライターが活躍してたんですね。その中の人に描いてもらったってのは、デカいことだと思うよ。
febb : それもマーシー君がすごい動いてくれたんですよね。5月ごろ、ニューヨークまで行って話してきてくれて。だけど、俺はアルバムができてなかったから一緒に行けなかった。本当はニューヨークでマスタリングとかもしようって話だったんだけど。
ーーあと、Ski Beatzのクレジットは誰もが驚きますよね。
febb : マーシーさんがNYに行ったときSki Beatzに会いに行ってビートを貰って帰ってきてくれたんですよね。
ーーへぇ! 現地直送なんですね。
febb : こういうタイミングじゃないとできないことだから、この機会を活かそうって思って。
ーーあぁ~… ストイックですね。ちなみに、曲順は無造作に感じましたが、どうに考えて決めたんですか?
febb : 当たり前なことだけど、聴いてるうちにいろいろと考えちゃうじゃないですか。だから、変に考えないよう、あえてタイトルだけで決めた感じっすかね。
ーーでは、曲のテーマってどう決めるんですか?
febb : うーん… 例えば「Hustler/Rapper」とかは、みんなのケツを叩くじゃないけど、「やりたいことあるんだったら、やったほうがいいんじゃないの」曲っていうか…。
ーーいや、こんな質問したのも、今回のアルバムは”推して知るべし”じゃないけど、明確な意味を持ったリリックの曲は少なかったって思ったんですよね。
febb : それだけ、よりヒップホップになったんだと思うっすね。

「他との差ばっか見てどうすんだ」っていうか
ーーところで初めてfebb君のラップを聴いてからずっと思ってたけど、ラップのフロウはB.D.さんの影響ですか?
febb : 確かにB.D.さんは、言い切りかたが格好良いなって思いますね。でも、俺のはいい意味でオチがないと思う。だから、自分で聴いてみて思ったんですけど、車乗るときに聴いてほしいですね。洗濯するときとか、待ち時間とか、洗い物してるときとか(笑)。
ーー今作について聴いてると、どうしてもFla$hbackSとの違いとか意識して聴いてしまうのですが、まずFla$hbackSの反響についてfebb本人としてはどうなんですか?
febb : うーん。このくらいで、なんかいわれるのは嫌かなって。「じゃあ、これでいいんだ」っていうか。なんていうんだろう…。
ーー評価されると、「これが自分にとって次の壁になっちゃうのかな」みたいな?
febb : そうそうそう。そうっすね。まぁ、それをとやかくいってもしょうがないから、自分はそういう評価とか見なきゃいいんだって思うんですけど。なんつーか… まとめないといけないって思うんですよね。「みんな格好良いことしたくないのかな」って。「他との差ばっか見てどうすんだ」っていうか。
ーーでは、Fla$hbackSの反響はそんなに自分にとってそんなに嬉しいものではない?
febb : 反響は嬉しいけど、Fla$hbackSは自分で聴いてて、「これヒップホップじゃねーだろ」って思うんですよ。好きにやってたけど、もっとヒップホップ然としてるほうが、ヒップホップだなって思う。イッちゃってるだけの奴のが格好良いつーか…。出してからそう思ったんですよ。Fla$hbackSは音の鳴りとか、声の感じとかも、バンドみたいじゃないっすか。その感覚でラップをやるのが良いのかもしれないけど、ヒップホップってものをやらないと、いつまでたっても終わらないっていうか。ヒップホップが好きだし俺は。ていうか、ヒップホップっていう音楽をやってて、ヒップホップをやってる意識の人って、実はあんまいないんじゃないっすか…。
ーーごめん、具体的にはどういうことかな?
febb : (黙って考えこむ)うーん…。
ーールールを無視して作るよりも、ルールのなかで表現の密度を高くすることが重要だってことですか?
febb : そういうことっすね~(笑)。
ーーなるほど。じゃあ、さっきいってた「まとめなきゃいけない」っていうのは、そういう意味なんですね。でも、すっごい大変そうですね。
febb : まあ、次は次ですね(笑)。
ーーファンとしてFla$hbackSの次にも期待してるけど、別に格好良ければなんだって良いと思いますよ。
febb : そうそう、そうそう。格好良いと思ったら、それ自体が格好良いんですよ。
グラミー、穫りたいっす
ーーでも、Fla$hbackSをそう振り返っていたとは意外でした。自分もFla$hbackSを聴いて色々と考えさせられたことがあったんです。どれもそんな曲じゃないのにね(笑)。
febb : ただ、それを、各自で自分なりに形にしていかなきゃいけないじゃないですかね。俺はそれをすげえ思ったんですよ。これはいっちゃいけないことかもしれないけど、「自分の作品で、自分の言葉で、それを出さなきゃダメでしょ」って思うんですよ。
ーーまさに「男は背中」だ。そう! それもFla$hbackSから学んだことですね!
febb : ははは、そうっすね(笑)。次は… 次は! 皆にいえるくらいのことをしたいっす。
ーー例えばなんだけど、自分のキャリアで夢ってあるんですか? Ski Beatzと仕事をしたい、とか。
febb : … グラミー、穫りたいっす。
ーー良い! その潔さが良いですよね! 付き合う人が増えたり、ちょっとうまくいったとしても、まったく夢が変化しないのがいいです。そして、そうにいえるのが清々しい。
昨年の第55回グラミー賞の最優秀ラップ・ソングは、ジェイ・Z & >カニエ・ウェストの「N****s In Paris」。最優秀ラップ・アルバムは、ドレイクの『Take Care』。今年の56回グラミー賞の最優秀ラップ・パフォーマンス賞は、ケンドリック・ラマー「Swimming Pools (Drank)」、最優秀アルバム賞は『good kid, m.A.A.d city』が選出された。コンプトン出身の若干26歳の青年がつかんだアメリカン・ドリーム…。ちなみに、98年の授賞式では、ODBが受賞者のマイクを奪い、WUのアルバムが選ばれなかったことに対し抗議をはじめるという珍事が起きている。怪物級のスターが闊歩するアメリカで、日本のヤングガンはどこまで上り詰めるのか!?
febb : (笑)。… 俺はセクソシストが一番まとめられればいいなって思うんですよ。
ーーん? なになに? いきなり、どういうことですか?
febb : いや、セクソの人たちも喜べる動きができればいいなって思うんですよ。「違うよ」ってセクソの人たちはいうかもしれないけど。
ーーそうなんだ。また意外な落としどころですね。そこまでfebb君にとってセクソシストは影響を与えてくれた人達ってことですか?
febb : そうっすね。人としてっすね。謙虚な人達っていうか…。
ーー謙虚な人たちって逆にヤラれますよね。言葉じゃなくて、その姿勢に。
febb : (遮って)俺、失礼ですけど、斎井さんが一番そういうの、わかるかもしれないんですよね。斎井さんって、インタビューとかで、突っ込まないところを突っ込むじゃないですか。それがビーボーイに笑われるようなことを自ら書いてるのは、なんとなく分かるんですよ。そういう、その、なんつうのかな…。意外とこう、もっとアーティストにアドバイスしていいと思うっす。
ーーえー! そうなの!? でも確かにね、piz?君にも同じようなことをいわれたことありました。アーティストを崇めすぎだよって。
febb : 確かに崇められるのは嫌っすね(笑)。
ーー俺はアーティスト活動した経験がないから、「ここってどうなの?」ってことをいっても野暮かなって思ってました。うーん…。でも、自分は洋楽から入ったからなのかもしれないけど、ヒップホップは頭で理解して楽しむものだなんて思ってないんですよね。細かいクエスチョンを感じても、それをふくめてのノリだと解釈してまして。
febb : そうっすね。俺もっす。
ーーあとはヒップホップってサウンド的にもループしてるし、好きな曲だと何度も聴くじゃないですか。すると、ふと日常の経験とかと重なったりして、クエスチョンだった部分が色々なことと繋がる瞬間が快感じゃないですか。それがまるで啓示みたいな感じしません(笑)?
febb : (笑)。そうっすね。俺もそうです。でも、それはFla$hbackSのが明確で拾いやすいかなぁって思うっすね。
ーー確かにそう思います。『The Seasons』は、Fla$hbackSより行間的な言葉が多いですよね。それこそ「Walk On Fire ft.KNZZ」じゃないけど、撒菱だと思います。
febb : イエス、メン(笑)! そうですね。それこそ、俺がいいたかったのは、「『俺がやったあと、誰がやるんだ』ってことを作品でいえない奴はダメだと思う」ってことかもです。
ーー最後に本人としていいたいことは?
febb : Check This Shit Out Y'all. 3回聞いて下さい。いや4回っすね。
注1 : 『3000』 – febbによるMobb DeepやCassidy、Adriana EvansやD’angeloのリミックスを収録した1枚。2011年に自主制作でリリース。
注2 : 『KIDS』 – ラリー・クラーク監督による1995年のアメリカ映画。ニューヨークのストリート・キッズの荒廃した青春をドキュメンタリー・タッチで描いた異色の青春映画。 主演は全員が素人の少年少女による映画だったが、ヒロインを演じたクロエ・セヴェニーは本作が出世作となった。
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東京の下町エリアを地元とする大吉郎、Baccas、そしてDJ KURONEKOの3人が、イベントをとおして出会ったMUTAと結成したグループ、Young Drunker。紆余曲折を経て2013年11月にリリースされた、2ndアルバム。ラッパー勢は、Squash Squad、TK da 黒ぶち、KMC、Chiyori、G3(Infamous Mobb)、トラック・メイカー陣には、Kid Freshino、jjj、16FLIP、nb、YGSP、Ko-ney、febbと、豪華な面子が参加。東京ローカルの今を切り取った名盤。
PROFILE
febb
DJ / ラッパー / トラック・メイカー。16歳でシーンに颯爽とあらわれ、ADAMS CAMPのリミックス・アルバム、自身のトラックと海外のフェイバリット曲をリミックスしたアルバム『3000』の制作、SPERBとのユニット、CRACKS BROTHERSでの暗躍など、多くの客演やトラック提供で、音楽関係者が注目する存在として名が上がり始めた最中、昨年2013年は相棒jjjと共に、Fla$hBackSとして発売した『FL$8KS』で更なるプロップスを実力で勝ち取った。そして2014年1月、初となるソロ・アルバムを完成させ、インディー・レーベルWDSoundsと手を組み、P-Vine Recordsより発売することとなった。今後の活動が見逃せない若手のホープ。