2012/09/19 00:00

中田裕二、2ndアルバム配信&インタビュー公開!

椿屋四重奏のフロントマンとして、日本の音楽シーンに確固たる地位を築き、バンドを解散。ソロ・デビュー第一作目『école de romantisme』では、演奏やミックスを自ら行い、「中田裕二」という1人のアーティストの誕生をハッキリと宣言。そして、約10ヶ月という短いスパンで届けられた2ndアルバム『MY LITTLE IMPERIAL』。前作とは打って変わり、多数のゲスト・ミュージシャンを迎えて制作された今作からは、人間としての中田裕二が、むせ返るような濃度で、くっきりと浮かび上がってくる。自分の思う音が鳴っていないと気が済まないという彼に、活動を続けていく中で起きた変化。そして、一貫して歌い続ける「男女」というテーマ。更には、彼が歌を始めた意外なルーツ。OTOTOYからの配信は初となる、中田裕二の世界(=MY LITTLE IMPERIAL)を覗いてみよう。

インタビュー & 文 : 藤森大河
写真 : 藤森沙羅

OTOTOY限定のスペシャル・フォト付きで新作を配信中

中田裕二 / MY LITTLE IMPERIAL
自身のレーベル「NIGHT FLIGHT」第1弾作品となるソロ第2作。情熱的でダンサブルなロックから、70年代の A.O.R./ブラック・ミュージックのエッセンスが随所に散りばめられ、流麗なメロディアス・チューンまで、前作以上にバラエティに富んだサウンドを展開。

【配信価格】
mp3 : 単曲250円 / 2,000円

【特典】
アルバム購入された方には、スペシャル・フォトが付いてきます!

絶対に相容れない関係を表現するために

——前作は演奏もミックスもかなりの部分をご自身でやられていたということですが、今作はゲスト・プレイヤーの方を招いて作っていますよね。それなのに、今回の方が中田さんの色が出ているように感じました。

中田 : 前作はソロになってからの1stアルバムだったので、構えている部分があったんですよ。どういうスタンス、方法論で「中田裕二」としてやっていけばいいんだろう、ということを考えていて。それで、実際リリースをして、ツアーを回っているうちに、自分がこれからどういうことをやりたいのかがどんどん明確になってきて。だから今回は、前向きな気持ちで作れたんです。例えば、ホーンの音が欲しいなと思ったら、素直にホーンを入れることにも迷いはなくて。前回だったら躊躇していたと思います。

——ゲストの方と一緒にやってみてどうでしたか? 曲が思っていた通りの形にはなりました?

中田 : なりましたし、それに+a(プラス・アルファ)の要素も加わって更に良くなりました。前回のツアー・メンバーが、セッション・ミュージシャン気質というか、あまり原曲通りにやる人たちではなかったんです。最初はちょっと抵抗があったんですが、やっていくうちに音楽的な化学反応というか、マジックみたいなことが起こる瞬間があって。それはインプロ(=インプロヴィゼーション)じゃないと起こらないということも分かりました。その良さを体感出来たことは大きかったですね。

——その感覚はバンド(椿屋四重奏)時代には感じなかったものですか?

中田 : バンド時代は、自分の中で鳴ってる音をきっちり出さないと気がすまなかったんです。

——では、ソロでやっていく中で、良い意味で拘りがなくなってきたんでしょうか?

中田 : そうですね。ゲストの方々は皆さん、音の引き出しを沢山持っているじゃないですか。曲作りをしていても、自分になかったような引き出しに刺激を受けることも多くて。レコーディングの最中にフレーズを変えたりとか、かなり多かったですよ。

——なるほど。レコーディングということでいえば、今回エンジニアとして山口州治さん(THE BLUE HEARTS、THE YELLOW MONKEYを手掛けたエンジニア)が参加されてますよね? 山口さんにお願いしようと思った経緯はどういったものだったんでしょう?

中田 : 山口さんは憧れのエンジニアで、バンド時代からずっとお願いしたかったんですが、今回は丁度タイミングが合ったんです。山口さんは勝手にロックなイメージがあったので、バキバキな音になっちゃうんじゃないかなって不安があったんですけど、全然そんなことなくて。楽曲ごとの世界観をきちんと反映していただいて、素晴らしかったです。

——言い方が正しいか分かりませんが、今っぽくない音作りですよね。

中田 : そうそうそう! それは完全にほめ言葉です(笑)。

——あ、やっぱりそれは意図してたんですか?

中田 : そうです。それは初めから。今回は、ベーシックをアナログ・テープで録ったりもしてますし。昔の曲って、全ての楽器を大切にするというか、演奏者のたたずまいが見えてくるようなミックスをしていたと思うんですよね。山口さんはまさにその感じを出してくれました。今までは、自分のアルバムを完成後、沢山聴くことは少なかったんですが、今回はすごく聴いてますね。録り音とかミックスとか、やっと理想の音で作れたと思っています。

——なるほど。『MY LITTLE IMPERIAL』というタイトルも、自分の理想の音世界を、よりダイレクトに表すという意味を持っているのでしょうか?

中田 : まさにそういう意味ですね。中田裕二の持つ世界観を惜しげもなく出そうという。

——ミックスや音作りも含め、ひとつひとつの楽曲の持つ景色がハッキリしているように感じました。

中田 : 曲を作る時点で、映像や物語が想起されないものは捨てますね。メロディと詞だけでしかないものは絶対に響かないと思っているので。良い曲ってやっぱり、情景が見えるんですよ。

——なるほど。それは、先に作りたい情景があって曲を作るのか、曲が出来始めてから情景が浮かんでくるのか、どちらでしょう?

中田 : 情景を作りたくて作ってますね。最初のメロディが浮かぶと同時に、何となくのイメージが生まれるんですよ。これは男女が危ない関係になっている場面だな、というような。そのイメージをメロディと詞で紡いでいく感じですね。

——今の話もそうなんですけど、中田さんは一貫して「男女の距離感」について歌っていますよね。

中田 : 物事が起こるきっかけって、全て男女にあると思うんですよね。極端に言うと、戦争も男女がいるから起こるんじゃないかって思っているくらいで。争いのもとでもあり、喜びのもとでもあり、全てがそこから始まっている気がします。分かりやすい例でいえば、凄い成績を残したスポーツ選手でも、実は陰で奥さんが支えてたりするじゃないですか。バンドを始めるきっかけも女の子にモテたいからだったりするし。どちらかだけだったら、多分何も起こらないと思います。

——なるほど。

中田 : 男と女はまったく別の生き物ですよね。未だに女性のことは分からないです。女性の方も男性に対して同じことを思ってると思うんですけど。生まれた瞬間から、絶対に相容れない関係ってすごいと思うんですよ。それは絶望なのか何なのか分からないですけど、そういう関係を持ちながらお互い生きている。とても面白いことだと思うんです。だから僕はラヴ・ソングを作ろうと思って作っているんじゃないんです。ただ男女のことを書かないと、どうしても描けないものがあるような気がしていて。なんというか、光と影みたいな、絶対に相容れない関係を表現するために、男と女という関係を利用してるだけなんですよ。

——小さい頃からそういうことは意識していたんですか?

中田 : いや、大人になってからですね。女性は違う生き物なんだなって思い始めたのは。

——そこに気付いてから歌も変わりましたか?

中田 : 変わりましたね。色んなテーマをかけるようになりました。こんなに読めない、奥の深いテーマはないなと思って。やればやるほど分からなくなっていくんですよ。凄い画家や写真家の作品は女性の匂いがすごくありますからね。映画もそうですけど。だから、表現をするうえでは、男女関係というテーマは絶対に必要なのかな、と思うんです。

——そんな普遍的なテーマを色々な角度から分かりやすく伝えていく。

中田 : 難しく聞こえてくる音楽って、「俺の才能すげーだろ? 」みたいな、ちょっと嫌みな感じが出ちゃうと思うんですよ。でも自分がなんのために歌ったり演奏したりするかっていうと、もちろん自分を認めてもらいたいというのもあるんですけど、それ以上に自分の日常にない体験、ファンタジーを自分の曲を聴くことで感じて欲しいという…。それで、ちょっと嫌なことを忘れてくれたらいいなっていう思いがあって。

——音楽を商業的に売るということは、ある意味サービス業のような側面もありますしね。聴き手がいなかったら意味がなくなってしまうし。

中田 : だからといって、お客さんのニーズに全て応えてしまうと、それは芸術ではなくなる。そのバランスは難しいところなんですけど、それが一番うまくとれているのが歌謡曲かなと思うんですよ。それが出来る人って限られてくるし、自分としてはそういうことが出来るように頑張りたいと思っています。

どれだけの人に自分の存在意義を訴えられるか

——そもそも音楽を始めたきっかけは何だったんですか?

中田 : 「ものまね王座決定戦」という番組がすごく好きで(笑)。コロッケさんが同じ地元ということもあって、よく見ていたんですよ(笑)。それで、自分も真似して歌ってみようと思ったのが最初です。だから、きっかけはコロッケさんですね(笑)。

——どんな曲が印象に残ってますか?

中田 : モノマネ番組をよく見ていたら、栗田貫一さんのモノマネに出会ったんです。そこで歌われている歌があまりにも格好よくて、誰の歌なんだろうと思って探したら、チャゲ&飛鳥さんの「モーニングムーン」だったんです。それで、チャゲアスさん本人にも興味を持って。

——モノマネからルーツを掘っていったんですね。

中田 : そうなりますね(笑)。それで初めて買ったCDが「SAY YES」の入ってる、『TREE』というアルバムだったんです。そこから歌に目覚めて、モノマネしながら歌うようになったら、すごく褒められたんですよ。他にあまり取り柄もなかったんですけど、歌だけは褒められたのが嬉しくて。

——なるほど。話は変わるんですが、先ほどもあった男女感というところも含め、中田さんの音楽にある景色って凄く日本的だと思うんですね。例えば、海外で勝負したいという気持ちはないんですか?

中田 : いや、全く興味ないですね。僕は日本人に分かって欲しいという思いでやってるんで。

——どういうことでしょうか?

中田 : ロックの土壌では、まず勝てっこないと思うんですよね。レニー・クラヴィッツのライヴに行ったりしても、もう体の作りが違うんですよ。ギターを持って音楽を奏でるための体なんですよね。日本人が音楽に向いていないわけじゃないんですけど、ロックやブルース、ジャズみたいなジャンルだったら、もう本家には勝てませんというか。それこそ世界を狙うなら、民謡から始めたいです。そういうところから始めないと世界で勝負できないと思うし、自分としてもそっちの方が面白いと思います。

——中田さんの楽曲を海外の人が聞いて、どう思うのかな、というのは凄く興味があります。

中田 : なるほど。でも、由紀さおりさんのアルバムが売れたことは、素晴らしいなと思いました。あんなにベタベタの歌謡曲が海外であれだけうけたっていうのは、本当に素晴らしいことだなって。今、グローバルってよく言われますけど、結局自分のバック・ボーンをよく分かっていないと、どこに行っても受け入れられないだろうと思いますね。

——その考え方を聞いてもそうですけど、中田さんは音楽を作ることで、自分が何者かということを証明しようとしているのでしょうか?

中田 : 実はそうなんでしょうね。一体どれだけの人に自分の存在意義を訴えられるか、というチャレンジをしてるんだと思います。でも、まだ全然満足していないので、一生やり続けるしかないんだろうな、と思ってますけどね(笑)。

LIVE INFORMATION

中田裕二 TOUR '12“IMPERIAL SUITE”
2012年10月18日(木) 札幌 PENNY LANE 24
2012年10月21日(日) 高崎 club FLEEZ
2012年10月26日(金) 東京 日本橋三井ホール 2012年10月27日(土) 東京 日本橋三井ホール
2012年10月31日(水) 京都 KYOTO MUSE
2012年11月1日(木) 神戸 チキンジョージ
2012年11月3日(土・祝) 熊本 Be-9 V1
2012年11月4日(日) 福岡 DRUM LOGOS
2012年11月9日(金) HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2012年11月10日(土) HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
2012年11月17日(土) 郡山 Hip Shot Japan

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約2年振りとなる「アンダーグラフ」のオリジナル作品。自身の新レーベル「Acorn Records」からの第1弾リリース。デビュー・シングル「ツバサ」を彷彿とさせる「出会い」「別れ」「望郷」など、彼らの真骨頂を余すことなく発揮した名曲が6曲詰まった、ファン待望の2年振りのオリジナル作品。

PROFILE

中田裕二
1981年生まれ。熊本県出身。2000年に宮城県仙台にて椿屋四重奏を結成する。2003年のインディーズ・デビュー以降、2007年にはメジャー・シーンへ進出。自身はボーカル&ギターを務め、歌謡曲をベースにした新たなロック・サウンドで多くの音楽ファンを獲得した。2011年1月の突然の解散発表は大きな反響を呼んだ。同年、東日本大震災直後の3月に、被災地や被災者に向けた新曲「ひかりのまち」を中田裕二名義で配信リリース。その後6月から8月にかけてカバー曲を中心に「歌」に特化したプロジェクト「SONG COMPOSITE」の全国ツアーを行い、これを機に本格的なソロ活動に入る。

中田裕二 official HP

この記事の筆者

[インタヴュー] 中田裕二

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