2012/01/07 00:00

nothingman 宮下浩 (Vo&G) INTERVIEW

名古屋の音楽シーンをまとめたコンピレーション・アルバム『IN THE CITY THERE IS A NAGOYA MUSIC』が配信されるなど、東京、大阪、福岡と並んで独自の盛り上がりを見せる名古屋。そのアルバムの1曲目に名を連ねるnothingmanが、ミニ・アルバム『夜をあける』をリリースした。疾走感あふれるポップでストレートな楽曲が魅力のスリー・ピースのギター・ロック・バンドだ。昨年は名古屋のイベント「SAKAE SP-RING」の初日のトリを飾ったり、大阪のライヴ・サーキット「見放題」で入場規制がかかったり、自身初のワンマン・ライヴをソールド・アウトさせたりと、じわじわと人気を集めている。今回、Vo&Gの宮下浩がOTOTOY初登場! 彼の街と日常生活と「あなた」に対する優しいまなざしが感じられるひとときとなった。

インタビュー&文 : 福 アニー

闇をこじあけ、足を踏み出す力を生む。nothingmanのセカンド・ミニ・アルバム!!

nothingman / 夜をあける
【TRACK LIST】
01. あたらしいあなた / 02. スローモーション / 03. music / 04. 声 / 05. レイニー / 06. そばにいたい / 07. 夢の続き

【配信形態・価格】
WAV、MP3共に単曲200円、アルバム購入1,500円

nothingmanも収録! 名古屋音楽シーン総括コンピのフリー・ダウンロードは1月31日まで!

IN THE CITY THERE IS A NAGOYA MUSIC
【収録アーティスト】
nothingman feat.Yuzuru Kusugo(MOTHBALL) / i GO / Theキャンプ / folt / THIS MORNING DAY / シャビーボーイズ / 明日、照らす / TWO FOUR / 小鳥美術館 / 里帰り / theSing2YOU / FU-MU / doesn’t / palitextdestroy / HOT HOT SEX / POP OFFICE / egotrunk / DOIMOI / Climb The Mind / short film no.9 / viridian / ワッペリン / パイプカツトマミヰズ / JONNY

配信期間 : 2011/12/01~2012/01/31

>>>名古屋音楽シーン特集ページはこちらから

夜明けを待つのではなく、自分たちから踏み込んで夜を開けたい

――OTOTOY初登場ということで、まずは結成のいきさつを教えてください。

宮下浩(Vo&G、以下、宮下) : 僕とベースの今井は石川出身で、同じ高校の同級生なんです。そのときから一緒にバンドをやっていて、高校卒業後もやろうよって言ったんだけど、大阪の大学に行くからと断られて。で、僕はわけあって名古屋に引っ越したんですけど、またバンドがやりたいなあと思ったときに、高校のときの誘いは断ったんだからやるとなったらお前が名古屋に来いって話をして。それで来てもらって、半年くらいは一緒に住んでたんです。ドラムはメンバー募集で探して、いまに至るって感じですね。

――借りを返せと(笑)。それにしてもてっきり名古屋出身だと思っていました。高校のときはどんな音楽をやっていたんですか。

宮下 : 基本的にはHi-STANDARDのコピー・バンドをやっていました。

――へえー、意外ですね。nothingmanをやり始めるときに、どんな風なバンドにしようというイメージはあったんですか。

宮下 : ずっとHi-STANDARDのような英語で歌う邦楽バンドが好きだったんですけど、いざオリジナル曲を書くようになって、日本語で歌うバンドにしようとは思いました。

――それはなぜ?

宮下 : nothingman以前のバンドでは英語でも日本語でも曲を書いていたんです。でもそんなに英語に詳しいわけじゃないし、日本語のほうが言い回しも自由がきくし、しっくりきたんですよね。

nothingman

――サウンド面でのイメージは?

宮下 : 結成当初から明確なこだわりはなかったんですけど、コードのループ感は大事にしたかった。3つか4つのコードをループしながら、メロディーに起伏をつけて展開していくようなことを最初はやっていました。そこから派生して、いまはコード・ワークを広げていっています。

――Hi-STANDARDの他に、影響を受けた音楽はありますか。

宮下 : 「このバンドのこのアルバム」っていうピン・ポイントで好きなんですよ。THE GET UP KIDSの『Something to Write Home About』はいまでも聴いています。Blink182やGreen Dayよりも、Hi-STANDARDやHUSKING BEE、BRAHMAN、CAPTAIN HEDGE HOGみたいな日本人が英語で歌っている曲のメロディーや発音がしっくりきてたんですけど、THE GET UP KIDSはその価値観を壊してくれましたね。はじめて国境を越えて、純粋に心の底から好きと思えた。あとはCHARAの『Junior Sweet』かな。

――結構エモい音楽がお好きなんですね。nothingmanの音楽性からHi-STANDARDを想像できなかったので驚きました。ところで、nothingmanというバンド名の由来は?

宮下 : 僕とベースが石川出身で、ドラムが三重出身。名古屋のバンドと言いながら、愛知県民がひとりもいないんですよね(笑)。最初は名古屋で友達も全然いなかったので、ゼロからやっていこうっていう気持ちを込めてつけました。

――いまインディー・レーベルのONE BY ONE RECORDSに所属していますが、いつ頃から?

宮下 : 2009年の7月くらいに自主でレコーディングしたCDがあって、そのときにたまたま代表の柴山(順次)さんと話す機会があったので渡したんです。次に誰か出したいって言っていたので、よければ出してもらえませんかって話して、その年の12月にミニ・アルバム『ライト・マイ・ライフ』をリリースしました。

――そして今回、2年ぶりの新譜『夜をあける』がリリースされました。タイトルが印象的ですが、そこに込めた思いを教えてください。

宮下 : ここ2年くらいはライヴが主な活動だったんですけど、そのときに手紙やメールをいただくことが多くて。なかには心の病を抱えている方もいて、でもがんばってライヴに行ってみたらたまたまnothingmanが出ていてすごく救われた、行ってよかったという手紙をいただく機会が重なったんです。それは自分たちにとってはうれしくて、また音楽をがんばってやっていこうって励みになるんですけど、その気持ちをお客さんにどういう風に返していくことができるだろうって考えて。音楽にできることは小さなことだけど、大なり小なりみんなが心に闇を抱えている、それを音楽によって打開していきたいなって気持ちで『夜をあける』ってタイトルをつけたところもあります。いま目の前にいるひとや気にしてくれているひと、もちろん自分たち自身も変わって進んでいかなきゃっていう。本来なら「夜が明ける」っていうのが正しい表現ですけど、夜明けが来るのを待っているんじゃなくて、自分たちから踏み込んで「夜を開けていきたい」って気持ちを込めたんです。

――こじあけていくってことですね。今作も前作同様ミニ・アルバムですが、なにかこだわりがあるんですか。

宮下 : 僕らは昨年、結成5周年だったので、その節目でフル・アルバムにする話もあったんです。でも、ワンマンやってフル・アルバムを出してだと、自分たち自身でひとつの区切りをつけて落ち着いてしまうような気がして、それが嫌だったのでミニ・アルバムにしたんです。

――そうだ、昨年7月にははじめてのワンマンもやったんですよね。リリースきっかけでもないタイミングでやったのにはなにか理由が?

宮下 : もともとは『夜をあける』のリリース・ツアー・ファイナルで、ワンマンをやるのがいいと思っていたんです。でも3月の震災があったときに、それを記念すべき日として取っておいても、急にできなくなっちゃうこともあるんだと思って。自分たちが「いま」できる最高の動きで、やりたいときにやりたいことをどんどんやっていかないとって思って、すぐライヴ・ハウスに電話したんです。

――震災があって心境の変化があったんですね。

宮下 : そうですね、震災がなかったら7月のワンマンはやってなかったです。

生活とリンクするようなことばのチョイスをしよう

――楽曲の話に戻りますが、どうやって作っていくんですか。セッション? ネタを持ち寄って?

宮下 : 完全にセッションですね。なにも用意せず、スタジオで「いっせーのーで」でやり始めたものを録音します。それをあとでひたすら聞いて、よかったってところだけをピック・アップして、曲を構成して… 。

――まさにいいとこどり(笑)。

宮下 : そうっすね(笑)。そこがよかったから、そこをサビにして曲を作ろうっていう感じですね。

――主導権を握っているのは宮下さん?

宮下 : いや、ドラムがこういうビートだから、ベースがこういうルートだから、こういうメロディーっていうのはありますけど、僕から一方的にこうしたいっていうのはないですね。最初の話に戻るんですけど、4つのコードをループさせるようなセッションで、それを曲に構成していくときにベースがコードを変えていくんです。なので最終的にはその変更されたループにあわせて、僕がのせているメロディーを変えていく作りです。

――なるほど。それぞれの曲も3分ほどと短めですよね。意識して作っているんですか。

宮下 : おっしゃる通り3分半くらいを目指してますね。あんまり長いと嫌だなってだけなんですけど(笑)。初期の頃は5、6分が当たり前だったんですけど、だんだん短くなっていきましたね。そのへんの感覚は、メロディック・パンク好きが影響しているのかな。

――曲作りのインスピレーションはどこから得ることが多いんですか。

宮下 : 日々の生活ですね。結局メロディーがセッションで固まってきても、何を言うかってところがすごく大事で。歌詞とメロディーの雰囲気が一致するまでは、なかなか曲構成も固まらないんです。ようは歌詞がのっていないときは「空っぽ」なんですよね。メロディーという器だけ作ってて、中身がない状態。歌詞だけは全部自分が書くって決まってるんで、どういう情景の歌詞にするのかを一番重要視していると思います。

――今作ではその空っぽの器のなかに、どういった情景を注ごうと思ったんですか?

宮下 : 「名古屋の街」をテーマにしているので、そこで自分が体験した出来事を集めたというか… すごい生活感のある情景だと思います。僕はもともと石川生まれなので、石川にいた自分がこのアルバムを聞いても、その生活とリンクするようなことばのチョイスをしようという意識もありましたね。あとバラードで歌うような題材を、アップ・テンポの曲でやりたかった。「あたらしいあなた」も「スローモーション」も、いままでだったらスロー・テンポのラブ・ソングにのせるような歌詞なんですけど、それをアッパーな曲にのせてみたんです。

――「music」という曲の「僕はことばで/あなたがmusic」という一節がとても印象的でした。「music」でもそれ以外でも、曲作りの際の印象深いエピソードがあれば教えてくださいますか。

宮下 : 電話してるって設定なんですけど、実は「music」は一番最後にできた曲で。もともと僕は6曲でいくつもりで、「music」って曲自体がなかったんですが、うちのドラムがもう1曲あるといいよねって言ってくれて。他の6曲がいまいる街や生活の一場面を切り取っている曲だったので、遠くの街の人とのつながりをテーマにしたんです。あとアップ・テンポの曲が多かったので、ミディアム・ナンバーを。実際この曲、すごく評判いいんですよ。よかったなあ。

――nothingmanは名古屋の音楽シーンをまとめたコンピレーションアルバム『IN THE CITY THERE IS A NAGOYA MUSIC』の1曲目でしたね。東京、大阪、福岡などと同じく、名古屋も独自の音楽シーンを形成していると思いますが、それぞれをどういう風に見ていますか。

宮下 : 僕の思う東京は、ライヴ・ハウスもバンドの数も多いけど、それゆえにひとつのくくりを形成しづらい面もあるのかなあと。もちろん新宿や下北って場所ごとの盛り上がりはあると思うんですけど。大阪も名古屋も東京よりコミュニティは小さいし、いざメジャーになって東京を拠点にするのはいいけど、もともとの地方のお客さんとの距離感とか、難しいところもありますよね。でも名古屋はいま、すごくいい状態だと思っています。

――東京でやりたいっていう思いはある?

宮下 : こだわりはないですね。東京でやんないとバンド活動が回らないくらい求められるようになってきたら、行く必要はあると思う。

――名古屋の新栄club rock'n'rollでよくライヴをやっていますよね。スタンスなどで親近感を感じるバンドはいますか?

宮下 : Theキャンプってバンドがいるんですけど、いま名古屋では最も外に出てライヴをやっているバンドで、振り切った活動をしていていいなと。お互い仲も良くて、2月から一緒にスプリット・ツアーもまわります。

――それは楽しみです。それでは最後に、今年の抱負を教えてください。

宮下 : 1月2日に東京と埼玉をはしごして、TOKYO FMのRADIO DRAGONとNACK5に出させてもらったんです。いままでは関東にあまり行けていなかったので、これからは関東に足を運んでいきたいと思っています。

日本のセントラル・シティー、名古屋から鳴らすストレートなロック!!

i GO / LOVE & BEER

ぐるっと回って着地したのは愛とビールで溢れたドラマチック・シティー! メンバー脱退を機にバンド観を再構築、流行を遮断、時代に背を向け、自らのストロング・ポイントを突き詰めたキャリア史上最もビールが進むアルバム『LOVE & BEER』完成! パンク・ロックの偉人へのリスペクトをモチベーションに、より深い情熱を注いで録音した全10曲!

THE BOOGIE JACK / GALLERIA

名古屋が誇る伝説のバンドTHE BOOGIE JACKが4年間の休止期間を経て奇跡の大復活を遂げる! ずっと待ってた!! 「ロックを続けたい」その衝動だけで作り上げられた全力の感動名盤の誕生に名古屋が再び大合唱する!! 活動再開を宣言するような「Glory Train」「エバーグリーン」、今のブギーだからこそ歌える家族へ愛でいっぱいの「プリンセス!オー!プリンセス!」「ナイスなふたり」など、2011年最新型のブギーが詰まった復活作!! おかえりTHE BOOGIE JACK!!

シャビーボーイズ / こんにちは未来

青くて、切なくて、だけどむちゃくちゃ強い。ピーター(Vo)の描くあまりにも日常的で哀愁を帯びた歌詞、そして心をゆさぶる絶大な存在感の歌。エンジニアに池内亮氏を迎え完成させたファースト・ミニ・アルバム。音楽的に目新しさがある訳ではない。けれど、誰かのマネをしている訳ではなく、誰かがマネできるものでもない。真正面に未来と向き合う、名古屋発のロック・ミュージック。

nothingman LIVE INFORMATION

『夜をあける』 リリース記念ワンマン・ライヴ
2012年1月29日(日) @新栄 club rock'n'roll

nothingman×Theキャンプ スプリット・ツアー 『SUPER STAR MUSIC』
2012年2月18日(土) @下北沢 Cabe Be
w / batta / carusa / and more...
2012年2月26日(日) @京都 VOX hall
w / SATORI / ステレオタイプ / THE SiX BULLETS / やまもとあつし
2012年3月4日(日) @天王寺 Fireloop
w / RED JETS / and more...
2012年3月10日(土) @名古屋 CLUB QUATTRO
w / AJISAI
>>>『SUPER STAR MUSIC』特設サイト

出演イベント
2012年2月4日(土) @新宿 MARZ
w / 空中ループ / wooderd chiarie / キムウリョン(ex.cutman-booche)
2012年2月12日(日) @大阪 Shangri-La
w / A(c) / MILKBAR / root13. / ロマンチップス
2012年2月25日(土) @岐阜 51
w / i GO / 明日、照らす / JONNY / THE BOOGIE JACK / オーバーテイク(O.A)

nothingman PROFILE

宮下浩(Vo/g)、今井昂(Ba/cho)、太田幸伸(Dr/cho)から成る名古屋を中心に活動中の3ピース・バンド。2006年7月結成。これまでに自主制作によるミニ・アルバム、オムニバス、マキシ・シングルのリリース、Ki/oon Recordsより映画『蟹工船』のインスパイア・アルバムへの参加を経て、2009年12月、ONE BY ONE RECORDSよりミニ・アルバム『ライト マイ ライフ』をリリース。2010年3月に、およそ3ヶ月に渡った『ライト マイ ライフ』リリース・ツアーを一旦は終えたもののその後、各地より多数の追加公演依頼をいただいたため、2010年4月より『ライト マイ ライフ tour 2010』をスタート。約半年に渡るロング・ツアーとなる。2010年7月、里帰り、空中ループ、choriとの4組による企画『天の川を挟んで会う』を開催。2011年、1月22日よりライヴ会場限定ミニ・アルバム『会いにいく』をリリース。同時に『会いにいく』リリース・ツアーがスタート。ツアー・ファイナルは名古屋CLUB ROCK'N'ROLLにて、PLINGMINとの2マン・ライヴ。2011年6月、4年連続出演となる「SAKAE SP-RING 2011」へ出演。初日のトリを務める。2011年7月、大阪ミナミのライヴ・サーキット「見放題」へ出演。入場規制がかかるほどの大盛況。またこの月、ZIP-FM「FIND OUT」7月のマンスリー・クローザーを務める。2011年7月23日、名古屋club rock'n'rollにて自身初のワンマン・ライヴを行う。チケットはソールド・アウト。

>>> nothingman official website

この記事の筆者

[インタヴュー] nothingman

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