
OTOTOYで取り上げるラップで、ラフでタフなハーコーものをクローズ・アップするのはこれが初めてだろう。日本語ラップにおけるリアルとは、ある種スケープ・ゴート的なものであった。実際は不明確なリアルの実態がシーンを閉鎖的にし、ヒップホップ独特のレペゼン文化が身内ノリのようなクローズドな雰囲気と繋がってしまったのかもしれない。
2010年。日本語ラップは新たな才能を生み出し続け、今や暴発寸前ともいえる状態になった。そして、リアルの意味も大きく変わったようだ。アメリカで生まれたHipHopを、日本独自のヒップホップに変えるには時間がかかった。Realを解体して、日本なりのリアルを組み立てる作業が必要であったからだ。そしてそのヒップホップ構築のために、HipHopとヒップホップの間を行き来する表現者達が多大な時間と労力を費やしたことを忘れてはいけない。彼らの試行錯誤により、HipHopは削り落とされ、新たに付け加えられ、そして今でも日本独自のヒップホップという概念は追求され続けているのだ。
録音した既存の音をサンプラーで加工し、それらを組み合わせて作るトラック。そして、日々の生活から綴る言葉をリズムに乗せていく。このHipHopの原型を忠実に行うRAMB CAMP。と言ってしまえばアメリカのそれを日本で行うグループに聞こえてしまうだろうか。しかし彼らは、リアルなヒップホップだ。

福岡天神、親富孝通りの代表格ラッパーとして生きる彼ら。ハードコアな街特有の黒くてラフな日常が垣間見れるリリック。そしてその雰囲気を音にして空中に漂わせたかのような、中毒性の高いループ。5月14日に発売する5年ぶりのフル・アルバム『RAMB CAMP』のイントロは、都会の片隅の闇を思わせるようなドラムから入ってくる。ラップが街中の音楽を席巻しようと、こんなビートを聴くことはなかなかできないだろう。2曲目の「Wait So Long」からは、長い間リリースを待ちわびたファンへの愛を感じることが出来る。そして、聴きやすいソウルフルな上モノとドラムが絡み合い、初めて彼らを知る人に聴かせたい冒頭にふさわしい曲。スムースかつ勢いのあるビートに、めっちゃくちゃなラップが交差する4曲目の「Rebel Music」は、レペゼン福岡には不可欠なOlive Oilのプロデュースだ。続く「首狩り族のテーマ」は、ハード・コア・ラップには定番の半人前MCディス・アンセムであるが、各々のラップ・スキルの高さに思わず感嘆してしまう。加えてラップの醍醐味であるマイク・リレーも、ハード・コアな面々が代わる代わるリスナーを捲くし立てる様が、聴いててたまらない。キラー・トラックは7曲目「DA SHININ' feat MASS-HOLE」。昭和的な響きのヘンテコなサンプルを、ドープな領域まで昇華させているMass-Holeとの競演は、煙たいRAMB CAMPのラップと相性がいい。11曲目の「2 Da Bridge」では、DJ KENSAWのオールド・スクールなネタ使いと怪しいドラムの上に、カルチャー間のクロス・オーヴァーをライム、頭を揺らさずにはいられないだろう。最後は、クオリティの高い仕事で全国区クラスの知名度にまで上り詰めたEVISBEATSのトラックが締める。「ステイハーコー! 」の野太い声で叫ぶフックで、陽気に地元愛を表現するのがなんとも彼ららしい。
簡単に本作を紹介してみたが、待てない人に朗報。本作未収録のボーナス・ソング「B-BOY SHIT tomy wealth Remix」をフリー・ダウンロードで提供しても良いとRAMB CAMPサイドから許諾を頂いた。まずはこれを聴いて、今のヒップホップのリアルを感じ取って欲しい。
どんな音楽でも何らかの影響を受けて生まれている。それはラップも然りである。ただ、日々の生活や、取り巻く環境の要素が大きければ、ヒップホップ独自の表現であるリアルの要素が濃くなっていく。リアルな日常を音楽に乗せる。そのシンプルな原型を受け継いだ日本のヒップホップに魂燃やせ!(text by 斎井直史)
「B-BOY SHIT tomy wealth Remix」のフリー・ダウンロードはこちら(期間 : 5/6〜13)
RAMB CAMP5年ぶりのフル・アルバム完成!
RAMB CAMP / RAMB CAMP
2010年5月14日販売開始

1.INTRORAW(WELCOME TO "OY"STREET) Track by RAMP CAMP
2.WAIT SO LONG Track by K.A.N.O
3.CAMP'S RULE Track DJ GQ
4.REBEL MUSIC feat. THE LEFTY(K-BOMB,JUBE) Track by OLIVE OIL
5.首狩り族のテーマ feat NAB(BACK WARS),BOOTY Track by DJ MOTORA
6.LIVIN'TRUTH Track by DJ MAKOTO
7.DA SHININ' feat MASS-HOLE Track by MASS-HOLE(MEDULLA)
8.PARTY LIFE Track by DJ MAKOTO
9.B-BOY SHIT Track by DJ MAKOTO
10.SOUTH SIDE × NORTH SIDE feat J.F.K.asJay-k,B.I.G.JOE Track by DJ PERRO a.k.a DOGG
11.2 DA BRIDGE feat 茂千代 Track by DJ KENSAW
12.俺まだ本気出してないだけ feat YOUTH-K,J-ZO Track by K.A.N.O
13.FOOLS DREAM 2 Track by MAKOTO
14.OUTLAW (HOW HIGH? 1978〜2010) Track by DOPE & CHOPS @ BASE
15.STAY HARDCORE feat NUTS (CUBE c.u.g.p) ,DAM Track by EVISBEATS
HIPHOPを提示する
THE 12 JAPS/DJ BAKU
DJ BAKUと親交が深いMC12人を集結させた今作品では、RAMB CAMPからFREEZが「MY ROOTS」にて参加している。それだけでなく、12人の特徴を掴んだBAKUのトラックと一人一人のスキルが存分に堪能できるDJ BAKUのhiphopとしての集大成アルバム。DJ BAKUがこのタイミングで仕掛けなければ成立しなかったであろう奇跡的な作品といえる。DJ BAKUの、トラック上で繰り広げるMC達の挑戦は、予想を遥かに超える新境地を繰り広げている。日本のヒップホップ・シーンが再度盛り上がろうとしている2009年、その起爆剤的傑作の登場!
MAD POP/環ROY×fragment
鎮座DOPENESSとのユニット『踵』やフリーキーなフリー・スタイルで今最重要注目ラッパー環ROYと、クロスオーバーな活動を続けるヒップホップ・プロデュース・デュオ『fragment』のコラボレーション作品 ! REMIXを手掛けるのは、Olive Oil、EVISBEATS、SKYFISH、PITTERS DEN(bayaka) ! !
The B-Side/AZZURRO
The Notorious B.I.G.のデビュー・シングルのA面「Juicy」はポップだったが、B面の「Unbelivable」はDJプレミア・プロデュースのハードコア・ナンバーだった。このように黄金時代のヒップホップには、12インチのB面に本気曲をしのばせる美意識があり、そうしたB-Side(Masta Ace Incorporatedの同名曲も好きだった! )のハードコア・ヒップホップの質感を2009年的にアップデートした音像を目指した今作。細かなチョップ&フリップ、レイヤーなどサンプリング・サイエンスを突き詰める一方、ランダマイズされたシーケンスやソフト・シンセ、最新のプラグイン・エフェクトも積極的に活用。ロー・テックとハイ・テックを組み合わせ、低域が効きつつもレンジ感のある2009年型ヒップホップ・サウンドだ。更にそのサウンドを際だたせるマスタリングは、半野喜弘やAoki Takamasa作品で辣腕をふるうエンジニア早乙女正雄氏とAZZURRO本人が、共同でプライベート・スタジオLimone Lab Shotoにて行っている。ネクスト・レベルのサウンド・クオリティにも要注目。
PROFILE
1999年結成。2008年現在は、MC FREEZ、MC BIG FACE、新加入のDJ MAKOTOからなる完全現場主義のREAL HIP HOP CREW。福岡 親富孝通りの『CLUB BASE』を拠点として、ハード・エッジなアーティスト達と交流を重ね、スキルを磨く。年間約100本以上のライブ、ツアー、イベントを行い、現場を熱く揺らしている。土臭く、スモーキーなトラックに、自由気ままで遊び心溢れるストレートなリリックでその場を沸き立たせる凄まじいパワーを放ち、偽りのない男臭さにひかれ、多くのオーディエンスから絶大な支持を得ている。FREEZの厳しくも暖かい人間味溢れるリリックと、BIG FACEの唯一無二の声とフロウに、男らしくもソウルフルなビートが持ち味のDJ MAKOTOを加えた新生RAMB CAMPが、2008年の『SOUTHSIDE MOVEMENT EP』に続き、2010年に超特大のフル・アルバムを完成させた。REAL HIP HOP IS BACK!!!