バンドの有機的なアンサンブルが生み出した“化け物”
──ミツメ、4thアルバムをハイレゾ独占先行配信

決して派手な活動ではないのに、ひとたび良質な音楽を求めて踏み込めば誰もがその動向を追っていることに気づく。そんな存在が、ミツメだ。録音物でしか表現できない作品アプローチで生み出された前作『ささやき』から約2年半。その間、大型フェスへの出演やリキッドルームでの自主企画、台湾・テキサス・ニューヨークなどでの海外公演などフィジカルな活動の多かった彼らだが、2016年、ついに待望のフル・アルバムが届いた。

「バンドで演奏する」ということに重きをおいて制作したという今作には、テレビ東京系『モヤモヤさまぁ~ず2』のエンディング曲としてお茶の間に届けられたポップナンバー「あこがれ」をはじめ、それぞれの呼吸を最もベストな形で織り合わせたようなバンド・アンサンブルが生み出す全10曲を収録。

OTOTOYでは今作をハイレゾ配信。これは超高性能の顕微鏡でものすごく美しい結晶を眺めるような高揚感に近いだろう。取材ではメンバー4人に対面。近年の活動から制作の背景を語ってもらった。

ハイレゾ独占先行配信

ミツメ / A Long Day

【Track List】
01. あこがれ
02. 天気予報
03. 忘れる
04. 真夜中
05. オブジェ
06. 船の上
07. 漂う船
08. キッズ
09. 霧の中
10. 幸せな話

【配信形態 / 価格】
[左]24bit/96kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC
※ハイレゾとは?
単曲 270円(税込) / アルバム 2,160円(税込)

[右]16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
単曲 257円(税込) / アルバム 2,057円(税込)

※アルバム購入で歌詞ブックレット(PDF)が付属します


ミツメ / 4thアルバム『A Long Day』 Trailer


INTERVIEW : ミツメ

酒場でみんなで盛り上がりたいから、それにあった音楽を自然にやっていて、そういうのは生活と音楽が近いところにあるからなんだろうなと

──今年の3月に初めてライヴをアメリカでやったそうですが、まずその手応えから教えてください。

須田 : いろんなイベントに出たんですけど、〈バーガー・レコーズ〉のライヴがすごく記憶に残っていて。PAさんにも褒められたんですよね。テンション高めで「最高だったぜ!」みたいな、よくあるアメリカっぽいやつ。どれくらいの気持ちで褒めてくれたのかよくわからないんですけど。

川辺 : 日本だと、いきなり言葉も伝わらないような人達の前にポンと出されて演奏することはまずないですし、周りのバンドがみんなおもしろいっていうのもいい経験でしたね。観客のリアクションもわかりやすくて楽しかった。ギターソロが決まると「HOO!!」みたいな。

大竹 : 向こうの人たちは全然曲を知らないはずなのに乗れるビートだからとりあえず体揺らしとけみたいな感じもあって。

川辺 : ツボをつけば「Wow!!」ってきてくれるような感じというか、向こうでライヴを重ねれば重ねるほど、こういうところがツボなんだなというのがわかってきそうだなと思ったりしました。

nakayaan : 派手な曲だけじゃなくて、スローなグルーヴを出せている曲も結構ちゃんと反応してくれて「paradise」とかを聴いて、『ささやき』を物販で買ってくれた人とかもいて。そういう直接的なリアクションはうれしかったです。

川辺 : 共演者の音楽も天然というか地でやってる感じが凄く伝わってきて良かったです。酒場でみんなで盛り上がりたいから、それにあった音楽を自然にやっていて、お客さんとかもガンガン盛り上がっているみたいな現場を目の当たりにして、そういうのは生活と音楽が近いところにあるからなんだろうなとうらやましく思いましたね。

──演奏環境では日本とは違って恵まれない部分もあったんじゃないかなと思うのですが。

川辺 : そうですね。日本で演奏をする際にもライブハウスによって凄く差があることがストレスになって色々気にすることが多かったんですけど、アメリカはそんな事も言ってられない感じで今はその環境でやれることを最大限やれば良いと思う様になったし、あんまり機材の設備が整ってないことがハードルに感じることなくできるようになってきているかな。

須田 : ニューヨークでライヴを3本やったときに、3日とも立ち位置が違ったんですよ。「アンプは動かしちゃダメ」って言われちゃって、交渉すればなんとかなったのかもしれないんですけど「いいや、これで楽しもう」ってテンションでやったら、そういうほうが刺激的だったというか。気持ちとしては影響を受けましたね。

今までのような、ピッシリ統制がとれている感じよりは、意図しない感じで楽器が絡みあっていたりとか、未整理な部分ができている

──そのようなタフな環境でのライヴ経験も経て、今回の『A Long Day』へと繋がっていくわけですが、今作を作り終えての感想を皆さんに伺いたいです。

Nakayaan : バンドの曲の作り方が徐々に変わってきていて、その曲作りの過程の中で、自分がバッと弾いてみたベースラインがけっこう残っていたりとか、各メンバーの持ち味が出たような仕上がりになっています。そういう部分がちゃんといいレベルまで詰めて出せるようになったんだなって。

須田 : 今回はレコーディング前に合宿に行って、アルバムの流れとか、細かい各楽器のアレンジとかも打ち合わせたんです。そこでたくさん演奏も繰り返したので、無機質な感じが薄いというか、自然に自分たちが今までやってきことを今のフィルターを通して時間をかけて抽出したらこういう音ができたみたいな、そういう感覚は初めてでしたね。

大竹 : 今、無機質っていう言葉が出たんですけど、有機的なアルバムになったのかなっていう。『ささやき』までは、ミツメはトータル・プロデュースというか、最初に完成形があって、それを目指していく、みたいな感じだったんですけど。今回はデモの段階で作りこみすぎずに4人とも自分で色々変える余白みたいなのが用意されていて、その結果、今までのような、ピッシリ統制がとれている感じよりは、意図しない感じで楽器が絡みあっていたりとか、未整理な部分ができている。そこが有機的になったと言えると思います。

川辺 : バンドが最初にスタートしたとき、ファーストとかはギターを鳴らしながらスタジオで弾き語りの曲に肉付けしていくみたいな作り方でやっていたんですけど、そのころはプレイヤーとしてのレベルが今よりも全然低くて。『eye』や『ささやき』ではそこをレコーディングで補った部分もあったんですね。今回のアルバムで人の手による演奏かつ納得できる形にできたのは、ライヴをたくさんしてきたからなのかなって思うし。決してそれはレコーディング技術での編集技術を駆使したこれまでのものを否定するわけじゃないんだけど、組み合わせ次第でこれからいろいろできるんじゃないかなって。


ミツメ / あこがれ

──今回、マスタリングやミキシングとかで工夫した点とか、変わった点などあったら教えていただけますか?

大竹 : 前回までは全体の音像とか音響の処理を大切にしていたかと思うんですけど、今回は楽器のアンサブル自体を重視しているから、それが最大限クリアに聴こえる処理っていうのはしました。前回は誰が何やってるのかさえあんまり関係なくて、僕が3本ギターを重ねたりしてましたからね(笑)。

須田 : あと、その処理以前に、エンジニアの田中くんとずっとやってきたなかでもベストな録音ができるように試みたことが大きかったですね。今回、本番の録音を回す前にチューニングを一曲一曲相談しながら変えたんですけど、きちんとそこで音を決めたのでミックスになってからひっくり返るみたいなことはなかった。

──エンジニアさん含めて、チームとしてミツメが成長している部分があるんじゃないでしょうか。やりやすくなっている?

須田 : 作業のスピードも速くなっているし、お互いにいまやりたいことがはこういうことでっていう意思疎通もできやすくなってるんですよね。最低限のことは話しつつ、新しいことをやってみようっていう雰囲気がある。

──ミツメのレコーディングにおける「あるある」って何かあるんですか? 困ったら必ずこの機材を使うとか、こういう展開にいくとか?

川辺 : 音を汚くする機材をよく使ってますね。その機材のことをふざけて「先生」ってみんなで呼んでいて(笑)。

大竹 : テープエコーがあるんですよ。『eye』のちょっと前ぐらいに僕が買ったやつなんですけど。最初ギターとかシンセに対して使ってたんですけど、ディレイをかけるためにミックスにも使いたいってことになって。でもそのうち音を汚すためだけに使い出して。中の回路が古いので音も古くなる感じがするんですね。ローランドのRE-201っていうやつです。

川辺 : ちょっとキラキラして浮いちゃうような音にはだいたいそれを一度通したりして良い形にならないかなと試してますね(笑)。

Nakayaan : ミックスで最後煮詰まってきて、どうにもこうにもならず、でもここいじったら変わっちゃうしなぁってなったら、しばらくの沈黙のあとに、「『先生』いってみようか」って…… なる(笑)。

須田 : 上のところが気持ち良く若干削れるみたいな効果があるんですよね。耳につくような感じが少し落ち着いたりとか。

川辺:ハイレゾで聴いたらもしかしたら凄くなめらかな純金の表面を見るっていう感じではなく、高解像度で金属のサビを見るみたいな感じになるんじゃないかと思いますよ(笑)。

わかりやすくさっぱり入れちゃうのはつまんないかもねって思っているから、それが僕らのスタンスとしていい形

──さっきもお話ししましたけど、オーヴァーダビングやキーボードの音が今作にはほとんど入っていなくって。バンド・アンサンブルでこだわったところやプレイの聴きどころを伺いたいんですが。

大竹 : 前回はギターを素材のように扱っているところが多かったんですけど、今回はズラーッと弾いている曲が多いので、そこは1番変わっているかなぁと思います。すんなりいった曲はあんまりないですね。「思いついた!」ってなったら早いんですけど、ずーっと頭空っぽにしてやってる感じがあります。「漂う船」に関して言えば、とにかく無茶苦茶やってやれって感じで。左右がチャカチャカなっているのをパッと思いついてやってみたりとか、わりとそういうことが多い気がする。

──川辺さんとの歌との絡みが難しいところだとも思うんですが。

大竹 : 前回までは歌と全然違うことやるとか、あえて邪魔するぐらいのフレーズを入れてみたりしていたんですけど、今回はそこらへんを頭空っぽにして。そうですね…… 本当に何も考えずにやりました(笑)。

nakayaan : 「キッズ」っていう曲はみんなでデイム・ファンクのライヴを観に行った後に、そういったモダンファンクの特徴でもあるベース・シンセのフレーズをちょっと頭に浮かべながら考えて作りましたね。

──今回、すごくうねるようなグルーヴが演奏にあるなと思ったんですけど、その辺、参照したバンドだったりイメージってバンドで共通してあったんでしょうか?

須田 : ミツメって演奏しているときに言葉にして話し合うことが少ないバンドだと思うんですよ。それはきっとメンバーの性格に由来するところで。でも、それのおかげというか、演奏していても直接的にこの曲のこれっぽいフレーズをやろうよっていう話にはならないし。自分がやっていることを他の3人がいいと思っているのか、それとももうちょっと違うことをやってみた方がいいと思っているのか、とかもわからない。一緒に演奏を何時間もやっているのに、ずっと手探りしているみたいなときがあって。でも、バンドらしい説明しづらい着地点みたいなものが見つかることがあるのかなぁと。


ミツメ / オブジェ

川辺 : そうだね。言語化しないっていうのは意識的にやっている気がするね。

須田 : かといって、スピリチュアルなタイプでもないんですけどね(笑)。そういうことではなくて具体的な言葉にすることで、意図しない具体性が出ちゃうっていうリスクはあると思うので、言語化しないっていうコミュニケーションが自然になっていて、それが音にも影響しているような気がします。

川辺 : 僕らが「わかりづらい」って言われる理由ってそこにあるんだとは思うんですね。言語化して作っていないから、言語化もしづらいっていう。わかりやすくさっぱり入れちゃうのはつまんないかもねって思っているから、それが僕らのスタンスとしていい形なのかなぁって思っています。

──川辺さんの歌詞を皆さんは毎回どのように読むのかということも聞いておきたいのですが。

須田 : 僕らは歌入れの時にだいたい初めて歌詞を見るんですけど、川辺君だけブースに入っていないから、エンジニアの田中君とキャッキャ言いながら勝手に妄想しながら読んでいて。いや、基本的には真面目に読んでいます。(笑)今回に関しては誰もが思うような普遍的なことに対して向き合っているような気がして。ある意味で無機質じゃなくてリアリティがあるものになったなと思いました。

──川辺さんご自身としては、何を重視して歌詞を書かれていますか?

川辺 : ひとつのメッセージを伝えたいとかそういう思いでは歌詞を書いてはいないかもしれないです。テーマはありつつも基本的に毎回のスタンスとしては、歌ってみて響きが良かったものを膨らませつつ、最後の行まで書いてみたときに「あぁ、これできたな」っていう自分の中で完成したポイントをいつも追いかけてやっているって感じですね。

──最後にみなさんが目指す理想のバンドの形について伺って終わりにしたいと思うのですが。

大竹 : 他のメンバーはどうかわからないですけど、僕は、あんまり最終的にこういうバンドになりたいとかは考えていなくて、アルバム単位のリリースで考えているんです。毎回今までなにやってきたのかっていうのを完全に記憶を喪なったつもりでやるっていうのは心がけていますね。「今までのミツメはなんだったの?」みたいな。どういうバンドだったのかっていうのを知らない状態でやるくらいが、ちょうど良いかなと。

nakayaan : 個人的にも長いキャリアの中で、いっぱいアルバムを出していて、次々と音楽性が変遷していくみたいな、どんどん変わっていくバンドが大好きで、ミツメもそうありたいなと思っているし、毎回毎回、おもしろいことをやっていきたい。それだけですね。

須田 : そうですね。なんか、具体的な目標みたいなのを立てると固まっちゃうというか、自然に波みたいな感じで進んでいかなくなるバンドなんだろうなぁと思うんです。唯一あるとすれば、これまでにやってないことをやっていきたいなっていう。いろんなところにいくのもそうですけど。具体的な目標は決めずに、でも、やったことない場所でどんどんやっていけるっていうこと…… それはすごく難しいとは思うんですけど。こんなペースで続けていければって思っていますね。

川辺 : 半分妄想なんですが100人が聴いたら100人が良いなって思う作品をバチッと作りたいと思っていて、良い作品を作るのがバンド活動の大きな動機ではあるので、もっと化け物みたいな作品をどんどん作れるようになっていきたいなっていうのはありますね。演奏も所々形を失ったりドロドロになってわけがわからなくなっていくような、そんなバンドになれたらなって思ってます。

インタヴュー : 小田部仁

過去作

【特集】
>>3rdアルバム『ささやき』配信&レヴュー
>>EP『うつろ』配信&レヴュー
>>2ndアルバム『eye』配信&インタヴュー
>>1stアルバム『mitsume』配信&インタヴュー

LIVE INFORMATION

ワンマンツアー〈A Long Tour〉
2016年9月10日(土)@仙台 enn 3rd
2016年9月17日(土)@札幌 COLONY
2016年9月18日(日)@福岡 INSA2016年9月24日(土)@名古屋 CLUB UPSET
2016年9月25日(日)@大阪 Shangri-La
2016年10月2日(日)@東京 WWW X

[その他イベント]
〈A Long Tour〉in Shanghai
2016年6月18日(土)@上海 育音堂
出演 : ミツメ / Gatsby In a Daze / schoolgirl byebye

new solution 3
2016年7月2日(土)@原宿 ASTRO HALL
出演 : ミツメ / ayU tokiO

New Action! 花やしきSP
2016年7月3日(日)@浅草花やしき『花やしき座』
出演 : ミツメ / STUTS / Tempalay / The Sleeping aides&razorblades
DJ : 星原喜一郎 / 遠藤孝行
VJ : ASAKA / OYAMADA
FOOD : くいしんぼうシスターズ / マジョラム / てっちゃんラーメン from ろたす
LIVE PAINT : アディム

『A Long Day』Acoustic Live
2016年7月30日(土)@NADiff a/p/a/r/t

DEERHOOF "The Magic Japan Tour 2016"
2016年12月17日(土)@名古屋 Tokuzo
出演 : DEERHOOF / ミツメ

PROFILE

ミツメ

2009年、東京にて結成。4人組のバンド。

オーソドックスなバンド編成ながら、各々が担当のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表し続けている。そのときの気分でいろいろなことにチャレンジしています。

>>ミツメ Official HP

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インタヴュー

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渋谷慶一郎のレーベル、ATAKの過去音源配信開始、第1弾
・2017年09月11日・渋谷慶一郎、『ATAK015 for maria』DSD版を含む過去作配信第1弾 ということで、今月から毎月11日に、半年に渡ってATAK過去作品を配信リリースしていきます。毎回、ライター、八木皓平によるインタヴューにて解説をお送りします。第1弾は過去作…… と言っても今回初めて世にでる注目音源を含む3作品。まずは初のピアノ作品として渋谷慶一郎のキャリアを語る上でも欠かすことのできない『ATAK015 for maria』。こちらはなんとその制作の起点ともなったDSDヴァージョンが初めての配信。こちらはCD音質版も配信。さらにレーベル初期の作品、『ATAK001 slipped disc』。さらに現代音楽の巨星、高橋悠治とのスリリングなセッション『ATAK002 keiichiro shibuya + yuji takahashi』を配信します。インタヴュー : 八木皓平 要するにすごく僕を取り巻く環境が変わった──『ATAK015 for maria』 ──この定期連載のためにATAK作品をここしばらく色々聴き返していて、ふと思い出したんですけど…… 。 当時から聴いてたんだっけ? ──リアルタイムで聴い
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