2013/09/27 00:00

電子音楽家としてジャンルレスに活動するヲノサトル。彼が8月30日に音楽実験室 新世界で行ったライヴ『MOODCORE presents SUMMER CRAZE SOUND CRUISE』の録音音源を配信開始!! 様々なアーティストとコラボレーションをおこない、生演奏と電子ビートの融合に積極的に挑戦しているヲノサトルだが、今回はギタリストに助川太郎、チェリストに徳澤青弦、そしてヴォーカルとパーカッションで猫沢エミが参加。心地よいムードに包まれ、思わず夏の思い出に浸ってしまう。ヲノサトルが作り出す音世界を、あなたもぜひ体験してほしい。

ヲノサトル

またOTOTOY内のチャンネルTV♭では、8月から9月の2ヶ月間、ヲノサトルをセレクターとして、夏の終わりにぴったりの楽曲をジャンルレスに集めた番組を放送してきました。全4回に及んだ番組のプレイリストも大公開! ぜひチェックしてみてください。「番組を見逃してしまった!」という方も、TV♭にはアーカイヴ機能があり、いつでも視聴が可能です。新音源に加えて、ヲノサトルのムーディーなサウンドに浸ってみませんか?

ヲノサトル セレクト番組『MOODCORE SOUND CRUISE』

>>全プレイリスト大公開!!<<


ヲノサトル / MOODCORE SOUND CRUISE LIVE
【配信価格】
mp3 単曲 150円 まとめ購入 1,500円
HQD 単曲 200円 まとめ購入 2,000円

【Track List】
1. フライ・オーヴァー・ザ・ホライズン
2. エル・スール
3. モリタート - マック・ザ・ナイフ
4. 蒼い夜のマンボ
5. ヒプノティーク
6. 宇宙の豹
7. エラプス
8. ル・トゥルビヨン - つむじ風
9. タヒチ・ハット
10. 不眠症のサンバ
11. ワン・ノート・サンバ
12. ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー
musicians
Satoru Wono (keyboards, programing)
Taro Sukegawa (guitar, mouthharp)
Seigen Tokuzawa (cello)
Emi Necozawa (percussion)

live recorded at Shinsekai, Tokyo
30 August 2013

live producer : Miharu Kanagami (Shinsekai)
live mixing engineer : Tetsushi Miki (Shinsekai)
live recorded by Tetsuya Suzuki
mixed and mastered by Satoru WONO
photograph by Seitaro Tanaka
label logo designed by Atsuki Kikuchi
co-ordination and promotion by Nozomi Sakurai (ototoy)
distributed by ototoy

produced by Satoru WONO

※まとめ購入時には、ライヴの模様やヲノサトルの曲解説を掲載したブックレットが付いてきます!

LIVE REPORT : 2013年8月30日(金)@音楽実験室 新世界

前回開催の3月から約半年。すでにヲノが幾度もパフォーマンスを行ってきた「音楽実験室 新世界」にて、再びMOODCOREイベント「SUMMER CRAZE SOUND CRUISE」が開かれた。今回のゲストはブラジリアン・テイストな奏調で話題を集めるギタリスト、助川太郎に、クラムボンやエゴラッピンなどの大御所アーティストのサポートを務めるチェリスト、徳澤青弦、パリで長年音楽活動を経験し、近年では文筆業での活動も盛んなパーカッショニスト、猫沢エミといったメンバー。全員ソロ・アーティストとしてキャリアを積んできた名手である。このメンバーで果たしてどのような調和がなされるのか、期待が高まるなかでの入場となった。

前回のパフォーマンスではパーカッションに、ドラム缶やタイヤのホイールといった日用品が大々的に使用され、なにやら珍妙な雰囲気を醸し出していたという評判を聞いていたが、今回はコントラバスにボンゴを中心としたパーカッション、ボディの無いサイレント・ギターが用意され、ジャズやミニ・オーケストラを思い起こさせるような編成で配置された。そして、ヲノが使用するキーボード・シンセ類が五台ほど準備され、彼がステージに立つと、まるで楽器に包囲されてしまったかのようなスペースが強いて言えば印象的だった。

左から 助川太郎、徳澤青弦、ヲノサトル、猫沢エミ

今回のライヴを鑑賞する前にMOODCOREの過去公演の音源をチェックしたのだが、まるでスタジオで録音されたかのような演奏の巧さで、ここぞとばかりに決まる各楽器のソロや演奏の正確さには舌を巻く思いであった。しかしあまりにまとまりを感じたために、実際のライヴでは緊張感の強い、厳かな雰囲気で終始進められていくのではないかとイメージしていた。それだけ完成度の高い演奏であったという証拠であるが、実際にライヴを目にする前は、どこか敷居の高さを感じていたのも否定できなかった。

ところがメンバーがステージにはいると、いきなり始まったのがヲノの小粋なトーク。その語り口や話題はゆる~い塩梅で、さらに各楽曲が終了するたびに解説が入るというサービスの良さ。しかし冗長さはまったくなく、楽曲のみでの印象とは全く正反対だったのではないだろうか。実に意外なギャップであった。このMCのおかげで、パフォーマンス全体の抑揚にほどよいバランスが生まれ、鑑賞しているこちらも、いくぶん穏やかな気持ちで聴き入ることができた。MCは配信の音源ではカットされ、あくまでライヴのおまけとなる部分ではあるが、こういったアーティストの人物像がうかがえる要素は、リスナー、演奏者ともにモチベーションを保つ上でないがしろにはできないところである。

楽曲の面で印象的だったのが電子音と生音のバランス感覚で、どちらの特性を殺すことなく、しっかりと生かしている点だった。打ち込みによるテンポを保つための音は比較的多く練り込まれているものの、基本はパーカッションによるグルーヴを前面に押し出しており、そこにチェロの伸びやかな低音、ギターの歯切れ良いカッティング、そして色とりどりに飛び交うキーボード・シンセのメロディが緻密に重なり合っていく。生音の柔らかいアタック&フェードと多種多様の変化を見せる電子音がここまで違和感なく融合されるのは、やはりヲノのアレンジ力の高さがあってこその演出であった。

さらに見逃せなかったのは、あまりにアグレッシヴなヲノのしぐさ。第一部後半のMCでも「最近は演奏しないでヒョコヒョコ動いてばかりいる」と自ら公言するように、キメのポイントでの手振りはもちろん、「エル・スール」、「不眠症のサンバ」といったアップテンポの楽曲ではねりねり踊り出すのだから、ついつい注目してしまう。この点は彼がかつて在籍していたバンド『明和電機』のカラーを想像すると、わかりやすい。会場のお客さんを思い出してみると、本イベントの客層は女性が圧倒的に多かったのだが、おそらくは楽曲のクオリティの高さのみならず、ヲノの気さくな雰囲気にも、少なからず影響があるように考える。研ぎすまされた電子楽器演奏家とおもしろおじさん、この二面性はヲノならではのキャラクターともいえるだろう。

もちろん他の演奏者たちも、演奏だけでなく実に魅力的な雰囲気だった。猫沢ははじめ物静かで落ち着いた印象だったが、ヲノがふにゃふにゃな語りをするたびに笑い、たびたび話題を振られてはスマートに切り返す場面もあった。彼女の日本人離れした、力強く張りのあるボンゴのテクニックをそのまま表したかのようである。対してメンバーの中で唯一、スーツ調のいでたちで登場した徳澤は、ヲノが何度も絡むたび不思議な受け答えをし、妙な味わいを醸し出していた。荘厳な演奏からは、なかなかイメージできないほどの意外性である。そんな中で空気感に締まりを生み出すのがギターの助川で、物静かで落ち着いた口振りは不思議な安心感を与えていた。演奏だけでなく、既にメンバーの性格でも絶妙なバランスを成り立たせていたのは興味深いリンクで、このようにメンバーのキャラクターを引き出されていく様子も、MOODCOREの楽しみ方の一つであるように考える。

開催のたび、楽曲だけでなくメンバー間での組み合わせにもさまざまな色合いが生み出されるMOODCORE。次回はどのようなメンバーで構成される予定なのか、あまりに気が早いかもしれないが、期待が深まるところだ。(text by 高橋拓也)

【Set List】

SET1
1. フライ・オーバー・ザ・ホライズン
2. エル・スール
3. モリタート - マック・ザ・ナイフ
4. ヴィアージェン
5. 蒼い夜のマンボ
6. ヒプノティーク
7. 宇宙の豹

SET2
1. エラプス
2. ル・トゥルビヨン - つむじ風
3. アルマス・イルマス
4. タヒチ・ハット
5. 不眠症のサンバ
6. ワンノート・サンバ
7. オールド・ファッションド
8. ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザーユー

ヲノサトル セレクト番組『MOODCORE SOUND CRUISE』

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ヲノサトルの過去作品はこちら!!

PROFILE

ヲノサトル(computer, keyboards)

作曲家、音楽家。電子音響とムード音楽の融合をテーマにソロCDを発表。95年から「経理のヲノさん」の名で芸術ユニット<明和電機>の音楽監督=足踏みオルガン奏者、03年にはラウンジ音楽バンド<ブラック・ベルベッツ>を結成するなど、様々な形で"現在形のムード音楽”を追求。2011年<moodcore>レーベル始動、2012年<fill>レーベルからCD『舞踏組曲』発売。同年よりDJ ebee#1らと電子ポップ・ユニット<XILICON』>を結成。これまでに『甘い作曲講座』などの著書もある。現在、多摩美術大学美術学部准教授。

>>ヲノサトル Official website

猫沢エミ (vocal, percussion)

1996年コロムビア・トライアドレーベルよりデヴュー。15枚のCDリリース後、2002年よりパリ在住。2011年パリ20区の老舗ライヴ・ホール《フレッシュ・ドール》にて、TAHITI 80, Camilleらとライヴ出演。2012年に自身のジャズ・コンボ・バンド“Emi NECOZAWA & Sphinx”を結成し1st Album『Pyramidia』をリリース。自身のバンド他ピチカート・ファイヴ、MONGOL 800のキヨサク別ユニットNo Problem’s など過去から現在に渡るライヴ・サポート多数。近年はCM、映画音楽制作も手がける。

>>猫沢エミ Official website

徳澤青弦 (cello)

1976年生まれ、東京出身。チェリスト・作曲・編曲家。anonymassメンバー。たくさんの著名アーティストのレコーディングやライヴサポートを熟している。その中にはさだまさし、Chemistry、くるり、the HIATUS、Ego Wrappin'、菊地成孔、ハナレグミ、clammbon、土岐麻子、つじあやの、コトリンゴ、湯川潮音、坂本美雨、naomi&goro、フェイ・ウォン、Van Dyke Parks、Steve Jansen等が名を連ねる。最近では林正樹やトウヤマタケオ等と組んでデュオやソロのライヴも催している。またラーメンズ・小林賢太郎の舞台音楽制作に携わり、評判に後押しされてこれまでに関連アルバムを3枚リリース。

>>徳澤青弦 Official website

助川太郎 (guitar, mouth harp)

ブラジル音楽・ジャズ・クラシック・即興演奏など、ジャンルを超えて活動するギタリスト。ギター、口琴、カバキーニョを併用する独自の演奏スタイルで、多種多様なミュージシャンとのライヴ、レコーディング、ツアーなどに活躍。ブラジルの器楽“ショーロ”を現代的にアレンジしたソロ・アルバム『Noturno』を2008年に発表。ヴォーカリストEMiKO VOiCEとのブラジル音楽ユニット「メヲコラソン」では2008年より4年連続で生音ボサノバ・ホール・コンサートを日経ホール、東京オペラシティなど都内大ホールで開催、例年ソールドアウトの人気企画として継続している。

>>助川太郎 Official website

この記事の筆者
高橋 拓也 (もり)

泡沫大学生。ナゴム好きをこじらせ、現在80's NEW WAVE(おもにドイツ周辺)を掘削視聴中。

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[ライヴレポート] ヲノサトル

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