2013/05/16 00:00

INTERVIEW : yukaD

『Exhibition』というタイトルからわかるように、本作は、ostooandellを解散しソロとなったyukaDが、自分のもてる限りの芸術性や華やかさを丁寧かつ大胆にサウンドとして作り上げ、聴く人に向けて表明していたものである。沖縄を拠点に4人組バンドとして活動していたostooandell。彼らは、青春がつめこまれたようなきらめくばかりのサウンドを生み出してきた。その、自分そのものともいえるバンドがなくなったあとに、yukaDが選んだのは、進化とも変化とも違う、自の力をせいいっぱい使い制作された、奥行きのある音楽表現だった。すべての楽器を1人で演奏し、作り上げたという本作は、ostooandellの積み重ねを大切にしながらも、自分と向かい合うことによって完成した総合的作品である。1年をかけてじっくりと作り上げられた本作について、じっくりとyukaDに話を伺った。

インタビュー&文 : 西澤裕郎

ostooandell、SFでのバンド経験を経て、ついにソロ作品をリリース!

yukaD / Exhibition
元ostooandell(オストアンデル)のボーカル、yukaD(ユカディ)による初のソロ作品がROSE RECORDSよりリリース決定! 多くのリスナーを魅了してきたあの透明な歌声と、類い稀なポップセンスを十二分に発揮した作品です。

【販売価格】
mp3 : 単曲 150円 / アルバム 1,200円
WAV : 単曲 200円 / アルバム 1,500円

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yukaD

私は私の活動をしようっていうふうに吹っ切れた

——yukaDさんは沖縄出身で、19歳のころに一度上京されているんですよね。

yukaD : はい。23歳くらいまで東京にいて、そのあと沖縄に戻りました。東京にいるときもostooandellをやっていたんですけど、ちゃんと活動しだしたのは沖縄に帰ってからです。

——そのostooandellですが、2010年に解散をしましたよね。特に理由を発表していませんでしたが、どういった事情があったのでしょう。

yukaD : 私が結婚して、再び東京に来ることになったんです。そして(バンドとして活動するには)メンバーのいる沖縄から遠すぎるという現実的な問題に直面したんです。

——そうだったんですね。東京に出てきてからは、すぐに音楽活動をしようと思っていたんですか。

yukaD : 活動しようと思っていたんですけど、1人って結構つまんなくて。SFっていう昔からの友だちのバンドがあって、その人たちにお世話になりながら自分ではどうしようかなって期間が1年ぐらいありました。

——まったく別の人とバンドをやろうという考えはなかったんですか。

yukaD : 私はostooandell以上のバンドは作れないって思っているので、全然そんな気にはならなかったです。

——“思春期の想いや若さなど、いろんなものを全てそこにつぎ込んだ感じなんですね。

yukaD : そうですね。相棒は15歳くらいから一緒だったので。

——ostooandellの初期作品は、いい意味で青さが残っていて、キラキラしていてキュンとなります。

yukaD : だから、あれ以上のものは無理ですね。

——それだけ強い思いがあると、なかなかそれ以外の活動をするのも、気持ち的に難しいんじゃないですか?

yukaD : そこは割り切ったというか。ostooandellostooandell、SFはギターを弾くところ、私は私の活動をしようっていうふうに吹っ切れて、やっと作品ができました。

ostooandell / Bakyun the everyday
ostooandell / Bakyun the everyday

——吹っ切れたきっかけがあったんですか?

yukaD : 2011年の暮れに、沖縄に住んでいる大親友の35歳くらいのお兄さんが急性疾患で亡くなったんです。そのときに、人間っていつ死ぬか分からないなみたいな話をして、そこから真剣にもう一回音楽のことを考えだしたんです。生きることを考え直して、なにができるか考えたときに、いい曲を作ろうと思って。打ち込みで作っていく気持ちになったんです。それで、去年の12月くらいに、しっくりくる曲ができてきたので、スタッフさんと話をして頑張ってリリースしましょうってなって、いまに至ります。

——では、本作は2011年の暮れからの約1年で作られたわけですね。

yukaD : そうですね。自分で尻を叩いて私は私でやっていこうって。あと、沖縄の彼らもバンドを組みだしたんです。それで去年の10月に、東京でSFと一緒にライヴもやったんです。キラキラしていて、すごくよくて、「わー、これやばい」と思って感動して。そこでようやく解散してよかったんだと思えました。本格的に制作したのはそのあとなので、たぶんそれも大きかったと思います。悶々としていたあいだというか、2011年はなにかやんなきゃいけないなみたいな気持ちがずっとあって。こういうことしたいな、ああいうことしたいなってことはいっぱいあるのに、うまく動けないっていうか、頭でっかちになってなんにもできない状態で。それがこういう出来事があって、パシーンって衝撃をうけたっていうか。

——そこから、どのようなかたちでに活動をされていたんですか?

yukaD : とりあえず1年間は自分のライヴはやめて、音源を作ることを考えようと思ったんです。私、すっごい不器用なので、2つのことをできないんですよ。ライヴってなったらライヴ、制作ってなったら制作ってなってしまって。そこで、自分にあったやり方を見つけようと思って、1年間はSFの活動をしながら技術を磨こうと決めたんです。SFは、高千穂さんが曲をもってくるので、私はそれにリフをどうつけるかって作業をしていて。そういった意味でもギターの訓練にもなっていたんだ思います。

——SFをやるときと、yukaDとしてやるときっていうのは、思考がまったく変わるんですか?

yukaD : 全然違うと思いますね。影響はなにかしら受けていると思うんですけど、それはそれって感じで。SFをやりながら、家ではyukaDとして勉強して、いい作品を作ろうって。

Exhibition

——アルバム1曲目は、全部yukaDさんが演奏してらっしゃるんですか?

yukaD : あ、アルバム全曲私のみです(笑)。あと「ラジオのように」っていう曲の最初にラジオの音を入れているんですけど、道路交通情報を言っているのも私です。

——そうなんですね(笑)。音作りにもかなりこだわっていますよね。適当にラジオをサンプリングしたってわけじゃないんですね。

yukaD : 一応ラジオから録って、そのなかにSFの曲とかも入れたし、私の声で「三鷹ジャンクションの~」とか入れました。

——でもまさか、全曲ご自身で演奏しているとは思わなかったです。

yukaD : あまり言ってないんです(笑)。全部1人でやりましたって言うと、そっちのほうに耳がいくじゃないですか。だから聞かれたら言おうとは思ったんです。私は楽曲を聞いてほしいので。

DTM界の常識みたいなものにすごく捕われてた

——“ostooandellの作品が大切だからこそ、他の人と作業するのではなく、自分一人で作り上げたという部分があったんでしょうか。

yukaD : 今回にいたっては、すべて自分でやることに意義があったんです。自分のもっている力を100%以上出して、自分の人生の中の音楽を全部詰め込もうと思って作りました。

——全部詰め込むとなると、やりたいことが出てきすぎて、難しくないですか。

yukaD : だから最初の段階でいくつかテーマを決めたんです。やっていくと、途中でわかんなくなっていくから。例えば、技術のところで迷ったら「いまできる技術でやる」みたいなことを決めて、そこに戻ろうと思って。そういうのをいくつか作っておいて、戻れるようにしました。

——具体的に戻る場所ってどういうところなんですか。

yukaD : なんだったかな。100%出し切るだとか何ヶ条かあったんです。ノートを持ってくればよかった(笑)。

——ノートに具体的に書いていたんですね。100%出すっていうのは、気持ち的な部分のことですか。

yukaD : 気持ち的な部分もあったし技術的な部分もありました。なにをどうしたいのかっていうのをはっきりさせる。曲を聴かせたいのか、楽器を聞かせたいのか、そういうことが、ミックスをしていたりするとわからなくなってくるんです。そのときに、なにをどうしたいかっていうのに戻ったら、割とすっきりしたんです。

——それは歌詞の面でも言えることですか?

yukaD : 歌詞は半年前くらいにつくったのもありますし、レコーディング中に作ったものもあるので期間はバラバラですけど、私の中ではしっくりくるものしか入れてないです。かなりぶっ飛んだ空想の世界のことも書いてみれば、やっぱり生きてたら社会でいろんなことが起こりますから、ニュースから影響を受けたりもしますし、私なりに咀嚼して書いているものもあります。

——そんなことがあるんですね(笑)。

yukaD : そういうのもありますし、ギターを弾いていて「ウヤーウヤ―」ってやってたらできた曲もあります。

——基本的に曲を作るときはギターで作るんですか?

yukaD : ギターですね。今回はピアノではじめて作った「パンとワイン」という曲があるんですが、それ以外は全部ギターです。

——そしたら、もっとギター色の強い曲があってもおかしくないのに、そんなことはないですよね。そこがおもしろいなと思ったのですが。

yukaD : そうですね。打ち込みが楽しいなあって思っていたんで。

——yukaDさんにとって、曲を作る作業っていうのは、どういうものですか?

yukaD : 依頼があるものに関しては仕事だと思っていますけど、自分に関しては心の掃除でもあるし、自分が楽しくなるもので、必要なものです。

——ジェイムス・ブレイクを好んでお聴きになられていたと伺ったのですが、yukaDさんの楽曲にあるダークな感じや、エレクトロっぽい歌モノに繋がってるんでしょうか? 

yukaD : いや、ジェイムス・ブレイクを聴く前からこんな感じだったんです。ミックスとかで行き詰まったときがあって、そのときに初めてジェイムス・ブレイクを聴いたんです。聴いたときに、なんだか壊されたっていうか、DTM界の常識みたいなものにすごく捕われてたんだなっていうことを音楽で教えられた気がして。私が、イメージしていてできずにいたことに対して、ジェイムスが勇気をくれたみたいな。なんか違うんだよなあっていう原因が常識にとらわれてたことだってわかったときに、あ、作れるかもってなったんです。それでレコーディング自体が楽しくなっていったんです。

James Blake / The Wilhelm Scream
James Blake / The Wilhelm Scream

——自分の音楽の常識を壊したものも音楽なんですね。

yukaD : 音楽から教えてもらいましたね。だから、ありがとうジェイムスみたいな感じ。あと、ちょうど、プログレのイエスがカラオケ店で流れていて、「え! イエスってこんなにかっこいいんだ」と思って。買って聴いたらめちゃくちゃカッコ良くて、ここからシンセ流れるんだ、こんなに音大っきくていいんだみたいに気づいていって。

——yukaDさんは既成のものを壊すようなものに、大きく感化されるんでしょうか?

yukaD : そうですね。何かおもしろくないな、平坦だなみたいなところから、壊す作業をしなきゃなって思ってたところだったんです。だからもう、そのときは全部がヒントに思えてきました。

エキシビジョンとかってみんな失敗しないし、楽しそうですごい好きで

——それがヒントになって、自分の曲も作り直したというか。

yukaD : そう、 もう一回ちょっとチャレンジしてみようみたいな。

——あと、タイトルが『Exhibition』じゃないですか。フィギュアスケートのエキシビションって、本戦以外の技を見せるところだから、本作はostooandellがあった上でのyukaDさんにとっての『Exhibition』なのかなって。

yukaD : そうかもしれませんね。フィギュアスケートのエキシヴィジョンとかってみんな失敗しないし、楽しそうですごい好きで。たまたま、マスタリングの最中だったかな、テレビで世界フィギュアのエキシヴィジョンがやっていたんですよ。これはアルバムのタイトルはエキシヴィジョンがいいんじゃないかなっていう感じでつけました。

——ostooandellのメンバーがこのアルバムを聞いたときにどういう反応するのか楽しみですね。

yukaD : このあいだ、mollyLoに電話したときに、CD出すよって報告したんです。「誰かに手伝ってもらったの?」って言われてたので、や、自分でやったって返したらビックリしてました。引いてました(笑)。「え!」って。

——自分のもっているものをすべて詰め込んだ製作が終わった後は、抜け殻みたいになることはありませんでしたか?

yukaD : すっごくなりました。しばらくポカーンってしてました。

——いまは回復してきんですか?

yukaD : そうですね、ちょっと新しい曲作ったりもできるようになったので。次を見ているっていうか、やりたいことはいっぱいあるので。

——いまはどういうところに気持ちが向かっているんですか?

yukaD : ライヴをやろうかなって思ってます。

——いつ頃やるかとか決めているんですか。

yukaD : いえ、ぜんぜん(笑)。カッコよく、ちゃんとできるようになってからでいいかなって思ってます。やったほうがいいって言われてますけど。

——今回すべて自分でやってみて、他の人とかも一緒にやりたい気持ちとかっていうのはでてきましたか?

yukaD : やったら楽しいだろうなあとは常々思っていますけど、いまはお手伝いしてもらうってことくらいしか考えてないですね。これからどうなるのかは分からないです。

——この先どういう活動をされるのか楽しみにしています。

yukaD : そうですね。自分でも楽しみです。

yukaD / 夜明けのうた
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PROFILE

yukaD

2001年よりostooandell(オストアンデル)で活動。
2010年にバンド解散後、拠点を東京へ移し、翌2011年よりソロ活動をスタートさせる。
弾き語り、SFへギターで参加、楽曲提供などマイペースに活動を展開しながら自身の楽曲制作も行う。
2013年5月、1stソロ・アルバム『Exhibition』をROSE RECORDSよりリリース。
>>ROSE RECORDS yukaD アーティスト・ページ

[インタヴュー] yukaD

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