Scott Hansenのソロ・ユニットTYCHOのニュー・アルバム

TYCHO / Dive

Boards of Canadaなどのエレクトロニック・サウンドから、Ulrich Schnaussなどシューゲイザー〜ドリーム・ポップ。さらにはWashed Out~Toro Y Moiなどの現代チル・ウェイヴ系サウンドまでを繋ぐ架け橋のような作品。

1. A Walk / 2. Hours / 3. Daydream / 4. Dive / 5. Coastal Brake / 6. Ascension / 7. Melanine / 8. Adrift / 9. Epigram / 10. Elegy

懐かしさを呼び起こす音響

インディー・ロックとクラブ・ミュージックを程よく共存させたアーティストを輩出し続けるアメリカの名門レーベルGhostly International。代表的なアーティストはMathew DearやSchool Of Seven Bellsで、昨年ではGold Pandaが話題だった。そんなGhostly InternationalからTYCHOというアーティストがアルバムをリリースする。Scott Hansenのソロ・プロジェクトであるTYCHOは2002年から活動し、それなりにキャリアがあるアーティストだ。今回リリースする『Dive』が、2000枚限定プレスだった2006年『Past is Prologue』を入れればサード・アルバムになる。彼のサウンドは、エレクトロニカやヒップ・ホップをインディー・ロック的な感覚を基に混ぜ合わせた最近のGhostly Internationalらしいものではあるが、『Dive』ではキャリアを重ねてきた分だけ色々な感覚が折り重なった作品になっている。大きく分けると、今作には00年代中盤のエレクトロニカやアンダーグラウンド・ヒップ・ホップといったクラブ・ミュージック発のジャンルがインディー・ロックに接近していたときの感覚と、近年のチル・ウェイブなどに代表されるインディー・ロックがクラブ・ミュージック化した感覚の両方があるのだ。

エレクトロニカは90年代前半の実験的かつ抽象的な音から、00年代半ばからmumなどのフォークトロニカやFenneszの『Endless Summer』によって生楽器を導入し始め、エモーショナルな表現に傾き、インディー・ロックに接近していく。また、同時にヒップ・ホップでもPrefuse73やアンダーグラウンド・ヒップ・ホップのレーベルanticonのアーティストらによって新たな表現が切り開かれ、やはり、インディー・ロック的な内面の表現に進んでいっていた。一方で、現在ではThe Fieldsなどのミニマル・テクノとシューゲイザーを融合させたような音楽性や、Washed Outに代表されるチル・ウェイブのようなクラブ・ミュージックの方法論を取り入れたインディー・ロックが主流になっている。この00年代半ばの流れと近年の流れはインディー・ロック的な、身近にあるもので身近な感情を表現する感覚をベースにしているという点で共通しているが、明確に異なっている。前者はそれまで内省的な表現をあまりしてこなかったジャンルが新たにそうした地平を開拓したが、後者は内省的な表現をしてきたインディー・ロックが逃避のためにクラブ・ミュージックの方法論を取り入れたということだ。

この違いはビートによく表れている。00年代半ばのビートは踊らせることが主眼ではないため、ビートが比較的ゆるく、直線的だ。しかし、近年のチル・ウェイブなどは、インディー・ロックとはいえ、ビートの取り入れ方が踊らせることに特化したクラブ・ミュージックのものを基にしている。TYCHOのビートは前者の特徴を持っている。しかし、一方で、少しこもった感じの懐かしさを呼び起こすような音響はAnimal Collective以降のインディー・ロックの特徴的な表現を捉えたものになっている。そこにギターや電子音のメランコリックなメロディが加わることで、彼のサウンドは日常とは違う世界への現実逃避ではなく、その中間ぐらいのとても親しみやすく落ち着いた空間を形作っている。TYCHOのサウンドは、彼が活動を始めた時代をベースにしつつも、無理なく合うところを取り入れて、アップ・デートしているのだ。MGMTが売れた2008年ごろからインディー・ロック的な感性が主流になるようになり、今ではKanye WestがBon Iverを起用するまでになったが、TYCHOのような地道な姿勢もインディー・ロックの大きな魅力のひとつなのだ。(Text by 滝沢時朗)

RECOMMEND

Sigur Rós / Inní

アイスランドを代表する唯一無二の4ピース・バンド、シガー・ロスがバンド初となるライヴ作品をリリース! 2002年作『()』は、グラミー賞にもノミネートし、商業的な成功を音楽の力だけで成し遂げた稀有な存在としてあのレディオヘッドとも並ぶ存在。ここ日本でも来日公演が全て完売する等その人気は絶大!

Prefuse73 / The Only She Chapters

盟友The Gaslamp KillerやNeon Indian、さらに、自身の楽曲にクラシックのアレンジを加えて披露し、大きな注目を集めたポーランドのAusko Orchestraとのツアーなど、ライヴ面でも大きな飛躍を見せる彼だが、それらにも見られる現代音楽への傾倒が顕著に現れているのが本作『The Only She Chapters』だ。ビートやループを基盤とするものより、現代音楽のスピリットにより近づき、ピッチフォークのBest Hope for 2010に選ばれた注目のシンガー、Zola JesusやMy Brightest Diamond、そして今は亡きBroadcastのTrish Keenanなど多くの女性ヴォーカルがフィーチャーされている。

Dday One / MOOD ALGORITHMS

インスト・ヒップ・ホップの枠を飛び越えて、もはやジャズとも形容されるビートをプロデュースするディーデイ・ワンによる待望の新作アルバム! ダウンロードやデジタルでの録音技術がまだ盛んではなかった90年代後半に制作され、カセット・テープで20本のみ作られたというまさにヒップ・ホップ黄金時代のサウンド!

PROFILE

TYCHO
サンフランシスコを拠点に活動するScott Hansen(スコット・ハンセン)によるソロ・ユニット。ISO50というヴィジュアル・ワークの名義も持つ。2002年に自主レーベルから『The Science of Patterns EP』リリースしてデビュー。2004年に1stアルバム『Sunrise Projector』をGammaphoneからリリース。2006年には2000部限定プレスとなった『Past Is Prologue』をMerckよりリリース。2007、2008年にGhostly Internationalからのデジタル・リリースを経て、今年フル・アルバム『Dive』をリリースする。

o

はてブに追加
 
 
"powerpush"の最新アーカイヴ
TRASH-UP!!×OTOTOY連載企画『メッセージ・フロム・アンダーグラウンド』第5回
[POWERPUSH]・2014年12月19日・TRASH-UP!!×OTOTOY連載企画『メッセージ・フロム・アンダーグラウンド』第5回 インタヴュー : リクルマイ〜新たに発見した民謡レゲエ〜 もはや”元ドラヘビの”という枕言葉は必要ない。特に本作を経て、さらなるオリジナリティを得て、ひとりのシンガーとしてさらなる高みに達しようとしているのではないだろうか。リクルマイの新作『きたぐにのはる』は、ここ数年の東日本大震災以降の活動のなかで生まれた作品だ。 本作は、「秋田音頭」、「ドドサイ節」(岩手県)、「相馬盆唄」(福島県)といった東北地方各地の民謡、さらには明治、大正期に活躍した演歌師、添田唖蝉坊(そえだあぜんぼう)の「ノンキ節」といった、この国のグラスルーツ・ソングとも言える楽曲を、レゲエによってカヴァー、さらにはこれらの楽曲と同一線上にある、まっすぐな日本語で歌われる唯一のオリジナルにして、表題曲の「きたぐにのはる」によって構成されている。 こうした作品を生み出した彼女にとって、ポスト3.11とはどのような時代なのか? ライターの遠藤妙子が作品とともに迫る。 『TRASH-UP!!』との連動企画「message from underground
cero、両A面シングル『Orphans / 夜去』をハイレゾ配信&レヴュー
[POWERPUSH]・2014年12月17日・いま、ceroをハイレゾで聴かずになにを聴く?——新作両A面シングルを初のハイレゾ、OTOTOY独占配信!! お待たせしました!! ceroの両A面シングル『Orphans / 夜去』を、ハイレゾにて配信スタートです!! "東京インディーズ・シーン"で括るには頭ひとつ飛び抜けて広がりを大きくしたceroがハイレゾで配信することは、また少し時代の変化を感じさせるできごとです。本作には、メンバーの橋本翼(Gt.)が初めてceroに書き下ろした楽曲「Orphans」、バンドの成熟を感じさせる新機軸のメロウ・ナンバー「夜去(ようさり)」に加え、すでにライヴでも披露され話題となっている小沢健二のカヴァー「1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)」を収録。様々な感情や情景を広く『エキゾチカ』と捉え、ポップ・ミュージックへと昇華させてきた彼らの現在が感じられる3曲が、ここにあります。豊かな音楽を、豊かな音質でじっくりとお楽しみください。 捨て曲なしの強力な3曲をハイレゾで!!cero'Orphans / 夜去【左】WAV / ALAC / FLAC(24bit/88.2kHz) 【右】WAV / ALAC / FLAC(
by bobbiiiiie
2015年注目の女性シンガー・ソングライター、しずくだうみ×タグチハナ対談
[POWERPUSH]・2014年12月15日・2015年注目の女性シンガー・ソングライター2人が語る「女の子が歌う理由」――しずくだうみ×タグチハナ対談&ハイレゾ配信!! 「勢いのある女性アーティストが多い」などと言われるここ数年ですが、やはりシンガー・ソングライター、なかでも女性は、2014年に大躍進した大森靖子やFKA twigsを見ても、自分の世界を作品で爆発させることが"上手い"ことは確かな気がします。ということで、次に私たちを圧倒させてくれるだろう存在――2015年注目の女性シンガー・ソングライターを紹介します! ひとりは鍵盤弾き語りのスタイルを基本に「闇ポップ」を自ら提げる"しずくだうみ"。12月10日に2枚目のE.P.『泳げない街』をリリース。OTOTOYでもボーナストラック「部屋」のリミックス・ヴァージョン付きでハイレゾ配信を開始しました。そしてもうひとりはアコースティック・ギターでの弾き語りを主体に、繊細な歌声で珠玉のバラード・ナンバーを連発する"タグチハナ"。3月にリリースした初のミニ・アルバム『夜へ』を今回OTOTOYでも配信開始。こちらもなんとハイレゾ!! さらにライヴ、またミュージック・ビデオですでに人気の「さいわい」がボーナ
by 純三
パズルガールズからクエスチョンへ!最新曲をフリー・ダウンロード!
[POWERPUSH]・2014年12月13日・参加型の新しいエンターテイメントを求めてーーパズルガールズからクエスチョンへ、構造改革後初の楽曲をフリー&ハイレゾ販売開始! 「パズルを解かないと曲が聴けない」という特異なライヴで、2012年8月より活動しているアイドル・グループ、パズルガールズ。今年2014年は「TOKYO IDOL FESTIVAL 2014」にも参加し、来年年明けには、渋谷クラブクアトロでのワンマンも決定! 勢いづく彼女たちに突如降り掛かった「構造改革」。謎解きの公演でキャラクターを演じたり、企画を考えたりするのがメインの活動から、より音楽性を強くし、謎解きを含めた参加型ライヴという新しいエンターテイメントの可能性を探していくグループ「クエスチョン」へ。名前は変わっても変わらぬ謎解きへの思いや、年明けのワンマンへの意気込みなど、じっくりとアツく語ったインタヴューは必読です。 また、クエスチョン名義の初シングル「ここにいてね」のmp3バージョンがフリー・ダウンロード開始です。そして、気に入ったら、ぜひハイレゾ盤をあなたの手元に置いて欲しい。彼女達の新たな決意と共に、ぜひお聴き下さい。 >>クエスチョン の「ここにいてね」のフリー・ダ
by 純三
ドミコ『深層快感ですか?』を先行配信スタート&インタヴュー
[POWERPUSH]・2014年12月12日・こんな変な作品が世に出回って大丈夫なのかなって? 川越発サイケデリック・ポップ・2ピース・バンド、ドミコがデビュー!! 川越発サイケデリック・ポップ・2ピース・バンド、ドミコが、初の全国流通盤をリリース!! the telephones・松本誠治、cinema staff・辻友貴らがコメントを寄せたり、音源リリース前にも関わらず〈BAYCAMP2014〉にも出演するなど、じわじわと話題を呼んでいる彼ら。そのサウンドは、いってみればポストパンク、サイケ、ガレージ等の要素を取入れた楽曲を日本語で歌った独自のトイポップ・ガレージ・サウンド。同期なしでギターと声をリアルタイムに録音していくひかる(Gt / Vo)と、体全体を使ってダイナミックにプレイするけいた(Dr)のたった2人で作り上げる轟音は、新たなロック・ヒーローの誕生となるか? OTOTOYでは、本作を1週間先行でリリースするとともに、フロントマンひかるへインタヴューで迫った。彼らは本物なのか? あなた自身で確かめてみてほしい。 巷で話題の2ピース・バンドのデビュー作を1週間先行配信!!ドミコ / 深層快感ですか?1. 地球外生命体みたいなのに乗って2.
ヘルシンキラムダクラブ、限定リリースで勢いがつきはじめる彼らにインタヴュー
[POWERPUSH]・2014年12月10日・「バンドやりたいなぁ」って思うような存在になれたらいいなーーヘルシンキラムダクラブ、限定リリースで勢いがつきはじめる彼らにインタヴュー 2014年12月10日に、2曲入り1stシングルをリリースしたバンド、Helsinki Lambda Club(ヘルシンキラムダクラブ)。UK.PROJECTのオーディションで優勝し、とっておきのキラー・チューンとスーパーカーのカヴァーが収録される。リリース情報を発表後、CDショップには限定枚数の555枚を遥かに超えた予約が殺到し、333枚追加、計888枚の末広がりな限定リリースで勢いがつきはじめる彼らにインタヴュー。 Helsinki Lambda Club / 初ワンマン・ライヴ@稲毛K's Dream(2014/11/21) 【配信形態】 mp3 【ノー・カット音源収録リスト】 1. 街 / 2. へろー、はうあーゆー? / 3. ユアンと踊れ / 4. ばっくとぅざふゅーちゃー / 5. yukke / 6. インスタント遁世 / 7. ビートニクの恋人 / 8. Hey Dude / 9. チョコレィト / 10. ぢきぢき / 11. KIDS / 12.
【期間限定】4Kとハイレゾで描かれた、水曜日のカンパネラ「桃太郎」をOTOTOY DSD SHOP2014で!! ヒカリエへ急げ!!
[POWERPUSH]・2014年12月09日・映像、サウンド、アーティスト、すべてが最先端!! 4Kとハイレゾで描く水曜日のカンパネラ「桃太郎」をOTOTOY DSD SHOP2014で 「感じる(感性にダイレクトに)」を伝える、高精細デジタル新視聴覚メディア、4K映像。アーティストの繊細な表現や、肌で感じる重低音から、空間まで感じる立体感のハイレゾ。聴く人を和ませる美声の持ち主でありながら時にFunny、時に毒(?)を吐くような、日本語ラップを操り、聞く人を混沌と陶酔の世界に誘う新進気鋭のアーティスト、『水曜日のカンパネラ』。 DSD SHOP 2014の開催にともない、その3つがまさかの融合を果たしました!! 6Kカメラと4Kカメラの2台とDSDレコーダーを使用し、水曜日のカンパネラの楽曲「桃太郎」を再収録しました!! 同作品は、12月9日(火)から12月15日(月)に、渋谷ヒカリエで開催中のDSD SHOPにて、84型の大型タッチスクリーンで上映中!! 4Kとハイレゾが拓く、異次元の体験を、お楽しみください! 続きは、渋谷ヒカリエ8階、DSD SHOP 2014にて!! 企画制作・協力>>凸版印刷株式会社>>RED DIGITAL CINE
by 西澤 裕郎
TM NETWORK、『QUIT30』をハイレゾ配信スタート!!
[POWERPUSH]・2014年12月10日・TM NETWORK、ハイレゾ音源とともにOTOTOYに登場!! TM NETWORKの、デビュー30周年を記念する、7年ぶりのオリジナル・アルバム『QUIT30』がハイレゾ配信スタートです!! 本作には、「Get Wild」「SEVEN DAYS WAR」など数々の名曲で知られる「作詞 : 小室みつ子 / 作曲 : 小室哲哉」の黄金タッグによって生み出された「Alive」、マーティ・フリードマン(E / A.Guitar)、美久月千晴(E.Bass)、村石雅行(Drums)といった豪華ミュージシャン陣を迎えて制作されたトータル22分を超える組曲「QUIT30」、木根尚登作曲によるバラード「STORY」など、書き下ろしの新曲に加え、「I am」「LOUD」といった既発シングル曲をアルバム・バージョンとして再ミックス収録。この作品をハイレゾで聴かずになにで聴く?! いまも最前線で活動する3人の楽曲をお楽しみください!! デビュー30周年を記念する、7年ぶりのオリジナル・アルバムをハイレゾ配信!!TM NETWORK / QUIT30(24bit/96kHz) 【配信形態】 ALAC / FLAC / W
by 岡本 貴之
 
筆者について
滝沢 時朗 (滝沢 時朗)

1982年東京生まれ。twitter ID:@sarigenaginger

同じ筆者による他の記事