
mama!milk新作&ライヴ音源配信開始!
mama!milkの7枚目となるアルバム『Nude』は、これまでになく臨場感に富み、時にはその真に迫るような音に背筋が伸びてしまうような作品だ。清水恒輔のコントラバスが軋んで音の骨格を作り、生駒祐子のアコーディオンが鳴って空間を染め上げていく様がよくわかる。しかし、本作は演奏に勢いがあるから、残しておこうというような作品ではない。東京のギャラリー「LIFT」での公開リハーサル+レコーディングという録音方法からもわかるが、今までの作品で培ったレコーディングのノウハウを駆使し、そうした感覚をアルバムに込めようという明確な意思をもって作られている作品なのだ。静かさの中にある豊かさを音で表していたような前作から、mama!milkの2人がなぜ、どのようにして今作を作ったのだろうか。インタビューに答えてもらった。
インタビュー&文 : 滝沢時朗
しなやかで美しくそして強靭なmama!milk新作『Nude』がOTOTOYで配信開始!!
mama!milk / Nude
今この日本で音楽を奏でている事、mama!milkがその時感じたものが、この作品を作り上げた。その中で人間のしなやかな強さを感じたと生駒が語るように、剥き出しで強靭で美しい、そんな傑作アルバムが、配信開始します。
【Track List】
01. monologue / 02. kujaku viridis / 03. Nude / 04. nuance of 12℃ / 05. Nude var.1
06. rosa damascena / 07. an ode in march / 08. apres fermentation / 09. duologue
10. kujaku albus / 11. Nude var.2 / 12. the moon on the mist / 13. sometime sweet +
14. sones / 15. Nude var.3 / 16. flowers
mama!milkのライヴ音源を独占DSD音源で独占配信開始!
2011年5月18日に、茨城県笠間市笠間芸術の森公園にて行われた野外イベント、Sense of Wonderでのmama!milkのライヴを、高音質のDSD録音。その名の通り、2人のNudeな剥き出しの感情と楽曲のストーリー性がそのまま詰め込まれた作品になっています。また当日の会場の雰囲気がそのまま聴こえる臨場感は高音質ならでは。圧巻のその演奏力を堪能してください。
sense of wonderでのmama!milkのライヴがDSD音源で配信開始!
mama!milk / Soundscape of Lakeside〜Live at Sense of Wonder 2011
配信フォーマット
1) DSD+mp3(約1.6GB)>>DSDの聴き方はこちら
2) HQD(24bit/48kのWAVデータ)(約700MB)
【Track List】
01. the moon / 02. mc / 03. kujaku viridis
04. monologue 〜 Nude / 05. ao / 06. an Ode / 07. Parade
<Personnel>
生駒祐子(アコーディオン)
清水恒輔(コントラバス)
Recorded by 溝口紘美 at Sence of Wonder 2011.05.28
Mixed & Mastered by 溝口紘美
Recorded & Mastering by KORG MR-2000S DSD recorder
Photos by 畑江彩美
Artwork by 内田武瑠
Produced by mama!milk & OTOTOY
人間本来のしなやかな強さ。今、それがとても美しく、眩しく見えるんです。
——『Nude』ではmama!milkのお2人にトロンボーンの市原大資(Yossy Little Noise Weaver、ex Determinations)さん、ドラムの栗原務(LITTLE CREATURES、Double Famous)さんを加えた4人編成ですが、ゲスト・ミュージシャンの市原さんと栗原さんはアルバム制作においてどのような役割でしたか?
清水恒輔(以下、S) : 両人とも付き合いは長く、初めて一緒に作品をつくったのは2002年のアルバム『meets#1 yamasaki madoki』なんですよね。その後も2009年のアルバム『Fragrance of Notes』や、色んな機会に一緒に演奏していたのですが、mama!milkが現場で目指す音作りに、とても真摯に取り組んでもらえたことは重要なことでした。なので、録音にあたって、この4人だからこそ生きる選曲、アレンジを作っていきました。あとは、その場で起こったことを収めようかと。
生駒祐子(以下、I) : 栗原さんの繊細で色っぽいドラムと、市原さんの表情豊かなトロンボーンがあったから、このアルバムができました。

——「LIFT」での公開リハーサル+レコーディングという録音方式ですが、なぜそうしようと思ったのでしょうか?
I : さっきの話の通り、ライヴ演奏をそのままアルバムにしたいと思ってたのに加えて、ライヴの時のあの演奏者も、聴く方も、同じ空間で音楽を共有している空気もおさめたいと思っていたからですね。そんな時に「LIFT」の八木さんと出会って、すぐにお話は決まりました。「LIFT」も素敵な場所でしたし、「ロカリテ」さんの美味しいコーヒーもいただける、ということで。
S : 1月に初めて「LIFT」に伺って、八木くんにも会いました。音の響きと、そこにある空気がとても気に入ったので、数日後には録音のプランを立てはじめました。かなり急な展開でしたが、沢山の方に協力していただいてどんどんアイデアが膨らみました。
——今作は過去作からタイトルを変えて再録されている曲が多くあります。選曲の理由を教えてください。
I : mama!milkの曲を、いろんな会場で、いろんな編成で演奏してきました。栗原さんとのトリオだったり、市原さんも迎えたカルテットだったり。そう、先日のヴァンジ彫刻庭園美術館では、さらにもう一方、トロンボーンの井登さんを迎えて、トロンボーン2管+アコーディオン、コントラバス、ドラムのクインテットだったり。その度に編曲を重ねているうちに、過去の録音とも違う表情をみせるようになった曲を、再録しています。
——「monologue」と「duologue」でバッハの曲を取り上げているのはなぜですか?
I : ここ何年か、1日のはじまりにバッハの曲をひいているんです。LIFTでの制作期間中も毎日最初にバッハをひいていたので、『Nude』にはそのまま収録しました。
S : LIFTの持つ、湧き上がるような響きがフィットした事もありますね。
——「kujaku」は2バージョン、「Nude」は3つのバージョンが収録されていますが、なぜこの2曲を複数のバージョン収録したのでしょうか?
I : 「Nude」は、「LIFT」での公開リハーサル中に、このバージョンが生まれたんです。いつものライヴ・リハーサルでもよくあることですけれど。栗原さんと恒輔さんが軽くセッションをしていて、「あ! それ、素敵。」と収録。少し前にみんなで映画のサウンド・トラックの録音をさせていただいたことも大きいですね。テーマ曲の色々なヴァリエィションを作るのは楽しいことでしたから。
S : 「kujku virdis」は、最近のライヴ・ヴァージョンを深化させたもので、それを収録する事は初めから決めていました。対するものとして「kujaku albus」はLIFTの響きを想定して祐子さんがアレンジしました。

——これまで質問させていただいた曲に新曲をまじえて『Nude』は構成されていますが、最初からそうしようという構想でしたか?
I : この4人だから演奏したい曲と、「LIFT」だから演奏したい曲と、「LIFT」で生まれた曲やアイデアをそのまま収録しようということで作りはじめたら、このようになりました。
——写真家の湯沢英治さんの「BAROCCO」展で映像に合わせての演奏をされていますが、mama!milkの音楽には音楽以外の表現からの影響は大きいでしょうか?
S&I : はい。とっても。
——関連して、YouTubeに映像をアップされていた被災した茨城県笠間市の大谷石倉庫や、九州大学の旧工学部知能機械実習工場といった戦後の建築物を取り上げられているのはなぜですか?
S : 大谷石倉庫は、もともとsovasovaというお店で、Sense of Wonderの前日に演奏する予定でした。オーナーさんの許可を頂いて、SoWの当日そこに行ってみたら、什器の運び出された空間に、ピアノだけまだ残されていたんですね。それで、その場で記録を残したくなったわけです。九州大学の旧工学部知能機械実習工場の方は、九大博物館の特別展示期間中のコンサートに招かれて、お昼のリハーサルの間、展示と差し込む光が奇麗だったので撮影しました。特に初めから決めてたわけじゃないんですけどね。どちらも旅の記録です。
I : ご縁に感謝。
——昨年のインタビューで「人と一緒に演奏しているそのままの音の、息づかいのようなものを、そのまま録音したいです」と言われていましたが、『Parade』では広く静かな空間で人と演奏している気配がアルバムを満たしていました。『Nude』はどんな息づかいを録音したアルバムになったでしょうか?
I : しなやかな息づかい。刹那の瞬発力。なにか本能的なもの。狂おしさ。
S : 生々しさ。剥き出し感。
——『Nude』は東日本大震災の前に録音され、震災後の3月16日に『Nude』に収録されている「Flowers」をYouTubeにアップされています。『Nude』は震災後の日本でどんな意味を持った作品になったと思いますか?
I : 意味を与えることは皆様に委ねます。ただ、mama!milkが、この2011年に日本で、色々なこと感じながら音楽を奏でている、という事実がそのまま『Nude』になっていると思います。自然の脅威や、逃れられない現実の中での、人間本来のしなやかな強さ。今、それがとても美しく、眩しく見えるんです。そんな中から生まれたアルバムです。
S : 先の質問にもあった、「BAROCCO」展で映像に合わせての演奏をキュレーションをしてくださった、TRAUMARISの住吉智恵さんにアルバムに寄せるテキストを頂いたのですが、この言葉が嬉しかったです。
「Nude」の音楽は、
いま私たちが、何を失い、何を求め、取り戻そうとしているのか、
明確な答えを差し出してはくれないけれど、
凛とした、潔い「一歩」を示してくれた。
I : そう、アルバム・ジャケットも、なにもかもそぎ落とされたミニマムなものになりました。少々危ういけれど、強靭です。是非、手にとって触ってみてください。
——10月には東京の求道会館でライヴをされますが、キリスト教の教会の建築技術を取り入れた仏教施設といった面白い様式の建物ですね。どんな演奏になりそうでしょうか?
S : 先日、下見に行って来ました。大きな窓から差し込む光。天井も高く、やわらかく音が響きそうなので、夕刻早めの時間からPAを入れずに演奏させて頂きます。どんなものになるかは、お楽しみです。
I : 10月9日は、アコーディオンとコントラバスのデュオで。10日は、トロンボーンとドラムを迎えたカルテットで演奏させていただきます。それぞれの曲が、デュオの時、カルテットの時で、どんなふうに響いてゆくのかとても楽しみです。私事ですけれど、震災後の色々な中で、音楽のあることの深い喜びを知りました。嬉しいときでも、かなしいときでも、音楽のある事が幸せですね。10月の求道会館での2日間も、美しい秋の日となりますよう。
Live Information
2011年09月22日(木)@京都flowing KARASUMA
2011年09月23日(金)@四日市Frederika
2011年10月08日(土)@丹波うぐいすの森 自然公園
2011年10月09日(日)@東京求道会館
2011年10月10日(土)@東京求道会館
2011年10月15日(土)@富山HERE WE ARE! 45 CAFE
2011月10月16日(日)@金沢Kapo
2011年10月31日(月)@福山名曲喫茶アンズ
2011年11月17日(木)@北九州西日本工業倶楽部
mama!milk's catalogue
PROFILE
mama!milk
生駒祐子(アコ—ディオン)、清水恒輔(コントラバス)を軸とするユニット。1997年より、各地の古い劇場、客船、寺院、美術館等での演奏を重ねながら、数々のアルバム作品を発表している。アコ—ディオンとコントラバスのシンプルなデュオから、テルミン、フル—ト、クラリネット、ホルン、トロンボ—ン、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、マリンバ、ドラム等々を迎えた様々な編成で、自由に、艶やかに奏でられるその音楽は「Cinematic Beauty」「まだ見ぬ映画のサウンド・トラックのよう」とも評されている。近年、アナログ録音「Fragrance of Notes」、海辺の廃墟で録音された「Quietude」、クラシカルなアンサンブルによる「Parade」を発表。さらに2011年にはギャラリ—での公開録音から生まれた音源「Nude(ヌ—ド)」を発表し、新たな可能性を見せている。