大好きなバンド、ディアフーフの最新作が届いた。『Deerhoof vs. Evil』だ。初めて彼女達に出合ったのは、00年代の中頃。Limited Express (has gone?)2回目のUS TOURのサンフランシスコで。みかん箱に座ったグレッグ・ソーニアの叩き出すビート。それにユニゾンするへんてこなフレーズ達。ポスト・ロック大全盛の時代に、彼女達は、サウンドを硬質にすることなく、決して下を向いて演奏する事も無かった。ディアフーフに出合って、世界に同じ方向を向いている同士がいる事を知った。そうこうしているうちに、レディオヘッドもザ・フレーミング・リップスも、みんなディアフーフが好きになった。世界は彼女達の出現で、ちょっと変わったかもなって思った。でもディアフーフはなにも変わらない。相変わらずコンスタントにリリースを行うし、世界中をまわっている。『Deerhoof vs. Evil』。何度も聞いた。変わらない事が、もう一つあった。いつでも、挑戦的だってことだ。

インタビュー&文 : JJ(Limited Express (has gone?))

フル・アルバムとして10作目の新作はとどまることを知らない!!

ディアフーフ / 『Deerhoof vs. Evil』

古巣のキル・ロック・スターズから、オブ・モントリオールを擁するポリヴァイナルに移籍しての第1弾アルバム。トム・ヨークも絶賛した前々作『Friend Opportunity』の楽曲にも通じる、汲めども尽きせぬ豊富な音楽的アイデアをちりばめた完璧なまでの構築性と、思わず口ずさみたくなるような親しみやすいメロディ・センスの両立を更に突き詰めた、素晴らしくポップでラディカルなサウンド!



サトミ・マツザキ(ディアフーフ Vo,G,B) INTERVIEW

——『Deerhoof vs. Evil』のレコーディングは、どこで?

サトミ・マツザキ(以下S) : レコーディングはオークランドのリハーサル・スペースとエド・ロドリゲス(以下エド)の住んでいるポートランドのベースメント。ミキシングは、カー・ステレオで。

——カー・ステレオ?

S : ツアーに出なければならなかったので、ヴォーカルのミキシングとかは車の中でドライヴしながら。

——本当?

S : 本当ですよ! カー・ステレオは、音が悪いからいいんですよ。その後に良いステレオで聞いたら更に良くなるわけですから。

——でもカー・ステレオって!

S : グレッグ・ソーニア(以下グレッグ)がカーステでミキシングをしながら、皆がリクエストや指示をして、まとめました。

——スタジオでミキシングをやらない1番の理由は?

S : スタジオに行ったら時間の制限があるじゃないですか? 家やカー・ステレオでやるとやりたいときに自由に出来ますから。

photo by Sarah Cass

——今作は、出来上がるまでどれくらいかかったの?

S : インターバルがあるんで結構長かった。この前ポートランドに行ったのは... いつだっけな? 色々なところに行っているので、分からなくなってしまいます。

——ディアフーフは、どこでリハーサルをしているの?

S : オークランドだったんですけど、皆引っ越しました。今年の4月位までは住んでいたんですけど。

——オークランドを離れた理由はなんでしょう?

S : 私とグレッグが東京に引っ越してしまって、ジョンとエドも住みたい町に移りました。私は、ずっとサンフランシスコにいたので、日本にそろそろ戻ろうかなと。日本は言葉が通じるし、ご飯がおいしいから良いです(笑)。会話においては、日本は、1人1人にターンがあってじっくり話せて良いですけど、アメリカの場合って会話を勝ち取らなきゃ! だからアメリカでは寡黙だったかも(笑)。

——現在は?

S : 今は恵比寿。グレッグはNYに引っ越したんですよ。ジョンはニュー・メキシコのアルバカーキですね。エドはオレゴンのポートランド。だからツアーの時は現地集合、現地解散。なので、リハーサル・スタジオをおさえても集まるのは大変です。

——様々な国をツアーする中で、文化の違いを感じますか?

S : もちろん国によって違うことはあるけど、それが嫌だなって思うことは無いです。ディアフーフのオーディエンスは、ディアフーフにアジア人がいるって分かっているせいか、オープン・マインドなお客さんが多いです。そういう意味では壁はないです。最近は今までいったことのない国にも行っています。

まだまだピークに達していない

——『Deerhoof vs. Evil』を作るにあたってのコンセプトは?

S : 16周年っていうことで16歳をテーマに「スイート・シックスティーン」というコンセプトを元に作ったんです。16歳ってポップでカラフルで反逆的で、ごちゃごちゃしてて楽しくてエモーショナル! それでいて思春期だから気持ちにアップ・ダウンがある。それを踏まえてジェットコースターみたいな作品に仕上げたつもりです。

——サトミさんは、16歳の時は、何をされていました?

S : 反逆児だったかも。レベリアスだったんです(笑)! ちょっと社会に対して斜め目線で、今作みたいにカラフルではなかったかも(笑)。大人気分で独立という自由を求めてました。

——反逆的なイメージは、今作にも?

S : 歌詞も含めて、音楽的にもドカーンと来るところとか、サッと引くところとかは戦っている時のミサイルのパワフルなイメージ等、色々集約したつもり。でも深く考えずに、楽しく聞いて頂ければいいかな。

photo by Ryan Slack

——ディアフーフは作品ごとにコンセプトがあるんですか?

S : そうですね。コンセプトを作って無理矢理そこに持って行く感じはあるかな(笑)。今回はリズムを大事にしたくて、皆ドラムを叩いているんです。リズムを考えてから曲をのせたりしていて、ギターを軸に作成しなかったのは新しい試みでした。

——民族楽器も使ってますよね?

S : 多分ウクレレのことかな。持っている楽器は全部使いました。ディアフーフは、曲に合った音を追求するので、セットアップするのがプレイする時間より長いんです。どんどん使う楽器も変化していったり。

——じゃぁ、今回の音をライブで再現出来ないんじゃぁ?

S : 無理に再現はしないですね。まだリハが始まっていないので分からないけど、全部を再現っていうのはやっぱり無理です (笑)。面白い違ったものをライヴでは用意したいなと思っています。

——リズムの選び方は?

S : 皆がリズムを持ち寄って「こういうリズムで曲を作りたい」と自分でエディットしたりして仕上げました。以前は、グレッグが叩いたリフにナチュラルに合わせていたんです。でも今回は、グレッグに任せないで、皆が持って来たフレーズをグレッグに叩いてもらったんです。あるバンドのリミックスをやって、リズムの深さを痛感しました。本当にそのリズムを再現するのが難しくて、少しずつずれる皆のリズムが、いいグルーヴになるってことがわかって。そのずれがさらにちょっとでもずれたら、全然良くないこともわかって。そこからメンバーが感化されて、リズムを頑張ろうって思いました(笑)。今作は、「The Merry Barracks」も、エドガーがチューンダウンしたベースを弾いたり、バラバラにレコーディングしながらもバラエティを大切にしました。ディアフーフは足して削っていくやり方を使うので、必要ない音は後で削っていきます。曲の可能性って無限だと思う。最初に決めつけちゃうと、そっちの方向しかいかないから。今回2年もブランクがあったんで、ためたものがドバーッと出た感じ。

——グレッグはよく納得しましたね? 自分のリズムではないものを叩くのがストレスになるドラマーって多いじゃないですか?

S : いますね。でもフレキシブルなのが大切だから、ディアフーフは出来ないからを理由に、やらないっていうのは無いです。

——エドが入ってきて3年ですね。ディアフーフとして、変化はありましたか?

S : 2008年に入ったのかな? エドとジョンは長年バンドを共にやってたので、入ったときも違和感なかったです。エドって凄い音感良いから、次にやる音源のギターの部分を聞いて、予習して、弾けるようになってから来ます。熱心!

——キル・ロック・スターズからポリヴァイナルに移ったのは何故? 意外でした。

S : そうですか? キル・ロックから卒業したバンドは沢山いるし、場所を変えれば違うリスナーがいるのかな? って思いました。この前Busdriverの7インチをポリヴァイナルから出した時に、仕事がスムーズに出来たので切り替えてみました。

photo by Ryan Slack

——日本もアメリカも最近バンドが多く解散していますが、その中で16年もディアフーフを続けることが出来ている理由は?

S : 飽きっぽくない性格の人が多いからかな。あと、皆音楽を好きでやっているから。でももしバンドのインスピレーションやアイディアがなくなったら、私はやめるんじゃないかな。

——ではまだピークじゃない?

S : まだまだピークに達してないです。やりたくなくなったらやらないし、その時は終わりなのかな。

——さとみさんは、ソロや他のプロジェクトも色々行っていますが、ディアフーフでは、自身がやりたいことを出来ていますか?

S : ソロとディアフーフを分けていることはないです。ただソロでもやりたいっていうのは、楽しいし、学べるし、音楽性を高めるための自分への投資です。別にリリースをしなくてもいいんです。自分の中にあるものですから。それが次に実ってくれるとうれしいし、成長していってほしいなって思います。

——サトミさんは、ずっと音楽を、例えば30年以上やりますか!?

S : 死ぬまでやりたい(笑)!

——サトミさんがその気持ちなら終わらないんじゃないですか?

S : 音楽が仕事って良いですよね? 楽しくないですか? だから、ずっとやっていきたいと思うんです。続けられるのが夢です。

ディアフーフと共に...

oneone (わんわん) / aoooo (アオーン)

10年来の親友同士であるさとみ(ディアフーフ)とさや(テニスコーツ)による息もぴったりの合体ユニット、ワンワン。長年の構想期間を経て、遂にあっと驚く超傑作デビュー・アルバムが完成! 底抜けにポップで陽性のメロディ、女子2人ならではの見事なヴォーカル・ハーモニー、目が覚めるようなインパクトを持った日本語歌詞。ミックスはディアフーフのグレッグ・ソーニアが手がけ、素晴らしい音像に仕上げている。

Port Entropy / トクマルシューゴ

無印良品やSONY「VAIO」 新CM 、バンクーバー・オリンピックのスポット広告で楽曲起用、NHK「トップランナー」出演、ニューズウィーク誌「世界が尊敬する日本人100 人」にも選出! 超ロングセラーとなったサード・アルバム『EXIT』以来、2年半ぶりとなる待望のフル・アルバムが遂に完成! トクマルシューゴ以外には成し得なかった新しいポップ・ミュージックの形がここに。長く聴き継がれるマスターピースになることに疑いの余地がない、今年最大級の話題作。

Limited Express (has gone?) / LIVE JUNK

本作は、2010年4月25日に下北沢THREEにて行われたイベント"LIVE JUNK”でのライブの模様を収録したもの。昨年リリースしたアルバム『LTD』収録曲を中心に、未発表の新曲を含む全12曲が披露されました。HQD(24bit/48khzのwavファイル)での販売。ミックス&マスタリングは、高橋健太郎が担当。現在の彼らのグルーヴが存分に発揮されている、衝動に溢れた音と緊張感が伝わるライブならではの空気を、是非。生々しさが、尋常じゃない!

ディアフーフ profile

ディアフーフは1994年3月、サンフランシスコでグレッグ・ソーニア(ドラムス&ヴォーカル)とロブ・フィスク(ベース&ヴォーカル)によって結成された。キル・ロック・スターズの設立者、スリム・ムーンは、1995年にオリンピアで行われたYOYO-A-GOGOフェスティヴァルで彼らのライヴを見て、ファースト・シングルとなる『Return of the Wood M'lady』をリリースすることに決めた。1996年4月、日本からアメリカに着いて1 週間も経たない頃に、サトミ・マツザキがこのシングルを耳にした。それまで楽器の演奏経験のなかった彼女は、その2週間後にはヴォーカリストとしてバンドに加入し、ツアーに出ていた。1997年にロブがサンフランシスコを去ると、後に残されたサトミとグレッグはディアフーフの最初のCD『The Man, the King, the Girl』を完成させ、これは同年、キル・ロック・スターズ(KRS)と、ムーンの新レーベルである 5 Rue Christine(5RC)によって共同リリースされた。1998年にはサトミはベースを弾きはじめており、ロブが戻ってギタリストとして再加入し、同時にケリー・グッド(キーボード)も加わった。再びKRS/5RC からのリリースとなる1999年の『Holdypaws』を録音後、ロブとケリーが脱退し、ちょうどその頃ミネアポリスからベイエリアに移って来た(元Colossamite の)ジョン・ディートリックがギターで加わった。2000年にこの新しい編成でコンサートをレコーディングした後、ディアフーフは、オーストラリアのレーベル Dual Plover から、過去のその他のライヴ音源も含む『Koalamagic』をリリースした。当時から4年遡ってロブとグレッグの間で構想がはじまっていた音楽を収めたアルバム『Halfbird』は2001年に完成され、同年 Menlo Park からリリースされた。
2000年から2001年の間に、サトミとジョンとグレッグは、新編成での最初のスタジオ・アルバムとなる『Reveille』のレコーディングも行い、これは2002年にKRS/5RC からリリースされた。2001年の12月には、親しくなった別の地元バンド、The Curtains のギタリストであるクリス・コーエンがディアフーフに加入した。2002年の終わりに彼らは『Apple O'』を録音し、2003年3月にKRS/5RC から発表した(日本盤は同年5月にP ヴァインから)。それからきっかり1 年後となる翌2004年3月に早くも『Milk Man』をリリース。SPIN 誌で「完璧なアルバム」と評されるなど、各方面で絶賛を浴びた。2005年3月には初の日本語歌詞によるEP『緑のコズモ(Green Cosmos)』、さらに同年10月にはアルバム『The Runners Four』を相次いでリリースし、その旺盛な制作意欲と尽きることのない音楽的アイデアの豊富さを見せつけた。2006年5月、The Curtains での活動に専念するため、クリス・コーエンが脱退。トリオ編成で『Friend Opportunity』を完成させ、2006年12月(欧米では2007年1月)にリリース。2007年7月には初のフジ・ロック・フェスティヴァル出演。2008年2月、新ギタリストのエド・ロドリゲスが加入、再び4人編成となり、同年10月にアルバム『Offend Maggie』を発表。

ディアフーフ HP

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筆者について
J J (JJ)

パンク・バンドLimited Express (has gone?)のギター・ボーカル。BOROFESTAの主催者。ototoyのチーフ・プロデューサー。JUNK Lab Recordsのレーベル・オーナー。ライターやイベント・オーガナイズも多数。ototoyでは、リミエキのJJとして喋っている時は、JJ(Limited Express (has gone?))と記載しています。

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