過去の水源から未来へ向かう清流DJ Mix

Traks Boysとしても活動するCRYSTALの初のオフィシャル・ミックス『Made In Japan "Future" Classics』がototoy限定で高音質配信される。今と昔の曲がCRYSTALの手でひとつの流れとしてまとめられることで、タイトル通り未来に向けられた瑞々しいサウンドが展開されている。何度も聞き返したくなるようなDJ Mixだ。そんな音を作り出す彼の音楽に対する真摯な考えを聞いた。

インタビュー & 文 : 滝沢時朗

INTERVIEW

——『Made In Japan "Future" Classics』では全て日本のテクノから選曲されていますが、コンセプトの詳細を教えていただけますか?

『Made In Japan "Future" Classics』には90年代のテクノ・レーベルの曲と最近の曲を半々ぐらいで入れてます。まず、今回のDJ Mixを作るにあたって、普段クラブでやっているような選曲だとパンチに欠けると思いました。それで今回は日本のアーティスト、日本のレーベルだけで作ろうというアイディアが浮かんだんです。90年代の曲を選んだ理由は、10年以上DJをやっていて色々な曲をかける中で、一番最初にテクノをやりたいという初期衝動を感じた当時の曲をここ数年で再発見したからです。僕はクラブ・ミュージックを聞き始めたのが90年代中頃で、その頃のテクノを中心としたインディペンデントなシーンから受けた影響が大きいんですよ。その一方で、最近の日本人アーティストの楽曲はクオリティが高くて、もっと知られてもいいのにという気持ちもあったので、 今と昔の曲をうまくつなげて提示できたらと思って作りました。

——全体はテクノのDJ Mixですが、最初にOONO YUUKI の『Leonids』というアコースティック・ギターの曲から始まります。どういった意図があるのでしょうか?

あの曲を1曲目に置いた理由はふたつあるんです。まずひとつは、テクノだけだと自分の中で収まりが付かない部分があったからです。ふたつめは、あの曲が部屋で音楽を作っている雰囲気をよく表しているからですね。2曲目以降も部屋で想像力を働かせて作っているような雰囲気の曲を選んでいるので、イントロダクション的に部屋の感じを提示したかったんです。あの曲は全然テクノじゃないですけど、このMixの雰囲気をすごく象徴的に表してくれるんじゃないかなと思って。

——部屋で想像力を働かせるようなテクノが、日本のテクノの独自性をよく表しているということですか?

そうですね。今回のDJ Mixはパーソナルな雰囲気の曲を集めたんです。このDJ Mixに入ってる曲の雰囲気ってあんまり他の国の音楽では聞いたことがないんですよ。想像ですけど、海外のフロア・ライクなものを作ってる人たちは爆音でガンガンに音を鳴らしながらクラブみたいな状況で曲を作ってるんじゃないでしょうか。日本だとそういう状況ってそこまでないんですよ。前半と後半は若干雰囲気が違うんですけど、どっちも自分の部屋の中で閉じた空間なんだけど、想像力が広がる雰囲気があっていいなあと思っています。今、自分の曲を作ってる人もいっぱいいると思うんですけど、そういう人たちが聞いてさらに作ってくれたら嬉しいなという希望もありますね。

——クラブで踊るような曲だけがテクノじゃないといような意味合いもあるんですか?

そういう意味もありつつ、ダンス・フロアへのアンチ・テーゼではないです。エレクトロニック・ミュージックの中でダンス・フロア向けの曲もそうでない曲もどっちも好きですよ。僕の立ち位置や感覚としてはその中間ですね。今回のDJ Mixでも中間的な感覚からのテクノの解釈をひとつ提示できたと思っています。自分の普段のDJもテクノ、ハウス、四つ打ちもありつつ、洋邦問わずロック・ポップスも混ぜていくスタイルですから、 Ototoyを利用している方でテクノに興味ない方も感覚的に聞いてもらいやすいんじゃないかなと思います。

選択肢は広い方がいい

——今回のDJ Mixを聞いて、知らない曲を聞いて新鮮だったり、いくつか欲しいと思うような曲もありました。ご自身もDJ Mixを通してそうした体験をされていますか?

もちろんしてます。その体験の上で自分が提示できるものは何かなと思ってやってるので、もしこれを聞いて個々のアーティストの曲を聞いてもらえたら、すごく嬉しいですね。クラブ・ミュージックでは昔のものまで掘って聞くことがスタンダードだし、どんどん昔の音楽と新しい音楽を混ぜることが常に行われている。昔の曲を聞いたほうが今の曲もわかるし、必ず何かを前提にして作られて、受け継がれていくのが音楽だと思います。昔のものは聞いたほうがいいぞっていうことは声を大にして言いたいですね。

——今回はデータ配信ですが、DJをする立場からアナログ、CD、データのそれぞれに関してどう思われますか?

僕は今はデータでやってるんですけど、それぞれに良さがあります。どれを選択するかは個人のスタイルや趣向ですが、選択肢がいっぱいあって楽しいなと思いますよ。レコードにこだわる人はこだわっていいと思うし、データはデータで今は新しい方法論や機材が出てきてて、面白いですよね。

——場所や規模によって使い分けられたりするんですか?

昨日もDJしてたんですけど、その時はアナログだけでした。選曲とクラブにある機材によって使い分けますね。そこの音の鳴り方やDJミキサーとの相性があるので。最近はデータをデフォルトで設計してるクラブがどんどん増えてきているので、データの方が多いです。今回のMixもアナログ音源は使ってないんですよ。全部データとCDです。昔の曲はCDから取り込んで使ってますね。

Photo by Ryuji Sue (STAGE)

——データでDJをされる時に他と比べて良いところはなんですか?

僕はDJの中で色々なことをやりたいので、選択肢が広い方がいいんですよね。ハードディスクならいくらでも曲が入って持っていけるので、そこが利点です。昔から、ニューヨークのディスコのパラダイス・ガラージはレコードが全部置いてあって、家のレコードが全部置いてあるようなDJブースの写真があって、それに憧れていたんですね。ここ数年でデータでDJができるっていう状況になった時についにその夢がかなったという感じです。ずっとアナログでプレイしていたので音質の面に関しては、最初は多少の違和感がありましたけど。

——アナログでのDJに関してはどう考えられていますか?

アナログは針を入れた時にボンって鳴る音、やっぱりあれがアナログだと思ってます。かける曲は全然エレクトロニックなんですけど、針が振動を拾ってる時点でアコースティックだと思うんですよね。レコードが乗ってないターンテーブルでも、増幅させれば叩いて音が出るんですよ。それでテクノのキックみたいな音がするんですけど、その生々しさがやっぱりアナログの良さですね。そういうのはデジタルでは出せないです。

——リスナーとしてはアナログ、CD、データのどれで中心的に聞かれてますか?

場合によって使い分けてますね。家で聞くときはCDかアナログです。外で聞くときはでデータです。データの良さは持ち歩ける事にあると思うので。このMixも持ち歩いて聞いて欲しいなということを前提に考えて作ってるんですよ。色々なコンセプトはあるんですけど、それは一旦置いておいて、普通に生活の中の一部として取り入れて聞いて欲しいと思います。

中心にあるのは音楽だっていうことは昔から変わらない

——先日Dommuneでプレイされていましたが、感想や反響はいかがでしたか?

反響はかなりありましたね。木曜日にやって土曜日に自分のパーティーだったんですけど、そこにもDommuneを見て来たって人がいました。DommuneでプレイしたことからDJのオファーも来ましたよ。元はWeb上のヴァーチャルな体験なんですけど、現実に対する影響力がすごい。あれは本当に楽しいと思いますね。Dommuneで色んな事が盛り上がったら本当に面白いなと思っていて、実際にtwitter上やUstream上だけの出来事じゃなくて、週末のパーティーに明らかに現実へのフィードバックがあるので、色んな事が変わるんじゃないかってわくわくしてますね。

——Dommuneの現場はどういう雰囲気なんですか?

現場はそんなに広いところじゃなくて、比較的こじんまりしたところでパーティーが行われています。僕も最初はtwitter上の反応を見ながらやろうと思ったんですけど、実際は全然暇がなくてできませんでした。普通にパーティーを楽しんでる感じもありつつ、ただそこにはやっぱりtwitter上での全国での盛り上がりにも影響されるんです。「今、Dommuneのビューワーが2000人超えたよ」みたいなことで乾杯したり。あれは初めての体験でしたね。フロアだけじゃなくて、Web上からのフィードバックで盛り上がって、それで僕のDJもまた変わったりするし、面白いですよ。DJの後で家に帰って書き込みも遡って見たりもしてます。

Photo by Ryuji Sue (STAGE)

——Dommuneは音楽シーンの中でどういう役割を担っていくと思いますか?

Dommuneに関してはこれから賛否両論あるかもしれないですけど、今のところ良い影響として、クラブに行けない10代の子もを刺激できるし、引退してしまって行かなくなった人も忘れていたものを思い出させるような感じもある。あと、国内のシーンの活性化には絶対につながってると思います。だから、Dommuneは結果的に自分がこうしたいと考えている事に近いんだと思います。今回のMixも日本にもたくさん良い曲や良いレーベルがあって、もっと面白い事ができるんじゃないかっていう気持ちがスタート地点にあったので。

——DJを始められた時と今を比べて、今の方が状況が良くなっていると思いますか?

テクノロジーの発展やインターフェイスの違い、インフラの違いはどの時代でもあると思うんですけど、その中心にあるのは音楽だっていうことは昔から変わらないと思います。やっぱり、そこが一番重要ですね。結局、ハードが発達してもソフトが良くないと何も起きない。そういう新しいものの面白さはすごく重要で、僕も大好きですけど、一番根底にあるのは音楽だから。僕がまだ10代で何もしらない状態でテクノや他の面白い音楽に出会った衝撃というのがやっぱり大きくて、その感覚を聞く人に伝えたいと思っています。それは見失わないようにやっていきたいし、やはりそこに一番興味があります。周りにあるハードを使って何をやるかっていうことが大事だと思います。

LIVE SCHEDULE

  • 3/26(金) THE OATH@Oath
ENTRANCE FREE
DJ:
MASANORI IKEDA
MOO
CRYSTAL

  • 3/27(土) PRINS THOMAS JAPAN TOUR '10@AIR
AIR members 3000yen w/1Drink
With Flyer 3000yen w/1Drink
Door 3500yen w/1Drink
DJ:
Prins Thomas
DJ CHIDA (ene/DANCAHOLIC)
Lounge DJ:
CRYSTAL(Traks Boys)
ROGER YAMAHA (TTLT/Moonwalk Records)
KAI KUNIMOTO
foliday

PROFILE

CRYSTAL
95年からDJを開始。2004年からスタートした日本産ソウル/ファンク/ディスコ/テクノだけで構成されたDJ Mixシリーズ『Made In Japan Classics』Vol.1〜3が、非売品/ネット配布のみながら、大きな話題を集める。トラック・メイカーとしてはk404とのTraks Boys(トラックス・ボーイズ)名義で、2007年7月に12inchシングル「Badwiser」、そしてファースト・アルバム「Technicolor」を発表。また川崎工場地帯の某工場屋上にて行われているインダストリアル・レイブ・パーティー「DK SOUND」では、Traks BoysとしてレジデントDJを勤める。2008年10月にトラックス・ボーイズの2ndアルバム「Bring The Noise」を発表。2010年4月に自身初となるオフィシャルMixを配信でリリース。

Traks Boys
メンバーはK404(World Invaders)とCrystalの二人。2002年よりトラック制作開始。コンピレーション「TURBOSONIC VOL.1」、「Electro DynamycVol.2」などへの楽曲提供、曽我部恵一BAND、DE DE MOUSE、Aira Mitsuki、Back Drop Bomb、The Arrowsなどのリミックスを手掛ける。また川崎工場地帯の某工場屋上にて行われているパーティー「DKSOUND」ではレジデントDJを務める。

『Made In Japan "Future" Classics』収録アーティストを紹介

compositionist & eater / compositionist & eater
2002年4月、細野春臣氏の主催するレーベルdaisy warld discのコンピレーション『V.A/strange flowers』に参加、現在は前 述daisy warld discから来春予定でリリースの自身の1stアルバム、サブライム・レコードのコンピレーション・アルバムへの参加、及び半野喜弘氏の主催するCirqueよりリリース予定のコンピレーションへの参加が予定されている。また今後、AOKI takamasa、渡辺満 (Dr/multiphonic ensemble)とのセッションを通じたバンドも視野に入れており、様々な楽器やプレイヤーとのコラボレート、また生演奏とコンピュータ、それぞれの可能性の追求を通じて、独特で個性的なeaterワールドの可能性を模索する。

NO NAME, NO PLACE. / INNER SCIENCE
異能ヒップホップ集団THINK TANK周辺のエンジニアリングや、ONEOWNERのレーベル・オーナーとして知られる新世代トラック・メイカー西村尚美によるソロ・ユニットINNER SCIENCE。狭義のヒップホップという枠を逸脱するようにインストゥルメンタル/エレクトロニック/ダンス・ミュージック全般に対して柔軟なスタンスで臨み、音楽性の幅を広げていった2002年のセカンド・アルバム。

dublee & Den / dublee & Den
1981年生まれ。高校時代に友人から聞かされたrage against the machineに衝撃を受け、バンド活動と打ち込みでの音楽制作をスタートする。自らの音楽性をより追求する為に次第にエレクトロニック・ミュージックに傾倒して行く。そして2000年より本格的に楽曲制作をスタート。外部からの一切の情報を断ち、自身の創造性を高めて行く。2002年、ミニマル・ダブの手法を用い、独自の解釈で自身の創造性を推進すべくdubleeとして活動をスタートする。dubleeの楽曲はビートを残しつつも空間を重視した「気持ちの良い音」を基本とし、徐々に支持を得て行く。

The Nothings of The North / Ametsub
坂本龍一推薦盤!! ピアノを中心としたこの上なく美しいメロディー・ラインの数々と、さらに磨きのかかった緻密かつスリリングなリズムから生み出される至高の楽曲群から構成される、近年のエレクトロニック・ミュージックにおけるひとつの金字塔とも言える傑作!

SKETCH FROM A MOMENT / QUADRA
NYの名門ナイト・グルーヴスからはHIROSHI W、ジョニ・ヴィシャスのヴィシャス・ミュージックからはNITE SYSTEM名義で作品をリリースし、世界的に評価されるハウス・プロデューサー、ヒロシ・ワタナベ。クアドラ名義で彼が自らのメランリックな側面と、テクノ的な要素を強調したこのアルバムは、ダンス・クレイジーだけでなく、全ての音楽ファンに愛されるべき端々しい感性で綴られている。

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