丸裸にされる声――長谷川健一が挑んだ世界初のかまくらDSD録音を堪能

OTOTOYが満を持して取り組んできた「Special Place Recording」シリーズ。銭湯、教会、キャンプ場など、こだわりのロケーションで収録されたDSD音源の数々は、ハイレゾの普及とともに各所で注目を集めてきました。そんなシリーズに、新たなラインナップが加わります。

今回の舞台となったのは、なんと雪のかまくら。録音に挑んだアーティストは、京都のシンガー・ソングライター、長谷川健一です。豊かな低音を備えた歌声、細かく声を震わせる独特の歌唱法は、かまくらという特殊な環境のもと、どんな響き方をしたのか。この企画に協力してくれたKORGのマシン「MR-2000S」を使用した、おそらく世界初のかまくらDSD録音。レコーディング・レポートとともに、ぜひお楽しみください。

長谷川健一 / 長谷川健一 in かまくら

【配信フォーマット / 価格】
DSD(1bit/5.6MHz) + WAV(24bit/48kHz) : 1,200円(まとめ購入のみ)
※録音時の写真を収録した歌詞ブックレット(PDF)が同梱されます。

【Track List】
01. 五月のように
02. 春夏秋冬
03. にほんのひと
04. 子どものくに
05. 白い旗
06. 震える牙、震える水

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All Songs & Lyrics 長谷川健一

Recorded, Mixed and Mastered by 奥田泰次(studio MSR)、森田良紀(studio foresta)、米田聖(studio MSR)
Recorded at 湯西川温泉 かまくら祭
Photos by 土屋宏
Produced by 飯田仁一郎(OTOTOY)、長島大輔(OTOTOY)
Supported by KORG INC.
Special Thanks to 菅澤直哉
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今回のレコーディングで主に使用された機材

KORG「MR-2000S」



プロフェッショナルからアマチュアまで、多くのレコーディング現場で活躍するDSD録音のスタンダード・マシン。DSD 1bit/5.6448MHz、PCM 24bit/192kHzまでの高音質録音 / 再生に対応し、レコーディング機材としてはもちろん、リスニング機材として購入するユーザーも少なくない。また、アナログ・レコードをデジタル・データとしてアーカイヴする目的にも使用される。160GBの容量を誇る内臓ハードディスク、プロ・ユースを前提とした充実の端子群、視認性に優れたLEDレヴェル・メーターも魅力。

>>KORG「MR-2000S」の詳細

アーティストの声を丸裸にするかまくらの音場

東京から電車とバスを乗り継ぐこと3時間。今回のレコーディングの舞台となったのは、栃木県日光市の山あいに位置する湯西川温泉だ。かつては平家の落武者たちが暮らしたと言われる場所で、いわゆる秘湯のような雰囲気も感じられる。この湯西川で毎年行われているのが、「湯西川温泉 かまくら祭」。大小さまざまなかまくらが並べられ、内部でバーベキューを楽しむこともできる。今回、地元の方々のご厚意で、その中の2つ(録音ブース用とコントロール・ルーム用)を使わせていただくことができた。

たくさんのかまくらが並ぶ「湯西川温泉 かまくら祭」

レコーディングの前日、実際にかまくらを下見して驚いた。いくら手を叩いても、大きな声を出してみても、まったく音が響かない。あらゆる音が、発せられるなり雪に吸収されてしまい、かまくら内部はまれにみるデッド状態(※レコーディング用語で、反響がまったくないこと)となっているのだ。この環境で本当にレコーディングがうまくいくのか、そして機材が正常に動いてくれるのか、いささかの不安を感じたのを覚えている。しかし、今となればそれも杞憂なのだった。

レコーディングに挑戦したのは、京都生まれのシンガー・ソングライター、長谷川健一。昨年3月にリリースされたアルバム『423』が高い評価を受け(OTOTOY AWARD 2013でも4位に選出)、カヴァー曲を集めた最新作『my favorite things』も話題を呼ぶ注目のアーティストだ。そんな彼が、KORG「MR-2000S」をレコーダーとして使用し、極寒のかまくらでDSD録音に挑んだ。

雪の寒さにも負けないKORG「MR-2000S」

レコーディング当日は、まさに凍えるような寒さ。雪こそ降っていなかったが、少しのあいだ手袋を外しただけでも指が痛くなってしまうほど。そんな過酷な環境のなか、長谷川はアコースティック・ギター1本で全6曲を弾き語ってくれた。「歌っているほうが身体が温まる」と彼は言ったが、それにしてもあの環境で、指先の細かい動きが求められるアコースティック・ギターを演奏するのは、決して楽ではなかったに違いない。

録音ブース用のかまくらで一曲を弾いては、コントロール・ルーム用のかまくらに移動してそれを確認する。この作業が何度となく繰り返された。初めこそかまくら独特の響きに戸惑っていた長谷川だが、すぐにその実力を最大限に発揮。オリジナル・アルバム未収録曲「五月のように」をはじめ、最終的にはそこにいたスタッフ全員が絶賛するほどの音源を残してくれた。

凍える指先から生み出される音楽

リヴァーブが一切ないかまくらの内部は、アーティストの歌声を極めてクリアに響かせてくれる。そのため、長谷川健一の声がもつ独特の質感や、彼が得意とする細かいニュアンスの表現などを、とても鮮明に感じさせてくれるのだ。空間の鳴りがほとんどない環境でのレコーディングは、いわばアーティストの声を丸裸にして記録するようなものかもしれない。だとすれば今回の録音は、長谷川のように実力のあるアーティストだからこそ可能だったと言えるだろう。そして、彼の歌声そのものを楽しむのに最適なものだと言えるはずだ。しかもそのすべては、DSDならではの高い再現性により、そのままの鮮度で記録されている。

かまくらで歌う長谷川健一

後日、長谷川本人を招き、KORG「DS-DAC-100」を使用して、今回録音された音源の試聴会を行った(このとき収録された長谷川健一へのインタヴューが、5月末ごろ発売の「DigiFi No.14」に掲載予定)。全6曲、静かに耳を傾けた長谷川は、「ほんとに目の前で歌っているみたい」と感想を語ってくれた。また、エンジニアの奥田泰次も強い手ごたえを感じたようで、「この環境ならではの音を録ることができた」と大絶賛の様子だった。いずれにせよ、おそらく世界初のこの試みは、すべての音楽ファンが一度は体験してみるべきだ。

長谷川健一とKORG「DS-DAC-100」

(text by 長島大輔)

Special Place Recording シリーズ

シリーズ1(2013年4月2日 / 5月25日リリース)

世武裕子 / 世武裕子 DSD recording sessions vol.1 やもり / vol.2 JOY

シンガー・ソングライターおよび映像音楽作家として活躍する世武裕子が、DSDネイティヴ録音、ネイティヴ・ミックスを初体験。かねてから積極的に高音質配信を行ってきた彼女が、ついにDSDでのレコーディングに挑んだ記念すべき作品です。100万円と2,500万円(!!)、2種類のピアノで同じ曲を弾き比べながら、世界に数台しかないDSDワークステーション「Clarity」を使って、その様子を記録しています。

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シリーズ2(2013年5月20日リリース)

キセル / KICELL EP in みなと湯(5.6MHz dsd + 24bit/48kHz wav)

兄弟ユニット、キセルの日比谷野音ワンマンを記念して、なんと銭湯でDSDレコーディングを行ったのがこの音源。誰もが一度は感じたことのある、お風呂で歌を歌ったときの"あの気持ち良さ"。それを驚くほどリアルに追体験させてくれる作品となっています。場所の空気を肌で感じているかのように、臨場感たっぷりに聴くことができるのはDSD音源ならでは。OTOTOYが自信を持ってオススメする人気タイトルです。

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シリーズ3(2013年8月29日リリース)

ROTH BART BARON / DSD Recording EP よだかの星/Campfire

春、オーディオ評論家の高橋健太郎を講師に迎えて、オトトイの学校で開講された「DSD徹底攻略塾」。DSDについて基礎から学び、実際に体験するこの講座の課外授業として、ゲストにROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)を迎えたDSD公開録音を行いました。一片の淀みもない美しい世界観を持つ彼らの楽曲を、肌で感じていただきたいです。

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シリーズ4(2013年9月18日リリース)

大森靖子 / 大森靖子 at 富士見丘教会(5.6MHz dsd + 24bit/48kHz wav)

季節は変わり、セミの声が鳴りやまない夏。下北沢にある富士見丘教会で、大森靖子のDSDレコーディングを行いました。大森靖子といえば、次世代を担う女性シンガー・ソングライターとして、今、各所から熱い視線を浴びまくっている存在。そんな彼女が、教会の厳かな雰囲気の中、思いのすべてをDSDに凝縮しました。まるで彼女が耳元で歌っているような、生々しい響きを持ったこの作品は、OTOTOYの年間ベストにも食い込む超ロングセラーを続けています。

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シリーズ5(2013年10月17日リリース)

バンバンバザール / バンガロー・セッション(5.6MHz dsd + 24bit/48kHz wav)

愛車ハイエースに乗って、全国に陽気なグット・ミュージックを届けるバンバンバザール。彼らのDSDレコーディングが行われたのは、湖のほとりのキャンプ場でした。セミの声、小川のせせらぎ、風の音。大自然の奏でる音楽と、バンバンバザールの絶妙なアンサンブルをお楽しみいただける作品となっています。川の音を拾うためだけにマイクを立てたり、セミの放つ高周波をナチュラルに溶け込ませたり、エンジニア的な視点からも聴きどころの多い一枚です。

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シリーズ6(2013年12月5日リリース)

平賀さち枝 / 平賀さち枝と天命反転住宅(5.6MHz dsd + 24bit/48kHz wav)

天命反転住宅は、通称「死なないための住宅」。まるでSFの世界に紛れ込んでしまったかのような、異世界を思わせる住宅です。こんな一風変わった場所でも、OTOTOYはDSDレコーディングを行いました。アーティストは女性シンガー、平賀さち枝。黄一色に塗られた球体の部屋に向かって、彼女は柔らかい歌声を響かせます。同梱されている写真入りブックレットとともに、場所の雰囲気を想像しながら楽しんでほしい音源です。

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シリーズ7(2013年12月13日リリース)

湯川潮音 / 湯川潮音 at 大倉山記念館(5.6MHz dsd + 24bit/48kHz wav)

冬の始まりを感じさせる12月初旬、OTOTOYは湯川潮音を招き、DSDの魅力を最大限に活かした自信作を録音することに成功しました。場所は横浜の高台にある歴史的建造物、大倉山記念館。ピアノとチェロを従え、湯川潮音は伸び伸びとした歌声を存分に聴かせてくれます。3曲のみの小規模な作品ながら、楽曲の完成度、響きの豊かさ、どれを取っても最高品質の音源ができあがったと言えるでしょう。

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シリーズ8(2013年12月18日リリース)

森ゆに / 山の上にて(森ゆに at 大倉山記念館)(5.6MHz dsd + 24bit/48kHz wav)

2013年最後を飾るDSD独自音源となったのが、この作品です。場所は再び大倉山記念館。ピアノと声で端正なポップスを奏でる森ゆには、寒い冬にぴったりの温かい歌声で、聴く人の心を優しく包み込んでくれます。79年の歴史を誇る建物の、自然かつ上品なリヴァーブは、彼女の歌声をより魅力的なものへと変化させました。DSDならではのきめ細やかな音質で、その美しさをお楽しみください。

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長谷川健一の過去作はこちら

LIVE INFORMATION

〈315(さいこー)な日の音楽会〉
2014年3月15日(土) @四日市 radi cafe apartment
開場 / 開演 : 18:30 / 19:30
料金 : 3,000円(1オーダー別)
出演 : 長谷川健一 / 山本啓(from Nabowa)

〈長谷川健一 ソロ・ライヴ〉
2014年3月16日(日) @茅ヶ崎 cafe studio Sprout
開場 / 開演 : 17:30 / 18:30
料金 : 2,500円(1オーダー別)
出演 : 長谷川健一

〈長谷川健一 『my favorite things』リリース・ライヴ〉
2014年3月17日(月) @下北沢 lete
開場 / 開演 : 19:00 / 20:00
料金 : 2,500円(前売) / 2,800円(当日) (ドリンク代別)
出演 : 長谷川健一

〈世武裕子 / 長谷川健一 / キツネの嫁入り(ふたり)〉
2014年3月22日(土) @京都 UrBANGUILD
開場 / 開演 : 19:00 / 19:30
料金 : 2,500円(前売) / 3,000円(当日) (ドリンク代別)
出演 : 世武裕子 / 長谷川健一 / キツネの嫁入り(ふたり)

〈長谷川健一 『my favorite things』リリース・ライヴ〉
2014年3月29日(土) @青森 ASYLUM
開場 / 開演 : 19:00 / 19:30
料金 : 2,500円(前売) / 3,000円(当日) (ドリンク代込)
出演 : 長谷川健一 / 鳴海徹朗

〈「DAY OF FUN SURPRISE」〉
2014年3月30日(日) @山形 蔵オビハチ
開場 / 開演 : 18:00 / 18:30
料金 : 2,500円(前売) / 3,000円(当日) (ドリンク代別)
出演 : ki ka / kudanz / 長谷川健一

〈Wordplay vol.12〉
2014年4月30日(水) @渋谷 La.mama
開場 / 開演 : 19:30 / 20:00
料金 : 3,000円(前売) / 3,500円(当日) (ドリンク代別)
出演 : 長谷川健一 / Kan Sano

PROFILE

長谷川健一
1976年、京都生まれ。歌が歌として響くことの純粋な説得力、細かく震える光を感じさせる独特の表現力。ときに優しく、ときに切なく響くそのサウンドは、京都が生んだ孤高のシンガー・ソングライターとして高く評価され、2011年には〈FUJI ROCK FESTIVAL〉、〈SWEET LOVE SHOWER〉に出演。2013年、ジム・オルークのプロデュースによる2ndフル・アルバム『423』により、その評価を確たるものとした。

>>長谷川健一 OFFICIAL WEBSITE

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レヴュー

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