
『ロマンシング サ・ガ』の楽曲がリメイクされて蘇る!
ゲーム音楽作曲家“伊藤賢治”が手がける「Re:Birth」シリーズの第2弾。第1弾である前作『Re:Birth/聖剣伝説アレンジアルバム』に続き、本作は生誕20周年を迎える『ロマンシング サ・ガ』シリーズの楽曲を本人の手によるバトル・アレンジで収録。全曲新録・新アレンジの内容を彩るカバー・アートには、「サ・ガ」シリーズのイラストを手掛ける“小林智美”による新規描き下ろしを使用。目で耳で、そして記憶で心を焦がす熱い一枚をお届け!

1992年に誕生した『ロマンシング サ・ガ』シリーズの戦闘シーンの曲を再編曲、再録音
伊藤賢治 / リ:バースⅡ / ロマンシング サ・ガ バトル アレンジ
【販売形式】
mp3 単曲200円 / アルバム2000円
【Track List】
01. Re:Birth II - バトル1メドレー from Romancing Sa・Ga 1.2.3、Romancing SAGA-Minstrel Songー
02. Re:Birth II - バトル2 from Romancing Sa・Ga 3
03. Re:Birth II - 術戦車バトル from Romancing Sa・Ga 3
04. Re:Birth II - 玄城バトル from Romancing Sa・Ga 3
05. Re:Birth II - 四魔貴族バトルメドレー from Romancing Sa・Ga 3
06. Re:Birth II - Believing My Justice from Romancing SAGA -Minstrel Song-
07. Re:Birth II - ラストバトル from Romancing Sa・Ga 2
08. Re:Birth II - ラストバトル from Romancing Sa・Ga 3
09. Re:Birth II - 決戦! サルーイン from Romancing SAGA -Minstrel Song-
10. Re:Birth II - 七英雄バトル from Romancing Sa・Ga 2
【CD版特典】
※初回生産限定CDには、オリジナル楽曲ダウンロード・カードが封入されています(全3種類うち1種ランダム封入)。CDに収録されているアレンジ曲のオリジナル楽曲を含む、オリジナル・サウンド・トラックより抜粋された10曲が無料でダウンロード出来ます。
ゲームを離れても聞きどころの多い音楽
ゲーム音楽と聞いてどの曲を思い浮かべるだろうか。一般的にはスーパーマリオブラザーズやドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーと言ったビッグ・タイトルの曲が頭をよぎるだろう。そして、これらの曲はCM音楽などと同じように下手なヒット曲よりも多くの人の頭の中に入ってるにも関わらず、誰が作ったのかということを意識する人は多くない。先に挙げたタイトルの順で行けば、近藤浩治、すぎやまこういち、植松伸夫だが、いずれもゲーマーにとっては知っていて当然の有名人でも、そうではない人たちにとってはあまり聞かない名前かもしれない。だが、1980年代以降に生まれた世代にとっては歌謡曲もしくはJ-POPと同様に音楽の原体験であるし、今の音楽を語る上で無視できるのものではない。そして、そのゲーム音楽の作曲家の中に、ももいろクローバーZの楽曲などで有名な前山田健一やSound HorizonのRevoといった、J-POPでエッジのたった仕事をしているアーティストが影響を公言している人物がいる。それがイトケンの愛称で親しましている伊藤賢治だ。今回紹介する『Re:BirthⅡ Romancing Sa・Ga BATTLE ARRANGE』は、その彼が当時のスクウェア(現在のスクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用RPG「ロマンシング サ・ガ」シリーズと同シリーズの1作目「ロマンシング サ・ガ」のリメイクであるプレイステーション2用RPG「ロマンシング サガ-ミンストレルソング-」の戦闘シーンの曲を再編曲、再録音したアルバムだ。

まず、音楽について語る前に、ゲームの内容について紹介しよう。「ロマンシング サ・ガ」はジャンルで言えば、主人公と仲間がいて、各地を冒険しながら成長し、最終的には敵の親玉を倒して目的を果たすというファンタジーRPGである。だが、1992年発売の「ロマンシング サ・ガ」には、それまでのRPGにはないいくつかの意欲的な試みがあった。その中でも特徴的なものがフリー・シナリオというシステムだ。従来のRPGはプレーヤーの分身としての主人公が一人いて、その主人公が順番通りにイベントをこなしていくことで物語が進む。それに対して、「ロマンシング サ・ガ」では複数人の主人公候補のキャラから一人を選ぶ。そして、発生するイベント自体はある程度決まっているが、それをこなすかこなさないか、どの順序でこなすかはプレイヤーの判断に委ねられ、ゲーム内の時間は戦闘回数を重ねることによって進む。極端な遊び方をすれば、なんのイベントをこなすこともなくラストボスと戦うことも可能だ。こうしたシステムを持つことによって、「ロマンシング サ・ガ」は複数のキャラの視点で多面的に物語に接するということを可能にした。つまり、オーソドックスなRPGでは主人公個人の主観的な成長物語を体験するが、フリー・シナリオではプレイヤーがその物語が持っている歴史や世界観をより巨視的に体験するということがシステムとして可能になっているのだ。ファンタジーRPGの多くは中世に編纂された神話や英雄伝説をもとにしているが、その多くは叙事詩として残されている。だが、先ほど書いたとおり、多くのRPGは個人の体験や心情に焦点が当たるという点で抒情詩的だ。作中に吟遊詩人が出てくることが示唆的だが、「ロマンシング サ・ガ」はそれに対して、RPGで個人より歴史や世界が中心になる叙事詩的な世界観を体験できるように構築されたゲームだとも捉えられるだろう。

こうしたゲーム性を持つ「ロマンシング サ・ガ」シリーズは、別の側面から見ればドライな描写が多く、淡々と物語が進む。しかし、単純にそうさせず、ムードを作り出してゲームをより面白くしていたのがイトケンの音楽だった。ラフマニノフなどのロマン派の流れを汲むクラシックやフュージョンをベースに紡がれる感情豊かなメロディはゲームを彩り、想像を膨らませる楽しみを大きく助けてくれた。イトケン本人が自身の楽曲について歌メロスタイルだと発言しているが(※1)、簡潔な描写しかない登場人物の心情もそうした歌のように感情移入しやすいメロディによって感じ取れているように思えた。特に戦闘シーンの曲は最初からトップギアに入れて畳み掛けるように展開する派手なメロディの曲が多く、このシリーズの特徴のひとつでもある格闘ゲームのようにエフェクトが入って動く技や術の応酬と相まって気分を上げていた。そして、その中でも特にラストボス戦で流れる曲は、今まで自分で選び取って作り上げた物語がクライマックスを迎えるという高揚感を一気に爆発させてくれるような曲ばかりで、胸が熱くならずにはいられない。一回の戦闘にかかる時間は大体決まっていて、しかも、ゲーム中の戦闘は何回も行われるものなので、そうした中で盛り上げつつ飽きずに聞ける曲にしなければいけない。しかし、それが長い時間を経ても印象に残るような楽曲のスタイルを生み出したのだろう。

『Re:BirthⅡ Romancing Sa・Ga BATTLE ARRANGE』は、そうした曲たちを昨年行われたロック・バンド編成のライヴ「THE NEXT STAGE ~gentle echo meeting 3~」で披露したアレンジで収録したものだ(※2)。ゲームのために作られた音楽ではあるが、前段で触れたような特徴に溢れているイトケンの楽曲はゲームを離れても聞きどころの多い音楽だ。ただ、ゲーム音楽はゲームの中で音楽に割ける容量が決まっているため、音数や音質が限定される側面がある。そこが生んでいるよさも当然あるが、今作では躍動感のあるバンド・サウンドでイトケンの音楽を楽しむことができるのだ。特にヘヴィ・メタル的な側面が強調されたアレンジの5曲目「四魔貴族バトルメドレー」から9曲目「決戦!サルーイン」までの流れには強烈なものがある。また、テンポを落として聞かせるフュージョン的なアレンジになった3曲目「術戦車バトル」4曲目「玄城バトル」も楽曲の違う面を引き出していてハッとさせられる。そして、最後を飾る「七英雄バトル」は原曲のイメージと最も離れているアレンジだ。イトケンが好んでいるウィンダム・ヒル・レコード(※3、※4)の曲のような枯れた雰囲気の中にロマンチックなメロディが流れる曲に仕上がっていて、うれしい驚きを与えてくれる。
イトケンの音楽はクラシック、フュージョン、メタルなどが混ざり合ったゲーム音楽であり、それと同時にメロディの豊かなポップスでもある。ゲーム音楽として愛され続けることはもちろんだが、この『Re:BirthⅡ Romancing Sa・Ga BATTLE ARRANGE』を聞けば、彼の音楽がより広い位置づけで聞かれる可能性が詰まっていることがわかるだろう。(text by 滝沢時朗)
※1 : 4gamer.net企画記事「“イトケン”こと伊藤賢治氏と“ヒャダイン”こと前山田健一氏が初遭遇。音楽的ルーツからゲーム音楽について思うこと、そしてプロ論に至るまで語り合ってもらった」を参照。URL
※2 : 4gamer.net企画記事「「ロマサガ」“バトル曲”限定アレンジ・アルバムを制作した伊藤賢治氏に、『Re:Birth II Romancing Sa・Ga BATTLE ARRANGE』の楽曲解説をしてもらった」を参照。URL
※3 : Kenji Ito official web site内のインタビューを参照。 URL
※4 : ウィンダム・ヒル・レコード。1970年代に設立されたフュージョンやニューエイジのレコード・レーベル。代表アーティストは「AUTUMN」が箱根彫刻の森美術館などのBGMとして使われていることで有名なジョージ・ウィンストン。
スクウェア・エニックスが手掛ける楽曲を配信!
制作中
INFORMATION
ロマンシング サ・ガ
【制作スタッフ】
河津秋敏(制作総指揮、ゲーム・デザイン、シナリオ)
伊藤賢治(音楽)
小林智美(キャラクター・デザイン)
代島学(モンスター・デザイン)
高井浩(モンスター・デザイン、バトル BG デザイン)
渋谷員子(OBJデザイン)
北瀬佳範、高橋哲哉、井上信行 他(フィールド・マップ・デザイン)
『ロマンシング サ・ガ』(Romancing Sa・Ga)は、1992年1月28日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用RPGである。後に移植版として、携帯型ゲーム機では2001年12月20日に「スクウェアマスターピース」シリーズの1つとしてワンダースワンカラー用の移植版が発売され、携帯アプリでは、2009年3月5日にiアプリで、同年3月18日にS!アプリで、同年7月9日にEZアプリでそれぞれ配信が開始された。同年11月24日からはWiiのバーチャル・コンソールでスーパーファミコン版の配信が開始された。ゲームボーイの『魔界塔士Sa・Ga』から始まったサガシリーズ第4作目にして、スーパーファミコンでのシリーズ第1作目。特にスーパーファミコンでのシリーズ全体を指してロマンシング サ・ガと呼ぶこともあり、一般的にロマサガ1と略される。
Re:BirthⅡ Romancing Sa-Ga BATTLE ARRANG official HP