2012年3月に日本で開催されるLA BEATSの祭典Low End Theory 2012。2年振りの開催を記念して、出演者によるオフィシャル・コンピレーション・アルバムが完成しました。更に、Carlos NiñoのCarlos Niño & Friends名義の新作も登場。Build An ArkやTurn On The Sunlight等での近年の活動から伺えたアンビエント・ミュージックへのアプローチを、全面的に展開した名作です。オトトイでは、どちらも1週間先行で配信! 今、LAでは何が起きているのか? ライター佐々木健治によるレビューを読みつつ解剖してほしい。
LA BEATSの祭典! Low End Theory来日記念コンピレーション
V.A / Low End Theory Japan Compilation 2012
【価格】
MP3 : 単曲150円 / アルバム1500円
WAV : 単曲200円 / アルバム1700円
【参加アーティスト】
Nobody、Free The Robots、Nosaj Thing、Samiyam、DOT、Jonwayne、Ras G、Co.fee、Gaslamp Killer、ELOS、Nocando、Dibiase、D-Styles、Kone、Daddy Kev、Virtual Boy
Carlos Niñoの新作も同時リリース
Carlos Niño & Friends / AQUARIUSSSSSSS
【価格】
MP3 : 単曲150円 / アルバム1500円
WAV : 単曲150円 / アルバム1700円
カルロス・ニーニョ最新作は、至極のアンビエント・アルバム。Build An Arkなど自らが率いる数々のアンサンブルの音源をサンプリング、ループ、エディットして制作した内的冒険と瞑想、そしてリラクゼーションのための音楽。Deadelus、Miguel Atwood-Ferguson 、Dntel、テニスコーツの植野隆司も参加! 日本盤のみ28分に及ぶアンビエント曲とDeadelusによる編集曲の2曲を収録。
Low End Theory Japan Compilation 2012〜遠い異国の地に誘うコンピレーション〜
2006年にロサンゼルスでスタートしたLow End Theory。シーンが世界中から一気に注目を集めるきっかけとなったFlying Lotusを始め、数多くのアーティストが出演し、新たな才能も続々と登場するLAビート・シーンを牽引する人気パーティだ。ヒップ・ホップ、ダブ・ステップ、ジャンルや国境に縛られないエクスペリメンタルなビート・ミュージックを発信するパーティとして、確固たる地位を確立している。Thom Yorke、Erykah Badu、James BlakeやLAから世界中を騒然とさせているodd futureといったスペシャルなアーティストがサプライズ出演しているところからも、このパーティがどれだけリスペクトされているかが分かるだろう。
2010年まで3年連続で日本でも開催されてきたLow End Theoryだが、昨年は日本での開催はなかった。しかし驚くべきことに震災直後の3月31日という早さで、東北地方太平洋沖地震のチャリティ・イベントLow End Theory Japan BenefitをLAで開催したことも記憶に新しい。あれからもうすぐ1年。Low End Theoryが再び日本にやってくる。
レーベルAlpha Pup Recordsのオーナーであり、長年に渡ってLAのシーンを築き上げてきたDaddy Kev、スクラッチ・アーティストD-Styles、NobodyにMC NOCANDOと、これだけでも涎が出そうなレジデント陣に加え、今年はNosaj Thing、Samiyamが参加。ヒップ・ホップはもちろんのこと、BORDS OF CANADAやRadiohead、インディ・ロックからの影響も公言するNosaj Thing。その空間的な音作りは、早い段階からDaddy Kevに高く評価されてきたという。美しく哀愁も感じさせるような楽曲と好青年風なルックスとは裏腹に、映像も取り入れたライヴ・パフォーマンスはなかなか激しいとの噂もある。そしてSamiyamは、Flying Lotus主宰のBRAINFEEDERからのアルバムをリリースし、そのFlying Lotusとのユニット、FLYamSAM名義でのリリースもある注目株。LA BEATSの中でも異彩を放つヨレヨレ千鳥足ビートが特徴的だ。
しかも、今回は日本ツアーを前に、パーティ初となるオフィシャル・コンピレーションが日本限定でリリースされる。コンピレーションには今回の日本ツアーには残念ながら参加していないGasslamp Killerを含むレジデント陣や日本ツアーに出演するNosaj Thing、Samiyamはもちろんのこと、これまでLow End Theoryに出演してきたアーティストたちの楽曲が収録されている。3月にはSTONES THROWからのリリースも控えるJonwayne、昨年にデビューE.Pもリリースしたco.feeのグローカル・ビーツなトラック、一昨年の日本ツアーに登場したFree The Robotsのトライバルなトラックなどなど、Low End Theory、そしてLAの今を感じることができる一枚と言える。
何物にも制約されず、自在に捻れ、揺らいでいくビート・ミュージックは、時にはまるで荘厳な宗教音楽のようでもあり、一瞬で遠い異国の地へ誘うサウンド・ジャーニーでもある。今、LAで何が起きているのか。その一端をまずはこのコンピレーションで感じ取ってから、ダンス・フロアへ向かおうじゃないか。(text by 佐々木健治)
Carlos Niño & Friends〜音響処理の探究心が現れたアルバム〜
スピリチュアル・ジャズ・バンドBuild An Arkでの活動から、個人での様々な活動まで、多岐に渡る活動を繰り広げるCarlos Niño。崇高でありながら、すっと寄り添ってくるような彼の音楽の持つ温かみは、昨年リリースされたJesse PetersonとのTurn On The Sunlightでのアコースティックなアンビエント作品にもよく現れていた。アコースティック・ギターに合わせて鼻歌を歌っていたら、いつの間にか遥か彼方まで到達していた。そんな無限の広がりを持った牧歌的な空気感があのアルバムにはあった。「ジョン・フェイヒーとブライアン・イーノが海と星と愛についての音楽を作ったとしたら」という彼の夢想が出発点となったそのアルバムは、人間の目線から始まっていたからこその温かみがあったと言えるが、Carlos Niño & Friends名義でリリースされる新作『AQUARIUSSSSSSS』は、人間の目線を超え、もっと俯瞰的な、大きな視点から世界の美しさと愛を描き出そうとしたアルバムだと言えるのではないだろうか。
本作は、Carlos Niño & Friends名義で2009年にリリースした『HIGH WITH A LITTLE HELP FROM』と同じく、Build An Arkをはじめ、様々な自身の音源をサンプリング、ループ、エディットして新たな音世界を生み出されている。アコースティック・ギターが音の中心となっていたTurn On The Sunlight以上に、彼の空間的な音響処理の探究心が如実に表れているアンビエント・ミュージックは、牧歌的な空気とはまた異なる穏やかさに満ちている。
本作は、タイトル通り「水」がメイン・テーマとなっているコンセプチャアルなアルバムだ。砂浜に打ち寄せる穏やかな波の音がアルバムの通底音として流れていく。波はやがて、小川のせせらぎとなり、滴となり、虹、雲となって、また海へと還っていく。植野隆司(テニスコーツ)、Daedelusといった豪華なゲストが参加しているが、彼らも、その個性を出すことを重視するのではなく、静謐で美しい物語の一部として溶け込んでいる。しかし、生命や自然そのものを描き出そうとするような壮大なアルバムでありながら、全く近づきがたい作品ではなく、とても人懐っこい音になっているから、また不思議だ。それもまた、Carlos NiñoのCarlos Niñoたる所以なのだろう。この美しい音の物語に、ゆっくりと身を委ねてみよう。誰もが、Carlos Niñoがこの作品で描き出す世界の一部になれる。忙殺されるような日々の中で忘れていたものや、見えなくなっていたものが、音の波間からふと顔を出すかもしれない。(text by 佐々木健治)
RECOMMEND
Turn On The Sunlight / TURN ON THE SUNLIGHT
「ジョン・フェイヒーとブライアン・イーノが海と星と愛についての音楽を作ったとしたら」そんなカルロスの夢想から始まったこのプロジェクトは、ダヴィデ・バルラや中村としまるら様々なアーティストとの演奏経験を持つNY在住のギタリスト/インプロヴァイザー、ジェシー・ピーターソンと一緒に作り上げられた、フォーキーで、そして最近のBuild An Arkにも感じられるアコースティックなアンビエントの空気にも包まれた素晴らしい音楽空間を作り上げた。
>>>TURN ON THE SUNLIGHTの特集はこちら
Build An Ark / The Stars Are Singing Too - 10 Year Anniversary Special 2001 - 2011
本作は、ボーナス・トラックやアウト・テイクを集めたコンピレーションではなくBuild An Arkの10年間の歴史を見渡すことのできるストーリーだ(カルロス・ニーニョ)。「Medley 2(Love Themes)」に頭像するサン・ラの「Door Of The Cosmos」は、Build An Arkの最も初期のレコーディングの一つでもあり、彼らの最高のカバー曲の一つでもある。インストに美しくアレンジしたヴァン・モリソンの「Swet Thing」の別テイクとミックスなど興味深い音源が目白押し。
>>>Build An Ark10周年コンピレーション特集はこちら
Samiyam / Sam Baker's Album
BRAINFEEDERの本命samiyam遂に登場!! ソウル、ファンク、ヒップ・ホップから8ビット・サウンドまで、自身のルーツにぶっとんだオフ・ビートのリズムを刻んだ。もはや芸術的ビート・アルバム!!
Low End Theory2012が2年振りに開催!
Low End Theory JAPAN 2012 feat. PLAY JAPAN! Red Bull Music Academy
2012年03月16日(金)@札幌BONDZ BLD
2012年03月17日(土)@姫路FAB SPACE
2012年03月18日(日)@大阪Universe
2012年03月19日(月)@代官山UNIT
Open / Start : 23:00
Charge : adv 4,000yen / door 4,500yen(共にドリンク別)
Live : NOSAJ THING、SAMIYAM、DADDY KEV、NOBODY、D-STYLES、NOCANDO
DJ : DJ JIN(Rhymester/Breakthrough)、DJ KENSEI(Coffee & Cigarettes Band)、DJ SAGARAXX(Coffee & Cigarettes Band)、DJ MUTA(JUSWANNA)、HASHIM B.
VJ : DBKN
Low End Theory主催corde inc.のofficial HPはこちら
Carlos Niño & Friend Profile
スピリチュアル・ジャズ・コレクティヴBuild An Arkをはじめ、Life Force Trio、Ammoncontactなど、数々のプロジェクトで知られるロサンゼルスを代表するプロデューサー&DJであるカルロス・ニーニョ。ファラオ・サンダースからDJシャドウまでジャンルを横断してさまざまなアーティストと交流を持ち、各種の重要な音楽プロジェクトを実現してきた。近年は、LAサウンドのコンピ『The sound of L.A.』や故J・ディラの追悼プロジェクト『Suite for Ma Dukes』の制作でも話題を呼んだ。自身のラジオ番組「Spaceways」をKPFK FMで15年以上も続け、世界的に注目を集めるネット・ラジオ局Dublabの設立にも関わっている。カット・ケミストのまもなくリリース予定の最新アルバムのプロデュースも担当している。ギタリストのジェシー・ピーターソンとのユニット・Turn On The Sunlightでは2010年に来日を果たし、レイ・ハラカミ、テニスコーツ、コーヒー&シガレッツ・バンドらと共演した。カルロス・ニーニョ&フレンズは、彼の幅広い人脈からうまれたコラボレーション・プロジェクト。2009年にファースト・アルバム『High With A Little Help From』(KINDRED SPIRITS)をリリース。
Carlos Niño & Friend official HP
Sauce81×RLPインタビューのLA BEATS特集はこちら