2012/05/23 00:00

D.Oが1年半振りの4thアルバムをリリース!

東京都練馬区のMC達で結成されているヒップ・ホップ集団・練マザファッカーのボス・D.O。一時はテレビ番組にも出演し、日本語ヒップ・ホップの垣根を広げた人物だが、2009年には不祥事を起こし現場から離れたD.O。2010年にシーンに復帰してから2作目となる今作の『THE CITY OF DOGG』。常にオリジナルで有り続けてきたD.Oが辿り着いた答えを、本作を聞いて確認してほしい。

D.O / THE CITY OF DOGG

待望のD.Oニュー・アルバムが到着。何を信じればよいのか解らない… こんな時代にD.Oが黙っている訳がない。包み隠さずさらけ出し、言いたいことは言わせてもらう。これがD.Oの流儀。

【参加プロデュース】
DJ MUNARI & PRAWDUK、JASHWON
【参加MC】
PIT GOb、T2K、JAZZY MINOR、響

【価格】
mp3 : 単曲 150円 / アルバム 1500円
WAV : 単曲 200円 / アルバム 2600円

D.Oのアーティストとしての在り方が変わったアルバム

2011年3月11日が与えた衝撃は、決して経済的・政治的なものに対してだけに留まらない。芸術面だって例外ではなかった。園子温監督の『ヒミズ』、荒木飛呂彦氏による人気シリーズ最新作『ジョジョリオン』。映画や漫画で、各人が震災で受けた衝撃を芸術で吐き出した。もちろん音楽分野、特に比較的短いスパンで曲作りが可能なヒップ・ホップでも、フリー・ダウンロードなどを中心に同様の動きが広がった。政治家も実業家もサラリーマンも映画監督も漫画家もアーティストも、誰もが人生の分水嶺として、あの震災に大なり小なり影響を受けた。不良たちだってそうだ。

D.Oがアルバムに先駆けて発表した「イキノビタカラヤルコトガアル」をわざわざ持ち出すまでもなく、このアルバムで彼のアーティストとしての在り方がそれまでと変わったのは間違いない。ファニーな性質なのに淡々としたフロウでシンプルかつ残酷な言葉を撃ち込んでくる。そのギャップにより煽られる恐怖感を最大限に活かしたストリート描写も十分独特だったD.Oだが、本作では自らの「生き方」を全てのリスナーに示そうとする真摯な姿勢が強く印象に残る。「誰かがそいつ(ラッパー)の上にあるカードを引っ張りたいと思ったときに/いつでも示して証明して見せるのが本物のラッパー」「オレならここにいるぜ」(「RAPPER IS」)

そう宣言して悪者としての価値観、生き様をごく真剣に語るD.Oの詞は、このタイミングだからこそより心に刺さる。「オレは悪い」「金がある」一辺倒の一昔前のギャングスタ系とも、ストリートの裏側を淡々と状況描写することで「日本における不良」の姿を具現化したMSCや妄走族ともまた違う。「オレみたいな悪者はどう考えて生きてると思う? 」そんな声が聞こえてくるような、D.Oが一個の人格として必死に訴えかけてくるアルバムがこれだ。

そんな一個の人間としてごく等身大の自分を投影しているからこそ、「イキノビタカラヤルコトガアル(REMIX)」「ドアを叩け」「SEVEN DAYS WAR」など、彼の不良としてのフィルターも通したメッセージ・ソングがよりストレートに伝わる。更に、己の価値観を持った一個の人間として自身をしっかり描けているからこそ、イリーガルな面にリスナーの頭を突っ込ませる「悪党の詩」や「ガマン印のHIGH GRADE DELIVERY」もより実際で起こっている出来事として認知でき恐ろしくもなる。

一方でそうしたフィルターが無意味なものと化し、ありがちな政治批判に終始した「世界新秩序」「BAD NEWS」なんかには少し辟易してしまったのも事実。それでもなお、彼がこの作品でアーティストとして一歩成長したのは間違いない。前作『ネリル&JO』の手詰まり感とは打って変わって、何度目のリピートにも耐えられる作品に仕上がったことを僕が保証しよう。アーティストの成長をこれだけ如実に感じることのできる作品はそうそうない。(text by 遼)

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この記事の筆者

[レヴュー] D.O

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