2012/11/22 00:00

LOW HIGH WHO?を代表するビート・メイカーEeMu×ラッパー!

イチオシ・レーベルLOW HIGH WHO?に所属し、ビート・メイカー / エンジニアとして活動するEeMu。2011年12月にファースト・アルバム『Nothings』をリリースした彼が、2012年2月から11ヶ月連続でEPをリリース。OTOTOYでは、その11ヶ月を、ヒップ・ホップ・ライターの遼とヒップ・ホップ担当、和田隆嗣(僕です!)が追いかけます。そんな熱愛企画の今回で第10弾目をお送りいたします! 今作は、EeMuが選出する4人のラッパーとのコラボ作となってます。

EeMu Monthly Collection vol.10

EeMu / Fourth Way

【価格】
mp3 : 単曲 150円 / アルバム 600円
wav : 単曲 200円 / アルバム 600円

参加メンバーは高円寺を拠点に活動し映画をこよなく愛するMC、MNU。川崎出身でCOCKROACHEEE’zとしても活動中のドープMC、小宮守。8th wonderのMCで最近はソロとしても活動中のMC、FAKE?。同郷、旭川出身のMC、DelaがEeMuのビートを舞台に各々が独自の表現と感性でスピットする全4曲。

ラップを乗せるためのトラック・メイカー

EeMuのシリーズ10作目。今回は、シリーズで初めて全曲にラップを配置した構成となっている。

ドラマ性、物語性、どちらの言葉で表しても構わないが、要するにEeMuの紡ぐ音がこれまでのシリーズで示してきたのは、そのビートでの感情表現力だった。その力量にこれまで幾度も驚かされてきたし、たまに用意されたラップ付きの曲でも、EeMuのトラックがあくまで主体的に曲の感情的な機微をハンドリングしていた。ラップ曲だけではない。民族民謡と混ざったとしても、どんな音と混ざっても、主役となるEeMuの音ははっきりとした「顔」をそれぞれ失わずにいて、常にこれが「EeMuの音を聴かせる」作品であることを誇示してきた。

それが本作では、遂に「ラップを乗せるためのトラック・メイカー」としてのEeMuを見せてきたように思える。もちろん日本のヒップ・ホップ・ファンの多くが知っているEeMuは、HOOLIGANZを始め、多くのラップ作品で印象的な仕事をこなしてきた彼の姿であった。しかし、そもそもEeMuが今回のインスト中心によるシリーズを始めたのも、「ラップを乗せるためのトラック・メイカー」だけでは収まりきらない、単体のビート・メイカーとしての自身の才能を示す目的があったからだろう。だからこそ、これまでのシリーズで彼の多才ぶりを味わってきた者にとっては、シリーズ最終版で改めてゴリゴリのラップ作品を繰り出されることで、改めて彼の力量に気付かされる。そうだ、こいつの音ってラップを乗せさせてもとんでもないことになるんだ、と。

恥ずかしながら、僕は本作に参加しているMCの名前を一人も知らなかったのだが(すみません)、各々がラップの特色を活かされる形で曲に組み込まれており、その適材適所ぶりに、単なるトラック・メイカーというよりもプロデューサー的な才覚を見出すこともできる。いかにも日本語ラップ直系の文脈から生まれ出てきたようなMNUの不器用で直情的なラップが乗るタイトル曲は、ナード・ラップものとしてかなりの完成度だ。かと思えば、次の小宮守と組んだ「phenomenon」では、彼のコンシャスな世界観にマッチする、ミニマルでありながらウッドベースが有機的に機能する音を用意して感情を突き動かす。

特に、この前半の2曲の出来が図抜けている印象を受けたが、後半についても文句なし。僕が普段から馴染み深いラップ・アルバムであることもあるだろうが、結果的にEeMuのシリーズ中でもトップ・クラスの完成度になったのではないだろうか。しかしラップを全面的に取り入れた作品はシリーズ最後の締めくくりに出すものと思っていたので面食らった。こうなると、ラストを飾る次回作はどのような構成の作品になっているのか、今から楽しみだ。(text by 遼)

>>>EeMuのインタビューの特集はこちら

EeMu Monthly Collection シリーズ!

毎月リリースしている連続EPシリーズも、第10弾まで登場しました。各EP、4曲入りとなっているが、毎回にそれぞれのテームを持たせている。30曲を越えてもなおサンプリング・ソースが尽きることの無いEeMu。きっとお気に入りの一枚があるはず! また、アート・ワークにはLHW?の全てのアート・ディレクションを担当するレーベル・オーナーParanelが担当。11枚を合わせると1枚の絵になるという新たなデジタル・リリースの可能性にも挑戦しています。

連続企画のアーカイヴはこちら

>>>EeMu Monthly Collection vol.1
>>>EeMu Monthly Collection vol.2
>>>EeMu Monthly Collection vol.3
>>>EeMu Monthly Collection vol.4
>>>EeMu Monthly Collection vol.5
>>>EeMu Monthly Collection vol.6
>>>EeMu Monthly Collection vol.7
>>>EeMu Monthly Collection vol.8
>>>EeMu Monthly Collection vol.9

RECOMMEND


ZIMBACK / SOUL BROTHER

Listen to my world!! 言葉に授かる力、魂に熱、人間に光。関西屈指のDOPEリリカル・ラッパーZIMBACKソロ・アルバム第二段。固いフロウと生まれ持った声質を武器にアルバムを完成。これぞヒップ・ホップ。という玄人を唸らせる内容はアート・フォームとしての完成度が高い。


SUNNOVA / Flip Stoner

ヒップ・ホップにも聞こえ、エレクトロニカかもしれない。だけどダブである。決定的なものは一つもなくリスナーに委ねているのは、彼のアイデンティティによるものかもしれない。「どこかで見た事のある景色だ」。そう思うこともあれば「いまだ知らぬ発見の連続」かもしれない。

>>>SUNNOVAの特集はこちら


KEN THE 390 / More Life

メジャー・デビュー作品となった『MY LIFE』から5ヶ月、特徴とも言える、リズミカルなフロー、耳に残るライミングはそのままに、更に力強さを増した言葉で日常の1ページからその先の話まで… 様々なテーマでラップする今まで以上に日本語ラップ・ファンの心をつかむ1枚。

EeMu Profile

北海道出身。中学からヒップ・ホップに目覚め、高校の頃には音楽性を確立し、全国のEDWINショップの店内BGMのオファーも来るほど当時は周囲を驚かせていた。その後、自身の多名義によるプロジェクト、様々なアーティストへのトラック提供をはじめ、現在はWEBサイトやCM、ドラマなどテレビ音楽などにも提供している。ブラック・ミュージックからクラブ・ミュージック、環境音楽などにも幅広くセンスに取り込み、仲間からラッパーから、音楽家たちからも愛されるビート・メイカーとしてコンポーザーとしてレーベル「LOW HIGH WHO?」を支え続けている。

EeMu official HP
LOW HIGH WHO? official HP

この記事の筆者

[レヴュー] EeMu

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