INTERVIEW


東京・福生市出身の5人組ギター・ロック・バンドOverTheDogsが、ファースト・アルバム『A STAR LIGHT IN MY LIFE』をリリースした。ボーカル恒吉豊のハイトーン・ボイスと、疾走感溢れるキャッチーなサウンド、そして「わたし」と「あなた」の世界を描いた、温かく実直な歌詞が胸を打つ作品だ。紆余曲折あったバンドのこれまでと、これからの展望を、ボーカルの恒吉豊とベースの佐藤ダイキに聞いた。オトトイでは、良質なギター・ロック・バンドもお薦めしていきます。

インタビュー&文 : 井上沙織

OverTheDogs「星に何万回」フリー・ダウンロードはこちら(期間 : 6/10〜6/17)

『A STAR LIGHT IN MY LIFE』を全曲購入頂いた方には、未発表曲「ポラロイドレター」がボーナス・トラックとしてついてきます!

僕がやると、なんか嘘くさくなってしまった

——バンド結成のいきさつを教えてください。

恒吉豊(以下、T) : 幼なじみと僕と彼(佐藤ダイキ、B)で、高校生のときにバンドを組んで活動していたんです。当時僕はドラムだったんですけど、ボーカルの幼なじみが、酔っぱらって線路に入って轢かれて死んでしまった。これからバンドをどうしていこうか悩んだ時に、バンドを続けていくなら、他のボーカルは入れたくなかったので、僕がボーカルをやることにしたんです。それまでうたったことはなかったんですけど、やってみようかなと。サポート・メンバーを入れてライブを続けていたんですけど、僕ら自身しっくりきていなくて、お客さんの数も減っていった。

——新しいボーカルを入れて心機一転やっていく、という考えにはならなかったのでしょうか?

T : そうですね。新しいボーカルをいれたら違うバンドになってしまうけど、僕が歌ったら、変化はあっても、全く違うものにはならないんじゃないかと思ったんです。幼なじみの彼とは一緒に住んでいて、本当に仲が良かったんです。「こういう音楽がやりたいね」とか話しながら、ずっと一緒にやってきた。僕と彼では、つくる曲も歌声も全然違うんですけど、感覚や感性の部分で共通しているところが大きかったから、まるっきり違うものになることはないと思ったんですよ。本当は、バンド名も変えちゃったほうがきれいだと思うんですけどね。変な話、人が死んだことを利用して知名度を上げようとしてんじゃねえかと思われることもあるかもしれないし...。でもそこを曲げてしまったら、今までの出来事を否定してしまうようで嫌だし、何より忘れたくないんですよね。だからバンド名を変えないことと、自分がうたうことだけは、絶対変えないでいこうと思ってます。

——実際にうたいはじめてみた時は、どうでしたか?

T : それまではずっとメンバーを後ろから見ていたので、前に立つということが異質でした。前のボーカルは、とにかくしゃがれていて、もっとパンクっぽかったんですけど、僕がやると、なんか嘘くさくなってしまった。それがしっくりくるようになったのは、一回ライブを止めて、自分に合うキーや曲を意識して作るようになってからです。とにかくライブをやっていたので、一回冷静になって曲を作るようにしだしてからですね。メンバーも、しっくりくるようになったのは、今のメンバーになってから。

——現在のメンバーで固まったのはいつ頃ですか?

T : 2008年の10月です。

——メンバーとは、どのように知り合ったんでしょうか?

佐藤ダイキ(以下、S) : ピアノの星(英二郎)くんとは、彼が当時やっていた別のバンドで対バンして顔見知りだったんですけど、たまたまメンバー募集サイトで連絡を取りはじめて。ギター(樋口三四郎)もメンバー募集サイトで知り合いました。最初、予備校生がきたのかと思いましたよ(笑)。ドラムは、仲良かったバンドの横の繋がりです。
T : 樋口なんか、最初ギター引けなかったですからね。ギター歴4年とか書いてたのに、いざ一緒にスタジオに入ってみたら、全然弾けない(笑)。でも、ワン・フレーズがものすごくかっこよかったんですよ。めちゃくちゃうまくて気が合わないよりも、ここから一緒にやっていくことのほうが大事だなと思って。だからしょっちゅう会うようにして、練習もしてもらった。
S : 入ったばかりの頃は合宿とかもしてたもんね。
T : 練習ばっかでも嫌だから、たまに皆で富士急に遊びに行ったりね(笑)。星くんも独特の雰囲気がある人だから、最初は仲良くなれるか不安だったんですけど、たくさん話したり、なるべく一緒に過ごす時間を作ったりしていくうちに、自然としっくりくるようになりました。僕、結構人をシャットダウンしてしまうことも多いんですけど、本当に気が合わない限りは、そんなに嫌いにならないんですよ。こいつとやっていこう! ってなったときは、しっかり向き合う。女と男じゃないから、一目惚れする、なんてことはないじゃないですか。そのかわり、きちんと中身を知ると友情が生まれるし、お互いが寄り添えるようになる。あ、こういうこと言うとな…。最近、ホモ疑惑がすごいんですよ、うちのバンド(笑)。

——(笑)。バンド内のコミュニケーションを大事にされているんですね。

S : 恒吉と樋口と星は一緒に住んでますからね。
T : 「いつ帰ってくるの?」って、帰りを待ってますからね(笑)。
S : 俺とドラム(田中直貴)も、スタジオ終わりに遊びにいって、5人全員で鍋やったり焼き肉やったりすることもあります。
T : 一緒に住んでいると、例えば歌詞に煮詰まったときとかに「どっちがいいと思う?」ってすぐに聴きにいけるから、バンドにとってもすごくいい影響がありますね。

日本語を面白いと思うようになった

——影響を受けたバンドなどはいますか?

T : 高校生の頃は、レッド・ツェッペリンやジャニス・ジョプリンとか、ハードロックを聴いていました。それこそロック少年が好きな音楽を聴いていたんですけど、高校を卒業する頃に、真心ブラザーズの音楽に出会って。真心の歌詞が、すごく生々しかったんですよね。それでいて温かい。ずっと洋楽ばっかり聴いていたのを変えてくれたのは彼らですね。そこから、日本語を面白いと思うようになったし、言葉を大事にしようと思うようになりましたね。真心ブラザーズが、言葉の世界を広げてくれたなあと思っています。

——佐藤さんはどうですか?

S : 僕はあーでもない、こーでもないと言いながら、雑多に聴くんですけど、自分のバンドから影響を受けることが一番大きいですね。他のメンバーが他の音楽を聴いて影響を受けたとしたら、僕はその彼らに影響を受けている。僕の世代ってビジュアル系全盛期を経験しているんですけど、その頃からしたら、今自分がこんな音楽をするとは思わなかったでしょうね。

——アルバムを通して、バラエティに富んでいたので、そのぶんバックボーンが見えにくいバンドだなあと。

T : そっちのほうが好きなんですよ。面白い、飽きないアルバムを作りたいと思っていて。きれいすぎるものって、最初は感動するけど、それ以上にも以下にもならないから飽きてしまう。僕、多少の違和感って大事だと思うんですよ。例えば、今このテーブルのテレコの横にベビースターラーメンが置いてあったら、印象に残ると思うんです。「あのオフィスすごいきれいだったけど、ベビースターラーメン落ちてたよね」みたいな。そういう変な違和感はあったほうがいいし、好きですね。きれいで整った音楽が良いんだったら、俺等じゃなくてもいいし。

——具体的には、どのように取り入れているのでしょうか?

T : 例えば、好きな人に対して歌を作ろうとしたときに、「好き」っていう言葉は言い尽くされている。じゃあどうやって表現しよう? と考えたとき、恋愛しているときって、皆自分や好きな人のことを優先して、まわりのことが見えなくなるときがあると思うんですね。きれいに歌おうと思えば省ける部分だけど、僕は省ける部分をなるべく歌うようにしています。それで「誰よりも自分を優先してください」とか「願いを叶えてください」っていう歌詞になったりする。

——OverTheDogsの曲には、「わたし」と「あなた」の世界の歌詞が多いですよね。

T : 自分が居て誰かが居る、っていう世界が好きなんですよね。余計な人がでてきたり、「皆わかるでしょ!」とか言われると、「いやわかんねーよ」と思っちゃう(苦笑)。「僕たち! 私たち! 」って言われると、「いや、入れないでよ」って思うし。「僕」と「私」のやりとりを聴いて、「ああ、僕も(私も)そうなんだよね」って思うことはいいと思うんだけど、複数形にまとめてしまうと、押し付けがましくなってしまう。共感してほしいわけではなくて、自分の思うことを投げていっているだけなので、別に「勝手に言ってろよ」って思う人がいてもいいんです。

——バラードからロックンロールまで、曲の振り幅が広い中でも、基本的に色んな人に響くポップなギター・ロックなのがいいなぁと。

T : 筋が通り過ぎている曲ってイヤミにしか聴こえない時があるんですよね。きれいすぎるものも、パンクすぎるものも。いちいち自分のスタイルを作り上げることとか、僕からしたらどうでもいいんです。昨日まではこう思っていたけど、今日起きたら全く違う考えになってたりすることも多いし。だから友達できないのかもしれないですけど(苦笑)。一貫性があったほうがきれいだしわかりやすいから、好きな人も多いかもしれないけど、バラバラなほうが面白いと思っています。

——曲はどのように作るのですか?

T : 僕がメロディと歌詞を全部作って持っていって、そこからアレンジを広げていきます。でも、メンバーにはあまり感想を言われないんですよね。「この歌詞(メロディ)完璧!」と思って作っていくんだけど、聴かせても、誰も何も言わない(笑)。それよりも先に、このフレーズをどうしようとか、もっと引き立たせる為にアレンジはこうしようとか、そういうところに意識がいくみたいなんです。スタジオで練って練って、最終的にピタっと合ったときに、この曲はいいね、とか、歌詞が載る曲だね、とか言われる。
S : どうしても先に自分のアレンジのほうに意識がいってしまうんですよね。友達やスタッフが家に遊びにきたときに、たまに恒吉が酔って自分の曲を聴かせたりするんですけど、そのときの周りの皆は「いい曲だね」とか言うんだけど、僕は「あー、このままだとあの曲と似ちゃうから、ベースのアレンジをこうしたらいいんじゃないかな」とか思いますから。
T : あまりにも反応が薄いと、僕、むかついて消しますからね(笑)。
S : 嫌いとかではないんですよ。これはないだろ、って思ったことは一回もない。だけど、それめちゃめちゃいいねとか言いたくないんですよ。いや、いいんですけど(笑)、やっぱり曲にどう触れるか、っていうところを一番に考えてしまうんですよね。

——話を聞いていると、仲も良く、和気あいあいとしているように思えるのですが、衝突することはあるのでしょうか?

T : ありますよ。うちのバンド、スタジオに入る時間がすごく長いんですよ。仕事とかなしにして、スタジオの日っていうのを週に2〜3回つくるんです。
S : 8時間とか入るよね。
T : うん。
S : 全員にこだわりがあると思うんですよ。まず曲を作ってきた彼にこだわりがあって。そこに対して、ここはこうしたほうがいいんじゃないの?ってなってくる。
T : スタジオの時間が2時間だと遊べないんですよね。ぶつかる余裕がなくなるから、結局かっこいいフレーズを弾こうとか、この曲に合ったキーボードを弾こうとか。いい曲、かっこいい曲にしようってなる。8時間あると、ぶつかることができるし、いい意味でだらける瞬間があるんですよ。そういうときに「変な音出して」とか言えるし、歌詞の語呂が悪いから変えてみたり出来る。ぶつかることって余裕があるから出来ることだと思うんですよね。決められたことに沿っていないことをやろうとするから、そういうところからアレンジを変えたり、メロディを良くしていくことができたりする。だから、ぶつかることは必要ですね。

——新しいことをやっていきたいっていう考えはありますか?

T : 自分達の中で新しければ、それでいいと思っています。それが、世間一般的に新しいことである必要はないかな。例えば、今回のレコーディングでいうなら逆再生って手法はやり尽くされているかもしれないですけど、自分達でまだやったことがなかったので取り入れてみたいと思ったし。
S : 何が新しくて、何が新しくないのか、っていうのもわからないですしね。今、流行っていることでも、昔に誰かがやっていたとし たら、それはもう新しくないだろうし。今のメンバーで楽しくやれているので、バンドとして今までやれていないことをやれていればいいなと。
T : あ、わかった! 新しいことって、やろうと思って生み出せるものじゃないと思うんです。それよりも、おもしろいことをし ようとしたときに、それが新しいものになる可能性があるんだと思う。だから、新しいことよりも、もっともっと面白いことをしていきたいですね。

——バンドがこれから目指すところはありますか?

T : ずっと音楽をやりつづけられる環境を持つことですかね。30 になっても、40になっても出来る環境を。SMAPみたいにならなくてもいいんですよ。音楽をやりながら生きていけたらいいなと。結局、今は余計なことを考えないといけないんですよ。いいメロディや歌詞が浮かんで一気に曲を書いてる時も、心のどこかで明日は音楽以外の仕事をしないといけない、と考えてしまうし、今日はもうそろそろやめなきゃ、とか。それってすごく邪魔なんですよ。音楽と生活に余裕がある、っ ていうのが目指すところですね。

PROFILE

Vocal&Guitar : 恒吉 豊
Guitar&Chorus : 樋口 三四郎
Bass&Chorus : 佐藤ダイキ
Keyboards&Chorus : 星 英二郎
Drum : 田中直貴

2002年、同級生であった荻野彰(Vo.&Gt.)、佐藤ダイキ(Ba.)、恒吉豊(Dr.)の3人で結成。ライブ活動を精力的に展開し好評を得るも、2004年9月に1stミニ・アルバム発売直後にVo.&Gt.荻野彰が事故で他界。しかしDr.を担当していた恒吉豊がVo.転向を決意し、Gt.とDr.をサポートに迎えて止まることなく活動を続ける。その後、幾度かのメンバー・チェンジを経て2006年3月、Gt.に樋口三四郎が加入。2007年に約1年間のライブ活動休止をし、多くのゲスト・ミュージシャンを迎えたフル・アルバム『福生ラバーソールレコード』を制作する。2008年10月に音楽仲間であった星英二郎(Key.)、田中直貴(Dr.)が加入し現在の布陣となり前述の『福生ラバーソールレコード』を2000枚完売する。2009年にはファンである宮川涙氏が書いたOverTheDogsの実話を織り交ぜたケータイ小説「未来少年〜オギノアキラニタイムマシンヲ〜」が魔法のiらんど大賞で部門1位、総合3位に輝くなど様々なメディアに広がり始めている。2009年10月新宿Marbleにてゲスト無しの実券のみでソールド・アウトする。Vo.恒吉豊のハスキーなハイトーン・ボイスと独特な世界観は聴く者の心を揺さぶり、それを支える楽器隊はこの5人でしか為し得ないスタイルのアレンジでその世界観を固める。

OverTheDogs web site

LIVE SCHEDULE

『A STAR LIGHT IN MY LIFE』発売記念ワンマンライブ

2010年6月19日(土)@渋谷Eggman
開場 18:00 / 開演 19:00
前売 2,000円 / 当日 2,500円
[O.A.]BAND A

※当日チケットを持って(チケット予約取り置きを除く)ご来場いただいたお客様に「A STAR LIGHT IN MY LIFE」収録の「マルデメロス」PVのDVDをプレゼント!! プレイガイド、ホームページより通信販売、またはライブ会場にてご購入お願いいたします。

NORTH VILLAGE PRESENTS UTARUBE RAINBOW CAMP ~TOWADA MUSIC FESTIVAL 2010

2010年6月26日(土)〜6月27日(日)@宇樽部キャンプ場(十和田八幡平国立公園内)
開場 / 開演 6月26日(土) 12:00 / 14:00
終演 6月27日(日) 15:00
前売 / 当日 4,000円
LIVE : OverTheDogs / カジヒデキ / →Pia-no-jaC← / Predawn / KIKURI / Kuh / trademark / ELEKIBASS / Sperior Plan(et) / FreeSound / Orchestra / zodiac nova, pop-machine & contemporary system / 3PW / いぶき / 橋口なつこ / Anny Green / 裏道 / KenjiTamura / SCUM BOYS and more...
DJ : HALFBY / Twee Girrrls Club / LODIO(1977 records) / BLUE BOYS CLUB(KINKHIDEKI KAJI) / 小山内(Second Royal Records) / JUKEBOX CREW / 伊藤 英嗣(Cookie Scene) / 坂田かよ andmore...

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筆者について
井上 沙織 (さ)

ototoy編集部で日々山盛りの仕事に囲まれながら、素敵な音楽や人との出会いを探しています。

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