2015/03/09 18:32

インターネットという匿名性の大海原に生息する、エレクトロ・ポップ・ユニット、LLLLを先行ハイレゾ配信

2012年から、突如としてインターネット上に現れたエレクトロ・ポップ・アーティスト、LLLL(フォーエル)。日本の代表的ネット・レーベル、〈Maltine Records〉からのリリース経験をもつLA在住のトラックメイカー、MEISHI SMILE主宰の〈Zoom Lens〉からリリースされたデビュー・アルバム『Paradice』は、シューゲイズ・サウンドとシンセ・ポップを折衷させた音像で、話題を呼んだ。そんな彼によるセカンド・アルバム『Faithful』をハイレゾ、しかも1週間先行で配信開始。本作は、シンセ・ポップス・バンド、禁断の多数決の加奈子や、Her Ghost Friendのshinobuと、エレクトロ・ポップ・ミュージックの注目女性ヴォーカリスト達が参加しており、まさにシーンをぎゅっと凝縮したかのようなメンツ。疾走感溢れるアップテンポからじっくり聴かせるダウンビートまでを表現した音世界を、ぜひハイレゾで聴いていただきたい。

LLLL / Faithful
【配信形態】
【左】WAV / ALAC / FLAC / AAC(24bit/48kHz)
【右】mp3

【配信価格】
【左】単曲(税込) 216円 まとめ購入(税込) 1,800円(税込)
【右】単曲(税込) 162円 まとめ購入(税込) 1,500円(税込)

【Track List】
01. Only To Silence
02. Blue
03. All I See
04. Holy Lust
05. Transcribe
06. Dive
07. Sync
08. Heat
09. 夢の狭間
10. Long Drive
11. You/We
12. Falling Alone Revisited
13. Drowned Fish RemixOTOTOY限定トラック

INTERVIEW : LLLL

2012年よりネットを中心に話題を呼んだ謎のユニットLLLL。当初からその匿名性やクオリティの高いエレクトロニック・サウンド、そして美しいPVとアートワークは日本より海外で話題となる事が多かったかもしれない。唯一の情報は「彼」が東京をベースとしている事だけだった。

そんなLLLLが昨年よりライヴ活動を開始。より直に“彼”のサウンドに接する事が出来る機会が増えてきている。そんな中飛び込んで来たのが、エレクトロニック・ミュージックでその名を知られたPROGRESSIVE FOrMからのリリースの情報である。従来のレーベル・サウンドとは一線を画す2nd Album『Faithful』について、そして今までの匿名性からの変化について、作品のキーともなる“東京”の街で、非常に興味深いインタヴューを聞く事が出来た。

インタヴュー&文 : 小野寺徹(CMFLG)

LLLL - Drowned Fish
LLLL - Drowned Fish

音楽に集中してほしい、だからこその匿名性

ーー元々2012年頃からLLLLというのは匿名性のあるユニットとして活動していたと思うのですが、去年ぐらいからのライヴ活動とリンクするような形で段々と表に出てきたような印象があるのですが。

LLLL : そうですね、去年の5月に初めてライヴをやって、それまでは一切ライヴもやっていなかったです。

ーーそれは何か理由がありますか?

LLLL : 全然カッコいい理由では無いのですが(笑)、作品のリリース元の〈Zoom Lens〉のオーナーであるMeishi Smileが来日する機会がありまして、元々ネットを通して色々とお世話にはなっていたのですけど、彼がオープニングでライヴをしてほしいという事を言いまして、じゃあやってみようと考えたというのがあります。それまではDJぐらいしかやっていなかったのですが。

ーーそこで匿名性についても解いてみよう、というのはあったのですか。

LLLL : 理由としてはいくつかあって。別に商業音楽の作曲家もやっているのですが、そこら辺のイメージを混同されるのがすごく嫌で、それを一切隠したかったというのがありますね。なので匿名にしていた一番の大きな理由はそこで、自分が商業音楽でこれこれをやっていた人で、と言われるのが嫌で。あとはインターネット・ミュージックっていうのはやっぱり匿名性があるものだと思うので。まあこれはたぶん皆さんも同じだと思うのですが、「音楽に集中して欲しい」みたいな、あんまり見た目だったり人となりだったりとかではなく。

ーーそれが、匿名で音楽を聴いてほしいという理由なんですね。

LLLL : そうですね、それは大きいですね。それにやっぱり自分は前職としての作曲家というのもあるので、先入観無しに聴いてもらいたかったというのがありましたね。ただある一定の所を超えると匿名性が飛び道具みたいに見えてきちゃうのは嫌で、顔出したりもやりたいとは思っていて、ダフトパンクみたいな覆面ユニットというのは意図した所ではないですね。

ーーライヴに関してですが、それこそライヴを行うようになって、何かレコーディングとの違いというのはありますか。

LLLL : 結構ありますね。僕の楽曲はダンス・ミュージックとは思ってないんですけど、ダンス・ミュージックのフロアで機能する / 機能しないみたいな所は意識していて。アルバムにしろ、自宅で楽曲製作する時点ではダンスフロアで機能する楽曲とは思っていないんですよ。けどそれをライヴ・バンドで再現しようとしても、それは面白くはないなと思っていて。僕なりの「ダンスフロア」で機能するように再構築して、ライヴしたいというのが強くありますね。あともう一つビジュアルも込みでやりたいというのは本当に大きくて、映像のdaahara君ともすごく綿密に、キメのポイントなども出来るだけ詰めていますし、音楽以上の物を見せられるようにはしていますね。

ーーライヴでのヴォーカルについてはどのように考えられていますか。新作では多数のヴォーカリストが参加している訳ですが。

LLLL : 基本的にライヴでは、歌ものというよりはトラックとして聴かせたいので、どちらかというと楽器としてのヴォーカルの側面を強調して行きたいんですけど、もし何らかのシチュエーションで歌ものとしての側面を聴かせたいとなったら、以前の2.5Dでのライヴのようにヴォーカルを呼ぶって事はあるかもしれないですね。

【LIVE】2.5D × ZOOM LENS presents「H」LLLL
【LIVE】2.5D × ZOOM LENS presents「H」LLLL

インスピレーションとしての「東京」

ーー匿名故に無国籍な感じでありながらも、国籍としては「東京」という部分が今まで出ていたと思うのですが、こちらは何か理由がありますか?

LLLL : 楽曲としてインスピレーションを受けたのが「東京」という所が大きい理由だと思います。

ーー今度公開されたPV「Only To Silence ft. Metoronori」などはまさに「東京」という感じですが、この辺は製作にあたりリクエストはされましたか。

LLLL : リクエストというよりは、元々PVを製作したdarwinfish105さんが東京の街をフィーチャーしたタイムラプスの動画を作っている方で、元からそれが彼のスタイルなんですね。そこと僕の持っている部分が近いというのがあったので、そこをピックアップしてもらって、東京のシティスケープで作ってもらいました。やっぱり東京の街というのがインスピレーションの源であると思うんです。この街の持つ多様性みたいな所ももちろんありますし、例えば新宿とかそうだと思うのですけど、東京って僕の中で「肥大しすぎた欲望の塊」みたいな「モンスター」みたいな所があって。僕の音楽は基本的に暗いのが多いのですが、そこはその「肥大しすぎた欲望」的な所からですね。あとやっぱり、自分は「外国の人が見る東京の街」がすごく好きで。

Only To Silence ft. Metoronori
Only To Silence ft. Metoronori

ーーあ、それはすごいわかります。確かにPVも東京の街を映しながらも、どこか海外から見る東京の都市感がありますよね。

LLLL : そうですね。ギャスパー・ノエ監督の「エンター・ザ・ボイド」とか、それこそリドリー・スコット監督の「ブレードランナー」とか、新宿がモデルとなっているのは有名だと思うんですけど、僕らの場合は看板を記号として認識出来て頭に入ってくる訳なんですけど、それらを一度排除した時点で、単順にビジュアルの感覚として強烈なものがあると思うんですよね。そういう視点から見た「東京」が凄い好きで、それを音に置き換えられないかな、ってのはありますね。僕らの場合だとまず「歌舞伎町」って言葉がまずワードとして入ってきちゃって、そこに意味付けしちゃうのが、外国の人だとそれが一切無いというか。それこそ色彩感だったりとかで現れてくる訳で、僕もそういうフィルターを通して街を見れたらなというか、惹かれている所がありますね。

ーーLLLLさんは海外に住まわれてた時期も長いとお聞きしましたが、そういった視点は日本に来る前と後ではどちらで強かったでしょうか。

LLLL : 元々僕は地方出身だったので、新しい街というイメージで。自分が戻ってきてから住み始めた「東京」ですね。

ポップスの「様式美」

ーー新作『Faithful』はヴォーカル入りの曲が多いのですが、元々トラックメーカーとしての側面もあるわけで、その点歌については商業音楽の作曲もやられていた部分での流れというのは、ある程度ありましたか?

LLLL : ありますね。2つあると思うんですけど、1つは僕がポップスや歌ものがとにかく好きだというのがあって、それを作りたいというのがすごくあるんです。僕のLLLLとしてのコンセプトとして大きくあるのが、アブストラクトなダンス・ミュージックからノイズ・ミュージックまで何でも好きというのもあるんですけど、作品を作る時に一番大切にしている事として、歌ものとしてのフォーミュラを保ちたいというのがあって。所謂歌ものポップって「俳句」みたいなところがあると思っていて。「様式美」みたいな所があると思うんですよ。

ーー「様式美」ですか。

LLLL : はい。Aメロ・Bメロ・サビでもいいと思うんですけど。「様式美」がすごく好きなんですよ。トラックを抜きにしても、歌の「様式美」に沿った一本の線が真ん中にある所がすごい大事なポイントで、なので歌ものにしたいというのがありますね。それが僕の中でのポップス感で、それを作りたいと思っているんです。ただそれを軸としてどれだけ拡張出来るのかというのが僕のテーマで、「俳句」とか、まあそれ程詳しくは無いんですけど(笑)、「五・七・五」っていうフォーマットがあって、その中で如何に色んな意味を持たせるとか、季節を感じさせるとかあると思うんですけど、僕の音楽もポップのメロディがあるという一つの「様式美」の中で、如何に違う側面を見せるのかっていう、そこは凄く意識していますね。

ーーそれは曲だけでもなく詞の部分もでしょうか。今作では日本語の歌もあるわけですが。

LLLL : そうですね。でもJ-POPみたいな所とはまた違いますね。僕も日本人なのでJ-POPも聴いていましたし、そういった所も結果としては出ているとも思うんですけど、僕の中でのポップスというのは、例えばゾンビーズの『オデッセイ・アンド・オラクル』だったりとか、初期のビートルズだったりとか、ボブ・ディランも好きなんですけど彼のメロディ感とか、どのバンドでも共通の「様式美」があるんですよね。メロディがあって、そのメロディも一定の反復性を持っていて、そういう所が僕の中でのポップス、みたいな所ですね。

ーートラックとしての曲構成と歌としての曲構成と、どちらかに合わせるというような事はありますか。

LLLL : 「様式美」みたいなものがある良さって、それさえあれば他は何やってもいいみたいな所があるんですね。僕はその筋さえあれば曲として成立していると思うし、そのある程度自分の中で美しいと思える歌メロがあるんですけど、それが出来ていると後は自由に出来るというのがあると思います。でもトラックにしても、自分の中でもトラックメーカーとしての明確なビジョンがあって、けどそれを言語化するのは本当に難しいんですけど、先ほどの「東京」としてのイメージだったりとか、イメージから作られますね。

LLLL

「共感覚」としてのトラック

ーー先ほどのメロディの話でもそうでしたが、音楽的なバックグラウンドというのはどのような感じだったのでしょうか。ロックを聴かれていたのですか?

LLLL : そうですね、ロックも勿論大好きでしたし、エレクトロニカも大好きでしたし、その辺は音楽にも反映されているとは思います。けどこれは他のインタヴューでも言ったのですが、ホント最近アルバム単位で音楽をあまり聴かなくなってしまって。自分がアーティスト活動する上で他の人に似せたくないというのがあって、1つの作品を聴き込むというのが恐くなっちゃって。その代わりにmixcloudだったり、8tracksだったり、soundcloudだったり、ストリーム出来るサイトでタグで聴いていたりしますね。たまに本当に自分が聴きたいなという物をタグで検索して1回だけ聴くみたいな。それぐらいしかやらないようにしていますね。

ーーそこはなるべく影響を受けたくないという事でしょうか。

LLLL : そうですね、影響を受けたくないですね。先ほどのビジョンであったりとか、街の感じだったりとか、ホントに夢に出てくるような物がビジョンだったりとかするので。高い所から宙吊りになっているイメージとか。青い感じとか茶色い感じとか、とても言語化出来ないんですけど。そこに影響されたくないですね。

ーーではバックグラウンドから作曲するというよりも、そういったイメージから曲が出て来るという感覚なんでしょうか。

LLLL : たぶん「共感覚」だと思うんですよ、僕の作曲って。サヴァンの人とか、あ、サヴァンって一つの能力に異様に特化していたり、異様に記憶力が良かったりする人の事なんですけど。映画の「レインマン」を想像してくれればわかると思うんですけど。あるサヴァンの人は数字に異様な「共感覚」を覚えていて、数字に色だったり感情だったりを覚えるっていう事を言うんですね。円周率を世界で一番言えるイギリスの方が居るんですけど、彼は何故円周率が言えるかというと全て円周率がイメージとして見えているらしいんですね。数字そのものに感情があって、色があって、っていう。彼には円周率がビジョンとして見えているらしいんです。で、僕が音楽を作る上で思っている事は、「共感覚」というかイメージがあって、イメージを音にするという所がすごく強いんですね。イメージというのは先ほどの東京の街であったりとか、高い所から宙吊りにされたイメージとか、そういうのが僕の中であるんですね。夢で見たようなイメージが。それを共感覚的な感じで、音にしたらどうなんだろう?という所なんですよね。

ーーそれを映像化するのも大変ですね(笑)

LLLL : そうですね(笑)。でも映像化する時は音から映像化する流れですね。イメージを映像化するのではなく、イメージから音を作って、そこから映像を作るという感じですね。いつかそれが出来たら面白いですけどね(笑)。

ーーなるほど。元々LLLLとしての音楽は、いわゆるチルウェーヴの流れで語られたりするのですが、自分的には曲構成から全然違うと思っていて、匿名性も含めて一体どういう方がどのように作っているのだろうと思っていたのですが、今回のお話でわかりました。最初は海外に住んでいる日本人のイメージだったりしたもので。

LLLL : そうですか(笑)。ただ東京に住んでいて、東京の街で感じているって事を日本人としてやらなければいけないとは思ってはいますけど、そこを除いてはあまり国籍は関係ないと思ってますね。

ーーあくまで東京に住んでいるからの表現の手段であって、逆に東京に住んでいなかったらまた違う音楽になっていたんでしょうね。

LLLL : まったく違うでしょうね(笑)。

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PROFILE

LLLL

東京を拠点に活動するアーティスト。

LLLLは親密であり、空気の様な存在のポップと思案的なダウンテンポのビートの合間に奏でられる、意味ありげで繊細でありつつも芯のある力強い音を作り出している。

2012年から、このグループはLLLL、Spider Web / Drafting StillとMirrorの3つの自主制作EPをリリースし、The Fader、No Fear of PopやTiny Mix tapeなどで絶賛された。

彼らのファースト・アルバムはアメリカの〈Zoom Lens〉から2014年にリリースされ、2015年の1月には昨今世界で大きな注目を集めているイタリアのオンライン・レーベル〈Bad Panda Records〉よりセカンド・アルバム『Faithful』の先行シングル「Transcribe feat. Meghan Riley」をリリースしている。

また昨今では恵比寿リキッドルームで開催されているエレクトロニック・ミュージックの祭典〈EMAF TOKYO 2014〉やソーシャルTV局2.5Dをはじめライブアクトとしても活躍中。

そして2015年3月、満を持してセカンド・アルバムを〈PROGRESSIVE FOrM〉と〈Zoon Lens〉よりリリースする。

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[インタヴュー] LLLL

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