羅針盤、渚にてと並び関西三大うたものバンドと称されたラブクライの中心人物であり、ラブクライの活動休止後は様々なバンド活動に加え、プロデューサー活動でも遺憾ない才能を発揮している三沢洋紀。そんな彼が岡林コゾウ大輔(元THE BITE / U.G MAN)、中川克志(OKミュージックボール)、宮地健作(元ラブクライ)と結成したバンド、三沢洋紀と岡林ロックンロールセンターのファースト・アルバム『サイレントのとんがり』がリリースされた。まさに“いぶし銀”という言葉がぴったり、大人の色気たっぷりのロックンロール・アルバムをご堪能ください。
三沢洋紀と岡林ロックンロール・センター / サイレントのとんがり
【価格】
WAV 単曲 250円 / まとめ購入 2,000円
mp3 単曲 200円 / まとめ購入 1,800円
【Track List】
1. 半透明の男 / 2. セプテンバー・ジョー / 3. 真夜中になれば / 4. とびらをたたいて / 5. 低空飛行のブルース / 6. 夜の羊 / 7. 7 daysは狂っている / 8. ハードレインのコート / 9. ペーパーローズ / 10. むすんだうた
土臭く、モダンで、サイケで、最高にダンディな傑作フォーク・ロック・アルバム
それぞれに確かなキャリアを持ったミュージシャンが集まっていることを差し引いても、今年最も多くの“うれしい驚き”をもって迎えられるのは、もしかしたらこのアルバムかもしれない。三沢洋紀と岡林ロックンロール・センターの1stアルバム『サイレントのとんがり』は、土臭く、モダンで、ほんのりサイケデリック。で、最高にダンディな傑作フォーク・ロック・アルバムだ。サウンドの基本になっているのは、アコースティック・ギターのゴツゴツした響きを中心に、洒脱なエレキ・ピアノ、角の丸いふくよかなベース、小気味の良いパーカッション、滲むように歪んだエレキ・ギターが空間的に配されたバンド・アンサンブル。しかも、そのいずれの演奏もが人間くさい、良い意味でヨレっとした魅力に溢れている。四つ打ちのキックとワウ・ギターが印象的なエレクトリック・ファンク「ペーパーローズ」のような例外もあるものの、全体としては、ザ・バンドやクレイジー・ホースが持っていたアーシーな魅力を引き継ぎつつ、リズムやアレンジの面ではエレクトロニカやノイズ・ミュージックやダブの影響を消化して、現代版へアップデートしたサウンドと言えるかも知れない。
一方で、作品の随所に表れるさりげないサイケデリアも魅力だ。リズミックなアコギのストロークとランニング・ベースが牽引するスウィンギーなグルーヴから、エレキオルガンのまばゆい洪水の中へ、じわじわと滑り込んでいく「とびらをたたいて」を筆頭に、日常を非日常へ、あるいは非日常を日常へと、すこしずつ押しやるような、ささやかだが超越的な感覚が、本作を聴いていると幾度となく訪れる。ズブズブと沈んだり、ヘラヘラとアガったりしてるばかりがサイケではないのだ。
バンドの人間くさい演奏。洒脱でモダンなサウンド感覚。そしてサイケデリア。別のベクトルを持った要素が互いにせめぎ合う、『サイレントのとんがり』サウンドの中心には、呟くように、囁くように歌う三沢のヴォーカルがある。どんな現実を前にしても、自分は自分だと居直ることを止めない勇気と虚勢をロックンロールと呼ぶなら、このアルバムにおけるロック性は、直情的な表現とは別次元の、刺々しさを孕んだダンディな趣きとして歌のなかに表れている。そして、その凛とした雰囲気が保たれているがゆえに、歌の端々から滲み出る情緒や猥雑さにも一層胸が打たれるのだ。(text by 佐藤優太)
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THE BITE / ポケットにブルース
「時代は変わり過ぎる」。ブルースにこんがらがっても転がり続けろ! ザ・バイト待望のファースト・アルバム。2006年、元BREAKfASTの酒井を中心に、パンク/ハードコアを通じて知り合った四人が、普通のロックバンドをやってみようと結成。バックを務めるメンバーもNIAGARA33、EXCLAIM、U.G MANなどのハードコアバンドで長くプレイしてきた面々。酒井の音楽への愛が詰まりに詰まった楽曲は60's、70'sの古き良き音楽を新鮮に感じさせます。
LIVE INFORMATION
2013年9月26日(木)@神保町視聴室
2013年9月30日(月)@福岡cafe and bar gigi
2013年10月2日(水)@Tully's coffee大分中央町店
2013年10月7日(月)@新宿LOFT
2013年10月11日(金)@下北沢THREE
2013年10月29日(火)@静岡Freakyshow
2013年11月6日(水)@大阪 ニット会館
2013年11月30日(土)@立川gallery SEPTIMA
2013年12月20日(金)@横浜中華街 同發新館
PROFILE
三沢洋紀と岡林ロックンロール・センター
羅針盤、渚にてと並び関西三大うたものバンドと称されたラブクライの中心人物で、ラブクライ活動休止後はPONY、LETTER、三沢洋紀とゆふいんの森、真夜中ミュージックといったバンドで活動し、昨年は柴田聡子の1stアルバム『しばたさとこ島』、今年は都市レコード『road to you』のプロデューサーとして、その音楽的才能を遺憾無く発揮した三沢洋紀。彼が、元THE BITE / U.G MANの岡林コゾウ大輔、OKミュージックボールの中川克志、ラブクライのメンバーでもあった宮地健作と結成したバンド、三沢洋紀と岡林ロックンロール・センターが、2012年7月発売のCD-Rの8曲入りアルバム『三沢洋紀と岡林ロックンロール・センター』に続き、ファースト・フル・アルバムを完成させた。三沢洋紀にとって、プレスCDとしては2012年2月発売の『真夜中ミュージック』(限定300枚)、全国流通盤としては2009年の『三沢洋紀とゆふいんの森』以来となる本作は、プロデューサーにKIRIHITO、GROUP、younGSoundsのメンバーとして、刺激的なサウンドを追求し続けている竹久圏を起用。予てからお互いの活動に注目していたという二人がここ数年で急接近し、三沢にとっては念願の竹久とのコラボレートが実現することとなった。
ラブクライ時代から定評のある三沢のソングライティング能力やポップ・センスは更に磨かれ、ギター・プレイヤーとしても参加した竹久のハードコアやクラブ・シーンにも精通した不良性の高い歪な音像やリズム・センス、ジャンルを超越したオルタナティヴなエッセンスによって、単なるうたもの作品では味わうことの出来ない多彩な魅力が詰まった傑作アルバムとなった。録音、ミックス、マスタリングは近年のテニスコーツやマジキック作品には欠かせない存在となっているサウンド・アーティスト、大城真が担当。三沢の甘いヴォーカルといぶし銀なバンド・アンサンブルによる、アーシーかつアーバンというアンビヴァレンツなサウンドが奇跡的に融合した、今の日本では他に例を見ない、洒脱な大人のロックンロール・アルバムに仕上がっている。人生の酸いも甘いも知り尽くした男達が奏でる、この豊潤なバンド・サウンドにどっぷりと酔いしれて欲しい。