2013/07/11 00:00

東日本大震災で被災した故郷、宮城県気仙沼への想いをつづったアルバム『わが美しき故郷よ』より約1年半ぶりとなる6枚目のオリジナル・アルバム『rain falls』。世界的評価を得ている中島ノブユキをプロデューサーに向かえ、本作では「雨のアルバム」をコンセプトに美しい畠山美由紀の歌声が堪能できるアルバムとなっている。


畠山美由紀 / rain falls
【価格】
mp3 単曲 200円 / まとめ購入 2,000円

【Track List】
1. 風の栞 / 2. 叶えられた願い / 3. 夏の懺悔 / 4. Même Sous La Pluie / 5. 光をあつめて / 6. Rainy Days and Mondays / 7. Prelude for the Rain / 8. 夜と雨のワルツ / 9. 雨は憶えているでしょう / 10. Daily Life / 11. 雨の降る日に / 12. Wild Nights

あなたが思うよりも人生は短く あなたが思うよりもはてしもない

2011年、僕の心に最も響いたのは、畠山美由紀の「わが美しき故郷よ」だった。東日本大震災に見舞われた彼女の故郷、気仙沼への思いを投影したこの曲は、震災で落ち込んだ多くの人々の心を、各々の故郷を思うことによって奮い立たせた。この曲は、テレビ、新聞等のメディアでも大きく取り上げられ、彼女は、12月にアルバム『わが美しき故郷よ』を発表し、全国30カ所にこの曲を届けた(『わが美しき故郷よ』は、OTOTOY Award 2011にも選ばれる)。そして彼女は、2012年、NHK東日本大震災プロジェクト復興支援チャリティー・ソング「花は咲く」に参加。またNHK BS プレミアム・ドラマ「神様のボート」(原作 : 江國香織、主演 : 宮沢りえ、藤木直人)のエンディング・テーマ「ハレルヤ」を歌い、時代を切り取る国民的歌手へと駆け上がった。

そんな彼女の最新作は『rain falls』。雨をテーマに制作された本作は、幼い頃より雨が好きで、昔から雨のアルバムを作りたかったという彼女の思いが詰め込まれている。けれど雨のアルバムとは言え、憂鬱でネガティヴなイメージは、このアルバムから感じとることはない。本作からは、東日本大震災とその後全国を駆け巡り得た経験が、彼女の生きる力と喜びとなって溢れ出す。

真夜中の嵐がわたしの街を
大好きな季節に変えていった
by 「風の栞」

その時もまだきっと その雨は憶えているでしょう
あなたを愛したことと こんなに幸せだったこと
by 「雨は憶えているでしょう」

ビデオ・クリップにもなった「夜と雨のワルツ」の1節。

あなたが思うよりも人生は短く
あなたが思うよりもはてしもない

ふとすれば説教臭くなる一節を、堂々と歌い上げるその様に、故郷が流される痛み、それでも前に進むと決意した強い意思を感じる。プロデューサーには、中島ノブユキ。メンバーには、屋敷豪太、藤本一馬 (orange pekoe) 、石井マサユキ (TICA、Gabby & Lopez) 、森俊二 (Natural Calamity、Gabby & Lopez) 等の凄腕の演奏家達が、彼女の豊かな表現を存分に支え、特に、中島のピアノの音色からは、彼女の歌声と全く同じベクトルの生きる力と喜びを感じることができる(7曲目「Prelude for the rain」は、なんと彼のソロ曲!)。また、中島のアルバム『』の録音も行った奥田泰次 (OTOTOYでは、キセルの『』をDSD録音) が録音エンジニアとして、この凄腕演奏家達の音を完璧に切り取っていることも忘れてはいけない。

彼女は、「雨の降る日は いつでも時はさかのぼる」と歌う。大切な想い出が、大切な人が、そして大切な故郷が、雨にのってやってくる。2013年の夏は、雨が少ないそうだ。この『rain falls』を聴きながら、雨が降るのを楽しみに待とうと思う。

(text by 飯田 仁一郎)

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被災地、東北、東京、地元。あれから私たちは自分の住む場所、地域について考える機会が増えた。その一方で、どこかそこにいること、そして、そこにいないことに言いようのない感情を覚えることがある。ふるさとについて、今自分が生きる場所について。私たちの想いに賛同してくれた18組のアーティストの音楽が、あなた自身のこころに宿る原風景・ふるさとを美しく照らし出してくれることを願う。

畠山美由紀 / わが美しき故郷よ

誰もが心になつかしい故郷を持っている。2011年の春、そのことを、これほどに痛みとともに感じたことはなかった。そして、それでも廻り、繋がり、つねに新しい季節に向かう世界を、これほど愛おしく感じたこともなかった。この美しき世界へ。心からの賛歌を、この時代に生きる願いを、ここに歌う。 2011年、東日本大震災後、アルバム制作に向かい生まれた名曲の数々。すでに全国各地のライブで大きな感動を巻き起こしている新曲「わが美しき故郷よ」、おおはた雄一や栗原務(Little Creatures,Double Famous)と共作した新曲、NHK総合 震災ヒューマン・ドキュメンタリー番組で使用された「ふるさと」など、カバー曲を含めた、全12曲収録。

PROFILE

畠山美由紀

1972年8月18日 宮城県気仙沼生まれ

1991年上京後、10人編成のダンスホール楽団Double Famousのヴォーカリストとして 活躍する中、ゴンザレス鈴木率いるSOUL BOSSA TRIOのフューチャリング・ボーカリストとしてCDデビュー。その後、ギタリスト・小島大介とユニットPort of Notesを結成。

2001年9月、シングル『輝く月が照らす夜』でソロ・デビューを果たす。 現在までに5枚のオリジナル・アルバムの他、カヴァー・アルバム、ライヴ・アルバム、 ライヴDVDなど多数作品を発表。ヴォーカリストとして、他アーティストの作品、 トリビュート・アルバム、映画音楽や、TV CMソング等への参加も多い。 松任谷由実、大貫妙子、リリー・フランキー、セルジオ・メンデス、グラミー受賞プロデューサー、ジェシー・ハリス…、ジャンルや世代、国境を越えて共演を果たし、同世代の女性をはじめ、音楽ファンから圧倒的な支持を受けている。

またソロ・デビュー時から、キリスト品川教会グローリア・チャペルにて毎年行われているプレミア・ライヴ"Live Fragile"のチケットは、毎公演即日完売。

2011年3月、東日本大震災で被害を受けた故郷・気仙沼を想い「わが美しき故郷よ」と 題した詩を雑誌、自身のブログにて発表。その詩は、被災した人たちだけでなく、 故郷を持つ全国の人々の心に届き、テレビ、新聞、雑誌、ラジオで取り上げられ話題に。同年9月ソロ・デビュー10周年を迎え、12月、アルバム『わが美しき故郷よ』を発表。その後、全国30カ所にて同名の全国ツアーを開催。

2012年、NHK東日本大震災プロジェクト復興支援チャリティー・ソング『花は咲く』にも参加。 同年10月、ギタリスト小池龍平との企画アルバム『Coffee & Music ~Drip for Smile~』を発表し、 全国カフェ・ツアーを開催中。

2013年3月、NHK BS ブレミアム・ドラマ「神様のボード」(原作 : 江國香織 主演:宮沢りえ、藤木直人)のエンディング・テーマ曲「ハレルヤ」を担当。番組終了後、多数の問合せや賛辞などの反響をうけ、急遽フル・ヴァージョンをリテイク。5月22日より「ハレルヤ」をiTMSシングル独占配信が決定。2013年6月5日、6枚目となる待望のオリジナル・アルバム『rain falls』を発表。その後、全国ツアーを開催予定。また7月24日には、ブラジル音楽の世界的巨匠ピアニスト、セルジオ・メンデスのアルバム『RENDEZ-VOUS』に参加。(参加曲「カーニバルの朝」)

生きる歓びと悲しみ、畠山美由紀の歌声の中には、この人生をより愛おしく生きるための確かな手触りがある。

>> 畠山美由紀 official website

この記事の筆者

[レヴュー] 畠山美由紀

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