2011/06/24 00:00

南博トリオの新作がHQD(24bit/96kHz)で到着

南博トリオ / Body & Soul
日本国内随一の人気と実力を誇るピアノ・トリオ=南博トリオ、充実の3rdアルバムがついにリリース! 表題曲である「Body & Soul」をはじめ、南博が敬愛する作曲家ビリー・ストレイホーンの楽曲から2曲、ビル・エヴァンスの美しく聡明なナンバー「タイム・リメンバード」など、このトリオの魅力が如何なく発揮される珠玉のスタンダード・ナンバーが並ぶ新作『Body & Soul』がOTOTOYにて高音質音源HQDで配信開始。

【Musicians】
南博 (p) / 鈴木正人 (b) / 芳垣安洋 (ds)

夜の散歩を楽しんでいるような演奏

日本には、沢山の優れたジャズメンがいる。彼らの多くは、湧き出る汗や濃厚な体臭とともに、我々にジャズの熱気を伝えてくれる。そんな中にあって、涼しい顔で飄々と“ジャズして”みせる南博は、希有な存在と言えるかもしれない。そう、南博は、とにかく格好良いのだ。立ち振る舞いが格好良い。言葉選びが格好良い。顔だって格好良い。そして何より、音がキラキラしている。南氏は、数少ない、ジャズの“二枚目性”を継承する演奏家なのだ。それも確信犯的にではなく、自然に、あるいは無邪気に。

特に鈴木正人(b)、芳垣安洋(ds)とのトリオは、その魅力が最もヴィヴィッドに発揮されるフォーマットだろう。本作『Body & Soul』は、このメンバーでの三枚目のレコーディング作品となる。演奏されるのは、表題曲「Body & Soul」をはじめ、ビリー・ストレイホーンやコール・ポーターらの筆によるスタンダード・ナンバーが中心だ。ジャズメンにとって、スタンダードを演奏するということは、基本的な営みでもあると同時に、大きなチャレンジでもある。先人の名演との比較を避けて通れない以上、スタンダード・アルバムは、ただの名曲集ではあり得ない。ピアニストがピアニストのナンバーを取り上げるなら尚更だ。南博トリオは、むやみに楽曲を解体することも、誰かの方法論をそのままなぞることもしない。ただただ、ジャズの歴史的文脈の中にある今日の自分たちに対して、誠実に演奏する。彼らの前では、「伝統とは? 革新とは? 」という問答など、無粋なように思える。

速いパッセージや、インタープレイが高まる瞬間に於いても、彼らは無闇に扇動しない。圧迫しない。飛躍したり、駆けずりまわったりしない。ゆらゆらと、しかし自分の足で一歩一歩、夜の散歩を楽しむような演奏だ。あえて言ってしまえば、本作は、聴き手を心地よい睡眠に誘いすらするかもしれない。無論これは退屈という意味ではない。濃密な音楽に包まれて眠る時間は、最高の贅沢だ。

ところで、表題曲「Body & Soul」のアドリブの半ばで「メリーさんの羊」に似たフレーズが聴かれる。もちろんこれは偶然の一致かもしれない。しかし、ピアノの前に座る南博の静かな笑顔を想像しながら本作を聴く時、私はこれを氏のお茶目なイタズラなのではないかと邪推してしまう。あるいは特定の誰かへ向けた秘密の暗号かもしれない、といった艶っぽい妄想まで膨らんでしまうのだ。皆様にもぜひ、椅子に深く腰掛け、そんな物語を想像してにやにやしながら、理知的で艶やかな南博トリオの“散歩”を楽しんでほしい。(Text by 酒井匠)

南博の参加作品!

南博トリオ / The Girl Next Door

鈴木正人と芳垣安洋の実力派二人を擁したトリオ作品第2弾。耳慣れたジャズ・スタンダードが、清廉なリリシズムとインテリジェンスで新たな物語へと生まれ変わる面白さ! 美しい調べは、粒立ちのよい真珠のよう。ピアノへの慈しみが一音一音から伝わってくる。

菊池成孔 南博 / 花と水(HQD ver.)

旧知の盟友である二人が、ジャズ・スタンダードというフィールドで、最高のインタープレイを聴かせる。シンプルな編成されたスタンダードの中にも、菊地成孔ならではのセンスが光るアレンジが施され、“花鳥風月”を思わせるような色彩豊かなアルバムとなっている。往年のモダン・ジャズ・ファンからカフェ、ラウンジ・ミュージック・ファンまでをカバーする上質なジャズ・スタンダード・アルバム。

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坂本龍一 / NHK session

2011年元日にNHK-FMで放送された『坂本龍一ニュー・イヤー・スペシャル』のために収録された演奏。大友良英、大谷能生、やくしまるえつこ、菊地成孔とASA-CHANG等の5人のアーティストとのセッションを、当日の模様を収めたブックレット(PDF)付きで完全収録。

Date Course Pentagon Royal Garden / 巨星ジーグフェルド 2011.02.20 Part.1(DSD+mp3 Ver.)

今年2月19日〜20日に新宿文化センター大ホールで行われた菊池成孔のダブル・コンサートの模様をDSD音源でお届け! 昨年の京都ボロフェスタでの復活第2弾のLIVE音源が好調な新生DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENの音源が先行でリリース。2日連続でホール中を熱狂の渦の中へ落とし込んだ濃密な時間をDSD音源で再現されています。

Hank Jones / TRIO 1979 + 1

91歳で他界したジャズ・ピアノの巨人、ミスター・スタンダードこと、ハンク・ジョーンズ追悼盤。1979年、シェリー・マン、ジョージ・デュヴィヴィエとのトリオで行なった鹿児島コンサートのライヴ録音。今となっては考えられないマスター3人による歴史的なトリオ・アルバム。未発表ボーナス・トラック1曲収録。

Elizabeth Shepherd / Heavy Falls The Night

もっと軽快なスウィングを! 心踊らす魔法の歌声を! カナダが生んだ新しい世代のジャズの表現者、エリザベス・シェパード待望のサード・アルバム! 今回のアルバムはこれまで以上にポップでスウィンギーな一枚になりました! 日本からDJ Mitsu The Beatsも参加決定! 来春の再来日公演も決定です!

PROFILE

南博
60年東京生まれ。86年東京音楽大学打楽器専攻卒。'88年バークリー音楽大学より奨学金を得て渡米、91年作曲・パフォーマンス課卒。92年オーストリアのレーベル、Extraplatteよりデビュー・アルバム「Message For Parlienna」を発表(日本未発売)。ピアニストとして、また作曲家として国内外のグループに客演、作品提供を行うほか、99年よりイーストワークスからコンスタントに作品を発表している。エッセイストとしても著作多数。南博トリオの最新作『Body & Soul』を2011年6月22日に発表(ewe records)、新著『マイ・フーリッシュ・ハート』(扶桑社)。

[レヴュー] 南博トリオ

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