SHINGO★西成の名前をいつ知っただろうか? 「ILL西成BLUES」を聞いた時だろうか。その時アーティスト名よりも先に「西成」という地域名が印象に残った記憶がある。西成・あいりん地区(釜ヶ崎)には、今を懸命に生きる労働者達が多く住む。そしてSHINGO★西成は自らが生まれたその西成地区の代弁者としてラップをしている。その活動は大阪の新聞にも取り上げられ「苦しんでいるおっちゃん達の気持ちを伝えたい」と語っていた。2008年の正月には西成の三角公園でもライヴを行い、西成に住む人々から偽り無しの声援の言葉を受けた。本物のレペゼン大阪だ。
「幼い頃から毎日が勉強やった」と語っていたように、SHINGO★西成が住む街は特別だ。故にHIP HOPに対する思いは人一倍強い。首から下げている新品スニーカーは成り上がりの意味をさす。だが、決してSHINGO★西成は現状を悲観しているわけではない。それは今作を聞く事で染みるように感じる。もはや、HIP HOPを越えたブルースのようだ。何事も「ハッピー」で片付けてしまうようなHIP HOPと括られる音楽に飽きてしまった人は、『I.N.G』を聞くべきだ。3年という月日はこの男を更に進化させ、味が染み込み、噛めば噛む程うまみが出て来る... そんなラッパーとなって帰って来た。おかえりなさい。
インタビュー & 文 : 和田 隆嗣
3年ぶりのフル・アルバムを昭和レコードからリリース!!
SHINGO★西成 / I.N.G
こんなん聴いたことない... やろ!? B-Boy限定とかちゃうねん。じいちゃん、ばあちゃん、おっちゃん、おばちゃん、ちびっ子たちも寄っといで! 常に進化する大阪名物=SHINGO★西成、渾身の2ndフル・アルバムにして初の「独演会」(ゲストなしのマイク1本勝負)が始まる!
【TRACK LIST】
1. G.H.E.T.T.O / 2. ラパッ / 3. 左 / 4.できたかな? / 5. カラス / 6. ずるむけ / 7. 段どり / 8. 深呼吸 / 9. 缶コーヒー / 10. ひとりぼっち / 11. バッチバチ / 12. カクテル / 13. すきやねん / 14. たとえ俺が死んだとしても / 15. 頑張ってれば...
INTERVIEW
——3年振りのアルバムは「独演会」ということで、ゲストが無くマイク1本で全曲を披露されていますが、その意図を教えてもらってもいいですか?
SHINGO★西成(以下S) : 等身大... 自然体... 底辺からの叫び... 匍匐前進ラップ。
——今作『I.N.G』は、一般的なHIP HOPアルバムという枠では収まり切らない様々なニュアンスが組み込まれた内容ですが、多くの人に聞いてもらいたいという意思があるからでしょうか?
S : 30ファッキン8年間出会った方々といままでの楽しい経験も苦しい経験も素直に歌にしました。
——特に「カラス」、「深呼吸」は言葉が響いていました。
S : カラスみたいなもんです俺は... やっとポジティブに深呼吸できました。
——今作を通して、メッセージはあったりしますか?
S : 「どうなるか?」じゃなくて「どうする」か...
——トラック制作にも関わっているDJ A.K、DJ FUKUやDJ NAO the LAIZAといった面々とは、どのような関係ですか?
S : 俺の才能を引き出してくれてお互い刺激し合える心からの仲間... 悪友ラパッ!
——今でもHIP HOPを通して伝えたいこと、伝えようとすることは、変わらないのでしょうか?
S : はい、変わりません... が寝起きは変わります。
街の人も気持ちも年をとった
——ジャンルとしてHIP HOPではないように感じました。表現方法としては、HIP HOPの枠に収まる気はないですか?
S : いろんなイケてる音楽を聴いて、表現がHIP HOPです。
——多くの曲にポジティブな印象を受けました。それはSHINGOさんの性格が反映されているのでしょうか? それとも違った要因があったりしますか?
S : ネガティブなことが多い世の中やからこそ、ポジティブに生きたい... 生きてほしい...
——改めて西成という地区はどういった所でしょうか?
S : 日本のはきだめ... 過去を捨てても生きていける街... サヴァイブしてる街。
ーーSHINGOさんが幼い頃見た地元「西成」は変わりましたか?
S : 街も人も気持ちも年をとった。
——HIP HOPへ深く関わりだしたのはいつ頃なんでしょうか?
S : 中学生の頃です。
——HIP HOPをやり続けて変わった事、又やって良かった事はありましたか?
S : いろんな人と出会える... いろんな景色と出会える... いろんな喰いモンと出会える... 出会いはパワー...
——SHINGOさんの存在が大きくなると、業界やシーンの関わり方に変化はありましたか?
S : まだノミみたいな音男です。はよ見つけてください。
——HIP HOPに限らず、様々なフィールドで活躍されていますよね?
S : 特にレゲエのみんなにはホンマ世話になってます。感謝★西成...
——SHINGOさんのメッセージは大阪の若者に伝わって来たと感じますか?
S : まだまだ...
——初めて聞く人、ファンの方に伝えたい事はありますか?
S : 俺もヤる... から... お前らもヤれ... 経験は武器になる...
SHINGO★西成 profile
昭和の香りが色濃く残る大阪のイルなゲットー「西成」・釜ヶ崎は三角公園近くの長屋で生まれ育つ。「今に見とけよ!」精神と冷静な視点、自らの体験を元に「間」を活かした独自のソウル・フルな「べしゃり芸」で表現する超オリジナルな世界観は、層が厚くキャラの濃い関西シーンの中でも突出している。KREVA、サイプレス上野&ロベルト吉野、 NG HEAD、Home Grown、INFINITY16、香西かおり、大西ユカリ、 赤井英和などの競演陣が示すとおり、そのクロスオーバーな資質、ユニークであったかい人間性ゆえに「ジャンルを超えた存在」にしてレペゼン西成HIP HOPとして注目され続け、今や名実共に完全なる「大阪名物」となった。