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2016/05/28 18:00

 

〈第5回パンダ音楽祭〉“素晴らしい出演者たちに拍手!”音楽で心満たされた日曜日-OTOTOYライヴレポ

 

2016年5月22日(日)上野恩賜公園 野外ステージ 水上音楽堂にて、〈第5回パンダ音楽祭〉が行われた。

心あるイベントにはお天道さまも味方するのか、今年も晴天に恵まれた〈パンダ音楽祭〉。例年以上に気温が高いものの、屋根があって陽射しを避けられ適度に風も入ってくる上野恩賜公園野外ステージ 水上音楽堂はゆっくりと音楽を楽しむには快適な環境だ。飲食物の持ち込みが自由なのも嬉しい。今年はこれまで自由席だった座席が全席指定となったため、13時に開場するとお客さんは入場してからも慌てずのんびりと席に着いている様子だ。開演前の会場ではBGMとして杏窪彌「ジャイアントパンダにのってみたい。」等、パンダ関連ソングが流されていた。

★オープニング:藤岡みなみ
13:30になり、まずは司会の藤岡みなみが「みなさ~ん、元気ですかー!」とパンダ・ルックでステージに登場して「かわいい~!」と大きな声援と拍手で迎えられた。「パンダ音楽祭は今年で5回目です。5年といったら、パンダが一人前の大人になってお嫁に行くことができるほどの年月なんですよ!」とパンダ研究家らしい置き換えで〈パンダ音楽祭〉がいかに長く続いているフェスなのかを力説。さらに開演に先立ち会場での注意事項をいくつか説明する中で、「パンダは絶滅危惧種なので、もし野生のパンダを見つけても捕まえたりしないようにしてください!」と呼びかける等、メッセージを忘れないところはさすが。注意事項をひと通り説明し終わると、ショートスケールのアコースティック・ギターを抱えて弾き語りで1曲披露。曲は藤岡みなみ&ザ・モローンズの「おねがい徒歩圏内」だ。手拍子する客席を見渡してみるとこの時点でほぼ満席になっていたが、「初めて来た人!?」という呼びかけに結構多くの人が手を上げ、リピーターばかりではなく新規のお客さんが多く訪れていることもわかった。続いて「みなさん、サビを一緒に歌ってください!」と「パンダ音楽祭のテーマ」を歌い、お客さんも手拍子しながら“パーンパーンパーン パンダ音楽祭~”とみんなで合唱して〈第5回パンダ音楽祭〉が幕を開けた。

★ギターパンダ
藤岡みなみがバックステージに迎えにいき、2年ぶりの出演となるギターパンダを連れて戻ってきた。「みなさんこんにちは、イェ~!」と第一声を上げ「イェ~!」と返す観客に「こちらこそイェ~!」と繰り返しご挨拶。まずは自己紹介の曲、と手拍子に合わせてパンダの中身の人の出身地住所、好きな食べ物(茶碗蒸し)、そして「好きな有名人は藤岡みなみさん!」と告白すると大歓声、隣で踊る藤岡みなみもテンションアップした様子で飛び跳ねている。パンダヘッドを次々と脱ぎ捨てて小さいパンダ帽姿になって行くと客席から小さい子どもが口をあんぐり開けて興味深げに眺めていた。素顔の山川のりをになり水玉のツナギ姿の“カルピス・プレスリー”に変身すると、ハイハットを足で踏みながらシャッフル・ナンバー「腰を揺らして」を弾き語り。「腰を揺らして、手を振って、回って回って踊ろう~」とどんどん転調してキーを上げていくギターパンダに合わせて観客もコール&レスポンス。そして、次に歌われたのは忌野清志郎&2・3'sの「善良な市民」。“泥棒が憲法改正の論議をしてる コソ泥が選挙制度改革で揉めてる でも善良な市民は 参加させてもらえず また間違った人を選ぶ”賑やかな子どもたちの声が飛び交う中、社会的な内容の曲にじっと聴き耳を立てている観客たち。途中ギターを歪ませてシャウトすると、山川のりをの中にいる忌野清志郎が顔を覗かせた。〈パンダ音楽祭〉が朗らかでのんびり楽しいだけの音楽祭じゃないことを感じさせるライヴだった。

★井乃頭蓄音団
〈第1回パンダ音楽祭〉に出演した松尾よういちろう率いる井乃頭蓄音団がステージに上がる。「言ってはいけない言葉」からリラックスしたムードでスタート。アコースティック・ギター、マンドリン、ラップスティール、バンジョー、ベースを使ったライヴだ。乾いた弦楽器の音が日曜日の午後3時の穏やかな雰囲気によく似合う。メンバー紹介では各メンバーがソロを披露して喝采を浴びた。「歌詞を書くのに8年3ヶ月かかりました」とのMCから「腰痛」へ。“みなさんよかったらご一緒に!”と合唱を求める声に“アイタタタター”と会場中から悲痛な声と爆笑が起こった。歌い終わった松尾がステージ前を行き交う小さい子どもたちに「いつか君たちもこの歌を歌う日が来るんだぞ」と語り掛ける場面も。続く日本語カバーの「カントリーロード」では伸びやかに言葉1つひとつをハッキリと歌い上げ、間奏のマンドリン、ラップスティールのソロも含め心に染み入る名演を聴かせてくれた。メンバーが順番に歌う「東京五輪」から「親が泣く」で手拍子を集めてステージを降りた。

★ 栗コーダー&ビューティフルハミングバード
一昨年の第3回に佐藤良成(ハンバート ハンバート)と出演した栗コーダーカルテット。昨年3人編成となり今年はビューティフルハミングバードとの複合ユニットで出演。「ピタゴラスイッチ オープニングテーマ」が始まると大盛り上がり! 小さい子どもたちも大喜びでステージ付近を駆け回る。続いて「爽やかなパンダ音楽祭の雰囲気にふさわしくない曲をやります」と、「ジョーズのテーマ」からメドレーで「帝国のマーチ (ダース・ベイダーのテーマ)」へと続けて客席からは大喝采。続いて「みんなのうた」でおなじみの「ウメボシジンセイ」をビューティフルハミングバードの小池光子が歌う。「おさるのかごや」で和ませた後はビューティフルハミングバードの「旅人」へ。ピアニカの音色と重なり合う透き通る歌声に惹きつけられた。

★DJみそしるとMCごはん
2年連続出演のおみそはん。昨年はライヴ中にお客さんの協力を得てアイスクリームを完成させたが、果たして今年はどんなステージを見せてくれるだろうか。「まずは「アスパラのベーコン巻き」、聴いて下さい!」とライヴが始まり、続けてマイナーで緊張感のあるトラックに乗せた「けんちん汁」。子ども人気は抜群のようでステージ前に子どもを連れて集まる人が多い。「ごちそんぐDJを見た事ある人!?」と問いかけると多くの人の手が上がった。「おまんじゅう」では蒸篭を手に「セイ、ロー!」「ロー!」とコール&レスポンスをキメる。「きゅうりのキューちゃん」を歌い終えると「みなさんが食べられない食べ物の相談に乗ります! 苦手な食べ物ある人!」と募り、挙手したお客さんの元へと降りて行ってスイカが苦手な男性やみかんが苦手な子どもにアドバイス。ステージに戻ると人気曲「ジャスタジスイ」ではサビをみんなで大合唱、先ほどお客さんに訊いた苦手な食べ物も交えてのコール&レスポンスでゆるりと熱く盛り上げ、最後は「あの素晴らしい味をもう一度」で会場が一体となる光景を見せてくれた。

★出し物:ゴンゾー
司会の藤岡みなみが登場してお知らせをした後は、お楽しみの出し物コーナーへ。タンバリン芸人・ゴンゾーが怪しげなタイツ姿でレベッカ「フレンズ」に乗ってタンバリンを叩きながら登場、タンバリンの叩き方をお客さんにレクチャー。「心のタンバリン」を手に振り付けを習う観客たち。選ばれた1人のお父さんがステージに上がると、子どもたちも一緒にステージへ。その姿を見た他の子どもたちもどんどん大勢ステージへと上がり、一緒にAKB48「ヘビーローテーション」に合わせて踊り、親子で楽しめる時間を提供してくれた。

ちなみに客席後方では、出番を終えたギターパンダこと山川のりをと栗コーダーカルテットの川口義之が周囲にファン・サービスをしつつ酒盛りをしながらライヴを楽しんでいた。

★金佑龍
ステージに上がるなりサウンド・チェックをしながらアコースティック・ギターを鳴らしてFISHMANS「ナイトクルージング」を歌い出す金佑龍。初出演ということもあり注目を集める中、徐々に白熱して行く歌声に静まり返っていた客席がどっと湧いた。「3.11のときに辛くて書いた曲」との紹介から「或る世界で」へ。“光を浴びてる 闇も浴びている”と繰り返す歌声が客席に広がって行き徐々に消えて行くとそのままギターのボディを叩きながら煽り、「Pora Pora」へ突入。手拍子に乗せて延々と軽快なアルペジオをループさせながら、自ら生み出したグルーヴの渦の中で高まって行く金佑龍のボーカル。会場一体となった熱演は7分近く続けられた。「最後は一緒に歌ってもらえないでしょうか?」と呼びかけてから、長渕剛ばりに観客の拳上げを求めて歌い、さらに観客が左右に腕を振る中「贈る言葉」を歌うと金八先生風に腰に手を当て客席を見渡して初めての〈パンダ音楽祭〉のステージを終えた。

★松崎ナオ
夕暮れて照明がついたステージにアコースティック・ギターを抱えて、こちらも初出演となる松崎ナオが上がる。抒情的な「フォークソング」を歌い終えると、大きな拍手で観客に迎えられた。「昔の話ですけど、家でばあちゃんが死んだんです。それで家族がみんな“自分のせいで死んだんじゃないか”っていう感覚に陥ったんですよ。それで自分は家族1人ひとりに“あんたのせいで死んだんじゃねえぞ”って言ってたんですけど、私に言ってくれる人が1人もいなくて、自分のせいなんじゃないかって思うようになって。そしたらばあちゃんとじいちゃんが夢に出てきて“おめえのせいじゃねえぞ”って言われたんですよ。死んでる人に迷惑かけちゃいかんと思って、そのときに作った曲です」とのMCから、「きみのまえへならえ」を歌い出した。3連符のストロークに乗せて力強く歌詞を空に飛ばすように声を放つ。ギターを置きピアノに向かうと、NHKの番組「ドキュメント72時間」のテーマソング「川べりの家」を歌唱。凛とした芯を感じさせながら儚げにも思える歌声は多くの人の心の琴線に触れたのでないだろうか。最後は昨年末に発表した弾き語りアルバム『39』の冒頭を飾る「hello, goodbye」を歌い上げ、「パンダ音楽祭ベイベーたち!!」と何度も叫んでギターを掻き鳴らした。

★ 曽我部恵一
今年もこの時間がやってきた。大トリの曽我部恵一がステージへ上がる。セッティング中、「そかべー!」と小さな子どもの声が飛ぶ。「お母さん、さん付けして呼ばせるように」と客席に向かって呼びかけると、すかさず「そかべさーん!」と言い直した子どもの声が届き笑いに包まれる中、ライヴが始まった。今年で発売から20年となったサニーデイ・サービス『東京』から「東京」「恋におちたら」と続くと、「最高ー!」と声が飛んだ。「さよなら! 街の恋人たち」では闇に包まれた会場に浮かぶ真っ赤な照明に照らされる中、激しいギターストロークとものすごい迫力のボーカルで観客を圧倒した。明るくポップに転じて「キラキラ!」へ。いつの間にかステージ前にたくさんの観客が集まっている。口笛を吹きながらギターを弾くと自然と手拍子が起き、「テレフォン・ラブ」を歌い出す。「みんな一緒に歌ってくれ!」と煽ると、ステージ前にはますます人だかりが増えて行く。コーラスをしながら激しく観客を煽るあまり、モニターにぶつかって後ろに大きく転倒するハプニングも。「LOVE-SICK」ではクールダウンするようにゆっくり体を揺らしている人や、目を閉じて聴き入っている人もいる。「パンダ音楽祭、1回目から来てます。すいませんが仕事を忘れてやってます(笑)。みんなありがとう! 今日、どんな日曜日だった?」歌い出したのは、「魔法のバスに乗って」。上野公園中に聴こえるような大合唱が起こって、歌い終わった曽我部はギター肩から下ろしてバックステージへ。すぐにアンコールの声に応えて戻ると「青春狂想曲」でさらなる大合唱。「素晴らしい出演者たちに拍手! パンダ音楽祭、いつまでも続きますように! みんなありがとう、じゃあ最後にロックンロールを」と叫ぶと、観客が叩く力いっぱいの手拍子に乗せて「STARS」を歌い出す。歌の間に“oi oi oi!”とパンクスばりのかけ声を入れて拳を突き上げる観客たち。“いつかまた逢おう”という歌詞に反応して遠くの席から手を振っている者もいる。後半、ギターを下ろしてマイクを握り客席近くまで出てアカペラで観客と声を合わせて歌うと、魂のこもったシャウトでライヴを締めくくった。ステージを降りた曽我部だが、あまりにも鳴り止まないアンコールの声にもう一度ステージに戻ると、「ありがとうまた来年ね!」と客席に向かって声を掛け、万雷の拍手の中で〈第5回パンダ音楽祭〉はエンディングを迎えた。

今年も無事終了した〈パンダ音楽祭〉。主催パンダからは以下のようなメッセージが届いている。

「今回もたくさんのご来場ありがとパンダ。藤岡みなみちゃんが「パンダは5年で一人前の大人になる」と言っていましたが、パンダ音楽祭はまだまだひよっこです。でも、だからこそ成長の余地があると思ってます。これからもパンダ音楽祭にご注目ください。」

来年も〈パンダ音楽祭〉に期待しよう!!

撮影:勝永裕介(@yuusuke_DdL) / 取材・文:岡本貴之

〈第5回パンダ音楽祭〉
2016年5月22日(日)上野恩賜公園 野外ステージ
出演: / 栗コーダー&ビューティフルハミングバード / DJみそしるとMCごはん / ギターパンダ / 井乃頭蓄音団 / 金佑龍 / 松崎ナオ
司会:藤岡みなみ
出し物:ゴンゾー


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