2013/05/03 00:00

米アトランタ出身の4人組ロック・バンド、ディアハンターが、ニュー・アルバムをリリース。2013年冬に開催されるHostess Club Weekenderへの出演も発表された彼らだが、メンバーの脱退、加入を経て5人編成となり、新たな章のスタートを告げる一枚となっている。USインディー・シーンの最重要バンドが、満を持して発表した新作。その刺激的なサウンドを、今こそ、体感せよ。


Deerhunter / Monomania
【価格】
mp3、wavともに 単曲 200円 / まとめ購入 1,500円

【Track List】
01. Neon Junkyard / 02. Leather Jacket II / 03. The Missing / 04. Pensacola / 05. Dream Captain / 06. Blue Agent / 07. T.H.M. / 08. Sleepwalking / 09. Back to the Middle / 10. Monomania / 11. Nitebike / 12. Punk (La Vie Antérieure)

USインディー・シーンに新たな刺激を

USインディー・シーンで活躍するディアハンターが、3年ぶり5枚目となるニュー・アルバム『Monomania』をリリース。3rdアルバム『Microcastle』、4thアルバム『Halcyon Digest』が世界中で大ヒットし、USインディー・シーンの最重要アーティストとまで言われるようになったディアハンターだが、彼らの躍進はまだまだ止まらない。

新しいアーティスト写真で、その強烈な個性を見せつけ、驚かせてくれたが、アルバムの内容はさらに度肝を抜くものとなっている。今までのシューゲイズ、ドリーム・ポップと言われた、多彩な音を重ねて作り込まれた作品は、内向的でどこか混沌としたイメージがあったが、今回は全く正反対の、荒削りなガレージ・ロックに変貌しており、外へ外へとエネルギーを吐き出し、己を解放させているかのようだ。

先行公開されているアルバムのタイトル・トラック、「Monomania」は、まさに荒削りで激しい感情をむき出しにしたようなサウンドで、アウトサイダーズやエレクトリック・プルーンズといった、60年代のガレージ・サイケ好きにはたまらない一曲だ。アルバム全体を通して、取り入れられたUSロックのルーツであるブルースやカントリーの要素も感じることができ、その無邪気で開放的なイメージは、まさにアメリカのロックンロールそのもの。今までよりも生の音を意識し、バンド・サウンドを中心に作られたことで、個々の感情がより強く、声に、そして音にあらわれている。

なかでも、それを顕著に示している存在が、バンドのフロントマン、ブラッドフォード・コックスだ。2011年にリリースされたブラッドフォードのソロ・プロジェクト、の3rdアルバム『』は、ミニマルなサウンドにまとめられた、パーソナルな作品だったが故に、今作の変貌ぶりには衝撃だ。いままで内面に溜まっていたものを一気に吐き出したかのように、2曲目の「Leather Jacket Ⅱ」や10曲目の「Monomania」では、ヴォーカル・エフェクトを効かせた、サイケデリックな発狂に近い歌声を披露している。だが、それもバンドのサウンドに合わさると、とても気持ちよく、愉快な音楽に聴こえてくるのだ。バンドがあることで、彼は自分の才能を、存分に発揮できているということだ。それは、恐らく今作から5人編成となり、バンド・サウンドに厚みを増したことで、バンド全体のまとまりがよくなったのが大きな要因だろう。

アメリカン・ロックのルーツを掘り下げ、本能のままに作り上げられた今作は、どこか懐かしくもあり、新鮮。現在のUSインディー・シーンはローファイ、サーフ、チル・ウェイヴといった音楽が主流になっていたが、このアルバムはシーンに新たな刺激を与えてくれるに違いない。(text by 吉野敬一郎)

RECOMMEND

Atlas Sound / Parallax

絶大な人気を誇るUSロック・バンド、ディアハンターのボーカル、ブラッドフォード・コックスによるソロ・プロジェクト”アトラス・サウンド”の3rdアルバムが遂に登場! 過去2作が共にピッチフォークのベスト・ニュー・ミュージックを獲得する等、ソロ・プロジェクトとしては異例の称賛を受けているアトラス・サウンド。約2年ぶりとなる本作はブラッドフォード特有のドリーミーなサイケデリアから軽快なギター・サウンドで駆け抜けるロック・ソングまで多彩な楽曲を収録! USインディー界随一の鬼才のキャリアを総括する、新たな傑作の誕生!

>>Atlas Soundの特集ページはこちら

Youth Lagoon / Wondrous Bughouse

デビュー・アルバムが国内外で絶賛された、マルチ・インストゥルメンタリスト、トレバー・パワーズのソロ・プロジェクト“ユース・ラグーン”が米名門<Fat Possum>より約1年半振りとなる2ndアルバム『ワンダラス・バグハウス』をリリース!

Deerhoof / Deerhoof vs. Evil

ディアフーフ通算10作目のフル・アルバム! 古巣のキル・ロック・スターズから、オブ・モントリオールを擁するポリヴァイナルに電撃移籍しての第一弾アルバム。トム・ヨークも絶賛した前々作『フレンド・オポチュニティ』的な方向性を更に突き詰めたような、素晴らしくポップでラディカルなサウンド。

>>Deerhoofの特集ページはこちら

PROFILE

Deerhunter / ディアハンター

米ジョージア州アトランタ出身、ブラッドフォード・コックスとモーゼズ・アーチュレタを中心に2001年に結成される。メンバー・チェンジを経て現在はブラッドフォード・コックス(Vo.G)、ジョシュ・マッケイ(B)、ロケット・パント(G)、モーゼズ・アーチュレタ(Dr)、フランキー・ブロイルズ(G)で活動中。07年にリリースしたセカンド・アルバム『Cryptograms』で注目を集める。08年の3rdアルバム『マイクロキャッスル』、10年の4thアルバム『ハルシオン・ダイジェスト』が世界的に大ヒットし国内外の年間ベスト・アルバムを総なめした。フロントマンのブラッドフォードはアトラス・サウンド名義でソロとしても活動している。

>>Deerhunter HP (4ADレーベルHP内・日本語)

[レヴュー] Deerhunter

TOP