先日、長らく廃盤となっていた1st Album『Mirror Flake』のリマスター盤をリリースしたばかりのcokiyuが、4年ぶりとなる待望の新作『Your Thorn』をリリース! 至上のベッドルーム・ミュージックと謳われる彼女の音楽ですが、その言葉だけに収めることのできない狂気を覗かせています。かと思えば、d.v.dで活躍するitokenとの共作「With My Umbrella」はチャーミングでポップ。そのメロディに浮足立てば、次は幻想的アンビエント・ドローンな世界に引き込まれます。女性の脳内には不思議が詰まっている! 映画『告白』サウンド・トラック提供曲「Gloomy」「See The Sun」も収録されています。なお、flauのウェブサイトでは現在『Your Thorn』リミックス・コンテストも開催中!
かわいい薔薇にはトゲ(Thorn)がある? 女性トラックメイカーの真打cokiyuが、4年ぶりの新作で提示した可能性
cokiyu / Your Thorn
【トラック・リスト】
01. Your Thorn / 02. Recall / 03. With My Umbrella / 04. Textured Clouds / 05. Drag The Beast / 06. Gloomy / 07. Round in Fog / 08. See The Sun / 09. Little Waves
【配信形式・価格】
MP3 : 単曲150円、まとめ購入1200円
WAV : 単曲200円、まとめ購入1600円
『Your Thorn』リミックス・コンテストの詳細はこちら!
Ametsub、Geskia、Tyme.のリミックス曲を含む1st Albumのリマスター盤も配信中!
cokiyu / Mirror Flake
2007年にリリースされ、長らく廃盤となっていたcokiyuのデビュー・アルバム『Mirror Flake』。溢れんばかりのポップ・センスを女性らしい繊細な音使いで包み込んだベッドルーム・ポップの傑作として、広く国内外で支持されました。今回の再発に伴い、田辺玄(Water Water Camel)によるリマスタリングを施し、ボーナス・トラックとしてflauからGeskia、坂本龍一やmito(クラムボン)からも絶賛されるAmetsub、そしてMASのリーダーとして知られるヤマダタツヤによるTyme.のリミックスを追加収録しています。
男性には一生をかけても成し得ない、女性ならではの狂気、凄み、表現
もはや女性DJ/オーガナイザーは珍しい存在じゃなくなったが、いま、クラブ・シーンを中心に盛り上がりを見せる「女性トラックメイカー」の台頭が目覚ましい。PCとインターネット、またはDTM(デスクトップ・ミュージック)の普及が彼女たちの背中を押したことは間違いないだろう。フライング・ロータス主宰のブレインフィーダーに所属する紅一点トキモンスタ、女優アン・ハサウェイに激似なスペイン在住のウォンキー・ガールBFlecha(Belen Vidal)、マイス・パレードの一員としてもお馴染みのキャロライン、現役ファッション・モデルでDJとしても活動中のダイアナ・チアキ、有名どころでは歌って踊れて“作れる”TOWA TEIの秘蔵っ子AYUSE KOZUE… etc。いずれもユニークな経歴の持ち主だが、素晴らしいポップ・センスと嗅覚を持った才女たちである。その真打と言えるのが、この度4年ぶり2作目のアルバム『Your Thorn』をリリースする愛媛出身の電子音楽家=cokiyu(コキユ)だ。
「呼吸」にも似た澱みない名前(おそらく、本名の逆さ読みか? )を名乗る彼女のキャリアもまた面白い。音大在学時代からMax/MSPなどのソフトウェアを用いた現代音楽の作品を創作してきたようで、演劇への楽曲提供やダンサーとのコラボレーションを数多く経験。05年にcokiyuのトラックを聴いたエレクトロニカ・ユニットのausことFukuzono Yasuhikoが自身のアルバムにヴォーカリストとして起用し、翌年、スペイン発祥の最先端音楽&メディア・アートの祭典SonarSound Tokyoでも共演を果たす。07年にはトクマルシューゴ&ザ・マジックバンドのトイ・ピアノ担当としてツアーをまわり、様々なコンピレーション作品への参加を経て待望のデビュー・アルバム『Mirror Flake』をausが主宰するflauレーベルより発表。白昼夢のように浮遊感のある幻想的なサウンドスケープは、ムームやロイクソップといった北欧のエレクトロニカ勢や、フォー・テットやファナ・モリーナのような所謂フォークトロニカに馴染んだリスナーをはじめ絶賛を浴び、英米の音楽雑誌からも好意的なレビューで迎えられた。東京モーターショーやキヤノンのウェブサイトなどでも楽曲が使用され、昨年大ヒットを樹立した中島哲也監督の映画『告白』に新曲「Gloomy」と「See the sun」を提供(本作『Your Thorn』に収録)したことも話題に。盟友ausとの豪州ツアーを筆頭にデンマークのSPOT FESTIVALにも出演済みで、国内外で引っ張りだこのcokiyuだが、それは彼女がトラック・メイカーとしてだけでなく、ヴォーカリストとしても稀有な歌声の持ち主だからに他ならない。
『Your Thorn』の全編で味わえる繊細なビートの位相、浮かんでは消えるノイズ、掴みどころの無いメロディー、非楽器を取り入れたサウンド、そして時代性を超越したヴォーカル。歌詞が手元に無いばかりか、特徴的なウィスパー・ボイスのため聞き取ることは難しいのだが、とりわけ日本語詞のトラックが秀逸だ。チップチューンmeetsトイ・ポップ風味の3曲目「With My Umbrella」や、チリチリと響くグリッチ・サウンドに儚い歌声が乗る5曲目「Drag The Beast」などは、大貫妙子や矢野顕子にも匹敵する「声」の存在感をすでに放っているといっても過言ではないし、前作『Mirror Flake』に収録されていた日本語曲「Star Takes A Rest」の頃よりも明らかに「言葉」への意識が変わってきているように思える。もちろんインストゥルメンタルの完成度も尋常ではなく、生楽器、エレクトロニカ、アンビエント、ドローン、テクノ、ゲーム・ミュージック、マーチング、現代音楽… ありとあらゆる要素を、きわめて高純度にブレンドしている。先日くるりに加入したドラマー/パーカッショニストの田中佑司、ポスト・ロック・バンドの技巧派Autumnleafよりギタリストの本田輝也、さらにd.v.dや相対性理論のライヴ・メンバーとしてもお馴染みのitokenら精鋭がゲスト参加しており、「ベッドルーム」やら「ドリーム・ポップ」なんていう矮小なカテゴライズを軽々と飛び越えた身体性と音の厚みを獲得。先述の「Gloomy」(『告白』のサントラとは異なるアレンジに仕上がっている)なんかは、女性アーティストならではのちょっとした狂気さえ感じてしまう。
そう、やや乱暴な考察になるが、「女性性」にしか成し得ない凄み、あるいは「表現」というものは確実に存在するはずだし、筆者を含む男性には一生かけても理解できないテーマだ。そうした永遠の命題に挑んだ男こそ、ワープが誇るワーカホリックな鬼才ギレルモ・スコット・ヘレンa.k.a.プレフューズ73である。彼の最新アルバム『The Only She Chapters』は、文字通りあらゆるプロセスで女性が関わったコンセプチュアルな作品だったのと同時に、「女性性」への強いリスペクトと畏怖を彷彿とさせる問題作だった。いや、スコット・ヘレンに限らず、「女性性」を探求し続けている男性アーティストが後を絶たないのも事実。そんな彼らに、女性トラックメイカーはどう応えるのだろう。かつては野郎どもの巣窟だったビート・シーン/トラック・メイキングの世界は、今後ますます面白いことになる。cokiyuの『Your Thorn』は、その起爆剤となる可能性があるのではないか? なお、本作の収録曲をOpiate、aus、Shigeto、A Lily、NETWORKS、Girl With The Gunといった錚々たる面々がリミックスを手がけた姉妹編的なアルバムも今秋リリース予定とのことなので、そちらも大いに期待したい。
(text by 上野功平)
女性の脳内には不思議が詰まっている
Babi / 6色の鬣とリズミカル (HQD ver.)
まるでオモチャ箱を開いたかのような音が聞く者の想像力を刺激し、そのサウンド・デザインの裏にはしっかりとした音楽理論と感性が織り交ぜられている。ドリーミーな印象を受ける楽曲群だが、実はオモチャ箱の奥に潜む影と現実世界を表現したびっくり箱の様な作品! エレクトロニカ、トイ・ポップが好きな方にはお薦めの作品です。
GREGORY AND THE HAWK / In Your Dreams
MUM等でおなじみのUKのファット・キャットから衝撃のデビューをしたNYの女性シンガー・ソングライター、メレディス・ゴドルーのソロ・ユニット。デス・キャブ・フォー・キューティにも通じるキャッチーなメロディに、プロデューサーのアダム・ピアース=マイス・パレードのシューゲイズ・テイストを散りばめたキラキラ・サウンドは、ウィスパー系女性ヴォーカル・ファン必聴です。07年に自主リリースしたアルバムに、06年リリースのEPをカップリングした一枚。
Kajon / Hallucination ~すべてのひとびとが笑いあって うそや偏見のない世界を信じていた女の子のおはなし~
ひとたび声を出せば、途端に世界を自分のものにしてしまう、広島出身の女の子、kajon。上京後、自分の声のみを即興で重ねるパフォーマンスを始め 、その独創的な才能から業界から注目を浴びる。本作では、サックス、ヴァイオリン、鉄琴など様々な楽器を従え、作曲、アレンジ、プロデュースまでを一人で行う。ジャズ、ソウル、クラシック、童謡、ポップス、たまにロック。本能的に音楽を雑食し、自分の声のフィルターを通して未聴取の音楽を作る彼女のメランコリックでドラマチックな1st Albumが遂に完成!
cokiyu Live Schedule
『flau presents cokiyu“Your Thron”release party』
2011年9月30日(金) @原宿VACANT
OPEN 18:30 / START 19:00
前売り 2000円 / 当日2500円(1drink別)
LIVE : cokiyu with itoken、trico!、sawako
DJ : Osamu Matsumoto (linus records)
『宮内優里「ワーキングホリデー」リリースツアー in 九州 (special support act : cokiyu)』
■日田公演
2011年9月23日(金/祝) @日田シネマテーク・リベルテ
OPEN 18:00 / START 19:00
前売り 2300円 / 当日 2500円 (1drink別)
LIVE : 宮内優里、cokiyu、Autumnleaf
DJ : sakamoto yuki (tristessa)
■熊本公演
2011年9月24日(土) @熊本NAVARO
OPEN 19:30 / START 20:00
前売り / 当日 1,000円 (1drink別)
LIVE : 宮内優里、cokiyu、awamok (福岡)、talk
DJ : TsuKoNin (aka Paisen)、Hiroyuki Mori (MONO SAFARI)
■福岡公演
2011年9月25日(日) @福岡cafeTeco
OPEN 17:30 / START 18:00
前売り 2500円 / 当日 3500円 (1drink別)
LIVE : 宮内優里、cokiyu、Autumnleaf
DJ : sakamoto yuki (tristessa)
『comrade -vol.2-』
2011年10月29日 (土) @新代田 FEAVER
OPEN 17:30 / START 18:00
前売り 2000円 / 当日 2500円 (1drink別)
LIVE : cokiyu、miscorner/c+llooqtortion、buddhistson、世武裕子
PROFILE
cokiyu
愛媛出身の女性アーティスト。音大在学時よりコンピュータを用いた現代音楽作品を創作。2005年より彼女の作品を聴いたausが自身のアルバムにボーカルとして起用。sonarsound tokyoに出演。国内外のコンピレーションへの楽曲提供を経て、2007年には、flauより待望のソロ・デビュー・アルバム『Mirror Flake』を発表。イギリス、ドイツ、イタリア、アメリカの海外音楽誌が絶賛。アルバムの楽曲が、東京モーターショーや、キヤノンのウェブサイトなどで使用され、話題を呼ぶ。ボーカリストとしての活動もめざましく、ausをはじめ、Bichi (The Blue Foundation) やEberg、Robert Svensson、TSAN、re:plus の作品に参加。2009年には、オーストラリアでausとのスプリット・ツアーを行い、さらにデンマークのSPOT FESTIVALに招待されるなど、海外でのライヴ・パフォーマンスも展開。昨年、大ヒットを記録した中島哲也監督の映画『告白』のサウンド・トラックに新曲2曲が収録され、また、カラスヤサトシの人気まんがを実写化した映画『おのぼり物語』 にもアルバムの楽曲が挿入歌として使用されている。今年8月に『Mirror Flake』のリマスター盤(Ametsub、Geskia、Tyme.によるリミックスを収録)をリリース。