2011/07/26 00:00

自らを賛否両論バンドと名乗る3人組が、2枚目となるフル・アルバムをリリースする。なるほど、確かに、彼らモニカ・ウラングラスは、2009年のファース・アルバム『The Temptation X』時には、自らのジャンルをロックとトランスのハイブリッド“ロッカトランス”と名乗り、ニューレイヴ風のファッションに身を包むなど、見識あるリスナーから眉をひそめられてもおかしくないような、リスキーな挑発をしていた。特に当時は、テレフォンズやサカナクションを筆頭として、彼らと同じくエレクトロ以降のダンス・ビートを取り入れたバンドが、大量出現する風潮の只中だったので、ある種、時代の徒花として、このバンドを捉える傾向さえあったように思う。

今回リリースされるセカンド・アルバム『PUXA』は、ここ数年のダンス・ミュージックの潮流をちゃんと捉えた作品だ。バイレファンキや辺境ビーツといった非西欧圏のものから、ジャズ・ネタを使ったフィジェット・ハウスというヨーロッパ本流の流行まで、アルバムに敷き詰められた多彩なリズムには、彼らのダンス・フロアへの純粋な愛情が透けて見える。彼らに対してこれまで判断保留の態度をとってきたリスナーも、今作での多様なリズム解釈と、バンド・サウンドへの適切な配合には、このバンドが安易なニューレイヴ・バンドとは一線を画した存在であると認めざるをえないだろう。アッパーな四つ打ちからドラムン・ベース、さらにミッドテンポ・ディスコまでを、アイデア豊かなサウンド・メイクと独自の言語センスで、紛れも無いモニカ・ウラングラス・チューンにしてしまう、彼らのポテンシャルは極めて高い。今作でフォーカスされた変化と進化について、彼らに問うた。

インタビュー&文 : 田中亮太(JET SET KYOTO)

MONICA URANGLASSが新作をWAV音源で配信開始

MONICA URANGLASS / PUXA
賛否両論! ちまたで話題のエレクトロ×ダンス・ロック×ニューウェーブ・バンドのMONICA URANGLASSの2nd Albumを配信開始!

【Track List】
1. DANZA CROWDA / 2. CALYPSO FLAVOR / 3. RIOT PLACEBO / 4. EXIXIT /5. PUXA MOON / 6. KINKY I.N.C / 7. MY MANADO / 8. RUn-D-Na / 9. MELLOW YELLOW / 10. C・U・L・T

過去作をWAV音源で配信開始


3人でクラブばっか行ってた

——前のアルバム『The Temptation X』はもう2年前の作品になるわけですが、今振り返ってみて、自分たちのどういったところをパッケージした作品だったと思いますか?

68(vo、syn、pro/以下、68) : 奔放さじゃないですかね。フル・アルバムって初めてだったんですけど、変に肩凝らない感じでいこうよ! って雰囲気でやれたし。

——アルバム・リリース以降は、自分たち仕切りじゃないイベントにも出演する機会が増えたかと思うんですが、その時のお客さんの反応はどんなものが多かったですか?

68 : う〜ん、出たのってみんな酒飲んでるようなイベントばっかだったから(笑)。僕らの音楽自体も難しい感じじゃないし、別にスッと入って楽しんでくれる感じでしたね。

——DJイベントとかでもよくライヴされてますもんね。自分たちでオール・ナイトのクラブに遊びに行ったりもするんですか?

68 : そうですね。特に結成前は、このメンバー3人でクラブばっか行ってましたね。今はライヴに行くことも多いですけど。ハコで言えば、エイジアとか。ジャンルで言えばエレクトロが多かったです。

——例えば好きなDJとかは?

68 : いっぱいますけど、ディプロはやっぱり好きですね。バイレ・ファンキとか好きなんで。こないだもメジャー・レーザーを見に行きましたよ。

——音楽的な刺激はいわゆるロックよりもダンス・ミュージックから受けることの方が多い?

68 : 僕は特にそうですね。最近だと第三世界のダンス・シーンとかもすごくおもしろいですし。あと、ヨランダ・ビー・クールって、スウィング・ジャズをフィジェット・ハウスにしたユニットには、去年バンド全員でハマりました。

——今言ってくれたような音楽は、今回のアルバムからも透けて見えますね。

68 : バンドの一貫したテーマでもあるんですけど、土着的であったり有機的であったりってのは、今作ではより出していきたいと思ってましたね。そこにプラスでエレクトロっぽいケミカルさを混ぜたいなと。
GEORGE(bass/以下、G) : 打ち込みのビートだけど人間味もいっぱい出てるっていうのをやりたかったよね。
Kaz-Tics(guitar) : 僕は、中近東っぽいフレーズのギター・リフができてたので、それがうまくはまればいいなと。「Danza Crowda」って曲で成功したと思います。

周囲の鳴らす一辺倒なビートへの疑問

——確かにリズムの面で、辺境ビートっぽいものやイギリスのダンス・ホールなんかを通過したと思しき曲が増えてますよね。それは、あらかじめ狙いとしてあったんでしょうか?

68 : もっと自分たちの趣味みたいなものを特化して出していってもいいんじゃないか、ってのは確かにありましたね。前のアルバムを出してから、自分達と近い位置に置かれてるアーティストなんかを見て、特にビートが一辺倒だなと思うことが多かったんですよね。こういう感じの音楽はこうじゃなきゃいけないって印象さえ感じた。だけど、でもはたしてそうかねえっていう。

——収録されている「Mellow Yellow」はBPMも遅い横ノリのファンクですごく新鮮に感じたんですが、バンドにとっても新機軸だったりはするんでしょうか?

68 : そうでもないですね。実はああいうアプローチってもとから得意なんですよね。俺とGEORGEはヒップ・ホップをずっと聴いてきたこともあるし、あの手の引き出しはいくらでもあるくらいで。意外に得意なんですよ。

——日本でエレクトロ以降のダンス・ミュージックを取り入れたバンドって総じてBPMが早かったりするじゃないですか? ロック聴いてるお客さんだと、縦ノリができるからアクセスしやすいってのもあると思うんですけど。でも、そうしたなかで、「Mellow Yellow」みたいなグルーヴのある曲でお客さんを踊らせるのは挑戦じゃないですか?

68 : まだライヴでやったことがないのでわからないですけど、これまで横ノリの曲をやったときには、ちゃんとお客さんもついてきてくれたんで、今回も大丈夫だと思いますけどね。

——信頼があるんですね。ビートがバウンシーになったり裏打ちになったりしたことによって、メロディの乗せ方自体もよりフィジカルになったように思うんですが、このあたりも意識して取り組まれたんですか?

68 : それはわりかし自然でしたね。今回はオケができてからメロディを乗せていったんですよね。だから自然にはまっていくのが今回みたいなのだったっていう。

バンドのテーマはエスケーピズム

——歌詞も韻をガンガン重ねていく、すごくリズミックなものが増えましたよね。今回の歌詞にはどんな意味を込めたんですか?

68 : うちらのバンドのあり方でもあるんですけど、大きくあったのはエスケーピズムでしたね。普段の日常から解放してくれるものっていう。みんな日常がないと生きていけないのは当然だけど、非日常もないと同じく生きていけないと思うんですよね。ライヴとかクラブとかお酒飲むとかなんでもいいですけど、そういう非日常な体験を求めてる。俺たちもそうだし。だから、日常とは違うなにかを、エンターテインメントとして提示したいってのはあります。

——クラブに遊びに行った体験が、そういう考えにいたった契機になってたりもするんでしょうか?

68 : う〜ん… クラブに限らずなんでも、遊びに行くためには、仕事しなきゃいけないじゃないですか。友達がいれば、そういう大変さが誰にでも共通していることだってわかるし。それゆえに、そのぶん自分の時間ができたら楽しむ。だからクラブに行くことだけが、そうした考えのきっかけではないですね。俺らサッカーもしてるんですけど、サッカーだってそうだし。

——さっき前のアルバムを指して、自分達の「奔放さを」表現できたとおっしゃってましたが、今回のアルバムには自分達のどんな側面がパッケージされていると思いますか?

G : 自分たちの今を自由に出せたっていう意味では、前と変わってないですね。
68 : うん。ただ、サウンドに関しては、今回はバキバキよりもブリブリにしたいって思ってましたね(笑)。言葉でいうとバカみたいですけど。

——(笑)。いや、でもそれでわかりますよ。良い言い方だと思います。

68 : バキバキにはもう飽きちゃったんですよね。それよりも今回はもっと肉体的にいきたかったですね。

——例えば、ダンス・ミュージックの肉体的な気持ちよさって、ミニマルな反復だったりするじゃないですか? でも、モニカ・ウラングラスの音楽は情報量も展開も多いですよね。今後、ミニマルという意味で、よりダンス・ミュージック的な方向性にいく可能性はあると思いますか?

68 : このアルバムと並行して、XA-VATと0.8秒の衝撃。のリミックスをしたんですけど、そこで提供したリミックスに関しては、そうしたミニマルな方向性を打ち出したりもしてるんですよね。でも、そこで出来ているぶん、バンドにはその方向性は持ち込まなかったんですよね。もちろん、今後バンドとしてそうした欲求が深まれば、やるんだろうけど。ただ、どうだろ… やっぱり情報量は多いままかもしれないですね。ゴチャゴチャやってたほうが楽しいんですよね、この3人でやるのは。

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INFORMATION

ORIENTAL CONCOUR

  • 2011/08/14(水)@渋谷O-NEST

BAYCAMP 2011

  • 2011/09/10(土)@川崎市東扇島東公園特設会場

PUXA VIDA!! TOUR 2011

  • 2011/07/29(金)@名古屋CLUB ROCK'N ROLL
  • 2011/08/03(水)@広島4.14
  • 2011/08/05(金)@福岡VooDoo Lounge
  • 2011/08/06(土)@宮崎SR BOX
  • 2011/08/26(金)@大阪 "福島LIVE SQUARE" 2nd LINE
  • 2011/09/21(水)@渋谷CLUB QUATTRO

PROFILE

MONICA URANGLASS
2007年前身バンドである解散を機に、現メンバーである3人が温めていたコンセプトを実践すべく活動開始。80'sダンス・ミュージックやNEW WAVE的な要素を取り入れたガレージ・ロックを奏でる3人組。結成当初からゲリラ的にデモCDを都内で配布、2カ月で2万枚以上を配布。2008年8月にリミックス2曲を含む、7曲入りのミニ・アルバム『The Invitation EP』をリリース。また、ロックの名曲をハウス・アーティストがカヴァーしたコンピ『ROCK HOUSE LOVERS』にも参加。ロック系では唯一の参加アーティストとなる。このコンピで、大胆にもデジタリズムとジャスティスのフロア・アンセムをカヴァー。
ライヴでも着実に熱狂的なファン・ベースを築いていき、対バンで意気投合したアヒト・イナザワに誘われ、彼が率いるVOLA&THE ORIENTAL MACHINEのツアー・サポートに抜擢される(リキッド・ルーム公演を含む4公演をサポート)。さらに、タワーレコードが発行するBOUNCE誌11月号において、"2009年ブレイクが予想されるバンド達"にも選出される。2009年3月11日、フル・アルバム『The Temptation X』をリリース。

この記事の筆者

[インタヴュー] MONICA URANGLASS

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