2011/05/19 00:00

SONG X JAZZのタイトルが配信開始!

新進気鋭のジャズ・レーベル、SONG X JAZZの音源を、OTOTOYから配信開始致します! まず第一弾アーティストとしてベルギーのピアニスト、エリック・レニーニの新作『THE VOX』を配信。その中から「I NEED YOU」をフリー・ダウンロード配信致します! 自身のバンドTHE AFRO JAZZ BEATを従え、ハーモニー(声)とビートに焦点をあてた傑作である。ピアニストとしてのみならず、編曲家、作曲家、プロデューサーとして変幻自在な活動でしられる才人のターニング・ポイントとなっているだけにじっくりと聞き込んでほしい。そしてさらに、SONG X JAZZが 今までにリリースしてきたタイトルを配信開始。その中から、松田美緒 + 沢田穣治 with ストリングスの『Canta Jobim』をDSD音源で配信! 「音楽はもっと自由になれる」がSONG X JAZZのテーマ。今後もその動向に目が離せない!

>>>THE VOXから「I NEED YOU」のフリー・ダウンロードはこちらから

SONG X JAZZがオトトイで始動!

ERIC LEGNINI & THE AFRO JAZZ BEAT / THE VOX
「Vox」の語にはふたつの意味がある。プロデューサーとして、つねに独特な声に魅せられてきたエリック・レニーニは、同時に、多彩なコネクションをもつピアニストでもある。20年以上におよぶ彼のキャリアは、音楽の世界の多面体の魅力を旅するものだった。

KURT ROSENWINKEL & OJM / OUR SECRET WORLD
ローゼンウィンケルは言う。このアルバムを聴きかえすたびに、一音一音のなかに共有された意図と旺盛な冒険心が漲っているのを感じることができる、と。「通常のビッグ・バンドは、必ずしもみんなが同じ気持ちで参加しているわけではない。
Mio Matsuda + Jyoji Sawada with Strings / Canta Jobim
「イパネマの娘」「波」「コルコヴァード」など、誰しもがどこかでそのメロディを耳にしたことがあるはずだ。さすらいの天才ボーカリスト・松田美緒と、ショーロ・クラブの活動でお馴染みのベーシスト・作曲家・編曲家、沢田穣治がふたりで「ジョビン」のアルバムをつくろうと考えたとき、彼らの頭にあったのは、「ジョビン=ボサノバ」という定式を大胆に踏み外すことだった。

CHOCOLATE GENIUS INCORPORATED / SWANSONGS
マンハッタンを遠く離れ、これまでのパートナーであったマーク・リボーでさえわずか1曲(Enough For / Of You)にしか参加していない本作で、トンプソンは、近年気脈を通じてきたパートナーたちと共演をしている。彼らのさながら重力から解放されたかのような演奏は、本作の意図を理想的なかたちで具現化している。

ジャズに残された可能性とは

現代を生きる音楽家が“雑食”な志向やルーツを持つのはごく自然なことだ。2011年の現在、例えば日本のミュージシャンがブラジル音楽やインド音楽を巧みに操縦して新たなサウンドを構築するのと同じように、ベルギー出身のイタリア系ピアニストが、アフロ・ビートともジャズともつかない「アフロ・ジャズ・ビート」を生み出したとしても、何ら不思議はないだろう。

エリック・レニーニは、1970年生まれのジャズ・ピアニストだ。(ブラッド・メルドーやブライアン・ブレイドと同年である。)デビュー当時はキース・ジャレットの系譜にカテゴライズされていたが、2005年のアルバム『Miss Soul』以降、「ファンキーなプレイ・スタイルに転向した」と評された。おそらく彼自身には“転向”したつもりなど一切ないだろう。彼が敬愛するフィニアス・ニューボーンJr.もビル・エヴァンスも、あるいはビョークさえも(レニーニは『Miss Soul』で「Joga」をカバーしている)、一様に彼の音楽的意欲を刺激するものであったというそれだけのことではないだろうか。
THE VOX』は、そんなレニーニの雑食性が象徴的に顕われたアルバムと言える。本作は、バンド名の「アフロ・ジャズ・ビート」が示す通り、アフロ・ビートが採り入れられたアルバムだ。メンバーはレギュラーのピアノ・トリオに加え、パーカッション、2本のギター、3人のブラス・セクションが参加した大編成だ。ギターの1人はアフロ・ビートの祖フェラ・クティを支えた盟友、キアラ・ンザヴォトゥンガその人である。レニーニ自身が「ハーモニーの部分ではジャズにとどまりながら、機能はアフロ・ビートなんだ」と語っているように、本作は単にリズムや所縁のメンバーを採用しただけではなく、アフロ・ビートの方法論そのものに着目したものと言える。聴き手を高揚させる“仕掛け”に用いられるのは、ジャズ的なインター・プレイというより、ループや対位法的なリフの重なりなどのアフロ・ビート的な手法だ。

また本作では、彼のリーダー・アルバムでははじめてVOX(=声)がフィーチャーされている。6曲で歌声を聴かせるのは、アフロ・アメリカンのシンガー、クリストル・ウォーレンだ。彼女の存在がサウンドにフォークやソウルの色彩を付加し、また楽曲の持つセンチメンタルさをいっそう加速させる。力強くも乾いた歌声は実に魅力的だ。ジャンルを横断した音楽が“フュージョン”や“クロスオーバー”と呼ばれていた時代、それらの音楽は言葉が持つ意味からも明らかなように、「異なるものを組み合わせること」に主眼が置かれていた。本作でレニーニの90年代以降のコンテンポラリー・ジャズを踏襲した知的で都会的なフレージングと、アフロ・ビートの土着的なリズム、ウォーレンの歌声は、なんの矛盾もなく混在している。「わざわざ何かを取り入れたり組み合わせなくとも、最初からいろいろなものが共存していて当然」と言わんばかりに堂々とだ。この無作為のマリアージュを包み込むのが、全体を通じて流れる “切なさ”だ。アップ・テンポなインストゥルメンタル曲のアグレッシブな演奏であっても、サウンドの節々からメランコリーが漂ってくる。このことは、どこかサウンドやプレイ・スタイルは全く異なるオマール・ソーサを想起させる。

ジャズにはいったいどのような可能性が残されているのか、あるいは今日に於いてジャズとはいったい何なのか? 2011年のいま、ジャズに携わる人間はおそらく誰もが日々この命題と対峙しているのではないだろうか。エリック・レニーニも、この思索を繰り返しながら音楽の旅と冒険を続ける1人であるはずだ。本作はその旅の途中で産み落とされたひとつの確かな回答である。そして本作を我々に届けてくれたSONG X JAZZというレーベルもまた、この飽くなき旅に一歩を踏み出した冒険者と言える。本作をはじめ、ビッグ・バンドの概念を再構築したカート・ローゼンウィンケルの『Our Secret World』や、松田美緒と沢田穣治によるあえてボサノヴァを完全に排したジョビン曲集『Canta Jobim』など、強い意思を持ったタイトルを次々とリリースするSONG X JAZZから、今後も目が離せない。

(Text by 酒井 匠)

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エリック・レニーニとピアノ・トリオが来日する!

ERIC LEGNINI TRIO "THE VOX" LIVE 2011 at PIT INN SHINJUKU
2011/06/06、07@新宿ピットイン
出演 : エリック・レニーニ (ピアノ)、トマ・ブラメリー (ベース)、フランク・アギュロン (ドラムス)
チケット : 前売 3,500円+1drink / 当日 4,000円+1drink
詳しくはこちら

What's are SONG X JAZZ

新しいジャズ・レーベル「SONG X JAZZ」が始動しました。「ソングエクス・ジャズ」と読みます。「ジャズ」を謳ってはいますが、扱う音楽は通常「ジャズ」と呼ばれている音楽からは大きくはみ出しています。「未知の歌、未知のジャズ」をテーマに、国内外から厳選した音楽を、ジャンルにとらわれることなく届けたいと考えています。レーベルとして目指すべきお手本があるとすれば、アメリカのNONESUCH、フランスのNØ FØRMAT! 、あるいはドイツのECMといった、世界中の音楽ファンに愛されているレーベルでしょうか。自由で創意に富んだ音楽を長年にわたってサポートし続ける彼らの感性と勇気への敬意が、「SONG X JAZZ」を生んだといっても過言ではありません。今後、国内外のユニークなアーティストがリリースを控えています。音楽不況といわれるご時世ですが、音楽そのものが停滞しているわけでは決してありません。音楽はもっと面白く、もっと自由になれることを、「SONG X JAZZ」はレーベルというかたちで表現していきたいと考えています。
Song x jazz official HP

[レヴュー] ERIC LEGNINI & THE AFRO JAZZ BEAT

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