2016/12/02 19:54

中川大二朗(ex.宇宙コンビニ)による新プロジェクト、JYOCHO始動! 期待の新作と始動経緯に迫る

2015年3月に惜しまれつつ解散した、京都発3ピース・プログレッシブ・ポップ・バンド、宇宙コンビニのリーダーとしてバンドを牽引してきた”だいじろー”こと中川大二朗が新プロジェクトJYOCHO(読み : じょうちょ)を始動し、記念すべき1stミニ・アルバム『祈りでは届かない距離』をリリース。 プログレッシブ~ポップスなど様々なジャンルを通過した音楽性に、テクニカルなトラック、温かみ、激情をふんだんに盛り込んだ、まさに情緒感たっぷりな、だいじろーにしかできない独自の世界観を構築した7曲が完成。今作のメンバーにはドラムにhatch(ex DUG OUT)、ベースにシンディ(空きっ腹に酒、LOW-PASS)、ヴォーカルにrionosという彼が選りすぐった強力なメンバーが集結。彼の多様な知識と音楽性によって生み出された今作の制作意図、新プロジェクト始動の経緯について話を訊いた。

JYOCHO / 祈りでは届かない距離
【Track List】
01. family
02. 安い命
03. furusato
04. 故郷
05. 太陽と暮らしてきた
06. あの木には私にはないものを
07. 365

M1・M2・M7の3曲をアルバムのリリースに先駆け先行配信!!

【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 258円(税込) / アルバム 1,234円(税込)

INTERVIEW : だいじろー(JYOCHO)

新世代のポストロック・バンドとして、宇宙コンビニは叙情性も含んだ素晴らしい作品を残して解散をした。それを残念に思う人は少なくなかったはずだ。しかし、このたびスタートした、同バンドのリーダー、だいじろーこと中川大二朗による新プロジェクトJYOCHOの作品を聴けば、その喪失感はゆるやかに癒され、新しい可能性の萌芽を感じることになるだろう。キャッチーでありながらもテクニカル、一音一音に込められたサウンドへのこだわり、それらが大衆性をも持ち合わせつめこまれている。なぜこのような音楽が生まれたのか。企業秘密と笑いながらも、だいじろーは本作の完成に至るまでを丁寧に語ってくれた。

インタヴュー&文 : 西澤裕郎
構成 : 岡本貴之
写真 : 大橋祐希

最初のイメージと完成したときのイメージが全然違うことも多いんですけど、それがいい曲になったときが1番嬉しいかもしれない

──宇宙コンビニが解散発表したとき、「”音楽に対する姿勢”や”目指すべきところ”のズレが大きくなってしまいました。(中略)今後この3人で、納得出来るものは生まれないという結論を~」と声明文を書かれていましたよね。改めて、なぜ宇宙コンビニを解散させたのか聞かせてもらえますか。

あのときは3人で話し合いを重ねて明確に答えが出たので、そういう文章にしたんです。宇宙コンビニは、僕とえみちょこ(Vo.Ba)で始めたんですけど、3人で活動していくにあたって考え方のズレが大きくなっていってしまって。もともと3人の中で絶対に譲れないものを持っていて、そこが一致していたんですけど、活動するにあたってちょっとずつ離れてしまって。それやったらこの3人でやっていく意味はないかなと思ったんです。まさに解散コメントの通りなんですけど(笑)。

──宇宙コンビニの音楽は3人の譲れない部分が一致していたから生まれていたと。

そうですね。

──その譲れない部分って、どういうものなんですか?

それは企業秘密ですね(笑)。僕の核となっていて、今も思い続けているものなので。そこはJYOCHOも方向性としてはあんまり変わってないです。

──解散後の活動はあらかじめ想定していたんですか。

解散した当時は何も考えられなかったんですけど、やりたいことだけは他にいっぱいあって。就職にも興味があったし、仕事をしながら音楽を続けてもいいかなとも思っていたんです。でも1番やりたいことを整理したとき、音楽がずっとそこにあったので、もう1回、1から組み立てていこうと思うようになりました。

──だいじろーさんは、企業CMだったりクライアントへの楽曲提供もされていますけど、今はプレイヤーというよりも楽曲制作にシフトしているような感覚ですか?

そこは意識的じゃなくて、自然にシフトしていった感じですね。今は曲を作るほうが好きなんやなって、自分の中で明確になりましたね。

──作曲のどんなところに1番興味があるんですか?

最初のイメージと完成したときのイメージが全然違うことも多いんですけど、それがいい曲になったときが1番嬉しいかもしれないです。宇宙コンビニのときの話なんですけど、僕が作ったデモをメンバーに渡して演奏をつけたあとに3人で合わせるとデモと全然違うんですよ。曲を作っていて、そういうときが客観的にも、やっていても1番おもしろいです。

──自分の作った音世界を変えられることを嫌がる人もいると思うんですけど、だいじろーさんの場合は、思わぬ方向に形が変えていったほうがおもしろい?

そのほうがおもしろいと思いますし、僕は自分の中での良し悪しだけじゃなくて、客観的な良し悪しも大切だと思っていて。だから、自分が100%正解だという考えは気を付けたほうがいいと心に留めています。

──宇宙コンビニも客観性も持ちながらやっていたんですか。

それはかなり入れてましたね。3人の客観性もあるし、お客さんが聴いたときにどう思うかということはかなり考えていました。

自分の中の音楽の続きを鳴らしたいと思った

──最近のだいじろーさんのTwitterを見ていると、餃子とか料理の話がよく出てくるじゃないですか。だいじろーさん自身、料理は作るんですか?

料理が好きで、自分でイタリアンとかも作ります。もともとイタリアン料理を出すカフェで働いていたので、パスタのレシピを盗んで、家で再現して1人でインスタにアップして満足するという日々を送っていたこともあって(笑)。

──あははは。創作という意味では、料理と音楽って近いところがあるんじゃないかなと思うんですね。例えば、だいじろーさんはお店で得たレシピに、自分なりのアレンジを加えたりしていそうだなって。

ああ、そういうこともやっていましたね。YouTubeにレシピが無限に出ているので色々合わせて試してみたりもしたし。料理と音楽は似ているというのはよく言われることですけど、本質を突き詰めていくと大事な部分は似ているかもしれないですね。

──料理って「美味しい」という点でわかりやすい評価基準がありますけど、音楽はより抽象的だと思うんですね。そんな中、だいじろーさんの納得がいくポイントってどんなところなんですか。

まず、自分の主観で納得がいくことですね。次にお客さんの反応という2段階です。自分で創るだけじゃなくて、それを人に聴かせるまでが1セット。

──新プロジェクト名であるJYOCHOはいつから名乗り始めたんですか?

宇宙コンビニが解散してから、もう1回音楽をやりたくてJYOCHOのプロジェクトを構想していたんです。それをマネージャーの佐々木さんに話したら、宇宙コンビニでやっていたことと軸があまり変わっていなくて。それもあって、自分の中の音楽の続きを鳴らしたいと思ったんです。

──「音楽の続き」ということは、だいじろーさんの中で、宇宙コンビニとJYOCHOまで、ひと続きのストーリーという意識がある?

宇宙コンビニとJYOCHOはリンクしている部分はありますね。ただ、もっと自由なイメージはあると思います。

──宇宙コンビニと1番違うのは、だいじろーさんがコンポーザーとして存在していて他のメンバーがいるところだと思うんですけど、メンバーはどうやって選んだんでしょう。

僕が1人ずつ声をかけて仲間を集めていきました。ヴォーカルのrionosさんはTwitterで音源を聴いて「いいな」と思って声をかけて。ドラムのhatchくんとベースのシンディさんは、僕がよく出ている京都のライヴハウス「GROWLY」で対バンをした繋がりで声をかけて。「今、こういう構想があるんですけど一緒にやりませんか」って2時間くらい僕の考えを話して賛同してくださったので、お誘いしました。

──そのとき話したのは、技術的なことやサウンド的なことよりもっと抽象的な話ですか?

そうですね。「いつもライヴで演奏してるとき何を考えてますか」とか。そういう話は普段しないし、あんまり好きじゃないんですけど、一緒にやるメンバーとして聞いてみたら意外とおもしろかったんで、合うなと思って一緒にやることにしたんです。

──彼らはサポートメンバーともまた違うんですよね?

強いていうなら「だいじろーとゆかいな仲間たち」みたいな感じです(笑)。サポートみたいに見えるけど、バンドとしてやっていきたいんですよ。とはいえ、rionosさんは東京在住の方なので、データでのやりとりで制作したし、他の2人ともあまりスタジオにも入らず、REC前にスタジオに入る感じでしたね。ある程度、データでフレーズも固めて出すようにしていて。例えば「ちょっとどんなベースをつけたら良いかわからへん」とかなったら、僕がフレーズを出して2人で擦り合わせしていきました。でも、全員好きな音楽の趣向が似ているというか、1つの条件で僕は声をかけていったんで、その擦り合わせはめちゃくちゃ楽で。今までにない新鮮さがありました。

──ちなみに、メンバーで共通して好きな音楽はどんな曲なんですか。

京都GROWLYはTera Melosのジャパン・ツアーをやったりするような色のあるマニアックなライヴハウスなので、そのハコに出ているようなアーティストは共通して好きですね。

今までやってきた音楽を引き継ぎながら、さらに尖って進化しているのがJYOCHO

──曲を聴かせてもらって驚いたのが、一体どうやって作っているのかがまったくわからない(笑)。さっきの話だと、自分で想像していたものと完成したものが違っているところにおもしろみを見出しているなかで、そうしてこんな複雑な楽曲ができるのか、その過程が全然想像できなかったんです。

JYOCHOは、引き算をして曲を作っていく感じもあるんですけど、足し算していく部分もすごく多くて。だから完成したときに最初に比べると複雑になってしまったなというのはすごくあります。「family」はほぼほぼ一緒かもしれないけど、「365」とか「太陽と暮らしてきた」とかはかなり違いますね。まず僕が出したデモの時点ではフルートが入ってなかったんですけど、フルートが入るだけでイメージでかなりガラッと変わった。「太陽と暮らしてきた」はギターからイントロが始まるんですけど、そのギターのフレーズにフルートをユニゾンさせたらおもしろいなと思ったんですよ。それでフルートのhatchさんに「この音拾ってもらっていいですか」って無理を言って合わせたらめちゃくちゃカッコよくなって、それをイントロに採用することになったりとか。

JYOCHO/祈りでは届かない距離 Trailer
JYOCHO/祈りでは届かない距離 Trailer

──フルートを使おうという発想はどこから出てきたんですか?

う~ん、わからないんですよね(笑)、そのときの衝動があるので。試してみたいな、というところから始めて、良いか悪いかわからなかったらメンバーに聞いてみるという感じでやっていたので。

──例えとして合っているかどうかはわからないですけど、JUDY AND MARY時代のギタリストのTAKUYAさんの曲は、すごくポップなんですけどギターはよく聴くとかなり複雑なフレーズを弾いたりしている。JYOCHOの楽曲にも、そんな印象を受けたんですよね。

ああー、確かにそうですね。TAKUYAさんも「めっちゃちゃんとしているのに、ちゃんとしてない」ところはありますよね。そういうのにはすごく惹かれます。

──このアルバムはポップでキャッチーなんだけど、よく聴くと「なんだこりゃ」っていうギターのフレーズとかリズムがたくさんある。複雑さとキャッチーさが同居している感じがマジックだなと思ったんですよね。その両輪は作る上で頭の中にあることなんですか?

そこは1番意識しています。宇宙コンビニのとき、ずっと僕がギターを弾いてたら歌の邪魔になるので伴奏に寄せなければいけなかった。でも今回は、もっと自由にできることが見えてきたので、隙あらばやりたいことを詰めてやろうと思って作ったんです。今まで歌が始まったらギターはコードを弾いてたりしたんですけど、そうではなくて言葉の間にフレーズを詰め込んでやれとか、ドラムとかでもかなり詰め込んだりとか。

──そのバランスが両方成り立っているのがキモというか、聴いていてビックリするポイントだなと思うんですよね。

そこはすごく意識しているので、そう感じてもらえて嬉しいですね。

──歌詞に関しても全部だいじろーさんが書いていますけど、言葉の意味というのももちろん、音としてのフレーズというのも意識した作詞なんですか。

語感ということですよね? そこもかなり意識しました。同じ意味を持つ文章でもハマらなかったら意味がないので、1個1個近い意味を辞書で調べたりして。今表現しようとしているイメージに近いかどうかは試行錯誤しながら作詞しました。

──だいじろーさんは言葉に対する感度も高いですよね。歌詞の表記で、歌詞の最後はからなずイコールでテーマを書いて締めています。

それに関しては、最初に作った歌詞を自分の好きな語感に当てはめていくと、たまに難しくなったり抽象的になったりするので、それをなんとか柔らかく表現するためにわかりやすいテーマとしてそうしてみたんです。聴き手の想像の役に立つヒントとして置いておけばおもしろいかなと思って書きました。

──今後の活動の予定はどのようなことを考えているのか最後に教えてください。

とりあえず1枚作品を出そうと思っていたので、リリース後の活動は今のところ何も考えてなくて。必要であればメンバーの形も変えていきたいし、楽器も増えるかもしれないし、後のことは何も考えてないですね。今はライヴも考えていないですけど、ゆくゆくはやろうかなと思っています。今まで作ってきた音楽の最先端を作りたくて、今までやってきた音楽を引き継ぎながら、さらに尖って進化しているのがJYOCHO。そういうものにできたらと思って、今後もやっていきたいです。今はこの作品を聴いて、次なる始動を待ってもらえればと思います。

LIVE INFORMATION

No Big Deal Records presents No Big Deal NIGHT~No Big Deal Records 5th Anniversary Party~
2017年2月25日(土)@新宿LOFT&LOFT BAR
出演 : ALL OFF / Goodbye holiday / 04 Limited Sazabys / THE PINBALLS / ミソッカス / ビッケブランカ / ねこね、こねこね。 / Wienners / だいじろー(from JYOCHO) / + O.A(オーディション通過者)

PROFILE

JYOCHO (読み : じょうちょ)

2015年3月に惜しまれつつ解散した”宇宙コンビニ”のリーダーとしてバンドを牽引してきた”だいじろー”こと中川大二朗による新プロジェクト。

>>JYOCHO オフィシャル・サイト

[インタヴュー] JYOCHO

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