2012/05/17 00:00

2011年3月11日以降、デモという行動が日常的なものになってきている。とはいえ、実際にデモに参加したことがある人、継続して参加し続けているという人は、まだまだ少数であることに変わりない。その理由として、デモに参加したときに一体どういうことをするのかが分からなかったり、知識がないことによる不安が大きいのではないだろうか。音楽ライターの遠藤妙子は、デモに参加し続ける人物の一人である。きっかけは、1つのツイートだったという。一体デモというものがどういうもので、参加している彼女からどのように見えるのか。彼女のテキストと、秋山理央の写真から、デモがどういうものなのかを感じ取ってほしい。そして、興味を持ったのであれば、足を運んでみてほしい。

いい社会にしたい、その一歩がデモだと思う(TEXT : 遠藤妙子 / 写真 : 秋山理央)

「もし仮に、Twitterで人を集って、渋谷辺りで脱原発デモを行なうとして、参加したいという方がおられれば、公式RT願います」

震災と原発事故から一ヶ月弱後の昨年の4月5日。被害はますます広がり事故の真相は藪の中。原発はいらないという思いはあるが何をしていいかわからない。そんな時にこのツイートを目にした。ツイートの主は政治活動をしているわけでも団体に所属しているわけでもない、20代の会社員・平野太一氏。私の、多くの人の友だちにいるような若者だ。この呼びかけから一ヶ月も経たない4月の終わりに第一回Twitterデモが行われた。

皆さんはデモに対してどういうイメージを持っているだろう? 政治団体や活動家など特定の人達が幟を立ててシュプレヒコールをする、という感じだろうか? Twitterの呼びかけに始まり個人の有志達によって運営されているTwitterデモは、「特定の政治的スタンスに依ることなく、脱原発/反原発のみを唯一のポリシーとする」もので、誰でも、飛び入りだって参加OK。「原発はいらない」、その思いだけあれば参加していいのだ。だから、若い人や家族連れ、40代、50代、それ以上の方も参加している。そりゃ、「原発はいらない」という思いの内側には各々で様々な理由があるだろうし知識の差だってあるだろう。全ての人が全て同じ思いであるわけではない。しかし「原発はいらない」というたった一つの、そして許容量あるメッセージだからこそ様々な人達が集まれるのだ。「原発はいらない」というメッセージは、様々な人達の意見を統率するものではなく、様々な人達の意見を許容するものなのだ。Twitterデモがこのシングル・イシューを貫くのは、そういうことだと私は思っている。

第一回目から一年、10回目を数えるTwitterデモが4月29日に開催された。デモのコースは若者や家族連れが多く集まる渋谷~原宿~渋谷。スタート場所の宮下公園には、手作りの「NO NUKES」と書かれたTシャツやバッグを売っている人達、ステッカーやバッジを配る人達がいる。誰に頼まれたわけでもない、自らのアイディアで持ち寄っているのだ。アイディアと言えば「SAYONARA ATOM」と称するデザイナー・チームによる小旗。参加者や途中の沿道の人達に配られるのだが、可愛い小旗なら沿道の人も受け取り易いしそのままデモに飛び入りもし易い。そう、デモの参加者達は、オーガナイザーじゃなくともより良いデモにしようと自らが工夫している。この感じ、ライヴを企画する人、出演するバンド、ライヴをよく見に行く人ならわかるんじゃないか? ライヴやイベントをより楽しい空間にしようと、みんなで作っていく感じに近い。ならばデモは、ライヴと同じように楽しいものなのか? と問われれば、YesでもあるしNoでもある。沿道の人達の様々な視線、中には奇異なものを見るような人もいて、そんな視線が突き刺す中、約2時間も歩くのは居心地のいいものではないかもしれない。心身共に疲れる。だけどデモに人は集まる。私個人はデモに行くことを嫌だと思ったことはない。そりゃ、しんどいこともあるけど、やっぱり楽しいのだ。その楽しさは今まで感じたことのない楽しさだ。いい社会にしたい、その一歩がデモだと思うし、社会に対して意見する場としてデモという手段を未来に残すことはとても大事なことで、大事なことに少しでも関わっていく充実感や楽しさは、デモで初めて実感した。

さて、宮下公園からスタートしたデモは、消防署、区役所から公園通り、井の頭通り、109から渋谷駅前、表参道、明治通りを経て宮下公園に戻るというコース。「SAYONARA ATOM」が作った可愛い横断幕を先頭に、ドラム隊が士気を高め、「原発いらない」「子供を守れ」「未来を守れ」といったシンプルで力強いコールが叫ばれ、コールの後に多くの人の声が続く。1200人が参加したこの日、その声が波のように動いていく。私は何度も参加しているので大声を出すことに照れはなくなっているが、勿論、歩くだけだっていい。私も最初は黙って歩いていた。歩きながら、沿道で冷笑する人と「原発いらない」と叫んでいる人との距離感を考えていた。冷笑する人を、こっちがあんたらを冷笑するわ、と開き直ったりもした。だけど、デモの存在を知らなかったら私だって沿道で冷笑していたかもしれない。きっかけがないだけで参加したいと思っている人は、きっと多いはずだ。そういう人達がいつでも参加できるよう、私は歩くのだ。

この日、回を重ねてきたTwitterデモに、沿道の人達の反応はあたたかいものが多かったし手を振る人もいた。年配のご婦人がハンカチで目を拭いながら応援している姿にはこっちまで泣きそうになった。渋谷駅前では国と東電の不正を訴えるスピーチをしている、福島の「希望の牧場」の方とエールを交わした。表参道では車椅子のお母様と共に給水所を準備してくれた方がいた。興味津々に列に着いて歩いていた10代のカップルは参加しただろうか? いや、参加していなくても、デモのことや何故デモが行われているのかを考えるだろう。

改めて、何故デモが行われているのか。勿論、原発はいらないと思っているからだし、デモという意思表明の場を未来に残す義務が、私達にはあるからだ。おかしいと思ったことはおかしいと表明する、そんな当たり前のことを、私達は長い間、忘れていたのではないか? おかしいことにはおかしいと言う、それは当たり前のことで、当たり前のことは日常の中に浸透させていけばいい。気負うのではなく、ライヴの前にデモに寄ってみよう、それでいいのだ。

この日、Twitterで人気のもんじゅ君も共に歩いた。私の横にはゆーきゃん(京都在住なのに(笑))が歩いていたし、KIRIHITOの早川氏は常にデモや抗議行動で会う一人だ。勿論、ECD、そしてアジアン・カンフー・ジェネレーションのゴッチ。この日は未確認だが20年前から反原発を表明し行動しているランキン・タクシーもいたかもしれない。まだまだ多くのバンドマンがいた。個人として来ているのだから敢えて記すことはないのかもしれないが、バンドマン達が歩く姿には、やっぱり励まされる。だって私は音楽が好きだし、その音楽から「自分で考える」ことだったり「行動する」ことだったり「未来を想像する」ことだったり「壊す」ことだったりを教わってきたのだから。それを脈々と受け継ぎ表現しているバンドマン達と共に歩くのは嬉しいし、でも本当は、まだ足りない、もっと来てほしいと願っている。

ゴールに辿り着き、達成感があるかというと、実はそうでもない。本当のゴールはずっと先だから。しかし、社会に動かされるのではなく、社会を動かしていこうとする人達は少しずつ増えている。ブームではなく、街の中に、人々の生活の中に、少しずつ浸透している。回を重ねるたびに少しずつそれを実感できるTwitterデモに、私は多大な感謝をしている。

勿論、Twittreデモ以外にもたくさんのデモが行われている。まずは参加してほしい。来られる時だけでいい。参加するのに遅過ぎるってことはないのだ。

追記(2012年5月21日)

この「TwitNoNukes」主催するTwitterデモは東京以外にも、北海道、青森、群馬、神奈川、浜松、名古屋、滋賀、大阪、奈良、関西(滋賀・大阪・奈良の連合体)、中国、九州、そしてニューヨーク・シティ(!)と広がりを見せ、他に神戸と沖縄でもTwitterから始まったデモが生まれている。主催者達は音楽好きやバンド関係者も多く、関西圏のTwitterデモにはソウル・フラワー・ユニオンの中川敬、はちようび( http://hachiyoubi.daa.jp/hp/top.html )のメンバーなど多くのバンドマンやDJ達も共に歩く姿がある。自分達の問題として立ち上がったTwitterデモはまさにD.I.Y.なのである。

Twitterの各アカウントをチェック!

@twitnonukes
@TwitNoNukesOsk
@TwitNoNukesNARA
@TwitNoNukes4GA
@TwitNoNukesKNS
@TwitNoNukes_KNG
@twitnonukes_hmt
@TwitNoNukes758
@TwitNoNukesCGK
@THINKFUKUSHIMA

5.27反原発デモ@渋谷・原宿

歴史的原発全停止の今、第11回目の渋谷・原宿Twitterデモ!

日時:2012年5月27日(日)予定
集合場所:みやしたこうえん北側
時間:14時集合 15時出発予定
主催:TwitNoNukes

※時間・デモコース等詳細は下記HPより。

Twitterデモ http://twitnonukes.blogspot.jp/

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